
小説 異次元ヴォイニッチ学園:ずんだもん時空日誌〜黒縁メガネのひろゆき先生と謎の植物少女〜
第1話: 異次元からの訪問者
平凡な日常の終焉 - ひろゆき、ずんだもん、ヴォイニッチ手稿について議論を始める
「えっと、つまり、ヴォイニッチ手稿は未だに解読不能ってことですよね?」
黒縁メガネをクイッと上げ、ひろゆきはPCの画面から目を離さずに言った。
彼の無機質な声が、研究室に冷たく響く。
向かいに座るずんだもんは、ライトグリーンの髪を揺らし、むぅっと頬を膨らませた。「むー、そうなのだ。世界中の学者が挑んでもダメなんて、本当に謎なのだ!」
ひろゆきは肩をすくめた。「まぁ、大半はでたらめな文字の羅列じゃないですか? 誰かが暇つぶしに書いた落書きとか。」
「そんなことないのだ!だって、あの絵!見たこともない植物とか、裸の人がいたり…絶対何か意味があるのだ!」ずんだもんは身を乗り出し、必死に反論する。彼女の言葉には、熱意がこもっていた。
「でも、存在しない植物が描かれているってことは、作者の妄想、もしくは創作ですよね?それを解読しようとするのは、時間の無駄じゃないですか?」
ひろゆきは冷静に切り捨てる。
「うぐぐ…でも、ボクは信じるのだ!ヴォイニッチ手稿には、きっと何か秘密が隠されているのだ!」
ずんだもんの瞳は、強い光を宿していた。その時、彼女の首飾りの枝豆が微かに光った気がした。
「まぁ、ずんだもんがそう言うなら、そうなんじゃないですか?でも、時間泥棒には気をつけた方がいいですよ。」
ひろゆきは興味なさげに言った。
その直後、研究室の電気がチカチカと点滅し始めた。「あれ?停電か?」ひろゆきは眉をひそめる。
ずんだもんは、何故かソワソワしていた。「なんだか、変な感じがするのだ…」
オレンジ色の空 - ずんだもん、異次元空間に迷い込む
次の瞬間、強烈な光が研究室を包み込んだ。
ずんだもんは思わず目を瞑ったが、すぐに異変に気づく。光が消えた後、見慣れた研究室の風景は消え、目の前にはオレンジ色の空が広がっていた。
「な、なんだここは!?ひろゆき先生!」
ずんだもんが振り返ると、ひろゆきの姿はなく、代わりにどこまでも続く荒涼とした大地が広がっていた。空は不気味なオレンジ色に染まり、見たことのない植物が奇妙な形でのびている。
「ひろゆき先生ー!どこなのだー!」
ずんだもんの声は、広い空間に吸い込まれるように消えていく。
彼女は不安に駆られながらも、とりあえず歩き始めた。
足元は固く、ザラザラとした感触だ。
遠くには、巨大なキノコのようなものが生えているのが見える。
「こんなところに、ボク一人で…怖すぎるのだ…」
ずんだもんの目は潤んでいた。
その時、彼女の耳に微かな音が聞こえてきた。
それは、機械音のような、金属が擦れるような音だった。
音のする方へ進んでいくと、一台の古びたトラックが止まっているのが見えた。
トラックの荷台には、見たことのない機械が積まれている。
そして、その横には、作業服を着た男が立っていた。
作業服のおじさん - 時空のおっさん、ずんだもんの前に現れる
男は、くたびれた作業服を着て、油まみれの帽子を深く被っていた。
顔は日に焼けており、深い皺が刻まれている。
まるで長年、過酷な労働に耐えてきた職人のようだった。
ずんだもんは、警戒しながらも男に近づいた。
「あの…すみません…ここは、どこなのでしょうか…?」
男は、ずんだもんを一瞥し、ぶっきらぼうに言った。「迷子か?」
ずんだもんは、力強く頷いた。「そうなのだ!気がついたら、こんなところに…ボクは一体どうすれば…」
男は、ため息をつき、キャップのつばを少し上げた。「まぁいい。ガキを放っておくわけにもいかねぇしな。」
「え?どういうことなのだ?」ずんだもんは、キョトンとした顔で聞き返した。
男は、ニヤリと笑った。「お嬢ちゃん、ここはな、異次元の狭間ってやつだ。まぁ、簡単に言えば、迷い込んだってことだ。」
「異次元!?まよいこんだ!?」ずんだもんは、目を丸くした。「そ、そんな…ボクは一体どうなるのだ…?」
「心配すんな。俺が、元の世界に送ってやる。」男はそう言うと、トラックに積まれた機械に手を伸ばした。
「ただし、タダじゃねぇぞ。」
男の言葉に、ずんだもんは不安を覚えた。
「な、何を要求するのだ…?」
男は、ニヤニヤしながらずんだもんに近づき、耳元で囁いた。「お嬢ちゃんの持ってる…その枝豆…ちょーっと、味見させてもらおうかな?」
ずんだもんは、自分の首飾りの枝豆をギュッと握りしめた。
「そ、そんな!これは、ボクの大事なものなのだ!」
男は、凄みをきかせて言った。「じゃあ、一生この世界を彷徨い歩くがいい。二度と元の世界には戻れねぇぞ。」
ずんだもんは、葛藤した。
枝豆は大切だが、元の世界に帰りたい気持ちも強い。
その時、ずんだもんの脳裏に、ひろゆきの冷たい声が蘇った。「まぁ、ずんだもんがそう言うなら、そうなんじゃないですか?でも、時間泥棒には気をつけた方がいいですよ。」
ずんだもんは、ハッとした。この男は、もしかしたら…時間泥棒…なのかもしれない。
「…わかったのだ。」ずんだもんは、決意を固め、男を見据えた。「枝豆は渡さない。でも、元の世界には帰る。ボクは…絶対に諦めないのだ!」
ずんだもんの言葉に、男は目を細めた。
