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ジンギスカンで夏を乗り切ろう
仲の良い友達とジンギスカンを囲んで、ワイワイ談笑しながら美味しい肉を頬張り、キンキンに冷えたビールを流し込む。最高ですね。楽しいですね。
という食べ物の話で来てくれた方には申し訳ないが、ここは音楽好きおじさんのひとりごとしか置いてないんだ。
だからジンギスカンといえば、
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こっちの話をする。
70年代から活躍するドイツの音楽グループで、かつて世界的な人気を誇り、解散・再結成・メンバーチェンジを経て今もなお活動している、歌ありダンスありのアイドル的エンタメ集団である。
日本では運動会で流れてた曲としてなぜか有名である。ジン(Hey)ジン(Hey)ジンギスカーンというフレーズは、マイムマイムと日本文化センターに並ぶ脳内再生余裕度を誇る(一定の年齢限定)。
なんで文科省御用達ダンスソングだったのかは知らないが、
・遅くも速すぎもしない、でもやや速い運動にちょうどいいBPM。
・「Huh!Hah!」とか「Wa ha ha ha」など威勢の良い合いの手。
・エメラルドソードに匹敵する中毒性を帯びたキャッチーなサビ。
など、運動にあたってプラスになる要素がたくさんある(気がする)。その上で、小学生のダンス心を鼓舞するにはうってつけと教育委員会が判断した結果なのかもしれない。同時代ならダンシングクイーンでもブギーワンダーランドでもあったろうに、なぜドイツ語の歌を…という調査はいつか探偵番組にやってもらいたい。ともかく、そのくらい大ヒットした結果ということだろう。
このジンギスカン(曲)を生み出した、ジンギスカン(グループ)ことDschinghis Khan。実は最近YouTubeで公式チャンネルが作られて、ヒット曲はすでに数百万再生になっている。そして日本語のコメントで溢れかえっていて、日本人のこころの故郷になっている。
そもそもこのDschinghis Khan。事の始まりは、とある音楽プロデューサーが企画したものだったという。その後オーディションを経てメンバーを決め、クセ強め中毒ソングで鮮烈なデビューを飾ったいきさつがある。
つまりモー娘。である。アイドル大国日本に先駆けること20年、この手法で世界的な旋風を巻き起こすとはやはりドイツは計り知れない。なおメンバーの出身は西ドイツ・東ドイツ・オランダ・ハンガリー・南アフリカと実に多国籍である。EU内の多国籍メンバーがモンゴルをモチーフにするという多様性を推して文科省推薦になったのかは定かではない。
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楽曲のコンセプトも多様の一言で、モンゴルに始まりロシア、メキシコ、イスラエル、中国、日本、アフリカ、古代ローマなどの国々をテーマ(ネタ)にした曲を作っており、秀逸なMVは上記のチャンネルからおなかいっぱい見れる。多様性のお手本としてEテレで流すべき。
アイドルグループといえばセンターが要だが、このDschinghis Khanはそのセンターの存在を特に重要視しており、最適な人物を見つけていた。それがMVで見事なダンスを見せるルイスさんだ。
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6人という人数でどうやってセンターを張るかという数学的難題を、魔人的振る舞いにて解決したDschinghis Khanを象徴するメンバーである。でも歌わない。ダンサーなので。
そんな経緯で1979年にデビューした彼らは、ジンギスカンが世界で大ヒットして日本でもチャート1位に輝いた。折からのディスコブームに乗り、アメリカからはアース・ウィンド・アンド・ファイアー、スウェーデンからのABBAに対し、ドイツが出した答えはジンギスカンだったのだ。
この時代のもう一つのヒット曲といえば「めざせモスクワ」である。もすかうの空耳で有名だけど、これのMVももちろん公式チャンネルで見れる。ルイスさんのバレエからコサックダンスなど多彩すぎるほどのソロダンスに加え、戦隊物と見まごうメンバーたちの衣装も、細かい足技の冴え渡る振り付けもかっこいい。地味な背景に反して情報量が多すぎて何周もしてしまう。
楽曲面でも、我らドイツこそ西洋音楽の本流たれというような風格がある。
四つ打ちディスコなのに重厚なブラスをフューチュアし、しかもアルバム版では荘厳なコーラスも付いてイントロだけで1分を越える。メロディに入ればクラシカルかつ美しく繊細な対旋律とオーケストレーションが厳寒の北の都を想起させ、1番はユニゾン、2番はコーラスで広がりを持たせるといった様式美をしっかり守っている。神聖ローマ帝国の大いなる遺産がふんだんに用いられているのだ。もちろん飽きさせない展開と、キャッチーすぎるにもほどがあるサビといったジンギスカンのお約束も忘れない。
これも大ヒットしたんだからこの曲も文科省推薦ソングになってもおかしくないが、冷戦中に仮想敵国の首都名を連呼するのは体制的に問題があったのではないかという疑惑があったというような話はない。
このジンギスカンとめざせモスクワが特に有名な2曲だけど、彼らの青天井エンタメ精神はとどまるところを知らない。
・メンバーのドラムソロも炸裂するロックンロールナンバー。
・泣きのメロディが炸裂する珠玉のバラード。
・「フッ!!」「イヤーッ!!」という掛け声が延々続く謎の珍曲Samurai。
というようなエンタメのジェットコースターのような楽曲が続くアルバムがデビューアルバムであった。
そんな粒揃いの中でも、前述2曲に劣らない勢いと中毒性の高い曲がある。
Hadschi Halef Omarという曲で、邦題はハッチ大作戦。ちょっと何言ってるか分からない。なので歌詞世界を読み取るのは難しいが、ジンギスカンは文字で語らずダンスで語る。とにかく元気の出るMVを観てほしい。
オケヒから始まるアタマからテンションブチ上げダンサブル路線で、6人編成を上手く活かしたフォーメーション、語学なんていらない「Ha ha ha」で押し切るサビ、ユニゾン・コーラス・合いの手・男女別と変幻自在なヴォーカルワーク。ジンギスカンの魅力がこれでもかと詰まった傑作である。
この曲は鮮烈すぎたデビューアルバムの一部ではなかったので日本での知名度ではややマイナーだが、キャリア的にはジンギスカン有名三大楽曲の一つに数えられるだろう。後年の再演でもメドレーにして見事なパフォーマンスを披露してくれている。
オリジナルメンバーは女性陣だけだが、センターのジャック・スパロウの存在感がすごい。
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果たしてここまで読んでくれる人がいるのか分からないけど、読んでくれてありがとうございます。
ぼくはこの公式チャンネルの供給のおかげでちょっと元気出たので、ジンギスカンで身も心も熱くなるエンタメを冷房の効いた部屋で楽しみながら夏を乗り切りましょう。
デビューアルバムだけでもかっこいいぞぉ。
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