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個人の趣味が出まくった2020年ベストアルバム20

あけましておめでとうございます。僕です。

2020年末に、Twitterで「好きだった2020年のアルバム40枚」をつぶやきました。

ツイートにも書いてある通り、ジャンルの流行などシーンへの理解がもう皆無になってしまったので、レビューは書かず挙げるだけに留めようと思っていました。
しかし、自分で見返してみてもだいぶ個人的なセレクトだったので、せっかくならちゃんと紹介したいなぁ…と思い、もはや新年ですが更に20枚に絞って簡単に紹介したいと思います。レビューと言うよりは感想です。

40枚に厳選するのも大変だったのに20枚に絞るのはもちろん酷な作業でした。そのため、良し悪しよりも「人に紹介したい」という観点で20枚を選んでおり、ランキング形式ではなくA→Zで順番に紹介していきたいと思います。それではどうぞ。

01. Adrianne Lenker - songs

USインディー・バンド「Big Thief」のボーカルのソロ……だったんですね。調べていま知りました。なんとなくジャケットがよくて聴いてた……ビッグシーフ超好きなのに……。
純粋にメロディがよいシンプルなフォークサウンドのなかで、どこかエモ的な美しいアルペジオワークが際立つ楽曲も多く、ロック好きの心をくすぐってきます。環境音が混じっていたりと一発録りのようなローファイ感もとても良いです。
ちなみに、同じく2020年にこの作品とセットになるような形で、1曲20分くらいあるアンビエントで歌なしのアルバムも出しています。

02. arca (LUCA & haruka nakamura) - 世界

haruka nakamuraさんの作品に対しては毎回「ずり~」という感想を抱いてしまうのですが今作も「ずり~」となりました。だってこんなん好きじゃん!haruka nakamuraさんはほかにも2作ソロで発表していますが、個人的には歌が前面にフィーチャーされたこのarcaとしての作品が特に好きでした。遠くで鳴っているような優しいピアノと、繊細な歌声に胸が締め付けられます。相変わらず「祝福」や「光」を感じる音楽で、油断すると涙が出そうに……。

03. Baths - Pop Music / False B-sides II

エレクトロニカ系SSW(?)のBaths。もし年間ベストに順位をつけていたらトップ3に入るくらい好きだったかもしれません。どポップな歌モノを内向的なビートメイクに包んだ、ありそうで他にはなかなか出せないバランスで成り立った音楽性。個人的にも本当にツボすぎるサウンドです。今作は未発表曲などを収録した、オリジナル・アルバムとは違う立ち位置のようですが、それでこの良さかよ…と唸ってしまうくらい粒揃いの楽曲たちです。

04. Bibio - Sleep On The Wing

「自分がBibioってことになんねぇかな~」というのが口癖の僕なのですが、Bibioはそれくらい理想的な音楽で、今作もまったく裏切らない素晴らしさでした。ギターやストリングスといったサウンドがエレクトロニカ的な配置で構成され、牧歌的でありながらも幻想的。どこかノスタルジーな、夢の中のようなBibioワールドに誘ってくれます。

05. Fleet Foxes - Shore

Fleet Foxesの作品は毎作チェックしていますが、なぜか今作はこれまでの作品と比べてもとりわけ感動しました。相変わらず、フォークの流れを持ったハーモニー豊かなバンドサウンドとメロディが美しく、今までの作品から大きく変わった印象はそんなに感じませんが、温かいメロディとサウンドのなかにどこか漂う寂しさが胸を打ちます。
この作品はyoutubeでアルバムまるまる1時間の映像作品が上がっており、古いフィルムで撮られた感じのこの映像も良いです(自分も全部は見ていませんが)

06. I Break Horses - Warnings

スウェーデンのデュオ・アーティストだそうです(今調べた)。全然知らないアーティストだったのですが、かなり好みのドリーミーサウンドだったのでよく聴いていました。シューゲイズな要素も感じるドリーミー・エレクトロという感じでジャンル的にも大好物ですが、一つ一つの音像がポップすぎず耽美的すぎずな絶妙さで、似たようなジャンルのアーティストの中でもとりわけツボでした。

