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FF14TTRPGの予約のご報告。D&D所持者視点で見る、期待と一抹の不安。

 先日、コノス様でFF14TTRPGのスタンダードルールブックを予約させていただいた
 コノス様はボードゲームやTRPG関係の商品を販売しているECサイト様だ。筆者はいつも利用させていただいている。
 ルールブックからダイス、各種サプライなど取り揃えている。商業、同人問わず、非電子ゲームの商品の品ぞろえは圧巻だ。

 さて、FF14のTRPGという超がつく話題作。筆者は最近14をはじめたのもあって、このゲームのTRPGはやってみたいなと買ってみた。
 
 FF14という、全世界のユーザーアカウント数が3000万を超えた化け物コンテンツ。そんな超人気MMOのTRPGということで、筆者の所属してるサーバーでもユーザーが興味を示している。

 グローバル展開を意識してか、システムの下地となっているのはフィフスエディションRPG(OGL)……つまりは、ダンジョンズ&ドラゴンズ5版と同じシステムだ。
 下地が良いのもさることながら、本作は発売前の情報をさらう限りでは「FF14がちゃんとTRPGとして遊べる良いシステム」だと筆者は考えている。
 そのソースは公式サイトの各種pdfなどだ。

 14の公式サイトではPL用、GM用にそれぞれルールブックを公開している。今の段階でもかなりの情報が閲覧でき、非常に面白い。ぜひ興味を持っている人は一読してみてほしい。
 他にもサンプルキャラクターなども公開されており、情報量がかなり大盤振る舞いだ。嬉しさとともにこれ大丈夫か?というくらい不安にもなってくる。

 簡単にだがそれらに目を通したうえでの期待と不安を語っていこうと思う。

 また本日11/21(木)のPM8 : 00からはデラックスエディションの開封配信も公式によって行われるようだ。
 気になる方は是非見てほしい。筆者は仕事で見れない。



わかりやすい能力値と判定方法

5つのステータス(能力値)とシンプルなサブステータス(副能力値)

 公開ルールブックにもあるが、能力値は5つ
 STR(ストレングス)、DEX(デクスタビリティ)、VIT(バイタリティ)、INT(インテリジェンス)、MND(マインド)となっている。
 DnDと概ね同じで、魅力と判断力がMNDに統合されたような感じだろうか。

 それぞれの能力値は力強さ、器用さや敏捷性、タフネスさ、知力、洞察力と社交性・精神性を表す。
 一般的なファンタジーシステムの能力値の数からするとやや少ない。象だが、少ない能力値ながらもその表現力は素晴らしい

 DnDもそうだが、知性とは別に洞察力のような能力があること人に対するコミュニケーション能力値があることは特筆すべき点ではないだろうか。

MND(マインド)という”人らしい”能力値

【INT】 鋭い知性、正確な記憶力、論理的な思考をする能力を表す。 論理的に結論を導けるか、何かを思い出せるか、隠された物 を見つけ出せるかといった試みには、【INT】を用いる。

【MND】どれほど周囲に気を配っているかや、直感と洞察に優れているかを表す。エモートから意図を察したり、他人の気分を読んだり、周囲の違和感に気付いたり、傷ついたキャラクターの手当てをしたりする試みには、【MND】を用いる。

プレイヤーズブックP8より

 大抵、ファンタジーシステムで能力値を使うのは危険を回避・はねのける場面だ。罠の解除、敵を攻撃、回避や魔法への抵抗などなど。言い換えれば戦闘や冒険に重きを置いているわけだ。
 つまり、多くのシステムで「人へコミュニケーションを試みるためのデータはない(少ない)」

 非戦闘系システムのCoCなどは技能制なのもあいまってか、一口に交渉といっても言いくるめ、説得、信用などと表せるものは豊富だ。
 逆に戦闘系システムは戦うことに重きを置くがゆえにこういったデータが不足しやすい。
 それを補ってくれるのがこのMNDなわけだ。そしてMNDを必要とするジョブとしてヒーラーもあるため、交渉のみならず戦闘にも関わってくる。
 このコミュニケーション能力でありながら戦闘にも関わる能力値というの中々ない。筆者が持っている中だとDnDくらいのものだろうか。
 
 またINTとMNDが別なのもあり、「学はないが心の機微に敏いPC」のような表現も可能なのもうれしい。ここはDnDも同様だ。
 ソード・ワールドなどは学術的調査から状況の些細な変化への気づきなども全て知力で判定していた。そのため知力が低いと感知能力も低くなるといった感じ。
 頭を使うのは全部知力というのは単純明快で分かりやすい反面、些かシステマチックである。
 人の知性や心という目に見えないものを表すには、知力と知性は別のほうが筆者は好きだ。

