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時空異聞録:ヴォイニッチの迷宮と裸身の乙女たち-禁断の植物SFファンタジー


第1話: 始まりの異変:見慣れた日常の歪み

昼下がりの違和感 - ほむらは見慣れたはずの光景に、かすかな異質な気配を感じ取る。まどかとマミに注意を促すが…。

見慣れた街並み。午後の陽射しが優しく降り注ぎ、鳥のさえずりが心地よく響く。しかし、暁美ほむらの紫色の瞳は、その平和な光景の中に、微かな歪みを見出していた。

「…まどか、マミさん。少し、注意が必要です。」

ほむらは、隣を歩く鹿目まどかと、少し前を歩く巴マミに声をかけた。まどかはピンク色の髪を風になびかせ、心配そうな表情で振り返る。

「どうしたの、ほむらちゃん?何かあった?」

「ええ。…言葉では上手く説明できないのですが、この街の空気が、僅かに変わってきている気がします。」

マミは金髪の縦ロールを揺らしながら、軽く笑った。

「あらあら、ほむらちゃんたら。また何か難しいこと考えてるのね。大丈夫よ、何も変わってないわ。今日はケーキでも買って帰りましょう。」

マミの言葉に、まどかも笑顔を見せる。

「そうだね、マミさん!ほむらちゃんも、たまには甘いものでも食べて、リラックスしようよ!」

ほむらは、二人の笑顔を見つめながら、小さく首を振った。彼女には、この平和な日常が、脆くも崩れ去ろうとしているように感じられてならなかった。

「…油断は禁物です。警戒を怠らないでください。」

ほむらの言葉は、二人の笑顔に飲み込まれ、午後の穏やかな空気の中に溶け込んでいった。

88日の悪夢 - まどかが突如として異次元空間へ迷い込む。そこは見たことのない植物が支配する、おぞましい世界だった。

その日の夜。まどかはいつものように眠りについたはずだった。しかし、次に目を開けた時、彼女は全く見覚えのない場所に立っていた。

空は不気味な紫に染まり、足元には見たこともない異形の植物が生い茂っている。巨大なキノコのようなものがそびえ立ち、奇妙な音を立てて蠢いている。空気は重く、鼻をつくような異臭が漂っていた。

「…ここは、どこ?」

まどかは、白い魔法少女のドレスを震わせながら、周囲を見回した。不安と恐怖が、彼女の心を締め付ける。

突然、地面から伸びた蔓が、まどかの足に絡みついた。悲鳴を上げようとした瞬間、彼女の体は宙に浮き上がり、植物の奥へと引きずり込まれていく。

「助けて…!誰か…!」

まどかの叫びは、異形の植物たちのざわめきにかき消された。彼女は、まるで悪夢のような光景の中、ただただ絶望に打ちひしがれるしかなかった。
絡みつく蔓は締め付けを強め、ドレスを破り、肌を抉る。
痛みと恐怖に涙があふれ、まどかの意識は薄れていく…。

NOT BONSTEの啓示 - 絶望の中、まどかの耳に謎の声が響く。「お嬢ちゃん、助けて欲しかったら、この文字を解き明かすんだな。」

意識が遠のく中、まどかの耳に、微かな声が響いた。それは、まるで古びたラジオから聞こえてくるような、ノイズ混じりの男の声だった。

「…お嬢ちゃん、聞こえるか?絶望するな。まだ、道はある。」

まどかは、かすかに意識を取り戻し、声のする方へと顔を向けた。しかし、周囲には異形の植物が蠢いているだけで、誰の姿も見当たらない。

「誰…?どこにいるの?」

「…助けて欲しかったら、この文字を解き明かすんだな。」

声はそう言い残し、途切れた。同時に、まどかの脳裏に、見たこともない奇妙な文字が浮かび上がった。それは、まるで植物のツタが絡み合ったような、複雑な形状をしていた。

文字を見た瞬間、まどかの頭の中に、激しい痛みが走った。まるで、何かを無理やり詰め込まれたような感覚。しかし、同時に、その文字の意味が、微かに理解できたような気もした。

「…この文字を、解き明かす…?」

まどかは、痛みに耐えながら、目の前に広がる異形の植物たちを見つめた。彼女はまだ、この悪夢のような世界から抜け出す方法を見つけられずにいた。
しかし、謎の声の言葉は、彼女の心に、微かな希望の光を灯した。
そして、その希望は、同時に、大きな不安を呼び起こす。この文字を解き明かした先に、何が待っているのだろうか…?

