チームで仕事をする楽しさ
独立して自営になり、協力してくれるスタッフが数人いるものの、基本的にはワンオペで仕事をしています。
こういうぼくを見て「組織の仕事は嫌だったの?」と尋ねられることもあるけれど、その答えは「NO」です。チームで仕事をすることが、むしろ大好きだったといえるでしょう。
自分だけでは考えつかないことが動き出したり、相談し合ったことが、あちこちでつぼみから花になる過程は、今でも好きです。でも、それは置いておいて、一度「じぶんだけ」の仕事をしてみたかった。それが独立した「たくさんある」理由のひとつです。
前回書いたように、ぼくは若いうちから管理職になり、いくつものチームを管理する側にずっといたわけです。それは1990年代~2010年代の約20年近い期間。とくに入社して5年ぐらいは、倍々ゲームのように会社が拡大し、人もどんどん増えるから、管理したり、仕事を仕組み化したり、採用の面接をしたりする側に回らなければ、とても追いつかなかったわけです。
その、情報出版の会社に入った時、ぼくは最初はデザイナーになりたかった。でも、若い人(当時の自分よりも若いという意味です)にコツを教えて、どんどんその彼や彼女が伸びるのを見ていると、「じぶんなんかがしなくてもいいんじゃないか」と思い始め、気がつけばじぶんは常に後回し。まるで家族の多いお母さんが、子どもたちの世話をするのに精いっぱいで、じぶんの一人の時間をすっかり忘れてしまうのと似ていたかも。
それでも、文章を書くことだけは、なんとか続けることができたけれど、その他の現場的な仕事は、どんどん新しい人に回して、それで気が付くと、もっと広がって、数十人をまとめる責任がある立場になるわけです。
世間から見ると、素晴らしいことだと思うんですが、その当時、ぼくは悩んでいました。うすうす「壁にぶつかった」と思っていました。今やっている事業以外にカーブが切れないんです。要は怖くなっているんですね。やっている事業の変化はどんどん受け入れたけれど、まったく関係のない事業を思いつくことができない。ましてや、自分が今いる枠から出ることも怖い。そんな状態でもがくこと数年。その後、いろいろな紆余曲折があって、無意識に「一度、現場に戻ろう」という気持ちがチリのように積もり始めていたことに、自分はまったく気づいていませんでした。後にそれが「独立」への引き金になります。
話しは「いま」に戻ります。昨年末、とあるお客さんの打ち上げに参加しました。リーダーの視線にスタッフみんなが意識を集中し、そして指示や促しがあると、ささっと動く姿。また、その打ち上げの理由である大きなイベントを実行する過程のお話を聞くにつれ、「懐かしいなぁ」という想いをずっと感じていました。
すっかりワンオペにも慣れ、「じぶんは現場のこともちゃんとできるんだな、齢をとっても」と感じ始めた独立して6年のいま、それらの光景は懐かしい、かつて経験したシーンでした。
だから「うらやましい」とか「戻りたい」というのではありません。たとえば、このお客さんのような、チームやプロジェクトが広島にいくつかあって、そこに「一員」として、ぼくも参加しています。個人だけどチームの一員でもあるわけです。そして、リーダーの側も、スタッフの側も、どちらの気持ちもわかるからこそ、必要なところの支えにサッと回れる「いま」も大好きです。
つまり「組織なのか否か」なんて、だれもが悩んでみたり、どっちが優劣かみたいなことを考えがちだけど、そもそも、それは仕事の質には関係がなく、その時の外的な状況に過ぎない「付加的なもの」に過ぎないと思うのです。どちらかが絶対とか考えないことで、かなりいろいろなことがラクに感じます。
その時に選んだ場所で、与えられた場所で、泰然としてやるべきことをする。ぼくはずっとそうありたいと思っています。
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