アーマークラスに相当する"防御力"

 もちろん、ステータスのみならずサブステータスもシンプルながら奥深い。
 HPとMPはもちろん、防御力に警戒能力に相当する警戒度といったサブステータスもシンプルにまとまっている。
 中でも特徴的なのは物理防御力、魔法防御力だろう。D&DでいうところのAC(アーマー・クラス)に相当する。

【物理防御力】 物理的な影響に対処する能力の高さを表す。【物理防御力】は大抵、敵が君に対して行う、物理のアビリ ティのアビリティ判定の難易度として用いられる。
【魔法防御力】 魔法的な影響に対処する能力の高さを表す。【魔法防御力】は大抵、敵が君に対して行う、魔法のアビリティのアビリティ判定の難易度として用いられる。

プレイヤーズブックP8より

 本システムの防御力はいわゆるところの回避力だ。語弊はあるがそう形容するのが最も分かりやすい。
 攻撃をする側は攻撃対象の対応防御力を目標値として判定を行い、成功ならよりダメージが多くなる形式だ。
 防御側は回避判定などは行わず、攻撃側の判定vs防御側の防御力で全てが決まるあたり、ソードワールドの固定回避力やネクロニカの命中判定に近い。

 回避力と言ったが、上述したようにこれは分かりやすさのためであり、正確ではない。
 本邦の多くのシステムでは防御力とはダメージを減らす値でることが多い。対することのDnDでは敵の攻撃をまともに食らわない能力の高さだ。
 さばききれなかった、よけきれなかった攻撃が直撃した感じ。

 この防御力、DnDではAC(アーマー・クラス)だが、以下のように説明されている。

AC(アーマー・クラス)
君のACは、君のキャラクターが戦闘において負傷を避ける能力を表している。ACを向上させる要素としては、君が着用して いる鎧、持っている盾、そして君の【敏捷力】修正値などがある。 ただし、すべてのキャラクターが鎧を着用したり盾を持ったりす るとは限らない。

D&Dベーシック・ルールP11より

 例えば、フルアーマープレートと盾を身に付けた冒険者と、軽装で身軽な冒険者がいるとする。前者はその盾や鎧で致命的な攻撃から身を護るし、後者は鎧わぬことで軽快に攻撃をいなすだろう。
 このように、盾や鎧で攻撃を防ぐことも、身軽さで敵の攻撃をかわし続けることも、どちらも等しく表現した値、それがACなのだ。

 FF14では攻撃を一心に受けるロールとしてタンクがある。ただ、タンクにも盾と鎧を身にまとうナイトから、銃と剣が一体化したような不思議な武器を使うガンブレイカーまで様々。
 だからこそ、DnDでいうAC……本システムでいう防御力のニュアンスが活きる。
 盾で受けきることも、素早い身のこなしでかわすことも、持っている武器で攻撃をいなすなども、等しく防御力で表現できるのだ。


シンプルに表現された"敵視"

 FF14はロール制のシステムだ。
 そのためタンクは敵視を取ることで敵からの攻撃を一心に引き受ける=味方への被弾を肩代わりすることが求められる。

 ロール制MMOのTRPGといえば、本邦では「ログ・ホライズンTRPG」が存在する。あちらは敵視(ヘイト)の数値を管理するのだが、本作には数値としての敵視は存在しない
 だが、サンプルキャラの戦士を見る限り、タンクの敵視は敵へのデバフで、それがついているかいないかだけで管理するようだ

 敵視 デバフ
 君を敵視している敵は、君を対象に含まないアビリティのアビリティ判定に-5のペナルティを受ける。敵視はその敵がターンを終了するか、君が気絶状態になると解除される。

サンプルキャラクター 戦士より

 タンクは攻撃などで敵視を取るのがFF14の役割だったが、この敵視デバフによって敵の攻撃に-5の修正がつく。
 つまり敵視により味方の実質防御力+5と言い換えてもいい
 敵視という本編のゲームシステムと、防御力というTRPGシステムとがうまく絡んだ表現だと思う


 この敵視がタンク共通の特性ならいたってシンプルで分かりやすい。敵視のあるなしだけを考えればいいわけだから、数値として管理する必要もない。
 ログ・ホライズンTRPGではヘイトの数値管理ということで、「これを撃つとタンクとヘイトが並んじゃうな……」とか、それはそれで面白いニュアンスだった。
 だがあちらはヘイトに応じて追加ダメージを受けてしまうし、防御判定への修正などもあり、ヘイトが様々な影響を及ぼす。
 良し悪しだが、こちらのほうがシンプルだしFF14らしがあっていいと思う。