「ほう…面白いガキだ。いいだろう。その根性、買ってやる。」
男は、機械のスイッチを入れた。
機械が唸り声を上げ、周囲の空気がビリビリと震え始めた。
「ただし、言うことを聞けよ。さもないと、どうなるかわからないぜ?」
男の言葉に、ずんだもんは覚悟を決めた。
異次元からの脱出劇が、今、始まったのだ。
(続く)
第2話: 顔風車の謎
帰還、しかし異変 - ずんだもん、元の世界に戻るも時間がズレている
「うわー! 気がついたら、いつもの部屋に戻ってきたのだ!」
ずんだもんは、見慣れたひろゆきの研究室で目を覚ました。しかし、何かがおかしい。窓の外は、先ほどまで見ていたオレンジ色の空ではなく、夜の帳が下りていた。
「あれ? ボク、どれくらいの間、あの場所にいたのだ?」
スマホを取り出して時間を確認すると、信じられないことに、日付が変わっていた。たった数時間、異次元に迷い込んだだけなのに、現実世界では半日以上が経過していたのだ。
「これ、ひろゆき先生に言わないと……でも、どう説明すればいいのだ?」
不安に駆られながらも、ずんだもんはひろゆきの姿を探した。
ヴォイニッチ手稿との邂逅 - ひろゆき、ずんだもんの体験から手稿との関連性に気づく
研究室の奥で、ひろゆきは黒縁メガネを光らせ、いつものようにパソコンに向かっていた。
「えっと、ひろゆき先生、ただいま、なのだ!」
ずんだもんが声をかけると、ひろゆきは冷静な視線を向けた。
「まぁ、おかえりなさい。ずんだもん。ずいぶんと時間がかかりましたね。何かあったんですか?」
「それが……ボク、異次元みたいな場所に迷い込んじゃったのだ! 空がオレンジ色で、見たことのない建物がいっぱいあって……」
ずんだもんは、興奮気味に異次元での体験を語り始めた。ひろゆきは、いつものように疑いの目を向けながらも、静かに耳を傾けている。
「オレンジ色の空、ですか。時間がずれている、と。それと、何か奇妙なものは見ましたか?」
「えっと、作業服を着たおじさんがいて、ボクを元の場所に戻してくれたのだ! そのおじさんの持ってた機械に、顔風車みたいなのがついてたのだ!」
その言葉を聞いた瞬間、ひろゆきの目が鋭くなった。彼は立ち上がり、ずんだもんに詰め寄った。
「顔風車……ですか? それはどんな形をしていたんですか? もっと詳しく教えてください!」
ずんだもんが詳しく説明すると、ひろゆきは自分のスマホを取り出し、ある画像を見せた。それは、ヴォイニッチ手稿に描かれている顔風車の絵だった。
「これ、なのだ! これと同じものが、おじさんの機械についてたのだ!」
ずんだもんが指差した瞬間、ひろゆきの表情が変わった。彼はヴォイニッチ手稿と、ずんだもんの体験が繋がったことに気づいたのだ。
「これは……面白いことになってきましたね」
異世界の記憶 - 過去の記憶を語り出すずんだもん
ひろゆきは、興奮を抑えきれない様子で、ヴォイニッチ手稿の画像を表示したパソコンをずんだもんに見せた。
「ずんだもん、この手稿には、見たこともない植物や、奇妙な文字が描かれているんですよ。もしかしたら、あなたの体験した異次元と、何か関係があるのかもしれません」
ずんだもんは、手稿に描かれた奇妙な絵を見ているうちに、胸の奥に眠っていた記憶が蘇ってきた。それは、幼い頃に見た、不思議な夢のような光景だった。
「そういえば……ボク、小さい頃に、裸のおじさんに助けられたことがあるような……。そのおじさんは、見たことのない場所にボクを連れて行って、そこでしばらく暮らしたような気がするのだ……」
ずんだもんは、断片的な記憶を辿りながら、幼い頃の体験を語り始めた。そこは、植物と人間が共存する、不思議な世界だった。
「そこでは、みんな裸で暮らしていて、机も椅子も、全部植物でできていたのだ。ボクは、そこで暮らす人たちに、いろんなことを教えてもらったのだ……」
ひろゆきは、ずんだもんの語る内容に、息を呑んだ。それは、ヴォイニッチ手稿に描かれている世界そのものだったのだ。
「ずんだもん、その世界の文字を覚えていますか?」
「えっと……ちょっとだけなら、覚えてるのだ。こんな感じの文字だったような……」
ずんだもんは、記憶を頼りに、その世界の文字を紙に書き出した。ひろゆきは、その文字をヴォイニッチ手稿の文字と比較し、驚愕した。それは、酷似していたのだ。
「やはり……ヴォイニッチ手稿は、異世界の記録だったのかもしれませんね」
ひろゆきは、興奮を隠せない様子で、ずんだもんに語りかけた。
「ずんだもん、あなたの記憶が、ヴォイニッチ手稿の謎を解き明かす鍵になるかもしれません。一緒に、この手稿について調べてみませんか?」
ずんだもんは、少し不安そうな表情を浮かべた。しかし、ひろゆきの熱意に押され、覚悟を決めた。
「……ボクにできることなら、協力するのだ!」
その言葉を聞いたひろゆきは、満足そうに頷いた。
「よし、まずは、あなたの記憶を整理することから始めましょう。そして、ヴォイニッチ手稿に隠された真実を、必ずや解き明かしてみせる。…その先には、とんでもない真実が隠されているかもしれない…ですよね?」
ひろゆきの言葉に、ずんだもんは身震いした。ヴォイニッチ手稿に隠された真実とは一体何なのか。そして、ずんだもんの過去に隠された秘密とは……。
次回、第3話「植物世界の住人」
新たな謎が、二人を待ち受ける!
