企業調査_KeePer技研(6036)
ここ数日、日経平均株価がかつてないほど大きく下落しました。が、投資は「株価ではなく企業の価値にBETする」ものだと思っているので、もくもくと企業調査を続けることが大切だと考えています。
今回、調査した銘柄はKeePer技研(6036)です。
株価が2023年12月から半分以下にまで下落しました。
これからもっと下がるかもしれませんが、調査した記録をnoteに残します。
業績はそれほど悪くないのですが、株価はピークから半分以下になっていて、2,000億円以上あった時価総額も約900億円にまで減っています。
会社はなにで稼いでいるか?
KeePer技研は、自動車の洗車・コーティングサービスと、洗車用関連製品の製造・販売で収益を出している企業です。コーティングとは、車のボディやガラスの表面に薄い被膜を張ることで、塗装面の色あせ防止や塗料のツヤを保つことなどを目的としています。
同社のカーコーティング技術は多くの顧客から支持を受けており、直営店とフランチャイズ店を通じて全国的にサービスを展開しています。これにより、定期的なメンテナンスニーズに応えつつ、安定した収益を生み出しています。
約170億円の売上高(2023年6月期)は次のように分類されます。
1.キーパーLABO運営事業
- 約97億円(売上構成比:57%)
- 売上高営業利益率27%
- 高品質なカーコーティングおよび洗車サービスの提供
2.キーパー製品等関連事業
- 約73億円(売上構成比:43%)
- 売上高営業利益率33%
- 自社開発のカーケミカル製品(コーティング剤等)の製造および販売
■事業系統図
自動車文化が変わりつつある中で、カーコーティングの使われ方も変化しているようです。以前は新しい車を買ったときに施工することが多かったカーコーティングですが、今は使い込んだ車にも施工して、車を長く綺麗に乗り続けたいと考える人が増えています。
その結果、カーコーティングは新車を扱うカーディーラーだけでなく、専門店やガソリンスタンド、カーショップでも普通に行われるようになり、車のアフターケア商品として重要になっています。
なぜ稼げているか?
KeePer技研が利益を生み出している主な要因は「高品質のカーケア技術および製品ライン」にあると考えています。直近10年の業績を以下の一覧にまとめました。
KeePer技研の売上原価率と販管費率は年々改善されていて、経営効率の高さを示しています。また、2021年6月期から業績が飛躍的に伸びていて、これは、YouTubeをはじめとするデジタルマーケティングの影響が特に大きかったようです。広告のリーチ拡大とコスト削減を同時に実現することができ、利益率の改善にも大きく寄与しました。
KeePer技研のサービスを体験したお客さんのリピート率は85%以上で、年々KeePerを施工される台数が増えています。その実績が認められ、国内自動車メーカー(TOYOTA、HONDA、SUBARU、MITSUBISHI)や、石油元売り大手(ENEOS、出光興産、コスモ石油)で純正コーティングとして、次々に正式採用されています。
KeePer技研は技術研修・キーパー技術コンテスト・上達会などを通じて施工技術の向上に注力し、高品質なサービスの提供を継続しています。同社のカーコーティング技術は、耐久性と仕上がりの品質で消費者から高い評価を受けていて、車を長く綺麗に保ちたいという顧客の課題を解決できています。これらの要因から高い顧客満足度とリピート率を実現させていて、同業他社との差別化に寄与しています。
今後、どんな変化があるか?
