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小説 超次元バトル:5億年後の孫悟空 - ブラックフリーザの絶望、そしてビースト悟飯の覚醒


第1話: 禁断の誘い - 5億年と一瞬の選択

破滅へのカウントダウン - フリーザの甘い囁き

宇宙の辺境、岩がゴロゴロと転がる不毛の星。悟空はいつものように修業に励んでいた。重力室の中で、息を切らしながらも拳を繰り出す。オレンジ色の道着が汗で濡れ、逆立った黒髪が風もないのに揺れている。

「ハァ…ハァ…まだまだ、こんなもんじゃ…!」

その時、悟空の目の前に突然、空間が歪み、漆黒の宇宙船が現れた。船体には見慣れたフリーザ軍の紋章が刻まれている。

「おや、おや。孫悟空さん、こんなところで必死に修行ですか? ご苦労なことです」

船から降りてきたのは、黒と金色の異様な体色を持つフリーザ、ブラックフリーザだった。相変わらずの丁寧な口調だが、その眼光は氷のように冷たい。

「フリーザ! また何か企んでるのか?」

悟空は身構えた。ブラックフリーザの圧倒的な気は、今まで感じたどの敵よりも強大だった。

「まあ、そう警戒なさらないでください。今日はあなたに、とっておきの提案があって参ったのですよ」

ブラックフリーザは不気味な笑みを浮かべた。その手には、小さな銀色のボタンが握られている。

「これは…?」

「これは『5億年ボタン』とでも呼びましょうか。押せば5億年の間、精神だけが特別な空間に送られ、修行に明け暮れることができるのです。そして、現実世界ではほんの一瞬しか経過しません」

悟空は眉をひそめた。「5億年…だと? そんなことができるのか?」

「ええ、可能です。そして、その代償として…あなたはとてつもない力を手に入れることができるでしょう。今のあなたでは到底届かない、その先の領域に…」

ブラックフリーザの声は甘く、まるで悪魔の囁きだった。

「ただし、5億年の間、あなたは完全に孤独です。誰とも会えず、誰とも話せず、ただひたすらに己と向き合い、修行を続けることになる。記憶はリセットされますが、その経験はあなたの奥底に刻まれ、計り知れない力となるでしょう」

ブラックフリーザはボタンを悟空に差し出した。「さあ、孫悟空さん。どうしますか? このボタンを押せば、あなたは間違いなく宇宙最強の存在となるでしょう。しかし、その代償は…あまりにも大きい」

運命の分かれ道 - 悟空、究極の選択を迫られる

悟空はブラックフリーザが差し出したボタンをじっと見つめた。5億年…。想像もつかないほど長い時間だ。家族や仲間たち、そして何よりも大切な戦いを、たった一瞬のために失ってしまう。

「そんなこと、オラにはできねえ!」

悟空はきっぱりと断った。

「ふむ…やはりそうですか。しかし、考えてもみてください。今のままでは、あなたはいずれ限界を迎えるでしょう。その時、あなたは何を守れますか? もしかしたら、全てを失うかもしれませんよ?」

ブラックフリーザの言葉は、悟空の心をざわつかせた。確かに、ブラックフリーザの力は圧倒的だった。今のままでは、いつか守りたいものを守れなくなるかもしれない。

「…オラは、もっと強くなりてえ。けど…」

悟空は苦悩した。その様子を見て、ブラックフリーザはさらに言葉を重ねる。

「安心してください。5億年の間、あなたは孤独ではありますが、安全は保障されています。それに、記憶がリセットされるということは、苦痛も忘れることができるということ。まるで、夢を見ているかのような感覚でしょう」

ブラックフリーザは狡猾に微笑んだ。「さあ、孫悟空さん。決断の時は迫っています。このまま現状維持を選ぶか、それとも、一瞬の代償で永遠の力を手に入れるか…」

その時、悟空の脳裏に、家族や仲間たちの顔が浮かんだ。悟飯の優しい笑顔、ベジータの闘志に満ちた眼差し、ピッコロの冷静な表情…。

「…ベジータは…どうする?」

悟空は絞り出すように尋ねた。

「ベジータですか? 彼は彼で、何か考えているようですよ。まあ、あなたとは違う選択をするかもしれませんね」

ブラックフリーザは肩をすくめた。その言葉を聞いた悟空は、さらに悩んだ。ベジータはプライドが高く、絶対に自分に負けたくないと思っているはずだ。自分が5億年ボタンを押せば、ベジータはどんな行動に出るだろうか。

