変形パネルを作った日々
はじめに-きっかけ-
去年写真展をrainrootsさんで行った際にレンジ陶器で『光の形』を作りました。
光というのは肉眼で捉えるのは難しく、写真にしてようやくその一瞬の形を
認識できると思い、そんな形たちを写真展に合わせて制作し、
作品たちと一緒に展示しました。
この形たちをパネルにしたい、と妄想めいたことを考えていて、その思いを河合隼雄さんの「中空構造」という考えたかが背中を押しました。
外からの侵食、内側からの光、そんな様子をパネルに見立てて描くことができる、そんな気持ちが湧き上がり、パネルを作ることにしました。
①準備
・既製パネル・・・土台となる木が歪むが嫌だったので、既製品を元に作っていく。
・パネルの厚みにあった木
・ジグソー(電動ノコギリ)と集塵機があると○
・クランプ
・その他、軍手や麻布、重し、ガンタッカーなど
②パネルに形を写す
木漏れ日の形を元に、パネルに木炭で印をつけます。
裏面にもコピーします。表をそのまま写すために、小さな磁石を両面につけて、線に沿って滑らせて写しとっていきます。
③裏に写した線に沿って木をボンドで貼っていく
写真は切った後ですが、とにかく木をつけていきます。また、耐久性を持たせるために
補強の木もかませながら木をつけます。
木をつける時は、多少ズレがあっても良いように外にプラス1センチくらいは出るように余裕を持ってつけていきます。
ボンドはゴリラを使用してます。
④ジグソーで切る
クランプで固定して、ひたすら線に沿ってジグソーで切っていきます。
刃物に触れても切れない、丈夫な軍手をして作業します。
ひたすら切ります。
⑤膠を塗る
表裏に同じ回数、膠を2〜3回塗ります。
表裏塗るのは木が歪まないように、反りが出ないように。
木を保護して分泌液が出るのも防ぐように塗っていきます。
↓
よく乾かします。
乾かすときに通気性が良くなるように、下に木を置いてあげたり、画鋲を刺してあげて高さを出したりします。
⑥布をはる下準備
通常はしなくていいのですが、今回変形パネルだったので、布の折り込みをしようとすると側面が足りなくなる部分がたくさん出ました。
そこを「のりしろ」のように、布を足していく作業が必要で、
ミシンでひたすら繋げていきました。
(地味にこの作業が一番大変です)
⑦パネルに布をはる
今回は麻布をはりました。
薄手の綿布などでも可能です。
膠でベタベタにして2〜3回塗ります。
大体1回塗ると布が伸縮して、空気が入ります。
塗るたびに布に癖がついていくので、また、濡らすとまた剥がせるので
焦らず様子を見ながらベタベタにしていきます。
側面にもペタペタ、裏面にもペタペタはります。
裏面は念の為、ガンタッカーでも最後に固定します。
この時も同じ回数、膠を塗るように心がけます。
終わったら軽くやすりをかけておきます。
⑧白亜地を塗る
私が使っているのは白亜地というもので
1000(水):70(膠)の膠水
炭酸カルシウム(膠水に対して)1と2分の1
チタニウムホワイト(膠水に対して)2分の1
の分量で混ぜて、その後、2倍ほど希釈したものを塗っています。
結構ちゃぷちゃぷでも大丈夫です。
膠水は人肌くらいを目指して温めて溶かします。
残ったら冷蔵庫で保管、3日以内には使い切りたいです。
温め直して使うことは出来ますが、何度も繰り返すと組織が壊れてしまうのでおすすめしません。
■手順としては
大きな筆(できたら熊毛のやつ)で塗り、乾かないうちにたわしのような丸刷毛(木版画用丸刷毛と呼ばれるもの30号くらいの手のひらサイズ)で円を描きながらごしごしします。
そうするとキャンバスの目に地塗りが入っていって綺麗に塗れます。ピンホールが見えなくなるまで塗るのが目標です。
最後に綺麗に、1〜2層塗ったら完成です。
全工程で3層までがベスト、多くても4層にとどめておいた方がいいと思います。
多すぎると地が割れる恐れがあったり、布の感覚、素材感が失われます。
◎また、日を置いてから
20(水):1(膠)の膠水を最後に塗ります。
これは絶縁層と呼ばれ、白亜地が絵の具を吸い過ぎるのを防ぎます。
塗る筆は白亜地の時とは違う、日本画用の柔らかい大きな筆で、優しくなでるように塗ります。
そしてそれも完全に乾いたら(時間があれば1週間以上、時間がなければ致し方なし)最後にやすりをかけます。
やすりをかける際は♯150〜200の間で選ぶといいと思います。
私はいつも180番を使用しています。
キャンバス目を目立たせるか、ツルツルにしたいか、筆致はどうするかの感覚で変わっていきます。
⑨大切にしたいのは耐久性と独自性
現代だと機械でも変形に簡単に切れる、というのもわかるのですが
そもそも汗を流して作業することに意味を感じている、身体を動かすことに意味を感じています。
素材とともに自分が成長していく感覚と、作り上げた親しみが必要だと思っています。
そして丁寧に作ること、できるだけ軽く、丈夫に作る。
木は経年変化の影響を強く受けます。なのでできるだけ薄く、かつ丈夫にすること、
布をはることで耐久性、修復のしやすさを考慮しています。
それはいつもキャンバス作りでも気をつけている点です。
おまけ
ハギレがいっぱい出たので再利用してドローイングしています。
色々できるといいな。
最後に
パネル作りはなんやかんや10年ぶり。
こんなやり方もあるよという方がいたら共有していただきたい今日この頃です。
後日、どうやって展示したかもまとめたいと思っています!
展示中
うつる影、空っぽの光
2024年 10月 15日 - 11月 09日
13:00-18:00
日・月 休廊
GALLERY VALEUR
〒465-0094 愛知県 名古屋市名東区亀の井1-2
工藤千紘(絵画、写真など)
齋藤里奈(立体)による二人展です。
こちらもよろしくお願いいたします。