次話予告

異次元空間に囚われたまどか。彼女を救うため、ほむらは独自の調査を開始する。そしてマミは、まどかの身に起こった異変に、言いようのない不安を覚えていた。
次回、時空異聞録:ヴォイニッチの迷宮と裸身の乙女たち-禁断の植物SFファンタジー
第2話:時空の作業服:異形の訪問者
「あんた、一体何者なの…?」

第2話: 時空の作業服:異形の訪問者

オイッ!という声 - 異次元空間でまどかがパニックになっていると、作業服姿の男が現れる。「お嬢ちゃん、落ち着け。君はもうすぐ帰れる。」

あたり一面、見たこともない奇妙な植物がうごめいている。巨大なキノコのようなものがニョキニョキと生え、花なのか虫なのか判別できないものが蠢いている。まどかは白い魔法少女のドレスを泥で汚しながら、ただただ震えていた。

「きゃああああ!」

悲鳴が、異質な空間に木霊する。自分が一体どこにいるのか、どうしてこんな場所にいるのか、何もわからない。ただ、得体の知れない恐怖が、まどかの心を締め付けていた。

その時、背後から低い声が響いた。

「オイッ!」

まどかは驚いて振り返る。そこに立っていたのは、油にまみれた作業服を着た、年配の男だった。男の顔は煤で汚れ、まるで炭鉱夫のようだが、その目はどこか優しげだった。

「お嬢ちゃん、落ち着け。そんなに慌てなさんな」

男はゆっくりと近づき、まどかの肩に手を置いた。その手はゴツゴツとしていて、まるで木の根っこのようだった。

「ここは…どこなんですか?私は…」

まどかの声は震えていた。

「ここは…まあ、ちょっとした異次元空間だな。迷い込んじまったんだな、お嬢ちゃんは。でも、心配すんな。もうすぐ帰れる」

男はそう言うと、懐から古びた機械を取り出した。それは無線機のようなものだが、アンテナの先には小さな風車が付いている。風車の羽には、奇妙な模様が刻まれていた。

「ちょっと待ってろ。今、座標を調整して…っと」

男は機械を操作し始めた。すると、まどかの足元に淡い光の輪が広がっていく。

「さあ、お嬢ちゃん。その光の中に入りな。すぐに元の場所に帰れるから」

まどかはまだ不安だったが、男の優しい目に促され、光の輪の中に足を踏み入れた。

歪んだ世界の記憶 - 現実世界に戻ったまどかだが、異次元での記憶が鮮明に残る。ほむらとマミに相談するも、信じてもらえない。

気がつくと、まどかは自分の部屋のベッドに横たわっていた。見慣れた天井、優しい日差し。間違いなく、ここは自分の世界だ。

「夢…だったのかな?」

しかし、あの異様な植物の感触、男の煤けた顔、そして恐怖は、あまりにも鮮明だった。

翌日、まどかは学校でほむらとマミに、昨日の出来事を話した。

「あのね、私、昨日、変な場所に迷い込んじゃって…」

まどかは必死に説明したが、ほむらは冷たい視線を向け、マミは苦笑いを浮かべるだけだった。

「まどか、また何か変な夢を見たのね。魔法少女が異世界に迷い込むなんて、まるでSF小説みたいじゃない」

マミはからかうように言った。

「でも、本当にあったことなんだよ!作業服を着たおじさんが…」

「作業服のおじさん?まどか、疲れているんじゃない?少し休んだ方がいいわ」

ほむらは冷たく言い放った。彼女は、まどかの言葉を全く信じていないようだった。

「ほむらちゃん…信じてくれないの?」

まどかの目には、涙が浮かんでいた。

「信じる、信じないの問題じゃない。非現実的な話を真に受けるほど、私はお人好しじゃないの」

ほむらはそう言うと、冷たい視線をまどかに向けたまま、教室を出て行った。

マミは困ったような顔で、まどかの肩に手を置いた。

「まどか、ほむらちゃんは少しキツイ言い方だけど、あなたのことを心配しているのよ。でも、確かに、その話は少し突飛すぎるわ。私たちも、簡単に信じることはできないの」

まどかは、一人取り残されたように、教室の片隅で俯いた。あの異次元での体験は、本当に夢だったのだろうか?しかし、あの恐怖の記憶は、まどかの心に深く刻み込まれていた。

