見たこともない景色
そんなもの、生きている世界にあるはずないなんて思っていた
きっと世界のどこに行っても、無機質で均整のとれた街並みが変わらずあると思っていた
知っていた世界は思いもよらずちっぽけだったんだ
ちょうど上り始めた太陽に照らされ、見えている景色は沢山の光を抱えていた
かつては私たちの街と同じ建物だったのか
今では緑のベール植物?みたいなものなの覆われてしまって、穴ぼこだらけだ
こんな時ではあるが、知らない景色に出会い、不思議と心躍る自分がいる事にアカネは気づき、だけどそれを抑えることもできずに、ただ立ち尽くす
隣でワクワクが止まらない様子のカズキ
こんな街の存在は知らないのだ、聞いたことさえない
アカネは勉強したことがあった
そしてふと目線の先に看板がありそこに、
『センダイ』と書かれていた
この国にはかつて47個程に分けて統治され、またその中でちっちゃく分かれて街を盛り上げたり管理をしたりしていたらしい
その記憶の中で聞き覚えのある名前だった
かつての記憶を引っ張り出す
アカネには目指す方向が思いついた
『カズキ、帰るよ、頑張るよ』
『楽しいね!なんか!!』
カズキはもう遠くにいた
しかも、建物の上に
『何してるの!危ないでしょ!』
慌てて駆け寄る
それもそうだ、足場が今にも崩れそうなカタチなのだから
『今行くから、動かないで!』
駆け寄るアカネをよそに無邪気にカズキは飛び跳ねる
その瞬間
流れるように崩れ出す足元
『カズキ!!』
土煙を上げて滑り落ちる
言わんこっちゃない
安全を確かめるために走る
必死に瓦礫をよける
自分の手の傷などかまっていられるものか
その華奢で細い腕でありったけ取り除く
縮こまってカズキがいる
何が起きたか分からずに唖然としていた
『もう、、、』
一安心だ
打撲と多少の擦り傷だろう
昔からよく傷をつくるカズキだった
こんなタイミングでもこれで済んだのだ
運がいいのかもしれない
『大丈夫?もう帰らなくちゃ』
引っ張り出すカズキの腕はまだ子供だ
守らなきゃいけない
これは使命だ
まだ何も知らなくて、未来が待っているカズキをちゃんと日常に連れ帰ること
出てきたカズキの手を繋ぎながら、太陽とは逆へ、ゆっくり歩き出した
続く

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