孤独な魂が揺れる「パリ13区」(ちょいとネタばれあり。夫と真逆の感想にびっくりした話)その1
夫の広大と映画「パリ13区」を、観てきたよ。今まで何十本も一緒に映画を観たけれど、ここまで感想が違ったのは、初めて。
どうしてかな? と色々考えたら、キーワードは「孤独」にあると気づいた。毒母に育てられた私と、結婚するまで実家にいて「あなたが大事」と常に言われて育った夫との差が、こういう時に発露するんだな、とびっくり。
まずは、おおまかなストーリーから。エミリー(台湾系フレンチ)は、寂しい心を抱えつつも、パリ13区で健気に生きている。ここは、人々がイメージするきらびやかなパリとはちょっと違う。高層ビルなんかもあって、雑多な雰囲気が漂ってる場所。 ルームメイトを募集したら、間違えて男のカミーユ(アフリカ系フレンチ)が来ちゃった。
ちょっと躊躇するけれど、部屋へ入れて成り行きでベッドイン。エミリーにとっては急速に愛を求め、お互いが通じ合っていると思っていたのに、カミーユにとっては、ただの身体の関係だけ。
「タイプじゃないし」
とはっきり言っちゃう。
怒ったエミリーは、カミーユを早々に追い出す。
カミーユも教師から転職して、不動産屋に勤めるんだけど、ここにやはり寂しいノラ(地方出身)が働きに来て、またまたすぐに身体の関係を結んじゃう。
ノラも、深い悩みを抱えていてSNSで繋がった自分と似ている女性を心のよりどころにしつつ、あちこちにぶつかり迷っていく。
実は、カミーユも孤独を内に秘めているのが、だんだんとわかってきて、ひょんなことからエミリーとよりが戻り、エミリーのおばあちゃんの告別式に行く朝が、ラストシーン。
「一緒に行くよ」
最初は、断ったエミリーも、やっぱり嬉しくてOKしちゃう。そうして、迎えに来てくれたカミーユとインターフォン越しに会話を交わす。
「ジュ・テーム」
カミーユが言うと、
「聞こえない。もっと大きな声で」
と催促するエミリー。
「ジュ! テーム!」
早く会いたさに、受話器を放り投げて、階下に降りて行くエミリー。私たちは、その「愛してる!」を受話器から漏れてくる大きな叫びをもってして聞き、そして暗転。
以上相当はしょったあらすじ。
観終わった後、広大が、
「良かったねぇ、最後にジュ・テームで終わって」
と言ったので、驚き! 私は、
「あ~あ。あんな軽々しく言っちゃって。近いうちにまたエミリーは傷つくことになっちゃうんだろうな」
と思ったもので。
おそらく広大の見方の方が一般的で、正しいのだと思う。
エミリーとカミーユとノラ。三人三様の人を愛することへの気づきを段階を追って表現するシーンがいくつも出てくる。私だってその、
「ジュ・テーム」
が100%本物で、長く続いてほしいと思うけれど、エミリーの「こじらせ」具合は、そう簡単に直るものではないのでは?
少しでも自分をないがしろにするようなことが起こると、いきなり感情が沸点を迎えてしまうシーンが出てくる。沸点が、低い。
私自身は、決して表に出さないし、そういう感情を強くは持っていないけれど、気持ちは痛いほどわかる。そうしないと自分を保っていられないんだな、と思うから。
おばあちゃんの告別式に来る、というのはカミーユにとっては大きな進歩でもある。