君へ
君を超える前の日。
死なない魔法をかけてもらった。
きっと一生に一度のチャンスで、
期待なんかしていなかったお別れの機会だったんだと思う。
置いていきやがって、と笑いながら叱りたい。
「わたし」というものを考える。
私は君じゃない。やっと腑に落ちた。
中二階席に、また座れなかったね。一生座ることはないのかもしれないと思う。
誰の、席なんだろう。今。
わたしは?
守りたい人を守っていくのが「わたし」の領分、だろうか。
過去の整理なんかきっとずっとつかないし、これからも誰かが居なくなることに怯え続けるんだろう。
でもそうして誰かを守れるのかもしれない、法則。
それをこの手で出来る今に感謝する。
道行く誰かの笑い声が係長の笑い声に重なって、そう思う。
君を超えた私は、どうか誰かを守るためにありたい。
そのために生きていきたい。
君が為し得なかったことをしなきゃ意味がない。
厄介なことに、死ねない故の、死なない為の、人生の、役割。
ひとりじゃない。
係長だけじゃなくて、小栗さんや、高野さんや、佐藤さんや、いつかの阿部さんや。
誰かに救われて繋がれた命、有効に使わなきゃ。
また、来たいしね。MOMINOKI HOUSE。
山田シェフ、十年経っても変わらない。
毎回、初めてみたいな顔をお互いにしている。
日本人?と問われたの、2回目。
にかっと笑ったチャーミングな笑顔。
静かな時間。
揺らぐ照明。
あたたかい、命のある空間。
また来ます。
君を偲んで。
君を忘れないように。
君を愛して。