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技術書典17に参加 英国メイドと技術書について
技術書典17に、サークルSPQRで参加します。
オンライン:2024/11/02 (土) 〜2024/11/17(日)
オフライン:2024/11/03 (日) 11:00~17:00
会場スペース:こ20
会場:池袋・サンシャインシティ 展示ホールD(文化会館ビル2F)
参加:入場無料
以下、なぜメイド同人誌が技術書と関連しているかの解説をしています。
出品同人誌をさくっと知りたい方は、以下、「技術書に出品している同人誌」のリンクをクリックしてください。
英国メイド同人誌と技術書は関係しているの?
2023年に、技術系同人イベント「技術書典15」に参加しました。私が普段作っている同人誌は19世紀英国メイド・執事を中心とした「家事使用人研究」であり、技術書と縁がないように思われます。
しかし、実は「技術書」の系譜には、19世紀の出版物も含まれています。19世紀の英国では、家事使用人を雇用したい中流階級や、そうした中流階級の過程て働きたい家事使用人向けの「家政マニュアル本」(手順を再現できるノウハウ本・技術書)が数多く出版されていました。料理のレシピ本も、このジャンルに含まれており、この時期に発展しています。
中には中流階級の主婦にとって「バイブル」と呼ばれたベストセラーもありました。時ははまさに、「技術書」の時代でした。
そうした点を親和性を踏まえ、「19世紀家政マニュアル」「英国メイドマニュアル」、そして「執事のマネジメント本」などの同人誌で参加しました。
「技術書典」は同人誌の内容が「技術書」のイベントで頒布していいかの審査があるため、当選しているということ、そして頒布OKが出ている点では、主催公認ということになります。とはいえ、技術書典は「IT・テクノロジー系」が中心で、やや場違い感がありました。
以下、公式サイトのFAQからの抜粋・引用です。
技術書典における「技術書」とは、「ITや機械工作とその周辺領域について書いた本」を指します。ソフトウェア、ハードウェア、開発環境、コンピュータサイエンスから、その他科学・工学全般などのジャンルを対象としています。
技術書典(ぎじゅつしょてん)は新しい技術に出会えるお祭りです。
技術書典は「いろんな技術の普及を手伝いたい」という想いではじまりました。技術書を中心として出展者はノウハウを詰め込み、来場者はこの場にしかないおもしろい技術書をさがし求める、そんな技術に関わる人のための場として我々は技術書典を開催しています。
会場でも「家政マニュアル本やメイドマニュアル本は技術書だよ」という説明の方が、実際の内容説明よりも多く、「ちょっと無理だったかも」と、その後に開催された「技術書典16」は参加を見合わせました。
ところが、今回はあらたに「働くをテーマにした技術書」という広がりを提示していただいたので、そちらの方で参加することにしました。
英国メイド研究のメインテーマこそ、「働く」だからです。
読むと何か何が得られるか?
人はいつの時代も仕事をしています。そうした仕事に必要な技術について、自身が経験していない領域であっても「マニュアル本(=技術書)」を読むことで、そのノウハウを習得し、自己の技術としていくことができます。
前述したように、私が技術書典に持ち込む英国メイド同人誌は、まさにこのような「当時に刊行され、当時の人々が欲した技術・知識のノウハウ」が蓄積された「家政マニュアル本」の翻訳・解説を中心としています。
過去の技術・知識を学ぶことで、現代に応用することや、現代を相対化してより良い改善を行えることを目指すということで、「100年以上前の働く先輩だった人たちの声・技術」を伝えたいと思います。
技術書典に出品している同人誌
英国メイド同人誌は「働く技術書」である
ということで、以下、出典した同人誌を紹介します。
英国メイドになりたい・雇用したい人向け
19世紀英国ヴィクトリア朝のメイドになりたい・雇いたい人向けの本です。家政を担うメイドになる「少女」のために書かれた19世紀のマニュアル本の翻訳で、3軸の内容を載せています(雇用主が読み、メイドをトレーニングしていくための本)。
・メイドに必要なマナー本(礼儀作法含む)
・メイドの業務に必要な実務マニュアル(作業手順書)
・当時の弁護士が書いた要主向け法律ガイド
ひとつの職業について、「初めてその職に就く人」や「初めて雇用する人」向けに書かれている点がユニークであり、「働く」「仕事」についての技術の系譜に属するものです。
19世紀の雇用についての法律ガイドを読むと、現代の労働法にもその精神が引き継がれているのを感じるとともに(退職・解雇の場合は、1ヶ月前に通知を行う。雇用主都合の解雇では1ヶ月分の給与を出すなど)、「果たして現代の労働環境は改善していると言えるのか?」と思う点もあるでしょう。
現代に学べる過去の時代のマネジメント
実在した英国執事7人の職務経歴を中心に人物紹介を行います。そこから実際の経歴をどのように築いていったのかが垣間見えます。
執事は人事権を持ち、また主人にレポートする中間管理職でもあります。そうした執事の仕事やマネジメントを知ることで、時代を超えた「働きやすさ」「働きやすさ」を学ぶきっかけとなる実例に富んだ本となります。
マネジメントは時代を超えます。
家政マニュアル本の歴史と、使用人のジョブディスクリプションの本
この本は19世紀に大量に出版された「家政マニュアル本」の歴史を古代ギリシアの「家政書」までさかのぼりつつ、主に16世紀以降に活版印刷が普及してからの出版事情に触れながら、どのように「家政マニュアル本」が発展していったのかを出版された本を紹介しながら解説します。
人類の生活水準の向上とともに、次第に家政は複雑化し、また
「なり手不足」に直面した業界の労働環境改善のドキュメント事例
本書は1916年に出版された「改善のための政策提言」といえる報告書を翻訳したものです。
1910年代、英国メイドの雇用環境は変化し、「なり手不足」が社会問題化しました。労働環境が悪く、産業の発展によってより良い職場・労働環境で働ける機会が増えていたからです。
そうした産業の問題点・課題を、数百名の雇用主と使用人たちへヒアリングを行うことで抽出し、改善につながる「理想」を提案する報告書となります。
100年以上前の報告書にもかかわらず、文章は構造化されており、労働についての定量・定性のデータもあり、現代のドキュメンテーションの参考にもなるでしょう。
【審査中】過去の働いた人々の生の声を知る(いい話系)
『MAID HACKS』は、主に19世紀英国ヴィクトリア朝に生まれて20世紀前半までに活動した「実在したメイド(執事や他の使用人含め)」が語った言葉を資料本・自伝などからエピソードを抽出し、彼女たちが生きて過ごした時間や世界を描き出して伝えることを目指した本です。
134のエピソードから、彼らが何を思い、どのように働いていたのかをお伝えします。
100年以上前の英国メイドたちがどのように「労働」を捉え、また働いていたのか? そうした時代が異なる労働環境を知ることは、現代を相対化することにつながるため(どこが変わり、どこが変わっていないのか)、働く気づきとなれば幸いです。
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