KeePer技研の谷会長は業績拡大のカギとして「直営店の拡大」、「自動車以外のサービス開発」、「海外展開」の3点を挙げていますが、最も現実的に業績へ寄与しそうなのは「直営店の拡大」なので、こちらについて掘り下げます。
同社の直営店は2024年2月末時点で112店舗ですが、2024年には16店舗、2025年には30店舗の新規出店を計画しています。直営店は利益率が高いため、新規出店は会社の業績拡大に直接的な影響を与えます。
ただ、新店舗の運営には人員が必要となるため、新規出店に伴い従業員を増やしています。会社四季報(2024年2集)の【採用】欄にも『内定109名』、『中途180名』それぞれ増加予定であることが記載されていました。
これにより短期的に人件費が増加し、業績の成長率や利益率が一時的に鈍化する可能性があります。しかし、新規出店と人員増強による短期的なコスト増は、将来の市場拡大と収益増に向けた先行投資と捉えることもできます。
より長期的な視点の話しになりますが、キーパーLABOの市場潜在力は国内約500店舗にまで拡大できる見込みのようです。
KeePer技研が運営するキーパープロショップは、石油製品の販売減少に直面しているガソリンスタンドが主な運営場所です。これに対応し、非燃料収入の確保が急務となっており、石油元売り各社もカーコーティングサービスの提供に力を入れています。
2023年6月30日時点で全国約29,000店舗のガソリンスタンドの約21%にあたる6,414店舗がキーパープロショップとして登録されています。期初の6,283店から微増したこの店舗数は、ダイヤモンドキーパー、ケミカルレジン2、ECOレジンの売上が前年同期比約20%増となり、1店舗当たりの施工台数の向上に貢献しています。この成長は、非燃料収入源としてカーコーティングサービスの重要性が高まっていることを示しています。
キーパープロショップは入会金や会費が無料であり、営業活動を行わずとも実績の上昇が新規店舗の増加を促しています。この傾向はガソリン業界に留まらず、カーディーラーやカーショップへも拡大していくと予想されます。
どんなリスクがあるか?
1.景気変動の影響
キーパーLABOは高価格帯のサービスを主力としているため、経済環境の変動に強く影響を受けます。景気の後退や消費者の支出意欲の低下は、KeePer技研の売上に直接的な影響を及ぼす可能性があります。高額サービスの需要は、経済が好調で消費者の可処分所得が安定している状況でのみ維持可能です。したがって、経済が不安定になると収益性に悪影響を与えるリスクが増加します。
2.ガソリンスタンド業界の今後
現在、自動車のエネルギー源は、ガソリンや軽油などの化石燃料から、地球温暖化対策の一環として電気や水素といった「脱・化石燃料」への移行が進んでいます。国際エネルギー機関(IEA)のレポートによると、2030年までに世界の新車販売の約30%がEV(電気自動車)、PHV(プラグインハイブリッド)、FCV(燃料電池車)などの代替エネルギー車になる見込みです。この次世代エネルギーへの移行が進むことで、燃料油の需要は減少し、それに伴い店舗数も減少する可能性が高く、中長期的にガソリンスタンド業界の売上減少は避けられないはずです。
3.谷好通氏のリーダーシップと経営体制の変革
KeePer技研は創業者谷好通氏の果敢な経営判断とリーダーシップにより業績を拡大してきました。製品開発の才能と経営スキルで会社を牽引してきましたが、1952年生まれの高齢を考慮した持続可能な経営体制の変革が求められます。
さいごに
KeePer技研は新店舗の出店に伴い、従業員を増やしているため、短期的に人件費の増加と業績の成長率や利益率の一時的な鈍化が見込まれます。しかし、長期的な成長戦略を持っていて、業績向上へ向けた種まきを行っている企業は個人的にポジティブに考えるようにしています。
店舗の拡大余地もまだ大きく、比較的シンプルな成長ストーリーから、時間が経過するにつれて企業価値は向上すると考えられます。経営効率の年々の改善や、今後も安定したキャッシュフローを生み出せそうな点も評価ポイントです。
ただ、KeePer技研が提供するカーケアサービスは比較的高価格帯であるため、経済の後退や消費者の支出意欲の減少が直接的に売上に影響を与える可能性があります。
株価水準は、過去の傾向から見ると割安に見えなくもないですが、同業他社と比較すると必ずしも割安とは言えない状況ですので、当然リスクはあります。