第3話: 植物世界の住人
裸のおじさん - ずんだもんの過去に現れた謎の人物
「…裸のおじさん…?」ひろゆきは黒縁メガネの奥で目を細め、ずんだもんをじっと見つめた。「ずんだもんの過去に、裸のおじさんがいた、と。それは一体、どういう状況だったんですか?」
ずんだもんは少し恥ずかしそうに、もじもじしながら答えた。「ボクが、小さい頃、川で溺れちゃったことがあったのだ。そしたら、突然、裸のおじさんが現れて、ボクを助けてくれたのだ!」
「へぇ…」ひろゆきは腕を組み、顎に手を当てた。「川で溺れたところを、見ず知らずの裸のおじさんに助けられた、と。まるで、昔話みたいな展開ですよね?でも、そのおじさんは、本当に『裸』だったんですか?」
「うん、そう、全裸! でも、すごく優しい顔をしてたのだ! 言葉は通じなかったけど、ボクを安全な場所に運んでくれたのだ!」ずんだもんは少し興奮気味に語った。
ひろゆきは冷静に尋ねた。「その時、周りに他の人はいたんですか?例えば、ずんだもんの家族とか。」
ずんだもんは首を横に振った。「いなかったのだ。ボクが目を覚ましたときには、おじさんとボクだけだったのだ。なんだか、夢みたいだったのだ。」
「夢…ですか。まぁ、子供の頃の記憶ですし、美化されている可能性もありますよね」ひろゆきは淡々と分析する。「でも、その裸のおじさんが、ヴォイニッチ手稿と何か関係があるかもしれない、ってことですよね?」
ずんだもんは真剣な表情で頷いた。「そうなのだ。そのおじさん、どことなく、手稿に描かれてる植物世界の住人に似てた気がするのだ!」
文字の解読 - ひろゆき、手稿の文字とずんだもんの記憶にある文字の類似性を発見
ひろゆきはパソコンの画面を指し示した。「ずんだもん、このヴォイニッチ手稿の文字、見たことありますか?」
画面には、奇妙な記号が並んでいる。ずんだもんは画面に顔を近づけ、目を凝らした。「うーん…なんだか、見覚えがあるような、ないような…でも、すごく不思議な文字なのだ。」
「ずんだもんが異世界で暮らしていた時、使っていた文字と似ているかもしれない、ってことですよね?」ひろゆきは念を押すように聞いた。
ずんだもんは少し考えてから、答えた。「あ!そうだ! その世界の文字に、ちょっと似てるかもしれないのだ! あの世界では、植物を使って生活してたから、文字も植物みたいに不思議な形をしてたのだ!」
ひろゆきは興味深そうに頷いた。「なるほど。ずんだもん、もしよければ、覚えている範囲でいいので、その世界の文字をいくつか書いてもらえませんか?」
ずんだもんは、紙とペンを手に取り、記憶を頼りに文字を書き始めた。最初は戸惑っていたが、徐々に思い出し、次々と不思議な形の文字を書き出していく。
ひろゆきは、ずんだもんが書いた文字とヴォイニッチ手稿の文字を比較した。「…これは…確かに、類似点がありますね。完全に一致するわけではないですが、根本的な構造が似ている。特に、曲線と螺旋の使い方が共通していますね。」
ずんだもんは嬉しそうに言った。「やっぱり、ボクの記憶は間違ってなかったのだ! この文字は、本当に異世界の文字なのだ!」
ひろゆきは興奮を抑えつつ、分析を続けた。「この類似性から考えると、ヴォイニッチ手稿は、ずんだもんが言っていた植物世界と何らかの関係がある可能性が非常に高い、ということになりますね。」
しかし、ひろゆきはすぐに冷静さを取り戻し、続けた。「ただし、まだ断定はできません。類似点があるからといって、即座に同一のものと決めつけるのは早計です。もっと慎重に検証していく必要があります。」
ヴォイニッチ手稿は子供の落書き? - ずんだもんが解読した手稿の内容とは
「ずんだもん、もしよければ、ヴォイニッチ手稿の文章を読んでみてもらえませんか? 何か分かることがあれば、教えてほしいんです。」ひろゆきは、ずんだもんにヴォイニッチ手稿の画像を見せた。
ずんだもんは少し戸惑った。「え?ボクが読むの? だって、この文字、完璧には覚えてないのだ…。それに、難しい言葉がたくさんありそうだし…。」
「大丈夫です。分かる範囲で構いません。何か引っかかる言葉やフレーズがあれば、それだけでも大きな手がかりになります。」ひろゆきは優しく励ました。