風車の秘密 - 作業服の男が持っていた奇妙な風車。それはヴォイニッチ手稿に描かれた絵と酷似していた…。

その夜、まどかは図書館で、異次元空間について調べていた。しかし、手がかりは見つからない。

「やっぱり、夢だったのかな…」

諦めかけたその時、一冊の古文書が目に飛び込んできた。

『ヴォイニッチ手稿』

タイトルに惹かれ、まどかはその本を手にとった。古びた羊皮紙、見たこともない文字、そして…

「あっ!」

まどかは息を呑んだ。本の中に描かれた絵、それは、あの作業服の男が持っていた風車にそっくりだった。

風車の羽には奇妙な模様が刻まれ、中心には人間の顔が描かれている。まるで、何かの儀式に使われる道具のようだ。

「これは…一体、どういうことなの?」

まどかの心臓が、激しく鼓動を打つ。あの異次元空間、作業服の男、そしてヴォイニッチ手稿。全てが繋がっているような気がした。

その時、背後から声がした。

「そんなものを見てどうするんだい?」

まどかは振り返る。そこに立っていたのは、図書館の司書だった。

「この本に何かご興味でも?」

司書は優しそうな笑みを浮かべていたが、その目の奥には、どこか得体の知れない光が宿っていた。

「えっと…少し、気になっただけです」

まどかは戸惑いながら答えた。

「そうかい。まあ、この本は謎だらけだからね。色んな人が興味を持つのは当然さ」

司書はそう言うと、まどかに近づき、耳元で囁いた。

「でもね、深入りしない方がいいよ。この本の秘密を知ると…不幸になるかもしれないからね」

司書はニヤリと笑うと、まどかから離れ、書架の奥へと消えていった。

まどかの背筋に、冷たいものが走る。ヴォイニッチ手稿は、一体何を隠しているのか?そして、あの司書の言葉の意味とは?

まどかは、ヴォイニッチ手稿の謎を解き明かすことを決意した。それは、自分が迷い込んだ異次元空間の真相に迫る、唯一の手段だと感じたからだ。

しかし、まどかはまだ知らない。ヴォイニッチ手稿に隠された秘密が、彼女たち魔法少女の運命を大きく変えてしまうことを。

第2話 完

第3話へ続く…

第3話: ラチと夢の狭間:赤い空の誘い

消えた携帯 - マミがコンビニ弁当を食べていると、突然携帯電話が消える。周囲の景色は異様な赤色に染まっていた。

「ふぅ、やっと一息。」

巴マミは、任務帰りに近くのコンビニで買ったばかりの温かい幕の内弁当を、事務所のデスクに広げた。金髪の縦ロールが揺れ、少し疲れた表情ながらも、コンビニ弁当を前にすると、安堵の息が漏れる。

「いただきまーす。」

割り箸を割り、まずはお気に入りの鶏の唐揚げへ。その瞬間だった。

パッと、景色が塗り替えられたように、鮮やかな赤色に染まった。

「え…?」

マミは驚いて顔を上げた。いつも見慣れた、殺風景な事務所の光景ではない。窓の外も、天井も、壁も、何もかもが不気味なほど赤く染まっている。そして、異臭。焦げ付いたような、甘ったるいような、不快な臭いが鼻を突く。

「な、何コレ…?」

混乱するマミ。しかし、さらに異変が。

「あれ?携帯は…?」

先ほどまで確かに、弁当の横に置いてあったはずのスマートフォンが見当たらない。周囲を探しても、どこにもない。まるで、最初から存在しなかったかのように。

「まどか…?ほむらちゃん…?」

不安を覚え、仲間の名を呼ぶ。しかし、返ってくるのは不気味な静寂だけ。事務所の外から、微かに風の音が聞こえるだけだった。恐怖が、マミの心臓を締め付ける。

ジローラモの嘲笑 - 見知らぬ男に拉致されたマミは、橋の上から突き落とされる。「夢じゃないけど、まあ夢だと思って。」

気がつくと、マミは見知らぬ場所に立っていた。周囲は暗く、湿っぽい空気。遠くで、川の流れる音が聞こえる。

「ここは…どこ?」

足元はコンクリート。周囲を見渡すと、高い欄干が見えた。橋の上だ。しかし、どこへ続く橋なのか、全く見当がつかない。

背後から、足音が近づいてくる。振り返ると、そこに立っていたのは見知らぬ男だった。40代後半くらいだろうか。浅黒い肌、整った顔立ち。どこかイタリア人風の、ジローラモのような男だ。

