色使いの奥義!魅せるグラデーションの描き方
KUAイラストアドベントカレンダー、12月9日はR.E.C.先生から『色使いの奥義!魅せるグラデーションの描き方 』です!
こんにちは。デザイナー、イラストレーターのR.E.C(@R_E_C_flctiond)です。この記事ではR.E.Cが考える「魅力的な色とグラデーションの描き方」についてお伝えしたいと思います。
#1 まずは色とはどういうものか理解しよう
さて、「色」とは一体何なのでしょうか?急にとりとめもないことを言っているようですが、改めて考えてみるととても深い話なのです。
自分は絵を描く際にとても「色」に気を配ります。それは、色というのは人に多大な印象を与えるからです。
世の中には色が溢れています。色に囲まれた我々はそれを当たり前だと思いがちですが、緑をみれば自然に思いを馳せ癒され、青を見れば神秘に心を落ち着け、漆黒を見れば時に恐怖を覚えるでしょう。それほどに色が人に与える印象は非常に強力で、だからこそ正しく色を扱えれば強力な武器になるのです。
色を構成するものには3つの要素があります。「色相」「彩度」「明度」です。
「色相」とは、青、赤、緑、黄色といった様々な“色そのもの”と言えます。
デジタルペイントツールの場合は、下図のように「色相環」という輪っか状で表示されることもあります。
「彩度」とは、色の鮮やかさ。同じ赤色でも、褪せた赤から鮮やかな赤まで様々な赤があります。デジタル上ではそれを255段階で表示します(下図参照)。
「明度」は、色の明るさ(暗さ)を指します。彩度が同じでも暗い赤、明るい赤があります。デジタル上では、彩度と同様に255段階で表示します(下図参照)。
このように色には3つの要素があり、まずこれらの理解が魅力的なグラデーションを作る大前提になります。ぜひ習得しましょう。
#2 彩度を操り色を鮮やかに見せる方法
絵において色が非常に大事と言う話は前述のとおりですが、印象的なグラデーションを作ろうとするとき「とにかく鮮やかにしよう!」と安易に彩度を上げがちです。その結果「画面全体がギラギラして、目が疲れる絵になってしまった」という経験はほとんどの方があるのではないでしょうか。
下の2枚の絵を見比べてください。Aは元の絵で、Bは彩度を目いっぱい引き上げたものです。
A
B
どちらの絵もいたるところに様々な色が使われており、グラデーションが描かれています。しかし「どちらの絵の方が見たときにしっくり来るか?」と言われれば、多くの方がAと答えるでしょう。
「色を綺麗に見せたい」「グラデーションを美しく見せたい」場合、ただ単に彩度を上げてとにかく鮮やかにすればよいというものではありません。色にとってとても大事なのは「絵の中の様々な色のバランス」なのです。
Aは彩度の低いパステルな色合いの中に、所々に鮮やかな色が使われています。一方Bは、絵のほとんどが鮮やかな色だらけで色同士が喧嘩をしてしまっている状態。「鮮やかな色を引き立てるのは、その周りにある彩度の低いパステルカラーである」ということを覚えておきましょう。
どんなに美味しい料理でも、毎日食べれば必ず飽きて食べたくなくなります。それと同じように、どんなに鮮やかな色でもそればかりでは見る人の目を楽しませることはできません。
すべては絵の中で織りなす色のバランスなのです。赤から青のグラデーションも黄色から青のグラデーションも、すべての彩度が高すぎてはいけません。
魅せたい部分の色を鮮やかに描き、それ以外は控えめな彩度の色にする。これが彩度を操り、色を美しく見せる極意です。
#3 魅力的なグラデーションの描き方
人の脳は変化を求め、また変化するものに反応するように出来ています。色も、人間の目は単色より、ある色からある色へ移り変わる方に反応します。壮大な夕焼けを見たときに思わず息を呑むのはそのためです。
彩度を操り、色をいかに美しく見せるかということについては#2の通りですが、その上で魅力的なグラデーションを描くにはどうしたらいいでしょうか。
