マインド・ゲーム(2010)
第8回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞作品。
大好きな映画。
大好きっていうか、素人の自分が観てもアニメ映画史の中でエポックメイキングな革新的作品だなと思える。
鑑賞中ずっと「凄いものを観てる」という感覚になる。
凄すぎて圧倒される。
知る人ぞ知る怪作。
肛門を発砲されて脳天破裂という人類史上最悪にダサい死に方をした主人公・西くん(声:今田耕司)。
好きな女の子を含め「生」に未練たらたらな男が、神様の意思に逆らい猛ダッシュで蘇生するという話。
書いてても意味が分からん。
しかし圧倒的なエネルギーで
エンディングまで走りきる。
岡本太郎の絵が動き回ってるような、
まさに爆発してる映画。
声優がなぜか今田耕司さん・藤井隆さん・山口智充さん・島木譲二さん・坂田利夫師匠などほとんどが吉本興業の芸人さんなのも唯一無二の空気感を作り出している。
いわゆる声優らしさなどをほとんど感じない「生きた」声が、極彩色豊かなアニメーションに乗り、とてつもない相乗効果を生みだす。
今見ても斬新な演出が毎秒登場するし、映画好きなら通らざるを得ない一本である。
絵のタッチなんてすぐに変わるし、
凄いテンポで話は進むし、
圧巻なのが怒涛のラストシーン。
5分ほどのエンディングに
2,3秒のシークエンスが軽快なBGMに乗り、
台詞無し説明無しで時系列バラバラに
登場キャラクターの出自が
これでもかと盛り込まれる。
その情報量たるや。
一度観ただけでは確実に脳の処理が
追いつかない。
コマ送りで動画を止めながら考察するファンが続出で、今なお議論が繰り返されたりしている。
こんな不親切な演出なのに
最高にクレイジーで最高にエモい。
YouTubeで観ることができるので
是非観ていただきたい。
たぶん初見の方には、
訳が分からないと思うが
そのパワーだけは感じることが
できると思う。
本編で台詞の片隅に出てきた言葉と
このシークエンスを頭の中で
繋げることができた瞬間、
とてつもなく深い人間ドラマだったと
理解することができる。
自分は正直、なんだか訳が分からないけど泣きそうになった。
確かにこれを全部映画にしたら5時間くらいになりそうだし、この放り投げてるような演出がまた多くを語らないキャラクター達の深みに繋がっている。
ひとつひとつ紐解こうとしても、途中で諦めてしまうくらい濃くて緻密な物語なのだ。
ちなみにこれを作ったのが、湯浅政明監督。
間違いなく過小評価されている天才日本人の一人なのだが、アニメ映画『夜は短し歩けよ乙女』(2017)だとか、
クレヨンしんちゃん映画のデザイン・原画をほとんど担当されています。
あとは、ちびまる子ちゃんの「おどるポンポコリン」の作画とか。
ぐにゃぐにゃ曲がった線の表現、
歪んだ遠近感、
斜めの構図、
独特の色彩感覚、
アニメならではの躍動感あふれる
キャラクターの動き方。
なんとなく雰囲気が分かるかと思う。
とにかく観ててワクワクするし、
脳天に直撃するような
気持ちいい絵を描かれる、
うん、天才で間違いないです。
そんな湯浅政明さんの監督第一作『マインド・ゲーム』。
絶対におすすめです。
観たら一生忘れられない
他では味わえない映像体験を
お約束します!!