「やあ、お嬢さん。」

男はニヤリと笑った。その笑顔は、どこか嘲るような、不気味な笑み。

「あなたは…?」

「俺?ただの通りすがりさ。まあ、お嬢さんを少し案内するだけの、ね。」

男はそう言うと、マミの腕を掴んだ。抵抗しようとするが、信じられないほどの力で押さえつけられ、身動きが取れない。

「何をする気…!」

「さあ、お楽しみはこれからだ。これは…夢じゃないけど、まあ夢だと思って、楽しんでくれよ。」

男はそう言い放つと、マミを橋の欄干に押し付けた。背中に、冷たいコンクリートの感触。下を見ると、黒々と淀んだ川が、恐ろしい速さで流れている。

「いや…やめて…!」

マミの悲鳴も虚しく、男は力を込めてマミを押し出した。

「うわああああああ!!」

無重力状態。全身を包む恐怖。視界が反転し、暗闇が迫ってくる。

足跡と小石 - 朝、マミは自室で目を覚ますが、足には確かに土と小石が付着していた。現実と悪夢の境界線が曖昧になる。

ハッと息を吸い、マミは飛び起きた。見慣れた天井。いつもの自室だ。

「夢…?」

額には冷や汗が滲んでいる。心臓が激しく鼓動し、全身が震えている。

「あ…あんなの、ただの悪夢だ…」

そう言い聞かせようとするが、どうにも拭えない違和感が残る。

マミはベッドから降り、ふと自分の足元を見た。

「え…?」

足の裏には、確かに土と小石が付着していたのだ。まるで、本当にどこかの土の上を歩いてきたかのように。

マミは、自分の足を見つめた。夢と現実の境界線が、曖昧になる。悪夢のような出来事が、まるで現実であるかのように、マミの心に深く刻み込まれた。

その時、携帯電話が鳴った。

「…ほむらちゃん?」

電話に出ると、冷静な声が聞こえてきた。

「マミさん、無事ですか? まどかの言っていた事が、本当になりそうです。」

「どういうこと…?」

「ヴォイニッチ手稿…いえ、今はそんな事はどうでもいい。とにかく、今すぐ会って話す必要があります。場所は…」

ほむらの言葉を最後に、電話は突然切れた。

マミは、混乱しながらも、事務所を飛び出した。
一体何が起こっているのか?
そして、ヴォイニッチ手稿とは一体何なのか?

マミの戦いは、まだ始まったばかりだった。

次回、第4話「植物世界の記憶:失われた言葉」

第4話: 植物世界の記憶:失われた言葉

川辺の惨劇 - まどかの脳裏に、幼い頃川で溺れた記憶が蘇る。しかし、それは同時に異世界での生活の始まりでもあった。

まどかは、朝からどこか落ち着かない様子だった。ほむらとマミに誘われて近所のカフェに来たものの、上の空で、コーヒーを口に運ぶ手も震えている。

「まどか、どうしたの? 何かあった?」マミが心配そうに声をかける。

「ううん、大丈夫…だと思う。でも、なんだか胸騒ぎがして…」まどかは俯き、ピンク色の髪が揺れる。

その時、まどかの脳裏に、鮮烈な映像が蘇った。幼い頃、家族で川に遊びに行った日の記憶。はしゃぎすぎて足を滑らせ、冷たい水の中に落ちていく感覚。必死に手を伸ばすが、誰も届かない。水底に引き込まれるような恐怖…。

(助けて…!)

まどかの心臓は激しく鼓動を打ち、呼吸が浅くなる。まるで、その時の恐怖が現実のものとして蘇ったかのように。

「まどか! しっかりして!」ほむらが低い声で叫び、まどかの肩を掴んだ。

まどかはハッと息を吸い込み、目の前の光景に意識を集中させた。カフェの喧騒、ほむらとマミの心配そうな表情。現実に引き戻された安堵感と、蘇った記憶に対する言いようのない不安が、まどかの胸を締め付ける。

「ごめん…ちょっと、昔のことを思い出して…」まどかは弱々しく微笑んだ。

しかし、その記憶はただの過去の出来事ではなかった。川で溺れた後、まどかの意識は途絶え、次に目覚めた時、彼女は見たこともない異質な世界にいたのだ。そこは、おぞましいほどに生命力に満ちた植物が支配する世界だった。