悟空は覚悟を決めた。

「フリーザ…オラは…」

孤独の始まり - 5億年ボタン、ついに押される

悟空は深呼吸をした。覚悟を決めた目は、迷いを振り払っていた。

「オラは…押す!」

悟空はブラックフリーザからボタンを奪い取った。その瞬間、ブラックフリーザの口角がニヤリと歪んだ。

「よくぞ決断しましたね、孫悟空さん。後悔はさせませんよ」

悟空はボタンを強く握りしめた。

「オラは、必ず強くなって帰ってくる。そして、みんなを守る!」

悟空はそう叫び、ボタンを力強く押し込んだ。

瞬間、強烈な光が悟空を包み込んだ。視界は真っ白に染まり、意識が遠のいていく。

「さようなら、孫悟空さん。5億年後、またお会いしましょう」

ブラックフリーザの声が、遠くで聞こえた気がした。

そして、悟空の意識は完全に途絶えた。

不毛の星には、ブラックフリーザだけが残された。

「クックック…これで計画は最終段階に入った。5億年後…いや、一瞬後が楽しみですね」

ブラックフリーザは満足げに笑い、宇宙船に乗り込んだ。

宇宙船は漆黒の闇に消えていった。

遠ざかる宇宙船を見送りながら、悟空は5億年の孤独の世界へと旅立った。
後に残されたのは、悟空の消えた場所にできた、わずかなクレーターだけだった。


次の瞬間、悟空は意識を取り戻した。

「あれ…? オラ、一体…」

悟空は自分がどこにいるのかわからなかった。周りを見渡すと、そこは見慣れたカプセルコーポレーションの重力室だった。

「悟空さーん! 大丈夫か!?」

聞き慣れた声がした。悟空が振り返ると、ブルマが心配そうな顔で駆け寄ってきた。

「ブルマ…? 一体、何が…」

悟空は混乱していた。最後に覚えているのは、ブラックフリーザに5億年ボタンを渡されたこと。

「何って、あんたが突然気を失ったのよ! 一体何があったの?」

ブルマは悟空に詰め寄った。

「気を失った…? でも、オラは…」

悟空は自分の記憶を探った。しかし、そこには何もない。まるで、真っ白なキャンバスのように。

「オラ…何も思い出せねえ…」

悟空は愕然とした。5億年の経験が、完全に消え去ってしまったのだ。

その時、悟空の心に、かすかな違和感がよぎった。まるで、心の奥底に、黒い影が潜んでいるかのように。

悟空は何も言わずに、ただ立ち尽くしていた。

次回、第2話: 虚無の牢獄 - 終わりなき時間の迷宮

悟空は失われた記憶を取り戻せるのか? そして、ブラックフリーザの真の目的とは?
次回のドラゴンボール超にご期待ください!

第2話: 虚無の牢獄 - 終わりなき時間の迷宮

無限回廊 - 悟空、孤独と向き合う

「…ここは、一体どこなんだ?」

悟空は茫然と立ち尽くしていた。周りは白い壁がどこまでも続く、果てしない回廊。さっきまでブラックフリーザとの激戦を繰り広げていたはずなのに、気がつけばここにいた。5億年ボタンを押した影響だろうか? 理解が追いつかない。

「オラ、本当に5億年もここにいなきゃなんねえのか? そんなの、修行どころじゃねえぞ…」

不安を押し殺すように、悟空は走り出した。ひたすらに、前へ、前へと。しかし、どれだけ走っても景色は変わらない。白い壁、白い床、白い天井。ただただ、それらが永遠に続いているだけだ。

最初は気にも留めなかった静寂が、徐々に悟空の心を蝕んでいく。声を出しても、自分の足音しか聞こえない。話し相手もいない。ただ、時間だけが無限に過ぎていく。

(オラ、こんなの耐えられねえ…! 誰か、誰かいないのか!?)

