駒沢のガネーシャ様
中2の頃、アコースティックギターをはじめた。
なんて典型的な中2だったことだろう。
反抗期真っ最中ということもあり、素直に「ギターやりたい」なんて言い出せず、「なあ」とぶっきらぼうに父と母を呼び、
うつむきながら「これ買って」とPCで入門用アコースティックギターの画面を促した。
その数ヶ月後、僕のもとにアコースティックギターが届いた。
隣町にある北条楽器でギブソンのJ-45を模した、サンバースト色のセピアクルー。Fなんて到底弾けないけど、弾いたら音が出て、箱の中で響く。
その振動がお腹から全身に轟いていく。それだけでとても楽しかった。
音楽に目覚めたのはMステでミスチルを見てからだ。
「くるみ」を歌う桜井さんになりたいと心底思った。
家族が寝静まった深夜、豆電球の明かりの下で
エアギターをかき鳴らし、吐息だけの熱唱を毎晩していた。
駒沢に僕の人生の師匠(毎度学びになり過ぎる説法を説いてくれるので、勝手にガネーシャ様と呼んでいる)がいるのだが、
僕が音楽と離れるか悩んでいたとき、
「音楽は鳴りやまへんねやで」と駒沢のガネーシャ様は煙草に火をつけながら、全てを見透かすように言ってくれた。
いつ辞めてもいい、またいつでも始められるから。
というか、自分いずれ戻ってくるやろうから今のうちに寄り道しとき。
そんな安心をくれた言葉だった。
30歳を超えた今も誰もいない隙を見計らっては、ギターをかき鳴らしている。
エレベーター、トイレの個室、ウェブ会議の画面外で右手はストロークを続けている。
そう。音楽は鳴りやまへんねやで。
あとがき:自分のことばで、誰かじゃなく自分の思いを記す。
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