巣ごもり中の趣味にピッタリ!消しゴムはんこを作ってみよう
新型コロナウイルスの感染者数が再び増加傾向にあり、不安な日々が続いています。外出を極力控えなければならない状況に置かれて、ふと気づきました。
「僕、自宅でできる趣味が少ないのでは……?」
寄席や展覧会へ出向いたり、本屋巡りをしたり、休日は何かと出歩きがちな過ごし方をしている僕。もちろん、自宅でNetflixを観たり、本を読んだりとインドアな趣味もあるのですが、何となく集中力が続かずに中断して、結局ダラダラしたまま一日が終わっていくパターンが多いです。
せっかくだし、自宅でできて、多少の生産性があるような趣味があるといいのだけど……。そこで思い出したのが、友人・もりたとの企画『東京のつらい場所』でのこのやりとりでした。
もりた:ほら、もりた、消しゴムはんこが特技じゃん?
Ryota:初耳だよ! そんなナンシー関的な趣味があるの(笑)?
もりた:嘘でしょ、知らないのー? もりたの消しゴムは有名ですよ。(中略)だって私、大学の学祭、消しゴムはんこで10万円を売り上げた女やで。
Ryota:すげぇ!
消しゴムはんこ……良さそう。自宅でできるし、ちょっとクリエイティブな雰囲気もある。作り方を覚えれば、巣ごもり中のいい趣味になる気がするぞ。
というわけで、今回は消しゴムはんこの作り方をもりたに教わります! よーし、作るぞ!!!
STEP1.道具の準備
Ryota:消しゴムはんこはいつから作り始めたの?
もりた:大学2年か3年生くらいのときからかなぁ。学園祭でお金儲けがしたくて。
Ryota:動機が強欲だな(笑)。
もりた:原価が安くて、自分で作れる、他の出店と競合しないものを考えてたどり着いたのが、消しゴムはんこだったわけですよ。実用的な楽しみもあるから「用意すれば誰かしら買うやろ」って軽い気持ちで始めたら、意外な才能が開花して……。
Ryota:いくら売り上げたんでしたっけ。
もりた:1個100円の物もあるし、500円の物もあって、3日で10万円売上げたかな。原価率から考えるといい稼ぎになったよ。学祭でスタンプラリー企画があったんだけど、当日に使う予定のスタンプが欠けちゃったとかで、急遽、代わりのスタンプの制作を頼まれたこともあったな。それは2時間ぐらいで彫って、3万円くらいもらった。
Ryota:BtoBもやってる……(笑)。
もりた:今は売ったりしてないけど、趣味でたまに作ってる。消しゴムはんこのいいところは安く始められるところだからね。
Ryota:じゃあまずは、どういう素材や道具を使うかから教えてもらっていいですか。
もりた:用意するのは、はんこ用の消しゴム、デザインカッター、カッターマット、トレーシングペーパー、シャープペンシル、練りけし。
Ryota:へー、はんこ用の消しゴムっていうものが売ってるんだ!
もりた:そうそう、柔らかめで彫りやすい、はんこ専用のものが売ってます。私が使ってる消しゴムは、セリアとかダイソーとか100円ショップに売ってるもの。手芸ショップでも買えるんだけど、彫りやすい分、割高なものが多いんだよね。気軽にスタートするなら、まずは100円ショップで売ってるもので十分だと思います。
もりた:カッターはデザインカッター1本で彫ってます。彫刻刀でもいいんだけど、デザインカッターのほうが細かいところまで彫れて扱いやすいんだよね。これも100円ショップ。
Ryota:大体100円ショップで買えちゃうね。
もりた:そうだね。使う道具はほとんど100円ショップで揃うから、初期投資は1000円くらいなんじゃないかな。あとは図案があればOK。
もりた:私は絵を描くのがニガテなので、消しゴムはんこ用の図案本を使っています。今回用意したのは学研パブリッシング・編『大人モチーフの消しゴムはんこ』(学研プラス/写真左)と、江口春畝『すぐに役立つ消しゴムはんこ2000図案』(日貿出版社/写真右)。
Ryota:こういう本も出てるんだ、知らなかった!
もりた:利用フリーの図案サイトもあるし、個人使用の範囲なら好きな漫画やイラストを基に作ってもいいよね。さて、さっそく作ってみましょう!
