学校の机に好きなバンドのロゴを書いてしまったり。
『僕はきっとこの温度を忘れることはないだろう。』
中学生編 -2
人生初のライブ、それは最高の体験でしかなかった。と言うより他に表現のしようがなかった。
(ほ、本物だ…!)
(音、デカっ…!)
一人で来ていることなんて全くどうってことなかった。最初の一音が鳴った瞬間、全神経はステージに釘付けになり、遠く海を越えて演奏しに来てくれた彼らの一挙手一投足に、終始心を震わせた。
あえて言うならば、周りが100%、オジさまとオバさましかいなかったという事くらいだろうか。
でもそんな先輩方と唯一の中学生が、一緒になって "I Want You to Want Me" を大合唱するのだ。楽しくないわけが無い。
「キャー! ロビーン〜!!」
曲が終わるたび、嬌声の嵐である。
女性はお幾つになっても少女のハートを持ち続けている、という事実もこの日少年心に知るのであった。
とはいえ、確かにこの "Dream Police" なんて、男子の僕ですらキュンキュンくるし、どうやったらこんな曲を作れるのだろうか。
…むむ? 今これを書いていて気付いたが、BEAT CRUSADERSの "FIRESTARTER" って曲、メインリフがちょっと似てなくもないかもしれないな。。(未確認事項)
これは旧メンバー時代のだけど、いや…もっと確信犯なのがあった気がするな…。自分で作っておいて忘れていたようだ。どの箇所がそうなのは、もしお時間あれば観て探してみて頂きたい。
とにかく。こうしてついに生音の洗礼を受けてしまった僕の頭の中は、寝ても覚めてもバンドのことばかりになった。
きっと誰しも学生時代にやったことがあるかと思うが、学校の机に好きなバンド(やアイドル)のロゴを書いてしまったり、自分がバンドを組むことを妄想してバンド名(微妙なやつ)を考えてノートに書き連ねてしまったり。(しないか)
しかしだ。
この片田舎の中学校でバンドを組むなんて、それは夢のまた夢でしかなかった。
インターネットはもちろん、携帯電話すら無い時代に、外の世界に目を向けることなんて考えられもしなかった。
周りを見わたしてみれば、ヤンキーはケンカとエロ話にしか興味がなく、
マンガ仲間(毎月買っていた「アニメージュ」のナウシカの連載を一緒に読んでいた)はいつの間にかディープなオタク化の一途を辿るばかり、
消去法で選んだ陸上部のやつらは顧問がチョロいという理由だけで在籍しているので基本的に何に対してもやる気が無い。(部活で練習もせずバレーボールやバスケをやっている始末)
そして言うまでもなく、彼は遙か遠い空の下だ。
音楽好きなやつがいねぇーー!
僕は相当なフラストレーションを抱えることになった。もう前みたいに音楽をひとりで聴いているだけでは満足が出来なくなってしまったのだ。
憧れのギターを手に入れたって、ひとりじゃどうしようもない。
おれはバンドがやりたいんだ。
くそっ。
でも、こうやって嘆いていたってなにも始まらない。それじゃダメだって音楽が教えてくれたじゃんか、マタヒコよ。
(OK、それは間違いない。わかったよ。)
そして、僕はあくる朝、ある行動に取って出ることになる。
ーつづくー