見出し画像

気象大学校の受験対策について

気象大学校の受験対策で私が取り組んだことについてまとめてみました。私は仮面浪人で受験(現役時には京大を受験)した者ですが、気象大学校は東大や京大のような有名大学と違って受験情報が少なく、情報収集には苦労しました。このnoteが気象大学校に興味のある受験生の参考に少しでもなればと思います。

基本情報

気象大学校(以下気大と略)とはどういう学校なのかということについての説明は、ホームページや学校案内パンフレット等に委ねますのでそちらの方をみて頂ければと思います。

ただ受験に関して注意しておくべき情報だけあげておくと現役~二浪相当の人までしか受験資格がないということ、一次試験は10月の終わり~11月の初め頃、二次試験は12月の中頃にあり入試時期が一般的な大学と比べかなり早いということです。また最終合格者数=採用者数ではなく1月下旬頃に発表される最終合格者の中から採用枠内の順位の人にまず内定通知が届き、その後辞退者が出る毎にそれより下の順位の人に内定通知が届くという仕組みになっているようです。気大は入試時期が非常に早いことに加え、採用人数が11~20名程度(その年の卒業生の人数によって変動)とかなり少ないこともあって難易度は高く、単純な比較は出来ないものの東大理一や京大理学部、東工大レベルの受験生が力試しに受けるような学校だと見て良いと思います。ちなみに私が受験した2020年度は総受験者数299名、一次試験合格者数60名、最終合格者数42名となっており、内20名が最終的に採用されることになっています。

受験対策(一次試験)

私が受験した時は、一日目:学科試験(選択式)→作文試験⇒二日目:基礎能力試験→学科試験(記述式)の順で試験がありましたので、その順番で述べていきたいと思います。各科目の成績のうち一科目でも、凡そ3~4割の範囲内で定められている「基準点」という点を下回ってしまうと、自動的に不合格となってしまうので、極端な苦手科目はなくした状態にしておいた方が良いです。なお、私は過去問演習に赤本を使ったのですが、それ以外の過去問の入手方法として人事院のホームページの情報公開窓口で開示請求を行うというのもあるそうです。ただし、請求から到着まで約一ヶ月半かかるそうです。赤本は結構高い(二年分の収録で2400円+過去問以外あまり有益な情報は載っていない)ので、入試時期まで時間的に余裕のある方はこちらの制度を使って過去問を入手してみるのもいいかもしれません。

1. 学科試験(選択式)

選択式の学科試験は数学・英語・物理の三科目からなる問題(英数物それぞれ13問ずつで計39問)を3時間で解く試験です。問題のレベル的にはセンター試験に近く、合格を狙うなら高得点(8割以上)を取るべき科目であると思われます。私は現役生だったころの遺産があったためこの学科試験に関しては特別な対策はやらなかったのですが、センター試験や共通テストの対策と殆ど同じように取り組めば問題ないのではないかと思います。

2. 作文試験

作文試験は与えられたテーマに対して50分で文章を書くという試験です。これは二次試験の合否判断に使われるものですが(何故か)一次試験の時に実施されます。文字数は何文字以上、何文字以下のように明確に定められているわけではなく、横線が引いてあるA4くらいの大きさの紙に記入するというものでした。自分が受けたときのテーマは「歴史から現代を生きる私たちが学べることについて」というものでしたが、過去問を見ると自然や防災に関することなど様々なテーマがありました。自分の考えを論理的な文章にして述べられるようにしましょう。私は対策らしい対策はやりませんでしたが苦手な人は一般的な大学入試小論文の対策と同じようなことをやれば良いのではないかと思います。

3. 基礎能力試験

基礎能力試験は一般大学の入試には見られない独特なタイプの試験で、どのような対策をどれだけやるべきか結構悩ましい科目だと思います。試験そのものについては公務員試験の教養科目によく似ており、要は公務員として仕事に取り組む際に求められる知的処理能力や教養としての知識がどのくらい身についているかを試す試験だということになりますが、センター試験(おそらく共通テストにも)によく似たタイプの問題もそこそこあります。問題は全部で40問あり解答時間は1時間30分です。配点が記述式の学科試験1.5科目分に相当するため気大合格を狙うなら対策は出来る範囲でしっかりやるべきだと思います。具体的な対策としては国家公務員一般職(総合職でも可)の教養試験の過去問集から基礎能力試験の問題と似たような問題を探して時間を計って解きました。おおむね前半が処理能力を試すタイプの問題で後半が知識を試すタイプの問題になるので時間配分には気をつけましょう。処理能力を試す問題(国家公務員試験では「数的処理」の分野等に相当)は慣れが重要なのでそれなりに力を入れました。知識を試す問題はそれぞれの分野に相当する高校の科目のセンター試験対策などをしていれば十分高得点は取れると思いますが、他の科目との兼ね合いを考えると対策としてのコスパは悪いように思ったので私は形式に慣れる程度の対策しかしませんでした。

4. 学科試験(記述式)