悟空は何度も叫んだ。しかし、返ってくるのは空虚な沈黙だけだった。時折、ブラックフリーザとの戦いの記憶がフラッシュバックする。あの強烈な力、そして、仲間たちを守れなかった悔しさ。

「クソッ! オラはもっと強くならねえと…! こんなところでくたばってたまるか!」

孤独と戦うように、悟空は拳を握りしめた。しかし、その目は、徐々に光を失いつつあった。5億年という絶望的な時間が、彼の精神をじわじわと蝕んでいく。

精神崩壊の足音 - ベジータ、悪夢に囚われる

一方、ベジータは、悪夢の中に囚われていた。

破壊された惑星ベジータ。死んでいったサイヤ人たち。そして、フリーザの嘲笑。

「カカロット…! 貴様さえいなければ…! オレが、オレ様が最強だったのに…!」

ベジータは、悟空への嫉妬と憎悪に苛まれていた。5億年ボタンを押したのは、悟空に勝つための力を手に入れるため。しかし、その代償はあまりにも大きかった。

悪夢は繰り返される。フリーザに跪く屈辱、悟空に敗北する無力感。ベジータのプライドは、粉々に砕け散っていく。

「やめろ…! オレは負けない…! オレは…最強だ…!」

ベジータは苦悶の表情を浮かべながら、悪夢の中で必死にもがいていた。しかし、その抵抗も虚しく、彼は深淵へと引きずり込まれていく。

(カカロット…! お前を…必ず…!)

ベジータの心は、憎悪と狂気に染まり始めていた。

存在証明の果て - ピッコロ、自我を保つための苦闘

ピッコロは、静かに瞑想していた。しかし、その精神は、激しい嵐に見舞われていた。

5億年という途方もない時間の中で、彼は己の存在意義を問い続けていた。ナメック星人としての使命、悟飯との絆、そして、地球を守るという誓い。

「わたしは…何のために存在する? この孤独の中で、わたしは…何者なのだ?」

ピッコロは、自己存在の根幹を揺さぶられるような感覚に襲われていた。記憶は徐々に薄れ、自我が崩壊していく。

(いかん…! 自我を失っては…意味がない…! わたしは…ピッコロだ…! 悟飯を守る…!)

ピッコロは、必死に自我を保とうと努めた。記憶を呼び起こし、瞑想を続ける。しかし、5億年という時間は、あまりにも長すぎた。

(悟飯…聞こえるか…? わたしは…まだここにいる…)

ピッコロの声は、虚空に消えていく。彼の自我は、徐々に薄れていく灯火のように、消え入りそうになっていた。


果たして悟空、ベジータ、そしてピッコロは、5億年の孤独に打ち勝ち、自我を保つことができるのか? そして、彼らを待ち受ける未来とは?

第3話: 目覚めと代償 - 失われた記憶、残された爪痕

虚無からの帰還 - リセットされた世界で

「…ここは?」

悟空は目を覚ました。見慣れたカプセルコーポレーションの研究室だ。だが、何かがおかしい。妙に静かで、埃っぽい。窓の外は夕焼けに染まっているが、その色合いがどこか不自然だ。

「ブルマ、オラは一体…」

誰もいない。悟空は部屋を出て、廊下を歩き出した。かつて賑やかだった廊下は、今はひっそりと静まり返っている。廊下の壁には、見慣れないポスターが貼られていた。知らないアーティストのライブ告知や、企業のロゴなど、悟空の記憶にはないものばかりだ。

「一体、何が…」

悟空は不安を覚えながら、外に出た。街の景色は一変していた。空には巨大な広告塔が浮かび、車は空を飛んでいる。見慣れない建物が立ち並び、行き交う人々も、どこか無機質に見えた。まるで、別の星に来てしまったかのようだ。

(オラ、一体何があったんだ…? あのボタン…まさか…)

悟空は、胸に言いようのない不安を抱きながら、かつての自宅へと向かった。

歪んだ日常 - 悟飯、変わってしまった仲間たちに困惑

悟飯は大学の研究室で、頭を抱えていた。5億年の孤独を経験した悟空が帰ってきた後、世界はどこか歪んでしまった。

「一体、何が起こったんだ…父さん?」

父、悟空は以前と変わらず明るく元気だが、時折、深い悲しみを湛えた表情を見せる。そして、かつての仲間たちの様子もおかしい。

ピッコロは、まるで別人だ。以前は厳しくも優しい師だったが、今は冷徹で、常に何かを警戒している。悟飯に接する態度もよそよそしく、まるで他人行儀だ。

「悟飯、君の研究は興味深い。だが、あまり深入りしない方が身のためだ」

ピッコロはそう言い残し、研究室を後にした。その目は、悟飯に何かを隠しているようだった。

(ピッコロさん…一体、何を知っているんだ?)

