2022年のイラストレーション
12月1日より連載して参りました、KUAイラストアドベントカレンダーも本日で最終日です!12月24日はイラストレーションコース研究室の虎硬先生から『2022年のイラストレーション』です!
京都芸術大学通信教育部 イラストレーションコースの虎硬(とらこ)です。アドベントカレンダー最後の記事は来年のイラスト界隈の傾向やトレンドについてお話します。
2021年の振り返り
来年の話をする前に、簡単に2021年を振り返っていきましょう。今年も2020年に続きコロナの情勢が続きました。多くの大学や企業でリモートが続き、生活スタイルが固定化されます。コンテンツや広告業界でもコロナ禍前提のプロモーションが中心となり、社会環境が一新されました。それでも10月以降は感染者数も減少し、12月には2年ぶりとなるコミックマーケットの開催も予定されています。
日本経済は大きな偏りをみせます。飲食店や観光業が大打撃を受ける中で、自宅で楽しめる宅食デリバリー、WEBコンテンツ、ゲーム業界などでは「巣ごもり需要」が発生。またお金を使う機会が減る中で「金余り」も発生し、投資に回す動きが加速します。結果としてNFTのような新しいマーケットでの取引が過熱しました。
絵柄の方向性
イラストの作風やモチーフはおおよそ3年スパンでの入れ替わりがあると、私は考えてます。直近の流行モチーフは「レトロ」「ゴシック」「リアリスティック」「悪」などがありました。これらに関連した書籍などもリリースされ、ヒットタイトルも生まれました。
イラストの周辺環境はこうなる
来年のイラストはどのような立ち位置になるのか、いくつかセクションを分けて考えていこうと思います。あくまでも、実データのない主観的な予想ですので、それを前提にご笑覧ください。
NFTアート
2021年にはイラスト界隈でも特に話題をさらいました。取引で頻繁に使われる仮想通貨『イーサリアム』は5月に一度ピークを迎えて降下しましたが、その後も乱降下を繰り返し、現在では5月のピークを越えてさらに値上がりを続けています。構造的な懸念や倫理的な問題などが来年以降にどう解決されるかが争点ですが、恐らくこれは解決されないんじゃないかと思います。NFTアートの盛り上がりは、仮想通貨の評価額とは切り離して考えるべきです。仮想通貨で個人の価値を売買する「VALU」も、リリース当初の2017年には大きな注目を集めましたが、2020年にはサービスを終了しています。また法規制の問題もあるので、NFTマーケットがそれに対応できない可能性もあります。
先行者利益を得やすい仕組みなので、現在参加しているクリエイターは大きなメリットを感じている人も多いです。一方で一般への認知にはまだ時間がかかるでしょうし、認知される過程でも様々なストレス(個人間でのトラブル、詐欺被害など)は発生することになるでしょう。NFTのイメージを変えられるかは現在のマーケットオーナーにかかってますが、今のところその兆候はまだ確認できません。
SNS市場
イラストの公開場所は、Twitterが来年も主流になるでしょう。フォロワー数が顕著に伸びる傾向がありますが、そのSNSの中でコンテンツが消費されてしまうということもあります。
特に顕著なのは漫画ですね。何万回もRTされて単行本化してもそれ自体はあまり売れなかったり、逆にフォロワーが数千人でも数十万部売れている作家もいます。SNSでの数字を表層的に評価するのではなく、いかに実利に繋げていくかが企画の肝となります。
絵の表現
非常にレベルが上がっており、新しいクリエイターが次々に登場していることがとても嬉しいです。本当にエキサイティングな市場になっていると感じますね。面白いのは商業的な文脈を持っている方が(恐らく)少ない点。純粋に面白い絵を描こうとしている作家が増えてきているように思います。こういった傾向があるからこそNFT市場に注目が集まるといえるかもしれません。
既存市場では、いかにイラストを斬新にパッケージ化するかというところに各社は頭を使っています。出版社はイラストレーターを起用した企画を検討し、ゲーム会社では動画・3D・2Dモーフィングなどといったコンテンツのリッチ化にも主眼がおかれています。作家は単にギャラと工数をみて仕事を請けるのではなく、より自身の表現をスケールさせるため、もしくは絵描きとして成長くためのプロジェクトをさらに求めるようになっていくでしょう。
まとめ
イラスト界隈はどんどん面白くなっています。「京都芸術大学通信教育部 イラストレーションコース」でも講師ラジオやアドベントカレンダーなど新しい企画を増やしてきましたが、来年からはさらにチャレンジを増やし、イラスト界隈を盛り上げていければと考えてます。
入学を検討している方。今後もWEB説明会など多数のイベントがあります。気になっていることはどんどん質問してみてください。すでに入学を決めた方。作品をとても楽しみにしています。在学生の方、来年も一緒に成長していきましょう。
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