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【コラム】植木屋のオッチャン FROM 漫画倉庫 ーケルアック『孤独な旅人』

2016年11月某日ー漫画倉庫USUKI店 ・ケルアック『孤独な旅人』

 ここ暗い地上にとどまろう、われらがみな天国にいくまでは。 アメリカのヴィジョンよ、 ヒッチハイクし、 鉄道で旅し メキシコやカナダの国境を通って アメリカへもどってくるすべての者たちよ……

J・ケルアック『孤独な旅人』 「故郷なき者たちの夜の桟橋」新宿書房1996  訳:中上哲夫

経緯は全く覚えていないが、3年ほど前、アホみたいに泥酔して鹿児島は宇宿の漫画倉庫に行ったことがあった。2人の友人とベンチに座ってだらだらしてると、金髪でややぽっちゃりとしたホリの深いオッチャンが近づいてきた。

「谷山駅はどっち?」

金髪中肉中背のオッチャンとの会話

その男に不審な匂いを感じたのか、2人の友人はそそくさとその場を去ったが、私は一人酔っていたので、話を聞いていた。

・・・・・・聞くところによると、オッチャンは北海道から歩いて鹿児島までやってきたという。「ホントかよ」と思いながら、話を聞いていたのだが、その足を触ってみると、確かにガチガチなのだ。詳細は全く覚えていないが、どうやらオッチャンは高校を中退した後、アメリカに渡り、偶然知り合ったメキシコの方の世話になっていたらしい。どうにも嘘臭いがそうらしい。

オッチャンは「酒はいらないが煙草が欲しい。買ってくれ」と言って私にechoを買わせて、一人吹かしていた。彼は金を持っていなかった。当時、喫煙者だった私も、彼に付き合い、しばし、煙草を吸っていた。

しばらく雑談を交わしていたが、突如、オッチャンは叫んだ。


「〇〇くん、先生なれよ!」


当時、私は学習塾を運営する会社へ内定をもらっていて、そこで働くことを決めていた。その話をすると、オッチャンは顔を顰めたのだった。オッチャンは続ける。


「いや、塾講なんて、金貰う為のハリボテやん。教師は、金から自由になれるで」


と、うろ覚えではあるが、どこか関西なまり(北海道の言葉は標準語に近い)のイントネーションで私に言った。当時としてはすこぶるどうでもよかったのが、今となってみると、オッチャンの言葉にも説得力はあるのだ。オッチャンは言った。


「俺はよお、誠実な教師いたらよかったとおもうぜえ」


オッチャンは私の金で煙草を吸い酒を飲みすこぶる酔っていたので、上機嫌だった。朝方3時近くまで飲んでいた。人の金で飲む酒は美味い。オッチャンは言った。


「今度、俺が焼肉おごるよ」


オッチャンと別れた後


私はオッチャンを谷山駅まで連れて帰り、そこから歩いて30分かけて我が家に帰った。オッチャンの部下らしき人がワンボックスカーに乗って、彼を中央駅まで届けていった。駅近くのホテルを取ってたらしいのだ。なぜ、谷山駅を目指していたのかは、よく分からなかった。


以来、オッチャンからの連絡は来ない。

(了)

左部右人(サトリミギト)
1994年生まれ
鹿児島県鹿児島市在住
普段はプログラマーとして会社勤め

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