裸のおじさんと植物の言葉 - 異世界でまどかを助けたのは、裸の白人男性だった。彼はまどかに植物世界の言葉と知識を教える。

異世界に迷い込んだまどかは、言葉も通じず、右も左もわからない状況で絶望していた。巨大な植物がうごめき、奇妙な生物が徘徊する世界。恐怖で足がすくみ、ただ震えることしかできなかった。

そんな時、一人の男が現れた。全身裸の白人男性だった。最初は警戒したが、男はまどかに危害を加える様子はなく、優しく微笑みかけた。

「落ち着け、お嬢ちゃん。ここは危険な場所だ。だが、心配はいらない。私が守ってやる」

男は言葉こそ通じなかったものの、身振り手振りでまどかに話しかけ、食べ物や水の場所を教え、安全な場所へと案内した。

男はまどかに、その世界の言葉を教え始めた。それは、人間が話す言葉とは全く異なる、植物の声のようなものだった。男はまどかに、植物の知識、植物との共存方法、そして、この世界の秘密を少しずつ教えていった。

「この世界では、植物が全てだ。植物は、命の源であり、知恵の源でもある。お嬢ちゃんも、植物の言葉を理解すれば、きっと生き延びることができるだろう」

男は、まるで父親のようにまどかを育てた。まどかは男のことを「おじさん」と呼ぶようになった。おじさんは、いつも優しく、まどかに希望を与え続けた。

しかし、おじさんは、自分の過去については一切語ろうとしなかった。ただ、時折、遠い目をして、寂しげに呟くことがあった。「私は、もう二度と帰れない…」

ヴォイニッチの相似 - 大学の教授に異世界の文字を見せたところ、「これはヴォイニッチ手稿の文字に似ている」と告げられる。

現実世界に戻ったまどかは、異世界での記憶を忘れないように必死だった。しかし、時間が経つにつれて、記憶は曖昧になり、言葉も少しずつ思い出せなくなっていく。

(このままじゃ、全部忘れちゃう…!)

焦燥感に駆られたまどかは、異世界で学んだ植物世界の文字をノートに書き写し始めた。しかし、それは現実世界には存在しない文字だった。

藁にもすがる思いで、まどかは大学の教授に相談することにした。教授は、古代文字の研究をしている権威だった。

「先生、この文字、何かご存知ないですか?」まどかはノートを教授に差し出した。

教授は眼鏡をかけ直し、ノートに書かれた文字をじっくりと観察した。

「これは…」教授は息を呑んだ。「これは、ヴォイニッチ手稿の文字に似ている…!」

「ヴォイニッチ手稿…?」まどかは聞き覚えのない言葉に首を傾げた。

「ああ、それは、未だ解読されていない謎の古文書のことだ。15世紀頃に書かれたと言われているが、誰が、何のために書いたのか、全くわかっていない。そこに書かれている文字と、君が持ってきた文字が、非常によく似ているんだ」

教授は、ヴォイニッチ手稿の写真を見せてくれた。そこに書かれていた文字は、まどかが異世界で学んだ文字と酷似していた。

「信じられない…」まどかは震える声で呟いた。「もしかしたら、あの世界は、本当に存在したのかも…」

教授は、まどかの話に興味津々だった。「ぜひ、詳しく聞かせてくれないか? 君の記憶が、ヴォイニッチ手稿の解読に繋がるかもしれない」

まどかは、自分の体験、異世界の風景、裸のおじさんのこと…全てを教授に話した。教授は、真剣な眼差しで、まどかの言葉に耳を傾けた。

「なるほど…興味深い話だ。しかし、ヴォイニッチ手稿は、あくまで謎の古文書。君の話と関連があるかどうかは、まだわからない。だが、可能性は十分にあるだろう」

教授は、最後にこう言った。「鹿目さん、君は、とんでもない秘密を抱えているのかもしれない」

その言葉は、まどかの胸に深く突き刺さった。ヴォイニッチ手稿。異世界。裸のおじさん。全てが繋がり始めた時、何が起こるのだろうか。まどかの運命は、大きく動き出そうとしていた。

次回、第5話「ヴォイニッチ手稿の真実:封印された記憶」
ほむらはヴォイニッチ手稿の解読を進めるうちに、恐ろしい真実に近づいていく。そして、突如として意味深な言葉を残し、姿を消す。「この世界には上下関係がある…」