STEP2.図案を転写する
Ryota:彫りやすいのはどんな図案?
もりた:あまり複雑じゃなくて、線が細くないものの方が最初は作りやすいと思う。
もりた:まずはお手本として、『大人モチーフの消しゴムはんこ』のこの図案を彫ってみるね。
もりた:まずは図案にトレーシングペーパーを重ねて、シャープペンシルでなぞっていきます。ここをちゃんとやっておかないと、あとから彫るのが大変なので、意外と大切な作業です。
Ryota:黒い部分は塗りつぶしていくのね。
もりた:トレーシングペーパーがズレないか心配なときは、マスキングテープを貼ってペーパーを固定すると写しやすいよ。
▲図案を写したトレーシングペーパー
もりた:図案を写し終わったら、消しゴムにトレーシングペーパーの絵を重ねて、上からこすっていきます。
Ryota:なるほど! シャーペンの粉が消しゴムにくっつくから、重ねてこするだけで図案を転写できるのか。消しゴムはんこって、柔らかくて彫りやすいこと以外に、絵を写すのがラクっていう利点もあるのね。
もりた:そういうこと!
STEP3.消しゴムを彫る
もりた:絵を消しゴムへ写せたら、いよいよ彫る作業。まずは、作業しやすいサイズになるよう、外側の余分なところをざっくり切り落とします。
Ryota:片手で扱いやすいサイズに。
もりた:図案を彫るときはまず、刃が直角より少し斜め外側に向かう角度でカッターを入れて、線に沿って彫っていきます。刃を動かすより、消しゴムを動かす方が曲線をキレイに彫れるよ。
もりた:周りが彫れたら、彫った線よりひと回り外側から、今度は斜め内側へ向けてカッターを入れていきます。あまり深く彫りすぎると、絵の部分まで削ってしまうので注意が必要です。
もりた:斜め外側・斜め内側に彫っていくことで、絵に沿ってV字の溝を作ってあげるわけですね。丸いところは刃を内向きに入れて、くるっと回してあげればOK。
もりた:「OPEN」のOの字は、内側から彫ると図の部分を傷つけやすいので、まずは外側の輪郭を彫ってから、中をくりぬいていきます。点線の箇所は一つの点を細かく彫ると大変だから、最初に直線上をスーッと一緒に彫っちゃって、それから点の間を彫っていくとラク。
もりた:はい、とりあえず大枠は彫れた。
Ryota:作業を始めて30分弱か。思ったよりサクサク進んでいくな。
もりた:ここで練りけしが登場。溝の間の削りカスを取っていきます。削りカスが残っていると、変なところが白く残っちゃったりするからね~。カスが取れてキレイになったら試し押しです。
STEP4.試し押し・仕上げ
もりた:消しゴムを置いて、インクを上から押し付けます。この方がムラなくインクが付いてくれるよ。
▲インクを付けたら、いよいよ試し押し!
Ryota:お~! いい感じじゃない?
もりた:試し押しを見て、彫りが甘くてくっついて見えるところや、削り漏らしているところを確認して、削って調整していきます。点線ももうちょっと細い方が可愛いかな……。
▲インクをふき取り、微調整のため彫り足した消しはん
もりた:2度目の試し押し。点線が細くなって、文字もはっきりしたね。
Ryota:手作りの味が出てるなぁ。
もりた:ここまで来たら、最後の仕上げとして、外側の余白を切り落としていきます。まっすぐ切り落としちゃうと、ハンコを押すときに変な力がかかってキレイに押しにくいので注意。彫ってない面の方が広くなるよう、斜めに角度をつけて切り落としていきます。ここで調子に乗ると、絵の部分まで切り落としてしまうので、慎重に。
▲余っている外側を切り落として……
▲完成!
Ryota:おー、すごい! 45分くらいで完成した!
もりた:本当は持ち手をつけると使いやすいんだけど、今回は面倒だから使いません。
Ryota:持ち手はどういう風に作るの?
もりた:長く使わないなら、手ごろな大きさに切った発泡スチロールを、両面テープでくっつけて、持ち手代わりにするのが簡単かな。長く使うと発泡スチロールが腐食してくるから、あくまで短期的にだけどね。
Ryota:なるほど。
作業の流れをおさらい!