そして、最も変わってしまったのはベジータだった。かつては悟空をライバル視し、常に高みを目指していたベジータは、今はすっかり覇気を失い、ただ無気力に日々を過ごしている。

「カカロット…お前が…」

ベジータは、悟飯を見るなり、何かを言いかけたが、すぐに言葉を飲み込んだ。その目は、深い絶望に染まっていた。

悟飯は、変わり果てた仲間たちに困惑していた。彼らの身に一体何が起こったのか? そして、5億年の孤独は、父に何をもたらしたのか?

忘却の痛み - ベジータ、心の奥底に残る黒い影

ベジータは、重い足取りでキャピタル・シティの街を歩いていた。かつては自身の力を誇示するために闊歩したこの街も、今はただ無機質なコンクリートの塊にしか見えない。

(何だ…この胸騒ぎは…)

5億年の孤独を経験した悟空が帰還して以来、ベジータは悪夢にうなされる日々を送っていた。夢の中では、終わりのない虚無が広がり、孤独と絶望がベジータの心を蝕む。

記憶はリセットされたはずなのに、心の奥底には、黒い影が残っている。それは、5億年の孤独が生み出した、拭い去れない傷跡だった。

「クソッタレ…一体、何が…」

ベジータは、頭を抱え、蹲った。激しい頭痛がベジータを襲う。脳裏には、断片的な映像が浮かび上がってくる。孤独、絶望、そして、狂気に染まった自身の姿…

(まさか…オレは…)

ベジータは、自分が5億年の孤独の中で、何をしでかしてしまったのか、恐ろしくて考えられなかった。しかし、心の奥底に眠る黒い影は、確実にベジータを蝕み始めていた。

その時、ベジータの脳裏に、フリーザの姿が浮かび上がった。

「フリーザ…!?」

ベジータは、衝撃を受けた。なぜ、今、フリーザの姿が頭に浮かんだのか? 5億年の孤独とフリーザ…その二つが、何か深く結びついているような気がした。

ベジータは、重い足取りで、ブルマの元へと向かった。

「ブルマ…フリーザについて、何か知っていることはないか?」

ベジータの問いかけに、ブルマは怪訝な表情を浮かべた。

「フリーザ? 何かあったの?」

ブルマの言葉に、ベジータは確信した。やはり、何か隠されている。

「…いいや、何でもない」

ベジータはそう言い残し、その場を後にした。背後から、ブルマの心配そうな声が聞こえたが、ベジータは振り返らなかった。

(オレは…一体、何に巻き込まれているんだ…?)

ベジータは、暗い夜空を見上げながら、一人、呟いた。

そして、その夜、ベジータは再び悪夢にうなされた。今度は、フリーザがベジータに語りかけてくる夢だった。

「ベジータさん…お久しぶりですね。あなたに、とっておきのプレゼントを用意しましたよ…」

夢の中で、フリーザは不気味な笑みを浮かべていた。

(次回、第4話: 異形の記憶 - 覚醒の兆し、ビーストの咆哮。悟空の記憶が蘇り、フリーザが動き出す時、眠れる力が目覚める!)

第4話: 異形の記憶 - 覚醒の兆し、ビーストの咆哮

デジャブの正体 - 悟空、断片的な記憶に翻弄される

太陽が眩しいほどに輝くカプセルコーポレーションの庭。悟空は、いつものように重りをつけた道着を身に着け、クリリンと手合わせをしていた。しかし、その動きはどこかぎこちない。

「オラ、なんだか変な感じがするんだ…。」

悟空は首を傾げ、額に手を当てた。

クリリンが心配そうに顔を覗き込む。「どうしたんだ、悟空?体調でも悪いのか?」

「いや、体調は悪くねえ。ただ、こう… デジャブってやつか? 同じ光景を見たことがあるような、ないような…。」

その時、悟空の脳裏に一瞬、黒と金色の禍々しい姿がよぎった。それは一瞬の閃光のようで、すぐに消え去ってしまう。

「ブラック…フリーザ…?」

悟空は呟いた。その名前を口にした途端、激しい頭痛が彼を襲う。

「悟空! 大丈夫か!」

クリリンが駆け寄り、悟空の体を支える。

「…大丈夫だ。心配かけちまったな。ちょっと考え事をしてただけだ。」

悟空はそう言いながらも、心の奥底にある不安を拭い去ることができなかった。5億年ボタン…あの時の記憶が、断片的に蘇ってきているのか? なぜ今になって?