07. Kelly Lee Owens - Inner Song

待ってました。1stを聴いたときに衝撃を受けたKelly Lee Owens待望のセカンド・アルバムです。1曲めからRadioheadのカバー(ただし歌はない)というこのアルバムですが、相変わらず僕の好み的に最強です。アルバムタイトル通り内向的で、幻想的で、それでいて踊れるビートを持ったエレクトロニカというのはいくらなんでも強すぎんか? 2曲め「On」の後半で4つ打ちのキックが入ってきた瞬間ドバドバアドレナリン出ました。

08. Laura Marling - Song For Our Daughter

イギリスの女性SSW。特になんの変哲もないフォークサウンドですが、極上のメロディセンスでとにかく染みます。楽器の「生っぽさ」が前面に出されたレコーディングの音もたまりません。アルバムタイトル通り、なにか壮大なものや抽象的なものを歌うのではなく、娘にむけた非常に身近な温かさを表現している感覚も(英語わからんので実際の歌詞はわかりませんが)素敵です。

09. METZ - Atlas Vending

年齢に比例してどんどん激しいロックから遠ざかっていて、2020年も多くのロック音楽を聴いては数曲で断念していたのですが、それでもさすがMETZは音楽的な破壊衝動を思い出させてくれました。先行シングル「A Boat to Drown In」がめちゃくちゃポップだったのでちょっと驚いていましたが(それでもこの曲も大好きです)、安心と信頼の攻撃的なギターリフ、破壊的なドラムにしびれます。思ったよりキャッチーさもあるバンドなんだなあと個人的に気付かされた1枚でもあったのですが、そう感じるのは自分だけでしょうか…?

10. Moses Sumney - græ

こちらも待望のセカンドアルバム。1stを聴いたとき度肝を抜かれたものですが、こちらのセカンド、度肝を抜かれました。天才です。様々なジャンルの実験的なアプローチを、あくまでポップな領域で表出させ、無二の音楽を作り出しています。黒人らしいソウルミュージックの基盤を感じつつも、聴いたことのない音楽の世界に連れ出してくれる作品で、自分の語彙ではこのサウンドの凄さを説明できません。しかもセカンドにして2枚組という攻めまくった大作。

11. Owen Pallett - Island

カナダの作曲家、オーウェン・パレット。フォーキーなギターと寂しさのある歌声に、遠くから鳴り響いてくるかのような重厚なオーケストラ。すごく静かでメロディアスな楽曲のなかで時折漂う不協和の美しさがたまりません。初めて聴いたときあまりの美しさに鳥肌がたつほど個人的にツボでした。こういう、不穏さと温かさが同居している美しさに弱いです…。

12. Porches - Ricky Music

1曲めの「Patience」がとにかく最強。再生ボタンを押した瞬間にこの不安定な歌声に引き込まれ、間奏の美しさで卒倒しました。良い意味でチープなシンセサウンドと、繊細で美しいメロディによって作り出された甘美でドリーミーな音像、それでいて1曲1曲が非常に短いシンプルさもとても良いです。地味なアーティストなんですが毎作目が離せません。

13. Sault - Untitled (Rise)

恥ずかしながらSaultというアーティストを全く存じ上げていなかったのですが、ものすごい衝撃を受けました。ファンクのグルーヴの上にきらびやかなストリングスとコーラスが乗ったディスコ的なサウンドでありながら、民族的な打楽器の重厚なビートが突如押し寄せたりと予測不可能な要素が多く、正直自分ごときがジャンルの話をするのもおこがましいほど解析不能なごちゃまぜ感。初めて聴いたとき「こいつらは何者!?!?!?」というクエスチョンと同時に、高揚感が止まらなくなりました。実際匿名のプロジェクトで彼らの情報はほとんど出回っていないらしく、マジで何者なんだ…。

14. Tame Impala - The Slow Rush

世間的にはかなり評価されていた前作3rdが個人的にはあまり刺さらなかったTame Impalaですが、今作は文句なく好きでした。3rdがかなり現代的な音に寄ったことを受け入れられなかったのですが、今作は「ここまでポップで気持ちよく踊らせてくれるなら何も文句ない」という感想です。ポップ・ダンス・ミュージックに振り切りながらも特有のサイケさは健在で、Tame Impalaならではの2020年ポップスという感じ。バンドとして理想的な進化の形だと個人的には思います。