合否を大きく左右すると思われるのがこの記述式の学科試験で、選択式の学科試験と比べると一気にハードな試験になってきます。試験時間は三科目何れも1時間20分です。

・数学

自分にとってはこれが一番ハードでした。誘導が付いたタイプの問題ですが問題全体の難易度は非常に高い方だと思います。全部で三題あるため一題当たり25分+αくらいの時間配分ということになりますが、これがなかなか厳しいです。大問の前半くらいまでは確実に得点しつつ後半の難しい問題で部分点をしっかり稼げるような記述が出来れば良いと思います。高得点を取るには高い処理能力や計算力が求められるため、対策としては東大の数学対策が有効だと思います。私は現役で京大を受けたのですが京大の数学対策は気大の数学対策としては直接的にはあまり有効ではないように感じました(入試数学全体に通ずる「基礎力」を鍛えるという意味ではやる価値は十分あると思います)。参考書は気大を受けるならコレ!といったものは正直ありませんが、私は『新数学演習』や『ハイレベル理系数学』等を活用しました。

・英語

全部で大問三つありました。大問一は少し特殊な問題で物理を中心とした自然科学系の文章を題材に自然現象を英語で説明したりするような問題が出ます。私が受験した年は気圧を題材にしたやや長めの文章が出てきて長文読解に通ずるような問題もありました。対策としては高校レベルの自然科学(主に物理)にまつわる英単語や英語表現についてインプットしておくと少し解きやすくなると思います。大問二と三はそれぞれ長文読解と英作文で雰囲気としては近年の京大英語のそれに非常に近いなと感じました(京大英語をやや易化させて試験時間を短くしたような感じ)。長文読解と和文英訳の基礎的な力をしっかり身に付けることが重要です。参考書としては東大・京大レベルに対応したものの中から自分にあったものを選ぶと良いと思います。私は元々京大志望だったというのもあって『世界一わかりやすい 京大の英語 合格講座』や『東大の英単語』(京大対策にも有効)が結構役に立ちました。

・物理

難易度的には数学のそれと比べると相対的に易しめな印象です。全部で三題あり数年分の過去問を見たところ力学と熱力学と電磁気の三分野から出題されていました。対策としては旧帝大や東工大レベルの物理対策とやるべきことは殆ど変わらないと思います。熱力学の分野では面倒な数値計算が求められることがあったので、早く正確に計算出来るように訓練しておきましょう。参考書は『物理のエッセンス』や『標準問題精講 物理』を使いました。

二次試験について

二次試験は一次試験の合格発表から一週間後に行われます。住民票記載事項証明書や高校の卒業(見込)証明書や面接カード(三枚)等の書類を持参する必要があります。気大の面接カードは大卒の国家公務員試験の面接カードと見た目や内容がよく似ているので、どんな感じか気になる人は「国家公務員試験 面接カード」なんかで調べてみると良いかもしれませんが、一般的な採用面接で普通にありそうな質問が殆どです。対策としては面接カードに書かれてある質問に対する答えを自分の言葉でしっかりと文章化して頭に入れておくなどして、しっかりと中身のある受け答えが出来るようにシミュレーションしておくということくらいだと思います。ちなみに二次試験には身体検査もありますが体力が測られるわけでもなく単に近くの病院で簡単な健康診断的なものを受けて終わりという感じです。面接は待ち時間が結構長い(私は3時間くらい待ちました)ので自習教材等を持ち込んでおくと良いと思います。

得点開示

気大入試の合格者は単に素点を足しあげたものではなく、試験の平均点と標準偏差を加味して満点は1000点程度、平均が500点程度になるよう算出された「標準点」と呼ばれる点によって決められています(科目ごとの難易度のバラツキの影響を和らげるためだと思われます)。詳しくは人事院のHPに「気象大学校学生採用試験の合格者の決定方法」というPDFがあると思うのでそちらを参照して頂ければと思います。私の得点は653点(合格最低570点)で席次は最終合格者数42人中14位でした。素点だと数学と物理が6割で英語が7割程度取れていました(平均はいずれも5割弱)。マーク式の学科試験が31点(39点満点)で、基礎能力試験は31点(40点満点)でした。自分なりの講評としては、数学は厳しめに見積もって5割弱くらいの手応えだったのである程度部分点で稼げたなという印象です。物理は7割以上を目指していたものの後半の電磁気が厳しかったのと細かい計算ミスが恐らくあったせいで目標点には届きませんでした。英語は目標点に近い点数が取れて良かったなという感じです。選択式の学科試験(平均23.529点)は対策を怠ったせいで予想より出来が悪かったなという印象で、基礎能力試験(平均26.454点)はあと2, 3点くらいあった方が安心だなという感じです。気大入試は模試もなければ入試データにも乏しいので、一般的にどのくらいの点数を取れば合格ラインに達するのか正直分からないのですが、一つのデータとして参考にして頂ければと思います。

画像1


以上になります。他に何か気になる点があればTwitterのDM等で質問受け付けますのでお気軽にどうぞ。