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彼女とは専門学校から付き合いがあり、私は彼女のセンスの良さに尊敬している。性格は私とはまるで正反対で、要領が良くて器用で、考えても仕方のないことは考えないで前へ前へと進めるさっぱりした性分だ。現に彼女は、車の運転だけはどうしても無理だと教習所に通っている最中に気づき、途中で習うのを止めた。お金をかけたからと無理やりにでも取ろうとしないのが彼女らしいといえば彼女らしい。
そんな彼女から、誕生日に本を貰った。『わたしを空腹にしないほうがいい(著・くどうれいん)』という本で、著者が21歳になる年の6月1日から30日まで(+α)を記したエッセイ。
彼女とは今までお互いに何度かプレゼントを渡しあったものの、本を貰ったのは初めてだった。
個人的に、本をプレゼントするという行為は難易度が高い気がする。まず、渡す相手が本を読むかどうかからのリサーチから始まり、どういうジャンルや作風が好きなのか、その人が読んだことが無い本であるかなど、相手を知らないと様々な懸念が生まれる。人付き合いがそんなに良い方ではなく無難を好む私からしたら、まさに本は博打当然の代物が故に、私の『他人にプレゼントする候補』には含まれていなかった。
だから、彼女から貰ったときは少し驚いた反面、彼女がくれるものはきっと間違いがないという確信もあった。
『わたしを空腹にしないほうがいい』はきっと、食べることが好きな人はあっという間に読めてしまうと思う。書くことと料理をすることが好きな著者の日々の暮らしの一部が記されていて、私は著者のことを何も知らないのにまるで昔からの友人みたいな親しみすら最後には持ってしまう。純粋に、こういう文章が書ける人を素敵だと思った。ということで、確信通り彼女がくれた本は素晴らしかった。
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私は、彼女たちが素敵だとも羨ましいとも思い、そんな感情を抱く自分を少し情けないとも思う。著者も彼女も、私と同じ年に生まれ、ほとんど等しく(寧ろ私よりも短く)与えられた時間の中で、こんなにも他人に何かしら影響を与える何かを持っている。羨ましいというよりずるい、が自分の感情を表現するには近い。何を見て、何を感じ、何に触れ、何を食べ、何を考えたら、あなた達みたいな人間が出来上がるのか、教えてほしいと切実に思う。
ただ、そう思う私は今まで何をどう過ごしてきたんだい?と聞かれると、これが中々答えられなくて黙るしかなくなってしまう。空っぽなんです。自分で考えることをしてこなかったから、テンプレみたいなやりとりしか出来ないんです。生きる気力が無かったから。
ある種進歩ですね。彼女たちのようになってみたいと、生きてる間の目標が見つけられたこと。
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