仮想杯ヒストリーvol.5 【VRMANSCG02】
仮想杯の歴史をセットごとに振り返る『仮想杯ヒストリー』第五回。前回はこちらから。
プレイヤー名が何度か登場しますが、試験的に敬称略で書いています。そのほうが「っぽい」気がしたので。嫌だったらこっそり教えてください。
第八弾追加~十九回
追加カードで目立つのはやはり《『滅びそのもの』》ですよね。召喚条件も着地後のリミット制限も重たい分、それらをケアすればウォール4枚からでもワンショットを決めることができる、いわゆるロマンカードです。
その他追加カードは特定デッキの強化を意図したデザインのものが多くなっています。バニラ強化として《子連れリクガメ》、ハイランダー強化として《伝説への到達》などがこれに該当します。
パワーマイナス軸の強化としては《剥奪される力》が追加され、第八弾環境初回で優勝しました。キャントリップ、《変色》、《剥奪される力》によるリソース&トップ解決は勿論、ウォール効果も十分でモノリス採用の余裕もあり受けも悪くなく、ミッドレンジのお手本と言えるでしょう。
ちなみにこのときの私は準優勝でした。ライブラリアウトを捨てた《子連れリクガメ》採用の【動物】で、《寡黙なるリクガメ》の引きに左右されますがそれなりに悪くない感触でした。
次の第十九回では【精霊】が優勝しました。前回に続くミッドレンジの優勝ですが、スタンダードな種族テーマが勝ち上がったのは久しぶりです。地味に受け札が多く(◆+モノリスで9枚)、《死神の訪れ》の確定除去、《一陣の風精》と、総括の項で触れる「対応力」の高さが感じられる構築になっています。
第二十、二十一回
第十九回に続き種族テーマが優勝していますが、【精霊】とはかなり毛色が異なります。
第二十回は私が何回か前に優勝した【動物】をそのまま持っていき、決勝で【人間】にやられてます。【動物】は全然強いんですが、この時期に【人間】を握ったてんしナチュラルと対戦しすぎて対【動物】のプレイングが全部バレてたんですよね(当時のツイートのリンク)。
第二十一回の【植物】優勝もてんしナチュラルです。ここ二回で優勝した【人間】【植物】の構築には対コントロール意識が高いという共通点があります。具体的に「高パワー」と「デッキ総リソース」の2点に分けて解説します。
《『兵団長』ベルトラン》や《氾濫するツタ》は比較的容易に8000を超えるパワーの壁になり、打点としても運用できる能力を持ちます。盤面の取り合いになるコントロール勝負においては、1ターン場に残ればリソース換算で2ドロー相当の価値がありますし、相手に除去を使わせるのであればハンデス相当の価値があります。いずれにしても、デッキを消費することなく非常に大きいアドバンテージを得ることができます。特に《猛り燃えるファフニール》に戦闘で勝てたり、《猛り燃えるファフニール》の除去を使わせたりすることでリソース優位に立つ場面がよく見られました。
《降臨せしカンナカムイ》を採用したり、墓地回収を行うことで「デッキ30枚を全て使ったときに出せる総アドバンテージ」が多くなります。コントロール勝負は、両者が適切なプレイングを取れば最終的にこの総アドバンテージが多いプレイヤーが勝利します。従来の【動物】なんかはここがちょっと足りません。
第七弾以降様々なデッキが勝ち上がりましたが、【マルフェニ】や【動物】など「受けの強いデッキ(≒コントロール)が一番いい立ち位置にいる」という意見が多くなり、コントロールに強い構築が色々模索されてきました。その回答として上に上げた要素が発見され、当然の如く結果を残したというわけです。
第二十二回
《遮断するゾウ》を使った、コントロールというよりはコンボによるロックデッキの優勝です。《遮断するゾウ》と《トラバサミ》《モノリス具象体》のコンボ、《鈍進するカタツムリ》《顕現する竜脚類》を軸に受けを固め、《神力の司天 ガブリエル》《邪悪なる結託》で妨害。《降臨せしカンナカムイ》《古代海のシーラカンス》が自然に入っているので対コントロールも申し分ありません。対応力が物を言う環境に「じゃあ初見のデッキ出せば対応できないでしょ?」と言わんばかりに圧勝していきました。
ちなみにこのときの私は【一喝水棲】を持ち込んでこの【ゾウロック】に負けてます。お互いに殴り合い《古代海のシーラカンス》を使うため、手札がかさばりまくって《一喝》が使えませんでした。なにそれ。
第二十三回
ここでの優勝は【マルフェニ】。偶数軸の【マルフェニ】は過去もGSを軸に活躍を見せていましたが、ここでの優勝構築は内容が大きく異なり、《光臨せしカンナカムイ》《死門の司天 アズラエル》《古代海のシーラカンス》を軸にライブラリアウト勝ちを太く取っています。「コントロールに強いコントロール」のお手本のような構築といえるでしょう。