15. Tom Misch & Yussef Dayes - What Kinda Music

SSWのトム・ミッシュと、個性派ドラマーであるユセフ・デイズのコラボ作…というアルバムだそうです(いま調べて知りました)。「こんなにドラムがカッコいいアルバムある?」と思っていたので、ドラマーとのコラボ作品と知って納得……。全編通してタイトなドラムがとにかく気持ちいい。ジャンル的に軸となるのはジャズだと思うんですが、ヒップホップやソウルなどゴチャ混ぜ感ある独特の感覚を持った音楽で、さらにそれがテクニカルなドラムの主張によってよりエクスペリメンタルな魅力を放ち、「ぼくがかんがえたさいきょうのおんがく」みたいになっています。

16. ファナ・モリーナ - Anrmal

※Apple Musicの表記順にしているのでアーティスト名がカタカナになっているのは許して

Juana Molinaがメキシコで行ったライブ・アルバム。フアナ・モリーナといえばエクスペリメンタルでどこか病的な音楽性のイメージがあったのですが、ライブアルバムを聴いてびっくり。1曲めから攻撃的なベース・ドラムが唸る激しいライブで、「俺の知ってるフアナ・モリーナと違う……」となりました。他の演奏もベースリフとドラムのグルーヴの絡み方がとにかく気持ちよく、こんなに踊れてライブ映えするアーティストだったことに驚き。いつか生で観てみたいものです。

17. フィービー ブリジャーズ - Punisher

Twitterで呟いたベスト40にあろうことか入れ忘れてしまいました、Phoebe Bridgersのセカンド・アルバム。前作も素晴らしいものでしたがそれを超えてきた今作です。とてもシンプルかつ静かな音楽で、自分の語彙でこの良さを語るのが難しいのですが、ポップさの中に潜む寂しさ、孤独感、寄り添ってくれる優しさ……歌詞がわからなくても、メロディと音でそれらが伝わってきます。なぜ最初のベスト40に入れ忘れたのかというくらいヘビロテした一枚です。

18. リアン・ラ・ハヴァス - Lianne La Havas

UKの女性ソウルシンガーだそうです(この方も知らなかった)。ソウルミュージックは個人的に好みが分かれるのですがかなりツボ。タイトでミニマルなドラムとベースのグルーヴ、クリーンなカッティングギターなど、各バンド隊の絡みがとにかく心地良く、ロック好きなリスナー向きな気がします。しかしKelley Lee Owensといい、こちらにもRadiohead「Wired Fishes」のカバーが……。流行ってるの?

19. 藤井 風 - HELP EVER HURT EVER

話題の日本人R&Bシンガー。よく名前を見かけていたので試しに聴いてみて衝撃でした。かなり若い方ですが、このサウンドはJ-POP宇多田ヒカル世代の30代おじさんにこそ堪らないのでは?この懐かしい和製R&B感!!もちろんソウルのルーツはしっかりと踏んでいるからこその本格さ。かつ、日本人好みの極上のメロディ・ポップネス、若さを感じる歌詞、やられました。2020年にドハマりしたアーティストの一人です。

20. 踊ってばかりの国 - 私は月には行かないだろう

踊ってばかりの国というバンドをあまり熱心に聴いてきた方ではないのですが(すごい世界を行ってて難しそうなバンドだなという印象がありました)、このアルバムを聴いて素直に素晴らしくて驚きでした。印象通りサイケな世界を行ってるなという感じはありつつ、想像以上に聴きやすく、優しい音楽でした。SFという壮大なテーマを、親近感のあるフォークソングとして聴かせてくれるような、素直に粒ぞろいの名曲たちが収録されています。

総括

2020年は誰もが認めるコロナの年でした。ライブができない、自由に音楽ができない・聴きにいけないという生活の中で、なんとか音楽を届けようという形から生まれた「寄り添い」の音楽が目立つ一年だったのではないかと思います。個人的な好みの変化ももちろんですが、フォーク・アコースティックな音楽ばかり聴いていたように思います。知らずのうちに、この閉塞した生活に溶け込む「癒やし」を求めていたのかもしれません。

もうしばらくこの状況は続きそうですが、そんな中で音楽がどのように変化し、届いてくるのか注目したいです。


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