直感的で親しみやすいD20システム

 判定方法はD20システム20面体を1つ振り、そこに指定された能力値を足す形。
 各出目は出る確率が等しく5%。非常に直感的と言える。
 使用する能力値もシンプルで、はじめてTRPGに触れるという人にも安心設計だ。

 本システムは公式曰く成長もない(シナリオのレベルにレベルシンクされる)ため、DnDやソード・ワールドのような能力基本値を出して修正値を出して……という手間もない。
 サンプルのキャラシには、0から5までの範囲の能力値があった。それを修正として判定に加えるのだろう。
 つまり、見た目の通りの1D20+能力値だ。

 ただ、1D20+能力値なので、乱数の幅は大きい
 DnDでは能力修正値は最大で5だった。こちらも同様ならランダム要素は本邦のTRPGと比べて中々に大きいだろう。
 逆に2D6システムなどだと固定値の価値が非常に大きくなるため、ここら辺は好みだろうか。

 判定にこそD20を使うが、ダメージでは他の面体も使用する。
 使うダイスの種類が些か多くはなるだろうが、今では100均で多面体セットが売っている時代だし、オンラインセッションならダイスを都合する必要もない。
 というのもあって、判定やダメージに使うダイスにも心配はなく、シンプルな判定で遊びやすいだろう。

 D20システムは世界的には非常に親しまれている方式なので、もし同様のシステムを持っていれば出たの流用もできるためそこらへんはうれしい。
 DnDもそうだが、例えば来年頭に出る指輪物語TRPGの邦訳版などもそうだし、D20システムでクトゥルフ神話をモチーフにしたサンディ・ピーターセンの暗黒神話体系もある。


おそらくステータス以外にキャラごとの差別化が基本できない?

 基本的にはPCのステータスさえ決まればあとはキャラ作成が必要なさそう、という印象を受ける。

 TRPGのシステムとしてもレベルシンクがあるうえ、ゲームのFF14は同一ジョブ、同一レベルであるならアビリティに差はないからだ
 さらに元々14はビルドや型の概念もない。レベルに応じて使えるアビリティが増えるだけで、選択肢がある中からの任意取得ではない。

 公式でも言われているが、基本的に成長がなくアイテムやアビリティはレベルシンクされる。となるとキャラメイクで作る部分はステータス(能力値)周りだけ……ということになりそうな気がする
 
 スタンダードルールブックではキャラにつけられる称号という要素があったり、装備の個別強化という要素があったりするようで、必ずしも能力値だけ作って終わり!というわけでもないだろうが。

 ……本邦でのTRPGの遊ばれ方の一部を見るに、この簡単さは少々怖いものがある。
 これに関しては懸念点のデータ的優越の部分でで詳しく述べようと思う。


分かりやすい戦闘と、14らしさを表したシステム

戦闘はおおむねDnD。手番中最大3アクションという大盤振る舞い。

 戦闘も基本的にはフィフスエディションRPG、もといDnDに準じる。
 手番が来たらメインアクション、サブアクション、移動を自由に行える。
 そして自由なタイミングで行えるインスタントという、手番中に3つの行動権と自由なタイミングで使える行動権が1つの計4つの行動権を用いて戦闘を行う。
 DnDともかなり類似しており、リアクションがより自由度が高いインスタントに変わった感じだろうか、マジで概ねDnD。

 物理防御力、魔法防御力も見た感じ防護点ではなくDnDでいうACだからマジでDnD。サイズや占有空間などもそう。

 ただ、MMOというシステマチックなコンテンツの再現なのか、イニシアティブなどの概念はない。
 まずPCが動く、次にエネミーが動く、戦闘が終了するまでそれが続く。
 イニシアティブがないのは14らしく良いシステムだと思っている。
 これはIDや討伐戦などの再現としても良いものだと思う。DnDでは冒険というテイストのためかイニシアティブにはダイスが影響するランダム要素があったが、本システムはそれがない。

 さらには他の14らしいシステムも充実している。
 特にリミットブレイク、フェーズ、予兆は14らしさがあり筆者も楽しみにしているもの代表だ。
 集中というこのTRPGならではのシステムも面白い。詳しくは後述。


リミットブレイクは3回という大盤振る舞い

 FF14ではパーティ内共有リソースとしてリミットブレイクがある。どのロールが発動するかで効果は異なるが、ロールごとに発動できる大技というのがリミットブレイクだ。
 筆者は先日まで共有じゃなくて個別だと勘違いしており、気分でたまにタンクLBをしていた。ごめんね味方。