第5話: ヴォイニッチ手稿の真実:封印された記憶

夏休みの宿題 - ほむらはヴォイニッチ手稿を読むうちに、それが子供が書いた夏休みの宿題だと気づく。しかし、その内容は恐ろしい真実を秘めていた。

ほむらは、暗い部屋で一人、埃を被ったヴォイニッチ手稿を睨みつけていた。幾度となく時間を遡り、様々な情報に触れてきた彼女にとって、この手稿はただの古文書ではない。まどかを救うための鍵、そして世界の秘密を解き明かすための手がかりなのだ。

ページをめくるたび、奇妙な植物や裸体の女性たちの挿絵が目に飛び込んでくる。理解不能な文字が、まるで嘲笑うかのように並んでいる。しかし、ほむらは諦めなかった。彼女の頭脳は、常人には理解できない規則性を見抜き始めていた。

「…規則性がある、とでもいうのかしら。」

ほむらは、手稿の紙質、インクの濃淡、筆跡の癖などを徹底的に分析した。そしてついに、ある結論にたどり着く。

「これは…子供の字…?まるで夏休みの宿題じゃない…!」

衝撃が、ほむらを貫いた。あの難解な文字が、子供の書いたものだというのか?しかし、注意深く観察すると、文字の稚拙さの中に、どこか必死さのようなものが感じられた。

上下関係の掟 - ほむらは突如として意味深な言葉を残し、姿を消す。「この世界には上下関係がある。俺たちにも上下関係があるってことみたい。」

ヴォイニッチ手稿が子供の宿題だと気づいた瞬間、ほむらは異様な感覚に襲われた。まるで何かに監視されているかのような、不快な視線。彼女は即座に時間遡行の準備に入った。

まどかとマミに、この異常な事態を伝えなければならない。しかし、その直前、彼女は突然立ち止まり、意味深な言葉を呟いた。

「この世界には上下関係がある。俺たちにも上下関係があるってことみたい…。」

言い終わると同時に、ほむらは魔法陣を展開し、姿を消してしまった。

取り残されたマミは、困惑の色を隠せない。「ほむらちゃん、一体どうしたの?上下関係…?」

まどかは、ほむらのただならぬ様子に胸騒ぎを覚えていた。「ほむらちゃんが、あんな風に意味深な言葉を残して消えるなんて…きっと何か大変なことが…」

リンゴの毒 - マミはほむらの残した言葉から、ヴォイニッチ手稿が隠す秘密を悟る。「アダムとイブとヴォイニッチは同じ世界の出来事である。」

ほむらが消えた後、マミは一人、ほむらの言葉の意味を考えていた。「上下関係…私たちにも…」

その時、マミの視線は、テーブルに置かれたリンゴジュースに釘付けになった。リンゴ…アダムとイブ…禁断の果実…!

「まさか…!」

マミは、ヴォイニッチ手稿の挿絵を思い出す。裸の女性たちが、奇妙な液体に浸かっている絵。植物に囲まれた、異様な空間。

そして、ほむらが最後に残した言葉が、脳裏に蘇った。

「アダムとイブとヴォイニッチは同じ世界の出来事である…」

マミは、震える声で呟いた。「禁断の知識…楽園追放…そして、ヴォイニッチ手稿…全ては繋がっている…!」

彼女は、ついにヴォイニッチ手稿が隠す秘密の一端に触れてしまったのだ。

「この世界は…狂っている!」

マミの叫びが、静かな部屋に響き渡った。

しかし、それは同時に、彼女たちが、より深い闇に足を踏み入れてしまったことを意味していた。ヴォイニッチ手稿の真実を知った代償は、あまりにも大きすぎたのだ。

第6話へ続く…

第6話: 文字を消した世界:星と花びら

絵が先か文字が先か - まどかはヴォイニッチ手稿の絵に注目し、文字を消してみる。すると、隠されていた真実が浮かび上がってくる。

「うーん…やっぱり、この文字、なんか違う気がするんだよね」

まどかは、古びたヴォイニッチ手稿のコピーを前に、難しい顔をしていた。ほむらから借りた資料は、異世界の植物や裸の女性たちが描かれた、奇妙な図版と解読不能な文字で埋め尽くされている。