ちなみにこのときの準優勝は【亜人軸天狗】です。《滅殺の剣技》の3枚採用、《ゴブリンの伝令部隊》によるデッキを減らさないリソース補充といい、こちらも対コントロールを意識した構築になっています。
第二十四回
ここに来て突然の《仰望するユルルングル》コンボ優勝。正直この記事を書くまでは「不思議なデッキが優勝したなあ」という感覚でしたが、決勝戦を振り返り、ちゃんと理由のある勝利だったと考え直しました。
このときの決勝は、すでに八弾環境で2回ずつ優勝していたuduki vs てんしナチュラル。両者とも様々なデッキを使いますが、傾向としては真逆に位置するプレイヤーです。種族テーマを軸に扱い、この環境のスタンダードな勝ち方を定義したと言ってもいいプレイヤーであるてんしナチュラル。対するは、度々奇抜なコンボを披露して飄々と優勝をかっ攫っうuduki。対戦が一しきり盛んになった第八弾を締めくくるにふさわしいマッチアップです。
勝負を分けたのは最終ターン。てんしナチュラルのデッキは5枚。この時《降臨せしカンナカムイ》は持っていましたが、使うかどうか悩みます。忘れがちですが《降臨せしカンナカムイ》の召喚条件は数ターンの間デッキトップが腐る「デメリット」です。《猛り燃えるファフニール》など打点を通すカードを拾うターンが遅くなれば、udukiの拾えるパーツも当然増え、コンボを通されて負ける可能性が高まります。てんしナチュラルとしては、返しのターンでコンボを通されないなら使いたくない。
ところが相手は今までに見たことのない【狩人ユルルングル】。《火竜の息吹》型と異なり《転火》は使えないはずで、1tターンで何枚デッキを削ってくるのか予想が付きません。悩んだ末、てんしナチュラルは《降臨せしカンナカムイ》を使わずにターンを返しました。
しかしこれが敗着となります。返しのターン、5枚デッキを削るuduki。《仰望するユルルングル》に加え《古代海のシーラカンス》、《海賊団襲来!》、レベルゾーンの《古代海のシーラカンス》を引っ張り出せる《原林の奇術師》がありました。
七弾最後の仮想杯でも《仰望するユルルングル》で優勝したuduki。フリー対戦に顔を出す機会は少ないプレイヤーですが、大会に持ち込むコンボはどれも強力かつ独特です。対応の難しさも含め、他のプレイヤーが真似できない勝ち方を何度も実現できているからこそ、これだけの優勝が可能になってるのではないでしょうか。あと本人のプレイが恐ろしく正確です。あんまり対戦来ないのに。謎。もうちょい遊んでよ
総括
第七、八弾で追加されたカードは非常に多彩な効果を持っていました。その結果、単に「受けきれるか、攻めきれるか」であった勝負が
・リソースアドバンテージの取り方
(ドローソース、高パワーユニット、除去効率)、
・テンポアドバンテージの取り方
(打点形成、ウォール効果ケア、受け札)、
・デッキ枚数レース
(山札破壊、山札回復、墓地回収、墓地回収メタ)
など、攻め方受け方にバリエーションが生まれ、ゲームが複雑になりました。テンポアドバンテージに特化しなければならないアグロデッキにとっては厳しく、様々な状況に対応できる遅めのミッドレンジ~受けの硬いコントロールが勝ちやすい環境です。コントロールの強い環境でさらに勝ち上がるべく、対コントロールで取るべき戦略が考案され、その穴を突いてコンボが勝って……と、メタゲームも複雑でした。個人的には過去一面白い環境だったと思っています。
おわりに
1ヶ月ほど続いた仮想杯ヒストリーでしたが、現代に追いついたため今回で一旦最終回です(もちろん弾が終わるごとに続きを書きます)。当初の想定より多くの人に読んでもらえて嬉しい限りです。
最後の最後に書くようなことでは無いんですが、わりと「何かしら言おう」と思って捻り出して書いてるので、全部鵜呑みにするような文章ではありません。何回かは優勝した人の引きが強かっただけかもしれません。3~4勝で優勝なのでマッチング運もそれなりに大事です。それでもメタゲームの考え方自体は大きく間違ってないと思うので、記事として残しておくのは無駄にならないと思っています。
「ルールは覚えたけど大会に出るのは怖いな……」「しばらく遊んでなくて今のカードプールに追いつけないな……」といった人が一人でも仮想杯に参加するきっかけになれば泣いて喜びます。ガチ勝負は楽しいぞ。
さらに!(宣伝)熟練のプレイヤー達が作ったデッキを使って戦う「初心者杯(仮)」を計画中です。自分で構築を考えなくていいのは勿論、参加するデッキが事前に分かるため知らないカード・デッキの多い人でも参加しやすいはずです。参加者が多い場合は過去の大会参加が少ない順にエントリーとする(予定)ので、大きく練度の差がつく心配もありません。11月中旬までにデッキを公開し、12月頃開催する予定です。始めたばかりの君も、まだルールを知らない君も、乞うご期待。
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