 本システムではリミットブレイクを1戦闘に3回まで行える。ゲームではせいぜい1ダンジョン1リミブレなので、結構破格だ。
 ……といってもまだ新生の途中なのでもしかしたら今後は違うのかもしれないが……。

 リミブレはパーティで3回まで、各PCは1回までしか使えないのもうれしい。
 ゲームではいまのところリミブレ=DPSのものという感じなので、タンクである筆者は撃つ機会がなくて寂しかった。
 だがそれを3回、しかも少なくともパーティの過半数以上がリミブレを撃てるのはとてもうれしいものだ。

 公開ルールブックでは3回となっているが、増える可能性もあるだろう。
 シナリオ難易度の選択もオプションルールとしてあるようで、リミブレ回数+1などしたって良いだろう。
 MMOなTRPGシステム「ログ・ホライズンTRPG」では、因果力というリソースが難易度選択で増えるというのが公式ルールブックに記載されている。
 14もこういった固有リソースの増減などで難易度調整をするのでは?と考えたときに、その対象がリミットブレイクであることもあるかなと愚考した次第。

 それ以外でもハウスルールで増やしたっていい。
 筆者が卓を開催するならハウスルールとしてリミブレ4回としたいところだ。
 各PCの見せ場の一つであるリミブレが全員撃てるというのはGMとして非常にうれしいからね。


フェーズによって移ろう状況

 PCに見せ場があるなら、敵にもあってしかるべきだろう。
 フェーズとは、戦闘が新しい段階に入ることだ。簡単に言えばボスが第一形態から第二形態に変化することだ。
 無料ルールブックによれば以下のような説明がなされている。

 特定状況での戦闘や、一部の強力なNPCやモンスターとの戦闘では、戦闘を継続する意識のある戦闘参加キャラクターがいなくなった後に新たなキャラクターが戦場に追加されたり、キャラク ターが新たな姿や特殊な存在へ変化したりすることがある。
 こういった、特殊な処理を挟んで戦闘を継続する場合、それらは新たなフェーズの開始という形で管理される

プレイヤーブックP18より

 公式でこの形態変化とそれに伴った処理を実装しているシステムは珍しい。少なくとも、筆者の持つ中にはない。
 擬似的に復活スキルで第二形態を表現することはできたが、本システムのように公式によって形態をまたぐ際の処理を明記しているのは初めて見る。

 だが、公開ルールブックにはたいていの戦闘は1戦闘=1フェーズとも明記されているため、より一層深みのある戦闘や表現をしたい場合、このルールは力となるだろう。

 フェーズが切り替わるにあたって、公式でサポートしている処理は以下のようなものだ。

 フェーズが終了して、新たなフェーズを開始する場合には以下の処理を行うこと。
 特記されていないかぎり、すべての戦闘参加キャラクターのバフとデバフ(p.20)が解除される。
 GMは追加される敵キャラクターの戦場への配置や、敵キャラクターのデータ変更を行う。
 冒険者とその仲間は「1フェーズにx回使用可能」という制限のあるアビリティが、再び指定された回数使用できるようになる
 行動順、HP、MP、HPバリア、消費したアイテム、バフやデバ フではなく特性で得たもの(インナービースト、アンブラル ハートなど)はそのまま継続する。
 各冒険者は自分の所持しているアイテムを1つ使用できる。

プレイヤーブックP18より

 他システムでいえば、戦闘は継続しHP、MPはそのままにシーンが切り替わることではないだろうか
 1フェーズ1回というスキルは、フェーズ数回まで使用できるということでもある。
 他ゲームも1シーンに1回というようなそれらしいスキルはあるが、敵が復活してもシーンが切り替わったわけではないので回数は復活しない。「あそこで切らなければ……」「ここて切るべきか……?」という悩ましい状況もあり得よう。
 そのため、クライマックス戦闘での1シーン1回スキルはどこで切ろうかと逡巡する……。

 だが14では1フェーズ1回というアビリティは腐らせずに済む。なにせボスのHPを0にしたらまた使えるようになる。再使用できなくても(フェーズが切り替わらなくても)戦闘には勝つわけだから、余す理由はない。
 復活などの不確定要素を気にせずアビリティを使用できるという気持ちのいいシステムだ。

 またアイテムの使用も担保されており、HPなどのリソース回復も行える。これを公式でサポートしているのはうれしい。
 公式でサポートしているということはしっかりと全ユーザーへ共有され、みんなが均一で平等なプレイ経験を得られることだ。
 こういうルールの明記をないがしろにすると、知ってる人の間では慣習化し、新規ユーザーとの間で溝が深まってしまうのだ。
 参加者間でこういった溝ができると、プレイヤーもマスターも困りかねない。
 特に戦闘系システムはPLごとにどれだけ戦闘に慣れているかは顕著に影響してくる。慣れているプレイヤーに合わせたら新ユーザーを置き去りにするかもしれないし、