「ほむらちゃんが言ってたように、子供の落書き…にしては、あまりにも不気味だし」

まどかの隣で、マミがお茶をすすりながら言った。「でも、どうすればいいのかしら?私達には、あの文字を解読する知識もないし…」

「文字を読もうとするから、難しく感じるんじゃないかな?」

まどかは、手稿のページをめくりながら言った。「だって、最初に絵があって、後から文字が書き込まれてるんでしょ?だったら、絵から何かが見えてくるかもしれない」

まどかは、思い切って手稿のコピーに白い修正テープを貼り始めた。複雑な模様の文字を、一つ一つ丁寧に消していく。

「まどか、一体何をしてるの?」マミが心配そうに尋ねた。

「文字を消して、絵だけにしてみるんだ!もしかしたら、隠された意味が浮かび上がってくるかもしれない!」

時間をかけて、まどかは手稿のページの文字を全て消し去った。そこに現れたのは、より鮮明になった植物や女性たちの絵。そして…

「あっ…!」まどかは、ある絵に釘付けになった。裸の女性たちが浸かる、緑色の液体のプール。その液体は、まるで生命の源のように、美しく輝いていた。しかし、よく見ると、女性たちの体には、細い管のようなものが繋がっている。

「これ…もしかして、パイプ…?」まどかの声が震えた。

マルポツの正体 - ほむらは顔風車の絵に描かれた星が、実は花であることに気づく。そこには人間の顔と花が散りばめられていた。

一方、ほむらは自宅で、手稿のデジタルデータを見つめていた。特に気になっているのは、「顔風車」と呼ばれる、奇妙な天体図だ。風車のような形の中に、星のような模様が散りばめられている。

「星…本当にそうなのか?」

ほむらは、画像を拡大し、細部を調べていった。そして、あることに気づいた。星だと思っていた模様の中心に、小さな丸い点がある。

「この丸い点…まさか…」

ほむらは、資料を調べ、ヴォイニッチ手稿の別のページと比較した。そして、確信した。

「これは…星じゃない。花だ!」

顔風車の絵に描かれているのは、星ではなく、花。そして、よく見ると、風車の中心には、人間の顔が描かれている。無数の花に囲まれた、無表情な顔。

「花…人間の顔…一体、何を意味するんだ?」

ほむらは、戦慄した。花は、生命の象徴。そして、人間の顔は、知性の象徴。それらが組み合わさった顔風車の絵は、生命と知性の歪んだ融合を示唆しているように思えた。

「この手稿は…単なる落書きなんかじゃない。何か恐ろしい真実を隠している…!」

パイプと人間の繋がり - マミは裸の女性の絵から、人間が植物のパイプの一部として利用されていることに気づく。「この世界は狂っている!」

「まどか、これを見て!」

まどかの発見に興奮したマミは、急いで手稿の別のページを開いた。そこには、裸の女性たちが、複雑な構造の植物に繋がれている絵が描かれていた。

「この女性たち…まるで、植物のパイプの一部みたいじゃない…?」

マミは、震える声で言った。液体のプールに浸かる女性たちから伸びる管は、まるで植物の根のように、地中深くへと伸びている。

「この世界は…狂っている!」

マミは、ゾッとした。もし、この絵が意味するように、人間が植物の生命維持装置として利用されているとしたら…

「ありえない…そんなこと、絶対にありえない!」

マミは、必死に否定しようとした。しかし、手稿の絵は、あまりにも鮮明に、その恐ろしい真実を語っていた。

「でも…ほむらちゃんは、この世界には上下関係があるって…」まどかが、不安そうにつぶやいた。

3人は顔を見合わせた。

「もし…植物が人間を支配しているとしたら…」

その時、3人の脳裏に、あの謎の男の声が響いた。

「お嬢ちゃん、助けて欲しかったら、この文字を解き明かすんだな。」

誰が、何のために、自分たちにこの手稿を託したのか。
植物と人間の関係とは?
歪んだ世界の真実とは?