歪む現実 - フリーザ、再び動き出す

その頃、宇宙の片隅にある惑星。漆黒に染まった宇宙船の中で、フリーザは不気味な笑みを浮かべていた。

「ホッホッホ… 素晴らしい。5億年の時を経て、あのサイヤ人どもも記憶の欠片に翻弄されているようですね。」

フリーザの傍らには、かつてザーボンとドドリアが立っていた場所に、見慣れない異形の戦士たちが控えている。

「全ては計画通りです、フリーザ様。奴らの記憶が完全に覚醒する前に、叩き潰しましょう。」

フリーザは満足げに頷いた。「ええ、そうですとも。今度こそ、このフリーザが宇宙の頂点に立つ! あの屈辱は、決して忘れはしませんよ… 孫悟空… ベジータ… そして、孫悟飯…。」

フリーザは、ゆっくりと拳を握りしめた。あの時、ビーストと化した孫悟飯の力は、フリーザですら圧倒するものだった。だからこそ、完全に記憶が戻る前に、抹殺する必要がある。

怒りのビースト - 悟飯、眠れる力が目覚める瞬間

地球では、悟飯がパンと共に公園で遊んでいた。パンの笑顔が、悟飯の心を癒す。しかし、その平穏な時間も長くは続かなかった。

突然、空に異様なエネルギー反応が現れた。それは、かつてセルを倒した時よりも、遥かに強大なものだった。

「まさか…!」

悟飯は、パンを庇いながら空を見上げた。

「パパ、どうしたの?」

パンが不安そうに尋ねる。

「大丈夫だ、パン。パパが守るから。」

悟飯は優しく微笑み、パンを抱きしめた。しかし、その心には、かつてないほどの緊張が走っていた。

その時、悟飯の脳裏にも、断片的な記憶が蘇る。それは、漆黒のフリーザと、絶望に満ちた宇宙の光景。そして、自身の内なる力… ビーストの咆哮。

「これは…! 思い出した…!」

悟飯の体から、凄まじいオーラが溢れ出す。それは、かつてないほど強大なエネルギーだった。

「パン、少しだけ、パパに力を貸してくれ。」

悟飯はパンに微笑みかけ、その額にそっと手を触れた。パンの純粋なエネルギーが、悟飯の力を増幅させる。

次の瞬間、悟飯の髪は白く輝き、目は鋭い光を放った。全身から溢れ出るエネルギーは、空間を歪ませるほどだった。

「グオオオオオオ!」

悟飯は、天を仰ぎ、咆哮を上げた。それは、眠りから覚めたビーストの咆哮だった。

(第4話 終了。次回、それぞれの思惑が交錯し、物語は新たな局面へ…! 悟飯の覚醒は、果たして希望となるのか、それとも…)