ずんだもんは覚悟を決め、ヴォイニッチ手稿の文章を読み始めた。最初はたどたどしかったが、徐々に慣れていき、少しずつ文章の内容を理解し始めた。
「…これは…」ずんだもんの顔色が変わり始めた。「なんだか、子供が書いた日記みたいのだ…。夏休みの宿題みたいな…。」
ひろゆきは驚いた。「子供の落書き、ですか? 一体、何が書かれているんですか?」
ずんだもんは、自分が理解できた範囲で、文章の内容を説明し始めた。「えっと…『今日は、新しい草を見つけた。すごく綺麗だった。』とか、『お腹が空いたから、草を食べた。ちょっと苦かった。』とか、そんな感じのことが書いてあるのだ。」
ひろゆきはさらに驚いた。「まるで、子供が植物観察日記をつけているみたいですね…。しかし、それだけですか?何か、特別なことや、重要な情報はないんですか?」
ずんだもんは少し考えてから、答えた。「うーん…時々、『お母さんが怖い』とか、『お父さんはどこに行ったんだろう』みたいな、ちょっと悲しいことも書いてあるのだ…。あと、『早く帰りたい』って…。」
ひろゆきは息を呑んだ。「早く帰りたい…ですか。つまり、このヴォイニッチ手稿を書いた子供は、異世界に迷い込んで、故郷に帰りたがっていた、ということでしょうか…。」
ずんだもんは真剣な表情で頷いた。「そうなのだ…。なんだか、ボクと同じ気持ちだったのかもしれないのだ…。」
その時、ずんだもんは突然、言葉を止めた。顔色も悪く、何かを思い出したかのように、震え始めたのだ。
「ずんだもん? どうしたんですか?」ひろゆきは心配そうに声をかけた。
ずんだもんは、震える声で言った。「ボク…思い出したのだ…。この手稿に…もっと、もっと怖いことが書いてあった気がするのだ…。」
ずんだもんは、次の言葉を口にすることを躊躇しているようだった。その目には、恐怖の色が宿っていた。
ひろゆきは、ずんだもんの異変を察知し、静かに問いかけた。「ずんだもん、一体何があったんですか? もし言いたくないなら、無理に話さなくてもいいんですよ。」
ずんだもんは、深呼吸をして、意を決したように言った。「…文字が…消されてる…のだ…。」
ひろゆきは、驚きを隠せない。「文字が消されている? 一体、誰が、何のために?」
ずんだもんは、さらに震えながら、続けた。「…真実を…隠すために…。」
第4話へ続く…
第4話: 文字を消された真実
沈黙のずんだもん - 何かに気づき、口を閉ざすずんだもん
ひろゆきは、ずんだもんの淹れたてのコーヒーを一口飲むと、いつものように皮肉交じりの口調で話し始めた。「えっと、ずんだもん、昨日のヴォイニッチ手稿の話、覚えてるよね? 色々と思い出したことがあるって言ってたけど、その後、急に黙り込んじゃって。何かあったんじゃないですか?」
ずんだもんは、ソファーに深く腰掛け、俯き加減で膝を抱えていた。ライトグリーンの髪が顔を隠し、表情は見えない。「…あのね、ひろゆき先生。ボク…思い出しちゃったのだ」
「何を?」ひろゆきは黒縁メガネの奥の目を細めた。「まさか、異世界の住人だったとか? まぁ、ずんだもんならありえなくもないけど」
ずんだもんはゆっくりと顔を上げた。その目は、いつもの無邪気さとは裏腹に、深い悲しみと恐れを含んでいた。「…ヴォイニッチ手稿に書かれてること、全部…本当のことなのだ。ボク…知ってる。植物世界のことを…全部…」
ひろゆきは腕組みをして、ずんだもんを見つめた。「へぇ。全部、ですか。具体的には? 裸のおじさんと植物との共生生活について語ってくれるのかな?」
ずんだもんは震える声で言った。「…ダメなのだ。言っちゃ…ダメなんだ。ボクが話すと…」
「話すと、どうなるの?」ひろゆきは冷静に問い詰めた。「誰かに口止めされてるわけでもないんでしょう? まぁ、ずんだもんの妄想かもしれないけど」
ずんだもんは頭を左右に振った。「違うのだ! ボクも最初はそう思ってたけど…違うのだ。あの文字…あの絵…全部…繋がってるのだ。ボクが話すと…世界が変わっちゃうかもしれないのだ!」
そう言うと、ずんだもんは口を堅く閉ざし、それ以上何も語ろうとしなかった。ただ、その小さな体は、目に見えない何かに怯えているように震えていた。ひろゆきは、ずんだもんの異様な様子に、ただならぬものを感じ始めていた。「まぁ、いいや。言いたくないなら、無理に話させたりしないよ。でも、何かあったら、いつでも相談してね」
