社内SEからのコンサル転職④社内SEの市場価値とやりがい〜
前回までのあらすじ
優秀な営業マンになることを夢見ていた社会人1年目の年度末、私は情報システム部門に配属されることになります。そこで待っていたのは総勢100人以上の情報システム部門の端末のお世話を前任者のおじいちゃん社員から継承するというミッションでした。
※この仕事は所謂「社内SE」ですが、社内SEの仕事内容は端末のお世話以外にもIT企画や開発等広範囲に渡るので、私の仕事内容に最も近いことをしていたサ道第4話の登場人物から取って、便宜上「ヘルパーさん」と呼称することにしています。
前回のお話はこちら↓
ヘルパーさんのお仕事
若干マニアックな話になってしまいますが、実際の業務はこんな感じでした。
<キッティング>
・新規着任者やPCの故障(10年近く稼働している端末もあったのでそこそこ発生)が発生した場合に新しく端末を用意する。
・NWカードの増設→BIOSの設定→IPアドレスの設定→OS、SWのインストール→ドメイン参加→グループウェアの設定 (故障による交換の場合はデータ移行のサポートまで)等々
<トラブル対応>
・PCの不調があると呼び出される。(PC預かっていろいろ試して直したり、交換したり)
・「●●のフロアでPCが使えなくなった(社内環境にアクセスできない)」と言われて呼び出される。(大体座席移動とかのタイミングで誰かがスイッチの電源抜いたりLANケーブルを差し間違えてループさせている。なのになぜか「仕事にならないんだけど」と当事者たちから責められる)
・本来守備範囲ではない、情シス以外の部署からも「キーボードが使えなくなった」などと呼び出される。(行ってみたらUSBケーブルがPCに刺さっていない。弊社のPCはBluetoothが存在する前の機器なので無線接続は不可である)
<SWバージョンアップ対応>
・PC100台超に手動でバージョンアップファイルをインストールしてアップデート(管理者権限でないと作業できないので、1人で休日出勤して対応)
・システムから更新ファイルが自動配信されるSWでも配信時間にログインされていないとバージョンアップがされないので、休みの人のPCを1台ずつ立ち上げて対応。
<資産管理>
・PCやらプリンター100台超を定期的に目視で現存確認。
・委託先の開発センターやら監視にも出向いて目視で現存確認。
・会社保有のすべてのSWライセンス管理。(情シス管理の業務端末だけでなく、特定のユーザー部門が独自で使っている端末のSWライセンスも紐づいており、ライセンスの使用数が把握できていない状態からスタート)
・WEBカメラやNASの換装ディスクなど、OA機器全般の調達
・プリンターやライセンスの保守契約手続き(突然の値上げで取引先と揉める)
仕事量は多いわけではありませんでしたが、全くと言っていいほど引き継ぎ資料がなかったことと、自分の知識不足からしばらくは大変でした。BIOSの設定画面を全部文字写真を撮った後に文字起こししてマニュアルを作ったり、必要な設定ファイルを敢えて配置しない状態でPCを動かして、それぞれのファイルがどういった役割を果たしているのか確認したりしていました。
そのおかげで、ただ決められた手順を行うのではなく、それぞれの作業をなぜ行う必要があるのかを理解することの必要性を学ぶことができたという意味では良い経験ができました。
あらかじめマニュアルが用意されているとあまり意識しませんが、その作業をする目的が何かを理解していないと、イレギュラーケースの時にどうすればいいかわからないし効率化や改善もできません。
引き継ぎ期間中にはかつてない事件が発生して大騒ぎにあったり、引き継ぎ漏れで会社保有のOfficeライセンスの8割が消失しかけて天下のMicr●s●ft様に泣きついた末に口論になったりもしましたが、なんとか私も半年程度で一端のヘルパーさんになることができました。
しかし、同期や同年代の多くが大規模な開発案件に携わっているなか、自分の仕事のスケールの小ささにずっとコンプレックスを感じていました。周囲から「街の電気屋さん」などと言われて内心とてもショックだったことをよく覚えています。(電気屋さんを馬鹿にしているわけではありません)
さて、当時は転職や市場価値などまったく考えていませんでしたが、このnoteのテーマは「転職」ですので、私が行っていたヘルパーさん業務の市場価値について考えてみます。
ヘルパーさんの市場価値
市場価値を年収で評価するとして、dodaが発表したIT職種別年収ランキングを参考に考えてみます。
※出典:IT職種別年収ランキングTOP20(doda調べ)
まずこのランキングから言えそうなことは、年収上位帯はマネジメント系の業務やプロジェクトの上流工程に携わる職種が多く、下流工程や必要な技術レベルが下がるにつれて年収帯も下がる傾向にあるようです。