第5話: 裏切りの連鎖 - 陰謀の影、真実を求めて

暗躍する影 - フリーザ、巧妙な罠を仕掛ける

広大な宇宙空間に浮かぶ、フリーザの宇宙船。漆黒の船内、ひときわ豪華な玉座にブラックフリーザが鎮座していた。その口元には、不気味な笑みが浮かんでいる。

「ホッホッホ… 5億年の孤独から帰ってきたというだけで、皆、浮かれすぎです。孫悟空… あなたには、最高の絶望をプレゼントしてあげますよ。」

モニターには、悟空、ベジータ、悟飯、そしてピッコロの姿が映し出されている。フリーザは指を鳴らし、側近に指示を出した。

「例の計画を実行に移しなさい。奴らの絆を、根こそぎ断ち切るのです。」

側近は恭しく頭を下げ、姿を消した。フリーザは再び笑みを浮かべる。「さあ、ゲームの始まりです…」

惑星ベジータの跡地に近い星。かつてフリーザによって破壊された星の残骸が、今もなお宇宙を漂っている。その付近に、不気味なエネルギー反応が検知されていた。

疑惑の矛先 - ピッコロ、疑心暗鬼に陥る仲間たち

神殿。悟空、ベジータ、悟飯、そしてピッコロが集まっていた。重苦しい空気が漂っている。

「なんだか嫌な予感がするな…」悟空がポツリと呟いた。5億年ボタンの件以来、心の奥底に拭いきれない不安が渦巻いている。

ベジータは腕組みをして、苛立ちを隠せない様子だ。「カカロット、貴様らしくもない。何をもたもたしているんだ。」

悟飯は落ち着いた声で言った。「父さん、ベジータさん、落ち着いてください。何かあったとしても、みんなで協力すれば乗り越えられます。」

しかし、ピッコロだけは違った。彼は鋭い眼光で周囲を見渡し、静かに口を開いた。「…警戒すべきは、外部の敵だけではないかもしれないな。」

悟空は怪訝そうに尋ねた。「どういう意味だ、ピッコロ?」

「あの5億年ボタンだ。あれが、何らかの形で我々に影響を与えている可能性がある。記憶がリセットされたとはいえ、潜在意識には何か残っているかもしれない…」ピッコロの言葉は、重く、そして鋭く、皆の心を突き刺した。

ベジータは激昂した。「何を言っているんだ、ナメック星人!貴様、オレたちを疑っているのか!」

「疑っているのではない。可能性を考慮しているだけだ。あのボタンを押したことで、我々の誰かが、フリーザに操られているかもしれない…」ピッコロは静かに、しかし強い意志を持ってそう言った。

その言葉を聞いた悟飯は、ハッとした表情を浮かべた。「まさか… 父さん…?」

悟空は驚いた顔で悟飯を見た。「悟飯、何を言ってるんだ?オラがフリーザに操られてるなんて、ありえないぞ!」

「でも… あの時、父さんは少し様子がおかしかったような気が…」悟飯は戸惑いながらも、正直な気持ちを打ち明けた。

緊迫した空気が、さらに張り詰める。疑心暗鬼の念が、徐々に仲間たちの間を覆い始めていた。

決別の時 - 悟空とベジータ、互いの道を歩む

「もういい… くだらん茶番だ」ベジータはそう言い放つと、神殿を後にしようとした。

悟空は慌ててベジータを呼び止めた。「ベジータ、どこへ行くんだ!」

「貴様らと一緒では、強くなれん。オレはオレ自身の力で、フリーザを倒す!」ベジータは振り返らず、そう言い残して飛び去って行った。その背中は、どこか悲しげにも見えた。

悟空は悔しそうに拳を握りしめた。「ベジータ…」

ピッコロは静かに言った。「今は、そっとしておくのが良いだろう。ベジータは、自分のプライドと戦っているのだ。」

悟飯は心配そうに悟空を見た。「父さん、大丈夫ですか?」

悟空は笑顔で答えた。「ああ、大丈夫だ。ベジータのことだから、きっとすぐに戻ってくるさ。それよりも、オラたちはオラたちで、やるべきことをやらねえとな。」

しかし、その笑顔の奥には、深い悲しみが隠されていた。5億年ボタンの代償は、あまりにも大きすぎた。

悟空は決意を新たにした。「オラは、絶対にフリーザを倒す!そして、またみんなで笑い合える日が来るように、強くなるんだ!」

その時、悟空の脳裏に、断片的な映像が蘇った。それは、5億年の孤独の中で見た、悪夢のような光景だった…。

(続く)

第6話: 最終決戦への序曲 - 覚悟の力、未来を切り開く

それぞれの決意 - 悟空、再び最強を目指す

焼け野原が広がる荒野。瓦礫が散乱し、かつての美しい自然は見る影もない。悟空は、その中心に一人、膝をついていた。

「ちくしょう…! オラ、また負けちまったのか…」

ブラックフリーザとの圧倒的な力の差を前に、身勝手の極意・極ですら通用しなかったのだ。5億年ボタンの悪夢が蘇る。たった一瞬で、5億年の孤独と虚無を味わった。しかし、今回は違う。仲間たちがいる。

