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【英国旅行記】2023年 サマセット・ハウス(その歴史、コートルード・ギャラリー、建物のガイドツアー、ネルソン階段)
サマセット・ハウスへ
この日(火曜日)は朝からウェストミンスター・アビーに赴き、歩き、そして交通博物館を経て、夕方ぐらいにサマセット・ハウスへ辿り着きました。
訪問目的はこの建物の一角の美術館コートルード・ギャラリーに来ました。
サマセット・ハウスにはコートルード・ギャラリーがあり、友人たちと初めて英国に来た2004年に訪問した場所なので、実に20年ぶりとなります。この日はサマセット・ハウスの中庭がスケートリンクになっていました。冬の名物らしいです。
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サマセット・ハウスとはなんぞや、といいますと、18世紀後半に建築家ウィリアム・チェンバーズによって設計された、新古典主義非常に壮大な建物であり、官公庁の庁舎として使われました。現代は建物の運営団体により、文化発信センターとして使われています。コートルード・ギャラリーはこの一角にあります。
19世紀からこのサマセット・ハウスには、英国民の戸籍を管理する政府機関「戸籍本署」がありました。日本語だと「戸籍本署」の訳が使われることが多いです。
私はドラマ『名探偵ポワロ』が大好きなので、そのドラマ経由でこの建物を知りましたが、「サマセット・ハウスに行く」とは「戸籍を調べに行く」こととして使われていました。ポワロ自身や秘書のミス・レモンがここで容疑者の結婚歴を調査し、殺人の動機を突き止めることが何度かありました。
この戸籍本署は国勢調査の実施主体でもあり、この職場で最も有名な人物は統計学者でもあったウィリアム・ファーです。そしてファーが協力を惜しまなかったフロレンス・ナイチンゲールも、戸籍本署にある様々な統計データを社会改革に最も活用したひとりでした。
この点では、ナイチンゲールゆかりの地でもあります。
サマセット・ハウスの歴史
このサマセット・ハウスの歴史は、この後の見学にも関わるので、英語版wikipediaを参照しながら要約します。
16世紀
サマセット公爵エドワード・シーモアが宮殿として建設。
シーモアが処刑され、王室が所有者になる。
後のエリザベス女王が、異母姉メアリー1世の治世の際に住んでいた。
17世紀
ジェームズ6世の妻アン・オブ・デンマークが住み、改築。この時、デンマーク・ハウスの名前になる。
チャールズ1世に与えられ、その妻ヘンリエッタ・マリアが改築。
イングランド内戦時、議会軍の本部として使われる。護民官オリバー・クロムウェルの遺体もここに安置。
チャールズ2世による王政復古後はその母ヘンリエッタ・マリアが再び住んでいたが、チャールズ2世の妻キャサリン・オブ・ブラガンザが引き継ぐ。
18世紀
王室の利用も途絶えて長い衰退時期に入るが、18世紀半ばから公共建築物への需要が高まったことから、庁舎としての利用のための再建築が進む。
1775年の法律で庁舎利用が決まり、以下が利用することに。
財務・税
塩局、印紙局、税務局、宝くじ局、呼び売り商人・行商人局、ハックニー馬車局、国王土地局測量官、会計監査局、財務記録管理局。
軍
海軍局、海軍戦勝局、陸軍兵器局。
王室財産管理
英国王室領コーンウォール公領とランカスター公領のオフィス。
王のバージマスターハウス、バージハウス。「barge」は「艀(はしけ)で、水深が浅い河川で荷物のやり取りをする船を指す。この王室所有のはしけ(儀礼用含む)の管理や保管をした責任者と、そのオフィスと思われる。
学術・芸術
18世紀の間にロイヤル・アカデミー(美術)、ロイヤル・ソサイエティ(学術)、アンティクァリーズ・ソサイエティ(考古協会)も利用する。
王立アカデミー展はこのサマセット・ハウスで開催される。
19世紀には地質学会、王立天文学会も入居。
なお、19世紀半ば以降、上記協会はバーリントン・ハウスへ移転。
19世紀
戸籍本署が創設され、ここを庁舎として1970年まで利用する。
ヴィクトリア朝の間に新しいウィング部分が増築される。
20世紀
1989年に、コートルード・ギャラリーがここに移転してくる。
1932年に実業家で美術品コレクターのサミュエル・コートールドがコートルード美術協会を創設し、所蔵品を寄贈(没後はコレクションを遺贈)。
それまで、この美術コレクションはHome House(ロバート・アダム建築のロンドンにあるタウンハウスで、今は会員制クラブが利用している)にあった。
というところで、「ハウス」と言いながらも「家」ではなく、「庁舎」として建てられた建物であることがお分かりいただけたかと思います。
何よりも、でかいのです。Google Mapでの空撮です。中庭を取り囲むように建物がコの字型の建物を軸とした正方形の本体と、左(西)に長いテラスハウスがウィングのように増築されています。
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ただ、左右対称となりそうな右(東)のウィングと思える場所には、キングス・カレッジ・ロンドンがあります(このカレッジもナイチンゲールと縁があり、ナイチンゲールの名を冠する看護・助産学部がある)。
元々はサマセット・ハウスのために、建築家ウィリアム・チェンバースが増築しようとしたものの、コストが理由で断念し、その土地がキングス・カレッジ・ロンドンのストランド・キャンパスが建築されました。
デザインはチェンバースの設計に沿うことが条件とのことで、上のイメージのように「左右対称」に見えますが、実際は別建物ということで。
コートルード・ギャラリー(主に階段)
コートルード・ギャラリーのコレクションは日本でも美術展が開催されるぐらいに著名なものが多くあり、印象派のコレクションが有名です。
ここまでにサマセット・ハウスの歴史を長々と記しており、かつまだ本編に辿り着いていないので、駆け足で。
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ちなみに、この立て看板の下段に「HISTORICAL HIGHLIGHTS TOUR」があることを知りました。サマセット・ハウス内部を歩ける「ガイドツアー」があります。
公式サイトで15:45回を予約し、チケットオフィスでチケットをもらいます。
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階段
ただ、屋敷ダイスキーの私としては、この建物内部の階段の美しさがたまらないのです。
1階。ここを上がるとギャラリーへ。
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建物が狭い中で階段を通しているので、回る回る。
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上のフロア。天窓にようやく近づく。
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階段から見るギャラリー。
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ギャラリーから見る階段。
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踊り場から見る同じフロアの階段。見どころ多すぎ。
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階段は下を見ても素敵なのです。
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裏階段なども。
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美術品
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