ヘルパーさんがIT職種ではどういったポジションにあたるかというと、年収帯が最も低い「ヘルプデスク」になると思います。
また、「キッティング 求人」などで検索してみると契約社員や派遣社員の求人が多く、ヘルパーさんの市場価値は低いと言えそうです。
情シスにおいては大規模案件のプロジェクト管理や、システム構想策定といった業務経験をしている方が市場価値も高そうです。
どうやらヘルパーさんポジションから転職をする場合は年収ダウンを受け入れるか、(これも年収ダウンの可能性がありますが)未経験も受け入れているSE職からキャリアを積み上げていくことが必要になりそうです。
ただし、市場価値と社内価値(評価)は異なるものですので、転職せずに社内で評価されて昇格できれば年収上位帯職種と同等の収入を得ることも可能だとは思います。実際、前任のおじいちゃんは管理職まで到達していたので、年収は800万円オーバーでした(ただし、昔はヘルパーさんと併せて複数システムの基盤運用管理やチームリーダーも行っていたので、ヘルパーさんの技量だけを評価されたわけではありません。)
市場価値の観点ではヘルパーさんは情シスの中でも良くないポジションに見えますが、ヘルパーさんであっても業務の改善提案やコスト削減等の経験があれば転職市場(特にコンサル)でも評価されると思います。当然社内価値も上がりますので、ヘルパーさんになった方はルーティン化した業務に従事せず積極的に業務改善やコスト削減にチャレンジするのが良いと思います。また、ヘルパーさんには開発業務を担当する情シスと比べて、以下の理由から業務改善やコスト削減を行いやすいメリットがあります。
・作業者が自分のため業務改善のハードルが低い(作業者がベンダーやユーザー部門の場合は少なからず抵抗があったり、利害の不一致が起こる)
・機器購入やライセンス契約など調達関連の業務が多く、コスト削減できる可能性のある業務が多い(開発業務ではベンダーを切り替えることが難しく、価格交渉は平行線になりやすいが、調達であれば調達方法を変えるだけでコスト削減ができることもある)
私もライセンス契約形態の見直しや端末廃棄フローの見直しを行い、それなりのコスト削減をすることができました。定性評価が多い情シスにおいて定量的な成果を出した実績は評価されやすく、良い評価をもらえました。(実際には取引先の提案に乗っかって、調整と社内承認を行っただけなのですが)
なお、コンサルの場合は自分ひとりで完結する仕事は滅多にないので、ベンダーなりユーザー部門なり他社を巻き込んだ改善実績が必要になると思います。今更ながら、そういった観点で前向きに仕事に取り組んでいれば、もっとやれることはあったと思います。
ヘルパーさんは感謝される?
最後にヘルパーさんのやりがいについて。転職サイトでヘルパーさん(社内SE)について紹介されている記事を見ると、「直接感謝されることが多い」といったことがよくやりがいに挙げられています。
これは私個人の感想ですが、感謝より文句を言われることの方が多いです。
人はあって当たり前の環境に感謝はしませんが、その環境が壊れたときには怒ります。蛇口を捻って水が出た時に水道局に感謝する人は滅多にいませんが、水が出ない時は多くの人が大騒ぎすると思います。
業務端末や社内NWといった社内インフラというのは文字通り社内の活動を支える基盤であり、いつでもなに不自由なく利用できることが当たり前で、そんなことにありがたみを感じる人は少ないです。
なので何らかのトラブルで呼び出されると、
「来てくれてありがとう」
「忙しいのにごめんね」
より
「いつ直るの?」
「仕事にならないんだけど」
と言われることが多いです。
(ちなみに、ITリテラシーが低く変なことをしてトラブルを起こしたり、自分で何も調べずにすぐ人を呼びつけるような人ほど、感謝の言葉が少ないです)
もちろん感謝をしてくれる人もいますし、相談を受けて業務効率化のお手伝いなどができれば喜んでもらえることもありますが、エンジニアの方がユーザーと接点がないからもっと感謝されたい!などと考えて情シスを志してしまうと、思っていた理想とのギャップが大きいのではと思います。
かなり長くなってしまいましたが、なんとか土曜日中の投稿に間に合いました、、、次回はいよいよ一回目の転職を考えることになった時のことを書こうと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
怠惰な人間ですので、モチベーション維持のために良ければスキボタンを押して貰えるととっても嬉しいです!よろしくお願いします!
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