3人の魔法少女は、それぞれの能力を使い、狂った世界を終わらせるための戦いを決意する。

しかし、彼女たちを待ち受けるのは、想像を絶するほどの絶望だった。

次回、時空異聞録:ヴォイニッチの迷宮と裸身の乙女たち-禁断の植物SFファンタジー 第7話「共存と支配:歪んだ楽園の終焉」

第7話: 共存と支配:歪んだ楽園の終焉

2つの液体 - マミはヴォイニッチ手稿の解読者から、裸の女性たちが浸かる液体の意味を知る。それは女性だけが許された、生殖の儀式だった。

マミは、とある大学の古文書専門の教授の研究室にいた。以前、異世界の文字について相談した人物だ。緊張した面持ちでヴォイニッチ手稿の複製を広げ、あるページを指差す。そこには、裸の女性たちが奇妙な液体に浸っている絵が描かれていた。

「先生、この液体について、何かご存知ないですか?」

教授は老眼鏡をかけ直し、絵をじっくりと観察する。

「これは…非常に興味深い絵ですね。この手稿を長年研究している者として、一つの仮説があります。これは恐らく、生殖の儀式を描いたものでしょう」

マミは息を呑む。

「生殖…ですか?詳しく教えてください」

「この液体は、植物から抽出された特殊なものでしょう。この世界には存在しない植物ですが、恐らく女性の生殖能力を高める効果がある。そして、裸の女性たちが身を浸すことで、植物世界の種子を宿す…つまり、この世界は植物世界の養殖場のようなものなのです」

マミは衝撃を受けた。人間の女性が、植物の種を増やすための道具にされているのか。

「そんな…まさか…!」

「あくまで仮説ですよ。しかし、この絵が示唆するのは、そういうことでしょう。そして、この手稿全体が、その儀式を記録したものではないかと」

教授は冷静に分析するが、マミの心は激しく揺さぶられていた。自分の知っている世界が、音を立てて崩れていくようだった。

種子の世界 - まどかはヴォイニッチ手稿の絵を解釈し、人間世界が植物世界のために存在していることを悟る。「時空のおっさんは、世界の管理者…?」

まどかは、自室でヴォイニッチ手稿の複製を広げ、絵をじっくりと見つめていた。ほむらやマミから聞いた話を思い出しながら、絵の一つ一つを繋ぎ合わせるように、思考を巡らせる。

「この絵…この配置…まるで、植物が人間を操っているみたい…」

絵の中の植物たちは、まるで生きているかのように、人間たちを取り囲み、支配している。
それぞれの絵が、まるでパズルのピースのように、徐々に意味を持ち始めた。

「この世界は…植物世界の…ために…?」

まどかの脳裏に、あの作業服の男の姿がよぎる。異世界で出会った時、彼はまるで世界の管理者かのような口ぶりだった。

「時空のおっさん…世界の管理者…?まさか…!」

まどかは、震える手でペンを取り、手稿の余白に文字を書き始めた。それは、植物世界と人間世界の歪んだ関係を解き明かす、重要な手がかりとなるだろう。

未来への選択 - ほむらは全てを理解し、まどかとマミに語りかける。「私達は、植物世界と人間世界の関係を断ち切らなければならない。」3人はそれぞれの能力を使い、狂った世界を終わらせるための戦いを決意する。

ほむらは、自室の窓から夜空を見上げていた。ヴォイニッチ手稿、異世界、そして植物世界。全てが一本の線で繋がった時、彼女は深い絶望感に襲われた。しかし、同時に、希望の光も見えた。

ほむらは、まどかとマミを呼び出し、全てを打ち明けた。

「全て分かったわ。ヴォイニッチ手稿は、植物世界と人間世界の歪んだ関係を記録したもの。そして、私達は、その関係を断ち切らなければならない」

マミは驚きを隠せない。

「そんな…本当に、そんなことができるの?」

「できる。私達には、その力がある。まどか、あなたには宇宙の法則を書き換える力がある。マミ、あなたにはリボンを使った魔法攻撃がある。そして私には、時間を操る力がある」

ほむらは、強い決意を込めて、まどかとマミを見つめる。

「私達は、この狂った世界を終わらせる。そのためには、植物世界との繋がりを断ち切らなければならない。覚悟はいい?」

まどかは、少しの迷いもなく、頷いた。

「うん、分かった。私も、この世界を救いたい。みんなが、笑顔でいられる世界にしたい」

マミもまた、決意を新たにする。

「分かったわ。私も、みんなと一緒に戦う。この歪んだ楽園を終わらせるために!」

3人は、互いの手を取り合った。それぞれの瞳には、強い光が宿っていた。それは、絶望を乗り越え、未来を切り開くための希望の光だった。

ほむらは、静かに呟いた。

「さあ、始めましょう。私達の、最後の戦いを…」

次回、第8話「決戦前夜:それぞれの誓い」

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