 ともあれ、フェーズが切り替わる(ボスが形態変化したり)は強大な敵との戦闘を意味する。それに合わせてリソース回復が担保されているのは楽しく気持ちが良い


味方と協力しあう予兆システム

 予兆  
 一部のアビリティや効果には「予兆を発生させる」という記載がある。
 予兆とは、何かが起ころうとしている予告を戦場に可視化し ているものである。
 予兆が発生したら、プレイヤーに分かりやすいように、GMは予兆の範囲を戦場に表示する必要がある。
 戦場を表すマップ上に範囲 を図示したり、範囲を表すマーカーを置いたりなどである。
 予兆は以下の要素で構成されているが、ある要素について項目がない予兆は、その要素を有さない。

 発生源
 予兆を発生させたアビリティや効果。

 支配者
 予兆の発生源を使用したキャラクター。支配者が予兆を維持できない状態に陥ったならば、その予兆は戦場から取り除かれる。予兆を維持できない状態に関しては、デバフ(p.20)を参照

プレイヤーズブックP16より

 ゲームFF14の主人公(プレイヤーの作ったキャラクター)は超える力を持つ。時、言語、言葉などを超える不思議な能力ということで、敵の予兆攻撃は「大技が来るぞ」というちょっと先の未来を見た結果というわけだ。
 例えば、巨大な斧を持つ敵を中心とした円が示されれば、それは斧を振り回して攻撃してくる前兆、というわけだ。
 こういう予兆っていうシステマチックなものも、作中の設定(超える力)で説明できるの好き。

 ともあれ、14らしく敵の攻撃の予兆(事前告知される攻撃範囲)システムを内蔵している。
 これを公式でサポートしているルールは見たことがない。
 大技が事前に解除条件や内容を公開されるのは

 予兆にもいろいろな種類がある。公開ルールブックでは書かれていないが、予兆の中でも最も単純な「避けなければいけない攻撃」以外にもあるだろう。
 例えば、目線を合わせてはいけない「視線ギミック」、タンク一人では受けきれないがみんなで範囲内に残ってダメージを分担しあう「頭割り」など。

 ゲーム本編だとリアルタイムで進行するため少々忙しいが、TRPGではお互いに相談しあいながら一緒に足並みをそろえて行ける。
 このそれぞれの役割(タンク、火力など)以外にも協力してギミックに挑み、強敵を倒すのは充足感がある
 しかし考えてみれば移動に射程圏内に近づく以上のニュアンスを持たせたのはすごいことだよなぁ。
 他MMOもこう(予兆がある)なのかは知らないが、ともあれこの面白さはTRPGでも発揮されるだろう。

 大まかにはボスの大技などが該当する予兆だが、天井から針の付いた天井が迫ってくるなどのイベントも表現するという例がある。
 色々と面白いことができそうだ。


移動する代わりにサブアクションとして使用する"集中システム"

 集中
 キャラクターが自分のターンに全く通常移動を行っていなければ、そのターンにサブアクションを追加で1回(合計2回)行うことができる
 ただしこれを行うと、そのターンは一切の通常移動ができなくなる。

プレイヤーズブックP11より

 大抵のTRPGやセッションでは移動=接敵するための手段として使われ、それ以上の役割はないことも多い。つまり、移動自体はできるが早々に意味をなさなくなるということだ。
 これを解消しているものと言えばやはりFEAR系システムだろうか。あれは移動が終わってもそのタイミングでスキルを発動することができる。
 そしてFF14システムも、これに近いシステムを持っており、移動しない代わりにサブアクションを追加で行える集中が実装されている。

 FF14は使用するアビリティが非常に多い。アビリティの数に対して行動権が足りないというのは、筆者でも容易に想像がつく。
 これを解消するのが集中=移動をサブアクションに変換するシステムなのだと思う。
 筆者のゲームジョブはナイトだが、使いたいスキルは山のようにある。、防御バフ、固有CDはあるがGCDのない攻撃、敵視を取るための挑発から詠唱が始まればインタージェクトで中断したりなど。

 1手番にメインアクション、サブアクション1回ずつだとするとちょっと行動権が足りなさそうだ。ここにサブアクションが1回増えると、中々どうして良さそうだ。
 実際にサンプルキャラのバードを見てみると、確かに、これはサブアクション2回使いたいよなというのも納得だ。