絵が語る真実 - ひろゆき、手稿から文字を消し、絵だけを分析する
ずんだもんの沈黙を受け、ひろゆきは一人、ヴォイニッチ手稿の分析に取り掛かった。イェール大学の図書館からダウンロードした高解像度の画像データを、パソコンの画面いっぱいに表示させる。そして、画像編集ソフトを使い、手稿に書き込まれた謎の文字を一つ一つ丁寧に消していく。
「えっと、文字を消してみると…意外と面白い発見があるかもしれない。ずんだもんが言ってたように、本当に絵が何かを語りかけてくるのか…試してみる価値はあるよね」
ひろゆきは、手稿のページをめくりながら、特に気になる絵に注目した。裸の女性たちが緑色の液体に浸かっている絵、奇妙な植物の構造を描いた絵、そして、時空のおっさんが持つ顔風車の絵。
「ふむ…裸の女性たちの絵は、やっぱり異様だよね。液体の色もそうだし、女性たちの表情もどこか無機質。まるで…培養液に浸された標本みたいじゃないですか? まぁ、これは想像だけど」
次に、ひろゆきは奇妙な植物の構造を描いた絵に目を向けた。「この植物、どう考えても構造がおかしいよね。根っこから水を吸い上げるはずなのに、描かれているのは上から下に液体が流れる様子。師管と道管の関係を無視してるってこと? それとも、これは別の世界の植物だから、構造が違うってことなのかな?」
ひろゆきは、パソコンのキーボードを叩きながら、手稿の絵について考察を深めていく。「ヴォイニッチ手稿の文字を消して絵だけを見てみると、まるで子供の頃に夢中で描いた落書きを見ているような、そんな懐かしい感覚に襲われる。しかし、その背後には、隠されたメッセージが潜んでいるような、そんな気がしてならないんだよね」
塗りつぶされたメッセージ - ひろゆき、手稿の絵から異質なメッセージを読み解こうとする
さらに分析を進めるうちに、ひろゆきは手稿の絵の中に、意図的に塗りつぶされた箇所があることに気づいた。「えっと、これ…明らかに塗りつぶされてますよね。しかも、結構強引に。何かを隠したかったってことなのかな?」
ひろゆきは、画像編集ソフトの機能を駆使し、塗りつぶされた箇所を拡大し、コントラストを調整する。すると、かすかに塗りつぶされる前に描かれていた線が見えてきた。それは、奇妙な記号のようなものだった。
「…これは…文字なのか、記号なのか…わからないけど、何かのメッセージであることは間違いない。誰かが、このメッセージを隠したかった。なぜ? このメッセージに、ヴォイニッチ手稿の謎を解く鍵が隠されているってこと? まぁ、面白いじゃないですか」
ひろゆきは、その記号を一つ一つ丁寧に書き出し、別のテキストファイルに保存していく。そして、インターネットを使って、類似した記号を検索してみる。
「…全然ヒットしない。やっぱり、この記号は、この世界に存在しないものってこと? ますます面白くなってきたじゃないですか。まぁ、この記号が何なのか解明できるかどうかはわからないけど、諦めずに調べてみる価値はあるよね」
夜が更け、部屋にはひろゆきのキーボードを叩く音だけが響いていた。彼は、ヴォイニッチ手稿の絵に隠されたメッセージを解き明かすために、ひたすらパソコンに向かい続けていた。
その時、部屋の隅に置かれた、ずんだもんの小さなぬいぐるみの目が、かすかに光ったような気がした。
(第5話へ続く)
第5話: 植物と人間の共存
裸の女性たちの真実 - ひろゆき、手稿に描かれた裸の女性たちの絵に隠された意味を考察する
ひろゆきは、イェール大学のデジタルアーカイブで公開されているヴォイニッチ手稿の画像を、黒縁メガネの奥の瞳を細めてじっと見つめていた。「えっと、この裸の女性たちがたくさん描かれているページ…なんですよね。まぁ、普通に考えれば、当時の人が描いた理想の女性像、みたいな解釈になると思うんですけど…」
隣でずんだもんは、大きな目をさらに大きく見開き、画面に釘付けだ。「なになに?おっぱいがいっぱい描いてあるのだ!ふむふむ、みんな楽しそうにしてるのだな~」
