文科省が初の近視実態調査 令和3年度児童生徒の近視
こんにちは。
窪田製薬ホールディングス広報の市川です。
窪田製薬は、”世界から失明を撲滅する”ことをミッションとし、目に関わる創薬、デバイス開発を行っています。創業者の窪田については(こちら)にまとめてありますのでご覧ください。
今回は、2021年度(令和3年度)に文部科学省が初めて行った「児童生徒の近視実態調査」の結果をもとに、近視についてまとめていきます。
今回の調査は全国29校の小中学生約8,600人を対象に、昨年4~12月に実施されました。
令和3年度 児童生徒の近視実態調査の結果
裸眼視力の調査結果
裸眼視力1.0未満の割合は、小学生で32.9%、中学生が54.7%
裸眼視力1.0以上の割合は、小学校1年では約8割だが、学年が上がるにつれて減少し、中学校3年では約4割まで低下した
裸眼視力1.0未満の割合は、男子・女子ともに学年が上がるにつれて増加
裸眼視力0.3未満の割合は、小学校1年では1~2%だが、中学校3年では約3割まで増加。また増加率については、男子が1.0%から25.52%に増加したのに対し、女子は1.67%から35.61%に増加した
文科省は、今回の調査で、裸眼視力1.0未満の割合は、相対的に屋外に出られにくい等の環境要因が想定される地域や都市部で高い傾向が見られましたが、この原因は明らかでなく、多様な要因が考えられるため、原因の詳細について分析が必要としております。
眼軸長等の変化の状況
眼軸長は小学校1年から中学校3年までの全学年において、 女子より男子が長い
学年が上がるにつれて眼軸長は長くなり、変化量は緩やかになる
近視の要因として、眼軸長の伸びが重要な要素と推察される
屈折矯正の状況
眼鏡・コンタクトレンズの装用率は、中学校3年で男子は約40%、女子は約 50%であった
文部科学省の今後の対応
近視実態調査を継続して実施し、児童生徒の視力の実態を把握するとともに有効な対策を検討する
「児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブック」や啓発リーフレット 等を活用し、ICT活用時の健康上の留意事項(画面から目を30cm以上離す、 30分に1回は20秒以上遠くを見る、就寝1時間前からは機器の利用を控える 等) を引き続き周知
家庭や学校での生活の実情に配慮しつつ、近視抑制に有効とされる屋外活動 の在り方について、有識者の意見も聴きながら検討し周知を図る
そもそも近視とは
近視とは近くのものにはピントが合いますが、遠くのものにはピントが合わず、見えにくくなる疾患です。近視人口は世界でも急速に増加しており、2050年には約半数が近視になるというデータも示されております。
近視の発症と進行のメカニズム
近視の発症・進行の要因は、遺伝因子と環境因子が考えられています。特に昨今の急速な近視人口の増加は、環境因子によるものと推測されています。例えば、両親いずれも近視でない子どもに比べて、両親とも近視の子どもは近視になるリスクが高くなるという結果があります。また近年では、ゲームやスマホ、本を近くで見るなどの近見作業によっても近視が増加すると言われており、昨今の急速な近視人口の増加は、環境因子によるものが大きいと推察されております。(Sydney Myopia Study,2004-2005)
また近視はいくつかに区分されますが、主には、角膜や水晶体の屈折力が強すぎて起こる屈折性近視、眼軸長が伸展することによりおこるとされる軸性近視に区分されます。また屈折性近視の一つで偽近視(仮性近視)がありますが、これは毛様体筋が異常に緊張して水晶体が厚くなったままの状態が続き、遠くを見た時もピントが網膜の前にあるため、遠くがぼやけて見える一時的な偽近視です。昨今診断される近視の多くは軸性近視と言われております。
近視の進行により合併リスクが高まる疾患
近視の進行は非可逆的であり、社会的に活動性の高い年齢層が冒されることから、近視であること自体がquality of life(QOL)の低下に繋がるものと考えられています。また医学的には、強度近視に伴う網膜剥離、近視性網膜症、近視性黄斑変性症、緑内障あるいは白内障などのリスクが増すことで、より重篤な眼疾患の合併も懸念されております。(Flitcroft DI. Prog Retin Eye Res. 2012)
また厚労省平成17年度研究報告書によると失明者(視覚障害1級)の原因疾患の6.5%は病的近視であり、緑内障、糖尿病網膜症、網膜色素変性に次ぐ第4位とされています。
まとめ
これまで近視は、私たちにとってあまりにも身近な疾患であり、病気という認識を持たれづらい部分がありました。また、近年の近見作業の増加から、必ずしも遠くが見えにくいことが生活に支障をきたすとは断言できません。ただ、近視の低年齢化は進んでおり、近視は発症年齢が低いほど進行しやすく、また、将来的に強度近視になりやすいことがわかっています。これまで、中国やシンガポール、韓国などのアジア諸国で近視が社会課題として問題視されてきましたが、日本でも、このような実態調査が進むことで、近視について、また眼の大切さについて、改めて考える良い機会になると考えております。
”世界から失明を撲滅する”
窪田製薬では、今後も科学的エビデンスを積み上げつつ、眼科領域に特化し、創薬及びデバイスの開発を進めてまいります。
当社の開発するクボタメガネについては、以下の記事も参照ください。
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