 予兆があれば移動してギミック参加し、移動の必要がない=敵への攻撃に集中できる時ならアビリティをたくさん使える。
 移動をアクションへ変換できるのは、アビリティをたくさん使ってPCたちに見せ場が回ってくることでもあるし楽しみだ。


懸念点

 先に断っておくが、これからネガティブな話をする。
 その前提としているのは、「PLがルールブックの購入を検討した時にどんなメリットがあるか」だ。
 後述もしているが、本システムは高い。それならそれに見合ったものがあってほしいと思うのは人情だろう。

 ただ、FF14の公式から発売されるシステムであり、14らしいギミックが盛りだくさんなのは非常に素晴らしい。
 ファンアイテムとしてはもちろん大満足だろう。
 GMとしても14の大量のデータとギミックを自分の卓で広げられるというわくわくは何物にも代えがたい。

 だが、果たしてPLは買って、読んで、どう思うのだろうか。
 もちろんファンとしてはうれしいだろう。だが、些かの不安点がある。

価格が非常に高い

 本システムは安いシステムではないし、むしろ最高価格帯に位置する。
 
 となれば、いくらFF14という巨大な看板があれど、高い値段に相応の「買ってよかった」という納得感が欲しい。そう思ってしまうのは人情だろう。
 ルルブを持つのも持たないこともそれぞれメリットがある。持つことによるメリットが、持たないことによるメリットを上回ってほしい。
 ルルブの所持の有無によってPLを取り巻く環境がどう変わるのか。ここが問題だ。

 だが、公開されている情報を鑑みるに、ルールブックを買うメリットは値段に見合っているのだろうかと考えると、筆者は見合っているとも見合っていないとも言い切るのは難しい。
 特にデータ、ことPLが自由なキャラメイクをするという面では怪しい気がする。
 GMを主にする筆者からすれば本システムは非常にありがたいのだが……。PLにこれを買ったら自由度が高くなるよ!とか、買うとより一層キャラの表現が増すよ!とは言えないのではないか。

 ともあれ、このデータ的側面は詳しくは次の項目で述べる。

 だがもちろん、ファンアイテムとしては本システムは十二分以上に魅力的だろう。価格帯から考えるに、全ページフルカラーで美麗イラストも堪能できるだろうし、満足感はあると思う。
 さらにはFF14の愛着のあるキャラクターをロールプレイを通じて表現できるのは本システムだけに許された特権だから、他のシステムでいいということもない。
 憧れのあの世界でTRPGができる!というのはうれしい。
 ページをひとつめくるたびに、憧れの世界に触れ・没入できるのは極上の体験だ。

 どうしても電子ゲームではどんなに自由度が高いゲームでも、キャラクターの行動や表現には限界がある。だがTRPGはこの自由度が非常に高い。
 これは自分のキャラに愛着がある人ほどうれしいだろう。
 「この子はこんな性格で、こんな言動で……」と思っても、それを形にするのは難しい。イラストや小説にすることなどが分かりやすいが、それもまた大変だ。
 だが、TRPGではロールプレイを通じて自分のキャラクターを表現できる。語るという、多くの人間にできる方法でキャラを表せる。
 そして各々のPL、PC、GMによって彼らにしかない冒険を作り出せるフレキシブルさ、これこそTRPGの神髄だろう。
 この自由度でキャラを表現できることは間違いなく強みだ。
 
 だが……高い商品である以上は、それ以上も求めたい。
 そのメリットとして最たるものがデータだと筆者は思っている。


ビルドがない以上、ルルブ所持によるデータ的優越はなさそう

 ルールブックを持っているプレイヤーは持っていないプレイヤーより優越されるべきだ。まずはデータ的に優越するべきだ。
 具体的には「ルールブック所持者のお手製キャラは未所持者のサンプルキャラと明らかに違う(こともある)こと」と「好きな時にキャラが作れる・データの確認ができること」だと思う。

 FF14のゲーム本編にビルドは存在しない。ということは本システムでもそう=同一ジョブ・同一レベルならアビリティに差はないのでは?という懸念がある。
 レベルシンクの仕様を考えると、アイテムとアビリティは強制的に均されてしまうため、ルルブ所持者と未所持者の同一レベル・同一ジョブのキャラの差異は能力値(ステータス・サブステータス)くらいしかないのではないか?