「だけど…まだ終わっちゃいねえ! まだまだ強くなれるはずだ!」

悟空は立ち上がり、拳を握りしめた。

「あのブラックフリーザを倒すには、今のままじゃダメだ。もっと、もっと強くなって…オラ、限界を超えてみせる!」

悟空は、重い足取りで空へと飛び立った。向かう先は、時の部屋。あの一瞬と永遠が交錯する場所で、再び己を鍛え直す決意を固めたのだ。

「今度こそ、絶対に負けねえ!」

空に響き渡る悟空の叫びは、まるで決意表明のようだった。

プライドの炎 - ベジータ、過去の自分を超える

重力室の中、ベジータは汗だくになりながら拳を突き出していた。床はベジータの気弾によって抉られ、壁はひび割れていた。

「クソッタレ…! カカロットめ、またしても先を行きおったか!」

ブラックフリーザに敗北した悟空への焦燥感と、己の無力さへの怒りが、ベジータの体を突き動かす。

(あの時…5億年の時を無駄にしたのはオレだけではないはずだ。だが、カカロットはもう立ち上がっている…! ならば、オレも…!)

ベジータは、過去の自分を振り返った。プライドばかりが先行し、甘さがあったことを認める。しかし、今のベジータは違う。ブルマ、トランクス、ブラ…守るべきものができたのだ。

「フン…過去のオレよ、見ていろ! 今のオレは、お前とは違う! 家族を守るために、このプライドを、炎に変えて燃やすまでだ!」

ベジータは、さらに重力を上げた。全身に激痛が走る。しかし、その痛みを力に変え、ベジータはひたすら己を鍛え続けた。彼の瞳には、過去の自分を乗り越え、最強のサイヤ人になるという強い決意が宿っていた。

最後の希望 - 悟飯、未来を託される

悟飯は、荒廃した街を見下ろしていた。父親である悟空も、ライバルであるベジータも、ブラックフリーザに敗北した。人々は絶望し、未来への希望を失いかけている。

「僕に…一体何ができるんだろう…」

悟飯は自問自答する。学者を目指していた自分にとって、戦いは本来、望むものではなかった。しかし、目の前の光景が、悟飯の心を揺さぶる。

そこに、ピッコロが近づいてきた。

「悟飯、お前ならできる。お前は悟空やベジータとは違う。学者としての知識、そして、内に秘めたる潜在能力…それら全てが、お前だけの力になる」

ピッコロは、悟飯の肩に手を置いた。

「5億年の影響も少なからずあるだろう。だが、お前はそれを乗り越えられる。お前の優しさ、そして強さが、人々に希望を与えるんだ」

悟飯は、ピッコロの言葉にハッとした。自分にしかできないことがある。父やベジータのように、ただ強いだけではなく、人々の心を理解し、導くことができる。

「わかりました、ピッコロさん。僕にできることを、精一杯やります。未来を…希望を、諦めません!」

悟飯の瞳に、強い光が宿った。ビーストへと覚醒した時の記憶が蘇る。眠っていた力が、再び目覚めようとしていた。悟飯は、再び修行を始める決意を固めた。人々を、そして未来を守るために。

未来への希望を背負い、悟飯は新たな決意を胸に飛び立った。


夜空には、満月が輝いている。悟空、ベジータ、悟飯…それぞれの場所で、それぞれの決意を胸に、彼らは再び立ち上がろうとしていた。しかし、その頭上には、漆黒の影が忍び寄っていた。ブラックフリーザは、新たな陰謀を企てているのだ。

次話、第7話「永遠の輪廻 - 光と闇の果て、そして新たな始まり」。
全宇宙の命運をかけた最終決戦が、今、幕を開ける!

第7話: 永遠の輪廻 - 光と闇の果て、そして新たな始まり

ブラックフリーザ降臨 - 絶望的な力の前に

悟空、ベジータ、悟飯、ピッコロ。5億年ボタンを押した代償として、記憶を失い、リセットされた世界で辛うじて平和を保っていた。しかし、その均衡は崩れ去ろうとしていた。漆黒の宇宙空間に、異様なオーラを放つ黒と金の宇宙船が現れたのだ。

