見出し画像

仮想杯ヒストリーvol.6【VRMANSCG02】

仮想杯の歴史をセットごとに振り返る『仮想杯ヒストリー』第六回。前回はこちらから。


第九弾追加、第二十五回

第九弾ではついに全種族(怪異は…)にレベル5が追加されました。いずれもレベル5にふさわしい派手な効果がついています。《ワーライオン》に即死LOコンボが発見されたり、《バエル》がシンプルに強かったり、《セルピヌス》でありとあらゆるロマンが考案されたりと、実装時はにぎやかでした。

その他カードで目立った活躍をしたのは《会心の助太刀》です。

雑に③を使ってもそれなりに強く、①でゾウやサイクロプスを出すとゲームがバグる。
後出しはいついかなるゲームにおいても強い。

初回の仮想杯では各々のびのびと好きな新カードを使いました。結果決勝に残ったのは、ぴょぴょりーなの【マルフェニ】と私の【動物】。どちらも愛用デッキに新カードを挿して強化した格好です。自分で言うのもなんですが名勝負だったので、対戦の様子を紹介します。長いので歴史だけ追いたい方は飛ばしてください。

~~~~~

私視点では、相手の出した《アズラエル》や他のレベル2ユニットをあえて場にキープし、《カンナカムイ》を牽制した状態でターンを経過させてのライブラリアウト勝ちが見えていました。相手の山札が残り2枚のとき《ファフニール》で手札を覗き、リソース負けの原因になり得る《バエル》を落としました。相手の墓地にレベル2は2枚しかなく《カンナカムイ》も厳しかろうと踏み、ターンを返します。

返しのターン、ぴょぴょりーなは《マルバス》を召喚。一見意味不明な動きでしたが、召喚時効果でウォールから墓地に落ちたのは《シーラカンス》。これにより《カンナカムイ》の召喚条件達成に成功し、デッキを回復して私にターンが返ってきます。
ちなみにターン開始時点でぴょぴょりーな視点の非公開領域は3枚でしたが、どのような配置であっても《カンナカムイ》を召喚するルートが見えていたようです。あっぱれ。

まだデッキ枚数は勝っていましたが、ここから3ターン受け切るのが不可能であることは明らかでした。私のデッキ残り3枚の内訳は《ファフニール》《成長する秘宝》《アルマジロ》。手札には《百獣の王》があり、適切にプレイすれば《ファフニール》込みで2打点出せます。前のターンに相手の手札を見てモノリスが1枚であることは確認していたため、そのプランが通れば勝ちます。ところが──

そのときのボトム3枚の並び。

上2枚のどちらかが《ファフニール》ならOK。トップが《秘宝》でも全部引き切るのでOK。3枚がこの順番であるときだけ、引いた《秘宝》が使えず負けてしまいます。

結果、何もできずにターンエンド。返しのターンにぴょぴょりーなが《シーラカンス》を使い、私のライブラリアウト負けです。

結果として負けた試合ではありますが、両者ともデッキの全てを理解し、30枚全てをぶつけた試合であり、これまでに遊んだ全てのカードゲームで一番楽しい試合でした。

~~~~~

第二十六回

優勝は【GS(グッドスタッフ)】。

どこから説明すればよいのやら

またuduki節が出ました。今回の初見殺しは《助太刀》→《サイクロプス》。何もないところから確実に2打点止めつつ、返しのターンの打点を増やす動きが、シンプルながらめちゃくちゃ強い。他の枠にもこういったコンパクトで強力なコンボがぎっしり詰まっています。《ピュートーン》→《助力》とか、《助太刀》→《ゾウ》とか、《サイクロプス》→《ファフニール》とか。こういった構築も【uduki構築】として定式化できそうですが、変則的すぎて解説しきれません。

第二十七回~二十九回

ここから、てんしナチュラルによる怒涛の三連覇が始まります。ここでは紹介しませんが、同時期に行われた《余興》追加記念大会および第3回VRMANSCG02杯も優勝しています。

これらの優勝デッキは採用テーマこそ異なりますが、構築に共通する部分が多く見られます。本記事では以下の特徴を持つ構築を【てんし構築】と呼ぶことにします。

①ドロー効果を持ったウィニーを多く採用
②1枚採用、いわゆるピン刺しの多用
③墓地回収による疑似的なサーチ
④カンナカムイの採用

このような構築が活躍し始めたのは第七弾ごろでした。それ以前のプレイヤーは「一目弱い」「カードゲームの感覚としてありえない」という意見を持っていましたが、圧倒的な勝率が示す通り【てんし構築】はこのゲームの結論の1つです。それぞれ解説しましょう。

①先行2ターン目で最も強い動きは、ドローを挟んだ3面展開です。以降のターンで常にビート負けの圧力をかけることができます。重要そうな打点カードがピン刺しでも勝てているのは、序盤の盤面展開がしっかりしているからこそです。

②実際に対戦の様子を見ると分かりますが、どちらかが特殊な戦略を取らない限り、4ターン目時点での公開領域は15枚程度になります。ピン刺しも2試合に一回は絡んできます。また、場に1体まで・1ターン1度までなど、複数枚引くと困るカードが多数存在します。
このゲーム性においては、同名カードを多く取って再現性を上げるよりもカード種を増やして対応力を上げるほうが勝利に直結します。デュエマで例えるならオボロティガ環境です。