 例えばソード・ワールドでは戦闘特技という数ある中から選んで取得するものがある。
 ルルブ所持者は「特技には何があって」「どんな効果か見れて」「それを好きなタイミングで確認・キャラ作成ができる」からこそ、ルルブがあると自由にキャラメイクできるなぁというメリットを享受できる。
 だが、14のゲームはアビリティは強制取得であり、任意取得=ビルドがない。
 大げさに言えば、ルルブ所持者と未所持者はそんなに変わらないのではないか。

 ルールブックは安い買い物ではない。特に一部のルールブックは本当に高い。そのため筆者はいつもルルブ所持関係なし卓をやっているし、やるなら買え!とも言えない。だって高いし。
 実際の卓にはルールブック未所持者のみならず、そのシステム未経験者や、TRPG未経験者だっているだろう。
 そのシステムに慣れていなくてもキャラメイクからセッション終了まで、愛着あるキャラにで最後までプレイしてもらいたい。楽しんでもらいたいと筆者は考えている。
 楽しんでもらうためにキャラメイクの際には筆者はデータ提供を惜しまない。無論、形では残さず口頭での説明とはなるが。
 頑張って作った自分だけのキャラクター。設定、スキル、装備もオンリーワンなキャラクターができたら愛着も湧こうというもの。

 だが、ルールブックを持っているプレイヤーの手製キャラクターと、未所持者のサンプルキャラクターがほぼ同じにしかならないなら、それはちょっと複雑な気持ちにならないか?

 ということは、アビリティが同じなら能力値の割り出し方さえ判明したらキャラができてしまうのではないか?

 これの対策はルルブ未所持者の参加を断ることだ。
 だが、ルルブ未所持でないと参加を許さないとなると、非常に敷居が高くなる。だからと言って未所持者の参加を許すということは共通部分のアビリティデータを公開することとも言えてしまう。

 ソースは、公開されているGM用ルールブックのFAQだ。

Q. どうやって経験値を集めてレベルアップできるのですか?
A. このゲームには経験点はありません。冒険者のレベルはGMが用意したシナリオの推奨レベルにレベルシンクされていると考 えてください。

Q. 冒険者の武器や防具などの装備品のデータはどこですか?
A. このゲームでは、冒険者はジョブとレベルに応じた適切な装備 品を所持しています。レベルに合わせて装備品を購入したり、 手に入るまで特定のクエストを遊んだりする必要はありません

Q. かばんや水袋、保存食やたいまつ、携帯寝具や食器、ロープや 手鏡や伴開け道具といった、冒険に必要になるかもしれない品 物はどのように準備して、冒険者の所持品として管理するので すか?
A. このゲームではそういった品物は冒険用品と呼ばれ、冒険者で あれば必要な分を常に用意しているものとして扱われます。そ のため別途管理をする必要はありません。詳しくはスタンダー ドルールブック(別売り)をご参照ください。

ゲームマスターブックP17より

 装備品はレベルシンクされるといっても、サンプルキャラを見る限りアイテムという項目はない。つまりアイテムは持っているというフレーバーしかない。消耗品などの所持品の項目もない。
 アビリティが共通部分なら、ルールブックを買うことで得られるキャラ作成のメリットは能力値の割り出し方のみということではないだろうか……?


ルールブックを持たずにキャラが作れてしまえるかもしれないリスク

 だがアビリティや特性の全データはルールブックを参照するしかないはずだ……だが、キャラシを保管するなにがしかのウェブサイトがあれば簡単にチェックできる。
 となると、能力値さえ作れたらキャラが作れてセッションができる……。それを悪用する人はいないと信じたいが、悪用できてしまえるリスクがあるのは非常に恐ろしい。

 とある嫌な噂を思い出す。
 それはCoCの公式discordサーバーで、ルルブ未所持者がKPをしたユーザーがいるという噂だ。
 又聞きであるため、もしこの噂が根も葉もないものであったら申し訳ない。 

 CoCはキャラの作成と保存のため「いあキャラ」を使用することが多い。
 筆者自身何度か卓参加のために「いあキャラ」様でキャラメイクしたが、少し教えてもらっただけでルールブックを持っていないにも関わらず、キャラができてしまった。少なくとも能力値が設定され、技能ポイントを振ったキャラができた。
 これは素晴らしいことであると同時に、非常に恐ろしいことでもある。

 CoCは基本的には非戦闘系システムだ。基本的に武器や防具などを取得する必要がない。
 CoCのデータの実体は技能だ。極論、技能さえあればセッションに参加し、判定ができてしまえる。そして、その技能までは簡単に作れる……。
 いあキャラ様含め、キャラシ作成サイトは素晴らしいし、どのシステムでも筆者もお世話になっている。そしてCoCの技能制という分かりやすいシステムは勿論素晴らしいものだ。
 だが、CoCという触れやすく・普及し・判定方式が簡単なシステムだからこそ、未所持KPなどという事件が起こってしまったのではないだろうか。
 誰が悪いという責任の所在の話ではない。
 そういう悪用の仕方をできるリスクが、この14のシステムにもあるのではないかという話だ。