「ほーっほっほ…ご無沙汰しておりますね、サイヤ人の皆様。」

宇宙船から降り立ったのは、漆黒の体色を纏ったフリーザ、その名もブラックフリーザだった。以前よりも遥かに禍々しく、底知れない力を感じさせる。

悟空は眉をひそめ、「フリーザ…!?」と警戒心を露わにする。記憶はないはずなのに、本能が危険を察知していた。

「オレは、貴様を絶対に許さん…!」ベジータは怒りを露わにブラックフリーザを睨みつける。

「アラアラ、記憶がないはずなのに、随分と敵意むき出しじゃないですか。まぁいいでしょう。5億年もの孤独を味わった私が、今のあなた方など相手にするまでもありません。せいぜい、絶望を味わいなさい!」ブラックフリーザは不敵な笑みを浮かべた。

ブラックフリーザは指を一本立てただけで、周囲の星々が粉々に砕け散った。その圧倒的な力に、悟空たちは言葉を失う。悟飯は冷や汗を流し、ピッコロは分析的な視線を送るが、その表情は深刻だった。

「…こいつは、尋常じゃない…!」ピッコロは呟いた。

身勝手の極意・極 vs ブラックフリーザ - 全宇宙の命運を賭けた最終決戦

「オラも負けてらんねえぞ!」

悟空は迷わず「身勝手の極意」を発動させた。しかし、ブラックフリーザの力はそれを遥かに上回っていた。攻撃は全く通用せず、悟空は一方的に打ちのめされる。

「甘い甘い!そんな力では、私に傷一つ付けることすらできませんよ!」ブラックフリーザは余裕の表情で悟空を見下す。

ベジータは「ファイナルフラッシュ!」を放つが、ブラックフリーザはそれを片手で受け止めて握り潰した。

「無駄だ、ベジータ…!貴様のその程度の力では、到底私には敵わない!」

ベジータは歯を食いしばり、悟空と共に立ち向かうが、ブラックフリーザの圧倒的な力の前に、為す術がなかった。

「悟飯…!今は逃げろ!お前だけでも…!」悟空は瀕死の状態ながら、悟飯に叫んだ。

「父さん…!」悟飯は葛藤していた。しかし、父の覚悟、そして目の前の絶望的な状況を理解し、覚悟を決めた。

その時、悟飯の内に眠る力が爆発した。怒り、悲しみ、そして未来への希望。その全てが混ざり合い、悟飯の姿が変わり始めた。髪は白く逆立ち、瞳は獣のように鋭くなる。

「…うおおおおおおおおおお!!!!」

悟飯は咆哮と共に「ビースト」へと覚醒したのだ。

未来への遺産 - 戦いの終焉、そして新たなる世界の幕開け

ビースト化した悟飯は、驚異的なスピードでブラックフリーザに攻撃を仕掛けた。その一撃は、ブラックフリーザの頬をかすめる。

「な…なんだと…!?」ブラックフリーザは驚愕した。

悟飯は怒涛の攻撃を繰り広げ、ブラックフリーザを追い詰める。しかし、ブラックフリーザもまた、底力を見せ始める。

「いいでしょう。ここまで私を追い詰めたのは、貴様が初めてですよ。ならば、私も本気を出さざるを得ませんね!」ブラックフリーザはさらに力を解放し、そのオーラは宇宙を揺るがすほどになった。

激しい激闘が繰り広げられる中、悟空は再び立ち上がり、「身勝手の極意・極」へと進化を遂げた。銀色の髪を輝かせ、ブラックフリーザに最後の戦いを挑む。

悟空、悟飯、そしてベジータ。3人のサイヤ人の力を合わせ、ブラックフリーザとの最終決戦が始まった。星々が砕け散り、空間が歪むほどの激しい戦いの末、悟空の渾身の一撃がブラックフリーザを捉えた。

「…これで、終わりだ…!」

ブラックフリーザは消滅し、宇宙に平和が訪れた。しかし、戦いの代償は大きかった。悟空とベジータは限界を超え、力を使い果たしてしまったのだ。

「悟飯…あとは…頼んだぞ…」悟空は悟飯に未来を託し、静かに目を閉じた。ベジータもまた、悟飯に頷き、その背中を見送った。

戦いは終わった。しかし、それは新たな世界の始まりでもあった。悟飯は父たちの意志を継ぎ、この宇宙を守り抜くことを誓う。

そして、悟空とベジータの魂は、新たなる世界へと旅立っていった。彼らの戦いは終わりを迎えたが、その遺産は永遠に語り継がれるだろう。

(続く)

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