大人技能講習(ふつおた供養)

このメールは、以前情熱スリーに送ったものの没になったメールです。

文田さん根建さん、長嶋○茂さんこんにちは。

先日、僕は18歳の誕生日を迎えました。晴れて成人した僕は、大人(おとな)技能講習に行きました。開催地は九段下にある大きな市民会館でした。会場に着くと、僕と同じ今日が誕生日の18歳が大勢集められていました。

いよいよ講習が始まります。講師として登壇した方は、スーツをビシッと着こなした50代くらいの男性で、いかにも理想の大人といった雰囲気を漂わせていました。講師は明るい表情で話を始めます。

「みなさん、18歳の誕生日おめでとう。成人したということは大人の仲間入りをしたということです。しかし、君たちに大人になった実感はなくて、とっても不安だと思います。だけど、素敵な大人というのは、決して完璧な人を指す言葉ではありません。素敵な大人になる、それは至って単純で、『みっともないことをしない』、これに尽きます。そこで今日行う大人技能講習では、僕がみっともない大人の例を教えますんで、君たちはそうならないように生きていってください。では、始めます。」そう言うと、スクリーンにはたくさんの文章が箇条書きで映し出され、一つ一つの解説が始まりました。


「まずは、高級な時計しているのに時間を守らない大人です。時計なんでファッションだろって思う方も中に入ると思いますが、本来時計は時間を確認するための道具。その道具にお金をかけ、視界に入りやすい所につけてもなお時間が守れないって本当にみっともないです。こういう大人にはなってほしくないし、今後高級時計して遅刻する上司がいたら、もうタメ口でいいです。

次は、教習所の筆記試験に落ちた後、『問題自体がおかしい』と言い始める大人です。筆記試験の問題が変だなーと思うのは僕も同じです。例えば『通園バスの横を通り過ぎる時は徐行しなければならない』は丸で、『通園バスの横を通り過ぎる時は一時停止しなければならない』はバツとか。一時停止しとけば安全なんだから丸でも間違いないだろって話ですよね。だけど、すでに筆記試験を受けるという行動に出たということは、運転免許の存在も、この試験のことも信じちゃってるわけです。それなのに試験に落とされた後、単純にムカつくからって理由で難癖をつけてる人、本当にみっともないです。特に、中途半端に学歴高い人がこれをやりがちなので気をつけましょう。」

講師の男性は熱量を持ってみっともない大人について話し続けました。講習ではその他にも、

・パソコンが重くてイライラしながら数回クリックした後、大量のウィンドウがでてしまってさらに機嫌が悪くなる大人

・柄(がら)同士を合わせたファッションを見て、聞かれてもいないのに「俺だったらあの組み合わせしないなぁ」と言い出す大人

・改札で残金不足で止められた後、自分の不手際なのに舌打ちして立ち去る大人

・良い雰囲気のおしゃれなバーで腹から声出す大人

・自室の本棚にTOEICの参考書が並んでいるのに、英語の発音が良い人をやたらバカにする大人

・地下鉄の座席に座り、tik tokで女子高生が踊っている映像を見ているのが、窓の反射でバレバレな大人

・スーツにSDGsバッジをつけてるのに初歩的なセクハラをする大人

など、18歳になった僕たちに、たくさんのみっともない大人を教えてくれました。

昼から始まった大人技能講習は、日没まで及びました。「以上です。ではみなさん素敵な大人になれるように頑張ってください。」講師の男性がそう言って深く頭を下ると、長かった大人技能講習は終わりました。

講習を受け切り少しの達成感を感じつつ、家に帰ろうとしている時、あることに気づきました。その日が金曜日、Mステの日だということです!録画をし忘れていた僕は、走って九段下の改札を通ろうとスイカをタッチしました。しかし残金不足で「ピンポーン!」という音が鳴り、思わず「チッ!」と大きな舌打ちをしまいました。素敵な大人になるのはまだまだ先になりそうです。

囲碁将棋のお二人と、いっつもタメ口の長嶋○茂が、みっともないと思う大人はいますか?

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