 まぁそういう話をするなら、簡単にキャラシを作れるシステムは悪という話になってしまう。
 ログホラTRPGもまた公式サイトでキャラが作れる上にデータがほぼ全部確認できてしまえるし、確か能力値も作成も簡単だった。
 マモノスクランブルなどもキャラ作成部分含め、公式サイトで大部分が公開されている。
 それらはどうなんだと言われれば、難しいものがある。
 そういうシステムが悪いとか、作成できるサイトが悪いのかとかそういう話ではないし、例に挙げた未所持KPの件もこれが悪いという、何かをそしりたい訳ではない。
 が、非常に危うい側面があるのは確かではなかろうか。
 ……まぁ戦闘系でそれをするなら、アビリティのみならずエネミーデータもなんとかしないといけないので杞憂だとは思うが。

 だが、CoCやエモクロアといった今のTRPGのメインストリームは有償シナリオを買って遊ぶものだ。シナリオにデータもついてくることも間々ある。
 それと同じ遊ばれ方をしたら場合によってはエネミーデータがついてくる=これまたルールブックの恩恵が薄くなる可能性もある。
 FF14はSPLLの対象外であり、システムもD20と日本のTRPG環境的には逆風。わざわざ14でもそういう遊びをするかは分からないが……メインストリームがそうなのだからと、どうしても筆者は身構えてしまう。


 あと、ルールブック未所持でやるくらいなら公式のクイックスタートをダウンロードして読め、とも思うが、この手の輩にそういう努力を求めるのも無駄だろう。
 悪用する奴はどこにでも潜在的にいる。
 本システムでそれを見たくないというだけの話ではあるのだが。

 閑話休題。
 
 しかし、幸いにもアビリティや特性など複雑なデータも大量にある。そのため「能力値さえ出せばあとはプレイできるから買わなくていいや!」なんてことはなくなる。少なくともそう信じたい。

 他にも発売されるルールブックにはさらなる遊び方が載っている。オリジナルプロフィールの作成や、アイテムの購入や装備の強化などもあるらしい。
 だが……ビルドがおそらくない以上は、最低限のキャラメイクだけではキャラの差別化は難しそうだ。
 ゲーム本編がそうなのだから仕方ないのだろうが……。

 例に挙げた未所持KPは極端な例ではあるが、こういった悲劇が起こりうる要素があるのでは?と少々心配になってしまう。


まとめ:TRPGでエオルゼア世界を旅できる、唯一無二のシステム

 筆者の勝手な憶測の懸念はさておき、FF14という非常に魅力的な作品を、TRPGでプレイできるのはやはり非常にうれしい。
 しかも下地にしているシステムはDnDということで、触れやすく、表現力のあるシステムなのもありがたいことだ。
 だが、それ以上にFF14をTRPGとして落とし込んでいる手腕には脱帽しかない。
 あの世界、あのジョブ、あの冒険がロールプレイによって楽しいものになるのは疑いようもない。
 世界観、ファン、下地のシステム、TRPGとしての落とし込み、発売前から非常に素晴らしいものに恵まれているなと、楽しみで仕方ない。

 ただ、今のところ公開されている情報だと、ルルブ未所持プレイヤーと所持プレイヤーのキャラのデータがそこまで変わらなさそうなのは、仕方ないとはいえ恐ろしい。
 本発売でどれだけさらなる遊び方やキャラの個性の付け方や面白いデータがどれだけ入っているか、ぜひこの目で確かめたいところ。
 本当にフレーバーでもいいのでキャラクターの設定や背景を色々な形で表現できるようになっていれば猶更いいよな。

 あとうれしいのは、D20システムということでコンバートは必要だろうが同じシステムのデータが流用できる点だ。DnDのエネミーやアイテムデータをこちらに持ってこれる。
 D20のサンディ・ピーターセンの暗黒神話体系を持っているならヒカセンvs神話生物ということもできる。
 モンスターマニュアル(DnDのエネミーデータ集)には330超のモンスターデータや設定が載っているしシナリオフックにもなろう。ダンジョンマスターズガイドからは様々なマジックアイテムをこちらに持ってもこれよう。
 D20は世界的にはメジャーシステムなので、こういった恩恵があるのはうれしい。本邦ではまぁやや逆風だが……。

 FF14という素晴らしいゲームを下地にしたTRPGで、しかもD20システムゆえの他システムからのコンバートは本システムの特徴だろう。
 本発売が楽しみである。

 そして重ねてになるが、本日夜8時から公式にてデラックスエディションの開封配信が行われる。もし興味があればぜひ見てほしい。


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