ひろゆきは冷静に言った。「楽しそう、ですか?ボクはむしろ、どこか囚われているような印象を受けるんですよね。表情が、どこか諦めているというか…希望がないというか。」
「え~?そうかなぁ?ボクには全然そう見えないのだ。ひろゆき先生は、考えすぎなんじゃないかな?」ずんだもんは首をかしげた。
「考えすぎ、ですかね?でも、この手稿全体に漂う違和感は、単なる偶然じゃないと思うんですよ。裸の女性たちが、まるで部品のように描かれている。これは、性的な意味合いだけでは説明できないと思うんですよね。」ひろゆきは顎に手を当て、ブツブツと呟いた。
「部品?どういうことなのだ?」ずんだもんは身を乗り出した。
「例えば、機械人形の部品…とか。あるいは、もっと…植物的な部品、とか。」ひろゆきは意味深な笑みを浮かべた。「まぁ、あくまで仮説ですけどね。」
逆転する植物の構造 - ひろゆき、手稿に描かれた植物の構造に違和感を覚える
「次に、この植物の絵。一見すると、ただの植物のスケッチに見えるじゃないですか。でも、よく見てください。この植物の根と葉の位置関係…おかしいと思いませんか?」ひろゆきは指で画面を指し示した。
ずんだもんは目を凝らして画面を見た。「う~ん…葉っぱが下にあって、根っこが上にあるのだ?確かに変なのだ!」
「そう。普通、植物は根から水を吸い上げて、葉で光合成を行いますよね。でも、この絵に描かれている植物は、構造が逆転している。まるで、上から下へと何かが流れているかのように…」
「上から下…?何が流れてるのだ?」ずんだもんはますます混乱してきた。
「それはまだ分かりません。でも、一つ言えるのは、この世界の植物とは全く異なる構造を持っているということです。つまり、これは…異世界の植物を描いたもの、と考えるのが自然なんじゃないですかね?」ひろゆきはニヤリと笑った。
「異世界の植物…!なんだかワクワクしてきたのだ!」ずんだもんは目を輝かせた。
「ワクワク、ですか。まぁ、ボクは冷静に分析しているだけですけどね。でも、この構造の逆転が、この手稿の核心に迫るヒントなのかもしれない、とは思いますよ。」ひろゆきはメガネをクイッと上げた。
植物世界の住人たち - 植物世界とそこに住む人々の奇妙な関係性
「そして最後に、この植物世界の住人たちの絵…」ひろゆきは別の画像を開いた。「裸の女性たちが、巨大な植物の根に絡みついている。まるで、植物の一部であるかのように…」
「わぁ…なんだか神秘的なのだ…」ずんだもんは息を呑んだ。
「神秘的、ですかね。ボクはむしろ、不気味さを感じますけどね。人間が植物に利用されている…そんな印象を受けるんですよ。」ひろゆきは冷たい声で言った。
「利用…?どういうことなのだ?」ずんだもんは不安そうな顔をした。
「植物世界では、植物が人間を支配している…のかもしれませんね。人間は、植物の成長を助けるための道具、あるいは…栄養源として利用されているのかもしれない。まぁ、あくまで仮説ですけどね。」ひろゆきは肩をすくめた。
突然、ずんだもんは何かを思い出したかのように、顔色を変えた。「あっ…!」
「どうしたんですか?何か気づいたことでも?」ひろゆきは鋭い視線をずんだもんに向けた。
ずんだもんは震える声で言った。「ボク…昔、裸のおじさんに助けられたことがあるのだ…」
「裸のおじさん?それは…もしかして、異世界の住人…?」ひろゆきの目が鋭く光った。
「そのおじさんは、植物でできた家に住んでいて…ボクに、植物の使い方を教えてくれたのだ…」ずんだもんの記憶が蘇り始めた。
ひろゆきは静かに言った。「ずんだもん…もしかしたら、君は…植物世界と深く関わっているのかもしれない。そして、その記憶こそが、ヴォイニッチ手稿の謎を解き明かす鍵となるのかもしれない…」
その時、部屋の電気が消え、一瞬の静寂が訪れた。そして、次の瞬間、二人の目の前に、あの作業服姿のおじさんが現れたのだ。
「また会いましたね…」おじさんは意味深な笑みを浮かべた。「どうやら、少しばかり世界の均衡が崩れてきているようです…」
ずんだもんとひろゆきは、お互いの顔を見合わせた。新たな謎と危険が、彼らを待ち受けていることを悟ったのだ。
(次号、第6話「偶然の訪問者」!ヴォイニッチ手稿に隠されたメッセージが明らかに!?そして、時空のおっさんの真の目的とは…!?)