1.図案をトレーシングペーパーに書き写す
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2.図案を消しゴムに転写
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3.消しゴムを彫る
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4.練りけしで削りカスをとる
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5.試し押しして、彫り足りないところを微調整
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6.外側の余白部分を切り落とす
⇒完成!
実際に彫ってみた!
Ryota:2021年の干支である牛を彫ってみようと思います。図案は『すぐに役立つ消しゴムはんこ2000図案』のものです。かわいい。
もりた:最初はトレーシングペーパーに写すところから。ペーパーがズレないように、マスキングテープで固定してあります。
もりた:なぞり忘れのないように注意して。ちゃんとなぞれているか不安な時は、トレーシングペーパーをペラっとめくって、確認しながらやるといいよ。順調?
Ryota:結構いい感じ! なぞり終わったから次は転写だね。
もりた:こするときは爪を立てたほうがいいよ。おー、いい感じにできてるじゃん!
Ryota:キレイに転写できた! ここまでは思ったよりスムーズだな〜。
Ryota:まずは外側のいらない部分を切り落として……。なんだかむにゅっとした抵抗感もあるけど、柔らかくもある不思議な感触だな。
もりた:彫るときには、自分の指よりもカッターの刃が前に行くようにしておかないと、手を切っちゃう可能性があるから気をつけてね。
Ryota:了解! まずは牛の輪郭を彫っていきます。手先が不器用な方だから、慎重になっちゃう……。
もりた:大丈夫、多少失敗してもそれが味になるから。不器用な人でもできる趣味だからね、消しゴムはんこは。
▲黙々と輪郭を彫っていく。
Ryota:輪郭に沿って斜め外向き→ひと回り外側から斜め内向きの順に彫って……。よし、牛の輪郭は彫れたかな。
もりた:次は絵の内側の白い部分を彫っていこう。牛の鼻や口の部分は、消しゴムをくるくるっと回してくり抜くイメージで。体の部分は面積が広いから、まず外側を彫るのと同じ要領で輪郭に沿った溝を彫り、その後で内側を削っていく。そうすると、絵の部分を余計に削る失敗をしにくくなるよ。
▲線を彫る時と同様に、カッターの刃を斜めに入れて白い部分を削いでいく。
もりた:よし、ここまでできたら、試し押ししてみよう!
Ryota:うまくできてればいいけど……。
Ryota:お〜! 牛だ! ちゃんと彫れてる!
もりた:彫りの甘いところを微調整すれば、完成まであと少し!
▲外側の余計な部分を切り落として……
▲完成!!!
▲味のあるかわいい牛スタンプができました!
Ryota:今回初めて消しゴムはんこにチャレンジしたけど、意外と簡単にできたなぁ〜。慣れるともっとスムーズに彫れるようになると思う。
もりた:それに、彫ってるうちに「もっとやりたい!」っていう気持ちになってこない?
Ryota:確かに、彫ること自体に夢中になってくるね。
もりた:100円ショップで材料も揃うし、本当に気軽に始められるから、ぜひみんなの新しい趣味にしてほしいな〜!
というわけで、今回はもりたの手を借りて、消しゴムはんこ作りに挑戦しました。美的センスゼロで不器用な僕でもできるのか不安でしたが、既存の図案を使えばかなり簡単にできることがわかりました!
色々な不安が山積みな近頃ですが、頭の中を空っぽにして彫ることだけに集中できる消しゴムはんこ作りは、気分をリフレッシュできるという点でもオススメの趣味だと思います。巣ごもり中にぜひトライしてみてください!
インタビュイー
もりた(Twitter:@minic410)
逆流性胃腸炎気味なのにビールと煙草中毒なOL。
クーチェキでは「情事の後は、必ず金マル。」を連載中。
短期集中演劇創作イベント『第一回DramaJam』では、「短歌病」で脚本賞を受賞。
インディーズ小説「あなたは砂場でマルボロを」「許してよ、ダーリン」がKindleをはじめ各種電子書店にて発売中です。
インタビュアー・記事構成
Ryota(Twitter:@Funatoku_ryota)
クーチェキの企画・運営・編集をやっています。