③《ブラキオ》《エレマス》《聖女の祈り》などがこれにあたります。【動物】でいえば《カタツムリ》《クマ》など、強力なピン刺しを場面に応じて使いまわせるため、デッキリストの見た目からは想像できないほど安定して回るようになっています。

④このゲームで打点を出そうとすると、基本的にはリソースを消費しつつ相手にリソースを与えることになります。そのため、お互い無策に殴り合うと、終盤は山札の引き合い・場の埋め合いになりゲームが膠着します。このような展開において、カンナカムイは
・手札1枚から場を2面以上埋めることができる
・山札を回復し、LO負けのターンを遅らせることができる
・《シーラカンス》を絡めてLO勝ちを狙える
…と、全てを解決してくれます。
また、①のおかげで条件の達成にも不安がありません。

登場から現在までありとあらゆるデッキに採用されてきた、ある意味ゲーム性を定義するカード。

そんな【てんし構築】ですが、扱いの非常に難しいデッキタイプです。歴史を追えば、七弾ごろから勝ち始めて次第に勝率が上がっていき、最終的に仮想杯3連覇&VRMASCG02杯優勝に至っているのが分かるでしょう。ひとえにてんしナチュラル本人の異常な対戦回数があってこそ成立しているデッキであって、初心者におすすめはできません。

第三十回、第三十一回

こちらでは、【マルフェニ】が連覇しました。VRMANSCG02のもう1つの結論です。

前項②で触れた「特殊な戦略」の好例がまさに【マルフェニ】です。このデッキの強みは【てんし構築】の裏返しとして説明出来るでしょう。

①’先行3点の動きを取られた後攻プレイヤーはウォールが残り1枚となり、頑張ってリソース勝負に持ち込んでも押し切られてしまうことが少なくありません。しかし【マルフェニ】はウォール0枚からが本番のデッキであり、先行3点の動きに対して非常に強く出ることができます。また、パワー4000のユニットを多く採用出来ているため序盤の場の取り合いが安定しています。

②’こちらからウォールに触らないことで、相手の公開領域が4枚減ることになります。さらに《ファフニール》によるピーピングハンデスも可能であり、ピン刺しを使わせない展開が多発します。

③’④’マルフェニコンセプト自体は墓地を利用しないため、《アズラエル》を採用することができます。これが墓地回収や相手の《カンナカムイ》に強烈に刺さり、一方的にLO勝ちを狙うことが出来ます。《カンナカムイ》で何度も《アズラエル》を使い回せるため、墓地利用がテーマのデッキに対しては完封勝ちすら狙えます。

ということで、【てんし構築】をこのゲームの王道の勝ち方とするなら、【マルフェニ】は王道へのカウンターになります。対【てんし構築】はもちろん、数多のデッキに対してコンセプトの時点で有利が付きます。一見苦しそうなアグロ対面も、ウォール効果が強すぎて五分はありました。

当時のプレイヤーは

・アグロは【てんし構築】に五分~不利(先行ゲー)、対【マルフェニ】も良くて五分
・ミッドレンジを作ると【てんし構築】に行き着くが、プレイが難しすぎるせいでてんしナチュラル本人に勝てない。対【マルフェニ】は不利。
・その他デッキは【てんし構築】に五分~不利、【マルフェニ】に不利

という環境の中でデッキを選択することになり、九弾環境においてこのメタゲームが崩されることはありませんでした。レベル1を大量に搭載し後手1ターン目から攻めるアグロデッキも検討されましたが、安定性の無さからいずれのデッキにも有利を取ることは出来なかったように思います。

第三十二回

私が【精霊】で勝ちました。ほぼ同じ構築で第三十七回も勝っているので、そちらに解説を先送りします。

第三十三回

再度【マルフェニ】が優勝しましたが、構築の軸が全く異なります。《カンナカムイ》《アズラエル》は不採用で、これらの枠にモノリス3種、《ヨルムンガンド》、《鍛錬の成果》を採用しています。

「ヨルムンが1枚?0か3のカードじゃない?」と思われるかもしれませんが、【てんし構築】で触れたようにこのゲームでは早い段階で半分近いカードが公開領域になるため、序盤に不要な《ヨルムンガンド》は多くても2枚採用とすべきです。さらに【マルフェニ】であればウォールを見ることもできるため、1枚でもほぼ毎回のゲームに関わらせることが出来てしまいます。各種モノリスも【マルフェニ】のコンセプトと相性が良く、見た目以上に完成度の高いデッキだと言えるでしょう。

総括

第九弾は、第八弾ごろから勝率が上がり始めた【てんし構築】と【マルフェニ】の二強環境となりました。これらのデッキは長い間存在してきましたが、七弾以前はそこまで目立っていませんでした。両デッキとも高いプレイング技術が求められるため、プレイヤーの練度向上を待つ必要があったということでしょうか。

VRMASCG02の歴史において「環境デッキ」と呼べるものが初めて固まった時期ですが、【てんし構築】に組むことのできるコンセプトは多く、多様性が損なわれているような感じはしません。ゲームの完成度の高さが伺えます。

第十弾では比較的コンボ性の高いカードが多く収録されたため、環境に変化が起こりそうです。お楽しみに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?