第6話: 偶然の訪問者
ヴォイニッチ手稿の真実 - ひろゆき、手稿の作成者が異世界からの訪問者であるという仮説を立てる
ひろゆきは、黒縁メガネの奥の目を細め、ヴォイニッチ手稿のコピーを睨みつけていた。「えっと、まぁ、色々調べてみたんですけど、この手稿に描かれている植物、この世界には存在しないんですよね?ずんだもんもそう言ってましたよね?」
ずんだもんは、ライトグリーンの髪を揺らしながら頷いた。「そうなのだ!ボクも見たことない植物ばっかりなのだ!それに、あの裸のおじさん…」
ひろゆきは遮るように言った。「その話は置いといて。重要なのは、この手稿の作成者が、異世界からの訪問者である可能性が高いってことですよね?だって、この世界の知識だけでは説明できないじゃないですか。」
ずんだもんが反論しようとした。「でも、手稿は子供の落書きかもしれないのだ…」
「いやいや、仮にそうだとしても、その子供が異世界に迷い込んだ可能性は否定できないですよね?まぁ、証拠はないんですけど。」ひろゆきはニヤリと笑った。「でも、もしそうなら、この手稿は異世界への地図かもしれないじゃないですか?」
ずんだもんは興奮気味に叫んだ。「地図なのだ!?ボク、また別の世界に行ってみたいのだ!」
ひろゆきは冷静に答えた。「まぁ、ボクは行きたくないですけど。ただ、この手稿の謎を解けば、異世界の秘密がわかるかもしれない。それに、時空のおっさんの正体も…」
集団の中に潜むメッセージ - ずんだもん、手稿に隠されたメッセージを読み解く鍵を見つける
ヴォイニッチ手稿のコピーを広げ、ずんだもんは熱心に眺めていた。「うーん、何が書いてあるのか全然わからないのだ…。でも、ひろゆき先生が言ってたように、絵がヒントになってるかもしれないのだ!」
突然、ずんだもんが手を叩いた。「あっ!この集団でプールに入ってる絵!みんな同じ方向を見てないのだ!誰か一人だけ、違う方向を見てる人がいるのだ!」
ひろゆきは興味なさげに言った。「えっと、まぁ、それが何か意味があるんですかね?ただの絵のミスじゃないですか?」
ずんだもんは真剣な表情で反論した。「違うのだ!きっと、その人がメッセージを隠してるのだ!その人が見てる方向に、何か重要なヒントがあるのだ!」
ずんだもんは、その人物が視線を送る先に描かれている植物を指差した。「この植物、他の植物とちょっと違うのだ!葉っぱの形が丸いのだ!もしかして、この丸い葉っぱが…」
ひろゆきは、丸い葉っぱの植物をじっと見つめた。「まぁ、確かに、他の植物と比べると異質ですよね。この植物が、手稿に隠されたメッセージを解読する鍵になるかもしれない。」
2つの液体が意味するもの - 奇妙なプールの絵に隠された秘密
ずんだもんが指差したのは、裸の女性たちが浸かっているプールだった。「このプール、液体が二種類あるのだ!緑色と青色!何で二種類もあるのだ?混ぜたらどうなるんだ?」
ひろゆきは腕を組み、考え込んだ。「えっと、まぁ、化学的な知識はないんで、混ぜたらどうなるかは知らないですけど。もしかしたら、この二種類の液体が、植物世界の重要な資源なのかもしれないですよね?」
彼はさらに続けた。「それに、女性たちが体の前面を液体につけようとしないっていうのも気になるんですよね。もしかしたら、この液体には何か副作用があるのかもしれない。特に、生殖に関わる部分に…。」
ずんだもんはゾッとした。「副作用!?そんな怖い液体に入るなんて、ボクは絶対嫌なのだ!」
ひろゆきは笑った。「まぁ、ずんだもんは妖精だから、関係ないんじゃないですか?でも、もしこの液体が植物世界のエネルギー源だとしたら、その秘密を解き明かすことで、手稿の真実に一歩近づけるかもしれない。」
ひろゆきは、手稿のコピーを手に取り、力強く言った。「よし、次は、この二種類の液体について詳しく調べてみましょう。ずんだもん、何か情報はないですか?」
ずんだもんは考え込み、「うーん…そうだ!ボクの持ってるずんだ餅にも、緑色と茶色の二種類の要素があるのだ!もしかして、ずんだ餅もこの液体と関係あるのかもしれないのだ!」
ひろゆきは、その言葉に驚きを隠せない。「えっと、まぁ、それはさすがに無理があるんじゃないですか?でも、ずんだもんの直感は侮れないからなぁ…。」
その夜、ひろゆきはずんだ餅を片手に、ヴォイニッチ手稿の解読に没頭するのだった。次の日、彼は一体どんな真実にたどり着くのだろうか?そして、ずんだもんとひろゆきは、時空のおっさんの謎を解き明かすことができるのだろうか?
