脚を充分に伸ばせる理想の湯船の大きさとは
ここでいう理想の湯船の大きさとは、『1~2人で使うのに理想的な大きさ』としたいと思います。
まず、一般的に湯船は縦×横×高さの長方体に近い形をしています。
従って、理想の湯船の大きさを考えるために、理想の『全長』『全高』『全幅』を考えていきます。
理想の『全長』『全高』『全幅』とは、言い換えると、
①理想の『全長』→座っても脚が充分に伸ばせる長さ
②理想の『全高』→背筋を伸ばしても首下に水面がある(溺れない)
③理想の『全幅』→1〜2人くらい並んで入っても余裕のある幅
これらを考える上で、まずは法律を把握し、その枠組みの中から理想の湯船サイズを考えていきます。
常識の範囲内で湯船を作れば法律的には問題ない
厚生労働省のホームページによると、温泉・サウナは『公衆浴場』に該当します。
温泉・サウナを営業するためには、公衆浴場法に遵守する必要があります。
要は、法律でルールが決まっており、その基準は自治体によってまちまちだから、各自治体の条例を参照しなさいよということです。ひとまず「公衆浴場法施行条例 構造設備基準 適正配置基準」で一番上にヒットした、広島県三原市の例に当てはめて考えます。
https://www.city.mihara.hiroshima.jp/uploaded/attachment/15760.pdf
めまいがするほど難解な文章且つ文量ですが、”大きさ”にスポットを当てて見ると、構造設備等基準という資料には次のような記載がありました。
これによると、浴槽内面積の基準は
人数 × 浴槽に浸かっている時間 / 60 × 浴槽使用面積0.7㎡ × 人数分 × 浴槽内の階段、湯水口等に要する面積の係数1.2
で求められることがわかります。
これに、利用人数2人、浴槽内に浸かっている時間を仮に10分で当てはめると、
2 × 10 / 60 × 0.7㎡ × 2 × 1.2
= 20 / 42㎡ × 2.4
= 20 / 84㎡
= 0.23㎡
・・・ん?
0.23㎡ってめっちゃ小さくねえか…㎡って縦m × 横mだよね…
0.5m(50cm) × 0.5m(50cm)で0.25㎡(250c㎡)だから、0.23㎡ってどう考えても小さすぎる。計算ミスったのかな…
試しに、0.25㎡(250c㎡)ってどれくらいの大きさなんだろうと思って調べたら、同じような質問をしている人がいました。
湯船の最低基準は、はがき3枚分くらいの大きさ以上…
はがき3枚の広さに2人って、もう2人密着して直立不動するしないと入れない広さじゃん!
公衆浴場法的に問題なくとも、公衆的にいろんな意味で問題ありまくりだと思ますが、常識の範囲内で湯船作れば法律的には問題ないことがわかりました。
①理想の『全長』→座っても脚が充分に伸ばせる長さ
理想の『全長』について、一般的な日本人男女の平均身長から算出してみます。
20~40代の一般的な日本人男女の平均身長で考えてみると、政府統計総合窓口の資料より算出した結果、平均身長が男性171.5cm、女性158.5cmとなりました。
ただ、他にも調べましたが、どうも年齢×身長の分布をクロス集計できる公的なデータ(例:25歳180cmの男性が全体で〇〇%)が見当たらない…
なので、17歳のデータになってしまいますが、このようなデータがありました。
これを見ると、185cm以上は1%未満となっています。
従って、平均171.5cm、最大180cmの方を対象として考えてみます。
次に座って脚※1を伸ばしたときの長さを考えます。
(※1「足」はひざから下、または足首から下で、「脚」は腿(もも)から下を指す。 )
身長180cmの人が湯船と平行に仰向けになることはない(溺れる)ので、脚の長さの平均的な算出方法、身長 × 45%をすると
185cm × 0.45 = 81.0cmとなります。
ただ、湯船に浸かるときは、地面と垂直に座るよりも、やや背中を壁に傾けてよりかかるように浸かると思うので、その傾きを考慮しなければならない。即ち、81.0cm+背中を壁に傾けて寄りかかった時に生まれた長さ
となります。
背中をどれくらい傾けて座るかは大きく個人差が出ると思いますが、一般的な座面の長さは約40cmであり、これ以上浅く座る人はいないという前提条件の下作られていると思うので、