色の移り変わりを描くために大事な意識するポイントは「光」です。どんなモチーフでも立体的に描く際には必ずどこかに光源があります。
下の絵を見てください。
この絵は主に絵の上部(空や雲)の部分に、黄色から青、もしくは黄色からエメラルドグリーンへのグラデーションが使われており、この絵の色の美しさを引き立てています。この黄色を鮮やかに魅せたかったのですが、実は黄色は明度が低いととてもくすんで目立たない色になってしまうのです(下図参照)。
そこで明度を上げるために、黄色が使われている絵の中央部分をこの絵の光源としました。そこから放射状に光が拡散する構図にしたため、明るい鮮やかな黄色を描くことができ、結果的に空の青やエメラルドグリーンとの美しいシナジーが生まれています。
では、(赤色のみや青色のみなど)単色のグラデーションを美しく見せるにはどうしたらいいでしょうか。
色の移り変わりという見栄えポイントがないため、全体的に彩度を上げ気味にして鮮やかさを強調しましょう。特に赤や緑系統の色は彩度が低いと非常にくすんでしまうため、特に彩度を上げることが大事です。
上の絵は緑色(エメラルドグリーン)系統単色のグラデーションです。彩度を上げて鮮やかに魅せています。
こちらは、ある絵の空の部分をトリミングしたものですが、同様に緑色が彩度が高く濃い印象にしています。
こちらでは中心部分に光源があり、そこから放射状に真っ赤なグラデーションが描かれていますが、同様に彩度をかなり上げ、色がくすんで見栄えが悪くならないように意識しました。
このように、単色でのグラデーションを魅力的に描く場合は、彩度は高めに保ちつつ、明度のコントロールを意識すると良いでしょう。
#4 絵への上手いグラデーションの取り入れ方
さて、今まで魅力的なグラデーションを作る際の色について説明をしてきましたが、これから実際にイラストにグラデーションを取り入れるコツを説明していきます。
コツと言っても大層なものではなく、とてもシンプル。それはなるべく細かく色数を多くしてグラデーションを描くということです。
色数が多いという事はそれだけ綿密に描かれている事であり、情報量も上がります。人は、単調なグラデーションよりも、複雑で深みがあればあるほど美しいと感じるもの。できるだけ多くの色をブラシなどで置きながらグラデーションを描いていくと良いでしょう。
上の絵の上部(ピンク線で囲んだ部分)は青色から緑色へとグラデーションを描いていますが、群青、水色、エメラルドグリーン、そして緑色へと、少しずつ色を変えることで多相な美しさを出しています。
このように、青から緑の間になるべく多くの色を使うことで、ワンランクアップした魅力的なグラデーションを描くことが出来ます。色相環を少しずつずらしながら描くやり方がオススメです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回ご紹介したのは色に関するお話、グラデーションを魅力的に描く方法についてでした。
冒頭でお話しした通り、色が人に与える印象は非常に強力な物。同じ物でも色が違うだけで感じるイメージはガラリと変わります。それだけ強力な効果を持つ色だからこそ、扱いには慎重になるべきですし、思い通りに使いこなせた時の武器としての強さは、計り知れない物があります。
ぜひこの記事を参考に、自分なりの美しい色を絵に出せるようになって頂ければと思います。みなさんの創作活動、商業活動の一助となれば幸いです。
プロフィール
R.E.C
1992年東京都生まれ。株式会社スクウェア・エニックス勤務を経て現在フリーランスのデザイナー、アーティスト。イラスト制作をしながら都内スタジオ統括、デザインプロデュースなど幅広く活動している。CLASS101にて超基礎からの背景講座を販売中(講座URL:https://onl.bz/JV38XRQ)。
書籍情報:翔泳社「仕事につながる背景の描き方」R.E.C著
https://twitter.com/R_E_C_flctiond
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