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売り切れのコーヒー

夜、自動販売機
いつも売り切れているコーヒーがある
特別コーヒー好きなわけではないが、こうまで毎回ないと気になってしまうものだ
どれだけ美味しいのか、とか
どんな人達が買うのか、とか
いつか出会えるだろうと夜12時間際、
毎日近くの喫煙所に行く事にした

丁度、喉が渇いたのでその自販機でコーヒーを買うことにした
お金を入れ、珍しく売り切れておらず、光るボタンを押そうとすると
隣に女の子が立っていた
その女の子は横から慣れた手つきでボタンを押す
呆気にとられたままで間髪入れずにお金を投入し、一気にそのコーヒーは売り切れてしまった
『私これじゃなきゃ生きられないの』
『邪魔をしないでね』
少しカチンと来た僕はこれから毎回勝負を仕掛けようと思った

いわくつきの自販機
いろんな噂を持っていたから、もうすぐ撤去されるなどと話が出回っていた
そんな中でも僕は彼女に勝負を挑んでいた
どんな手で立ち向かっても結果は惨敗
買い占め、抱え込み、立ち去る
その世界大会に出れば良い、優勝だ
彼女のことは何も知らなかったが、それでもなんだか通じ合えた気になった

毎日の様に喫煙所に向かう
すると、昨日まであった自販機が最新に変わっていた
仕事の早さと不意打ちに脳天を撃ち抜かれたが、変わらずにいつもの夜を待った

太陽が上がってもいつもの夜が来ない
不戦勝か、仕方なく家に帰り、テレビをつける
自販機の壊されるニュースと
少女が遺体で見つかったニュース
その少女の横にはあのコーヒー
もう白骨化し始めていた

#note #エッセイ #日記 #意味がわかると怖そうでも怖くない話

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