81.0cm+40.0cm=121cm
湯船なので椅子以上にもたれかかる人もいると考えて、まあ150cmもあれば長さは充分なんじゃなかろうかと思います。
②理想の『全高』→背筋を伸ばしても首下に水面がある(溺れない)
充分に脚を伸ばせるくらいの長さが決まったら、高さもおのずと決まってくる、即ち座高を求めれば良い。
座高とは、椅子に上体を真っ直ぐにして腰掛けた時の、椅子の面から頭頂までの上体の高さ、従って、座高から顔〜首にかけての長さを引けば、溺れない高さが算出できます。
先程、脚の長さの平均的な算出方法、身長 × 45%を使って、
180cm × 0.45 = 81.0cmと、脚の長さを算出したところ、
身長-脚の長さ=座高になるので、
180cm-81cm=99cmが座高となりました。
一般的な男性の首の長さは平均11cm、頭は23cmとのことなので、
99cm(座高)-11cm(首)-23cm(頭)=65cm
即ち、180cmの男性が座って首下に水面がくる高さ=65cmとなります。
65cm以上高くすると溺れてしまうので、考えるとしたら低くすることですが、日本人の男性が平均身長が171.5cmであることを考慮すると、もう10cm低くしたほうが良さそうです。
従って、55cmにすれば、
180cmの人は首下10cmに水面
170cmの人は首下にちょうど水面がくることになる。
ただ、これは壁にぴったりお尻をつけた状態、いわば、垂直に座っている状態での高さになる。
実際に湯船に浸かるときは、先述の通り体を壁に傾けてよりかかる状態になるので、その場合はもっと水面を下げなければなりませんが、そうすると垂直に座って浸かりたい人や180cmの人は水面と首下の距離が広がって半身浴のような格好になります。
従って、湯船の底に10cm,20cmの段差を設ければ、必要に応じて各自で調整できる。
よって結論は、理想の『全高』=55cmで問題ないかと思います。
③理想の『全幅』→1〜2人くらい並んで入っても余裕のある幅
最後は横幅について。
横幅を考える上で、人体において最も横幅が長い部位を考えます。
それは、肩幅です。
180cmの男性平均肩幅は42.3cmですが、これは直立不動のポーズでの計測。
湯船に浸かっているときはリラックスしてほしいので、1人あたり2人分の横幅はほしい。
即ち、2人で利用した場合の横幅は、
42.3cm × 2人 × 余白2人分 = 169.2cm
従って、横幅は170cmもあれば良さそう。
これで理想の湯船の全長、全高、全幅が算出できました。
理想の湯船の寸法(1〜2人用想定)
理想の湯船の大きさは
全長:130cm (180cmの人が座っても脚が充分に伸ばせる)
全高:55cm (170cmの人が背筋を伸ばして首下に水面がある)
全幅:170cm (日本人平均男性4人が並んで入れる)
という結論に至ったので、実際に温泉行って確かめてきました。
170cm60kgのぼくの場合 、
全長:100cmでぴったり脚が伸ばせる。180cmの人でも130cmもあれば充分かと。
全高:55cmで首下くらいに水面。女性はこれだときついかも。
全幅:1人分で40cmくらい。150cmあれば2人並んで座っても充分な広さが保てる。
うん、仮説はなかなかいい線いってたな。
そういうわけでぼくが作る施設での湯船の大きさは
全長:150cm (180cmの人が座っても脚が充分に伸ばせる)
全高:55cm (170cmの人が背筋を伸ばして首下に水面がある)
全幅:170cm (日本人平均男性4人が並んで入れる)
以上としたいと思います。
追記
ここまで書いて思ったのが、こんなに考えなくても、既存のバスタブを参照すればよかったんじゃないかと思って調べたら、こんなのがありました。
即ち、親子入浴でもゆったりとできるのが、全長180cm、さらにワイドタイプにしてさらに心地よい大きさとなるのが、全長190cmだそうです。
そういうわけで、親子入浴でもゆったりとでき且つ心地よい大きさである全長190cmを目安に、ぼくが作る施設の湯船の大きさを再考した記事を別途作成します。(ここまで記事作成にかけた時間は一体…)
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