第7話へ続く
第7話: 時空のおっさんの役割
9つの円が示す世界 - ずんだもん、手稿に描かれた9つの円がそれぞれの世界を表していることに気づく
「うーん、この絵、なんだか気になるのだ…」ずんだもんは、ひろゆきから渡されたヴォイニッチ手稿のコピーを食い入るように見ていた。特に気になっているのは、6ページにわたって描かれた、9つの円が並んだ図だった。円の中には奇妙な生物や建物が描かれている。
ひろゆきはいつものように冷静に分析する。「えっと、この円ですよね?まぁ、一見するとただの落書きにも見えますけど、配置とか、それぞれの円の中身を考えると、何か意図があるのかもしれないですよね。」
ずんだもんは、指で円を一つずつなぞりながら言った。「このカエルの卵みたいなのがある円、気持ち悪いのだ…。あ、こっちは風車がいっぱい。そして、このお城みたいなのが描かれている円は…なんか見覚えがある気がするのだ。」
「見覚え?」ひろゆきが黒縁メガネを光らせた。「具体的にどんな風に?」
「うーんと…ボクが迷い込んだ異次元空間にあった、風景に似てる気がするのだ。あの時、空がオレンジ色で、建物が古くて…」ずんだもんは、頭を抱えた。「でも、うまく思い出せないのだ…。」
その時、ずんだもんはハッとした。「この9つの円、それぞれ違う世界を表しているんじゃないか?!」
ひろゆきは腕を組んで考え込む。「なるほど。9つの世界、ですか。それぞれの円の中身が、その世界の特徴を表していると考えると…面白い仮説ですね。でも、何か根拠はあるんですか?」
「一番右の円を見て欲しいのだ!」ずんだもんが指差したのは、お城のような建物が描かれた円だった。「このお城、ボクたちが住んでいる世界にそっくりなのだ!だから、この円はこの世界を表しているんじゃないかと思ったのだ!」
植物世界のための世界 - ずんだもん、手稿に描かれた世界の関係性に気づく
ずんだもんは、さらに手稿の絵を読み解こうとした。「そして、一番中心にあるこの円…。四方八方に管が伸びていて、たくさんの種に囲まれているのだ。これ、まるで植物の世界みたいじゃないか!」
「植物世界…ですか」ひろゆきは顎に手を当てた。「あの時空のおっさんの話に出てきた、植物と人間が共存する世界、ですよね。もしそうなら…この9つの世界は、何らかの形で繋がっているのかも。」
「ボクもそう思うのだ!」ずんだもんが興奮気味に言った。「この植物世界が、他の世界にとってすごく重要な役割を果たしている気がするのだ。だって、一番中心にあるんだもん!」
「つまり…」ひろゆきは、手稿のコピーにペンを走らせた。「それぞれの世界は、植物世界の恩恵を受けている…もしくは、植物世界を維持するために存在している、と?」
ずんだもんは力強く頷いた。「そうかもしれないのだ!たとえば、ボクたちが住んでいる世界から、植物世界に必要なエネルギーが送られているとか…」
ひろゆきは、さらに深く考察を始めた。「もしそうなら…誰が、もしくは何が、そのバランスを保っているんですかね?それぞれの世界が、勝手気ままにエネルギーを奪い合ったりしないように…。」
世界の均衡を守る者 - 時空のおっさん、世界の均衡を守るために現れる
その時、部屋の空気が急に重くなった。二人は顔を見合わせ、緊張した面持ちで周囲を見渡す。
次の瞬間、背後から聞き覚えのある声が響いた。「やあ、ずんだもん。ひろゆきさん、だったかな?」
二人が振り返ると、そこに立っていたのは、あの作業服姿のおじさんだった。そう、時空のおっさんだ。
「時空のおっさん!」ずんだもんは驚きのあまり、目を丸くした。「どうしてここに…?」
ひろゆきは、冷静さを保ちながら尋ねた。「あなたは…この世界のバランスを保っている存在なんですか?」
時空のおっさんは、静かに頷いた。「君たちの言う通り、私はそれぞれの世界の均衡を守るために存在している。ヴォイニッチ手稿…君たちが調べているものは、その世界の繋がりを示す重要な手がかりだ。」
「じゃあ、あなたは…」ずんだもんが食い下がるように尋ねた。「植物世界を守るために…?」
時空のおっさんは、複雑な表情を浮かべた。「守る、という言葉は少し違うかもしれない。私はただ、それぞれの世界が、それぞれの役割を果たすように、導いているだけだ。」
「導く…ですか」ひろゆきは、時空のおっさんの言葉を反芻する。「つまり、植物世界が危機に瀕した時、あなたはそれを食い止めるために行動する、と?」
時空のおっさんは、頷いた。「そうだ。そして、今…植物世界に、危機が迫っている。」
ずんだもんは、息を呑んだ。「危機…?一体何が起ころうとしているのだ?」
時空のおっさんは、静かに答えた。「それは…君たち自身が、これから見つけることになるだろう。ただし、注意してほしい。真実を知ることは、必ずしも良いこととは限らない。」
そう言うと、時空のおっさんの姿は、まるで蜃気楼のように、ゆっくりと消えていった。残されたずんだもんとひろゆきは、互いに顔を見合わせ、言葉を失っていた。
「植物世界に危機…」ずんだもんは、不安げにつぶやいた。「一体、何が起こるっていうのだ…?」
ひろゆきは、再び手稿のコピーを手に取り、鋭い眼光を向けた。「いずれにしても、調べるしかないですよね。この手稿に隠された真実を…。」
次の瞬間、部屋に突然、けたたましいアラーム音が鳴り響いた。
「な、なんだ?!」ずんだもんが慌てふためく中、ひろゆきは冷静にアラームの発信源を探し当てた。それは、ずんだもんが持っていた枝豆型の首飾りだった。
首飾りの枝豆が、不気味な光を放っている。そして、そこから聞こえてくるのは、聞き慣れない警告音だった。
ひろゆきは、確信した。「これは…植物世界からのSOSだ!」
第7話 完
次回、第8話「枝豆からの警告」 - 迫り来る異変!ずんだもんの首飾りが語る、植物世界の危機とは!?