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【お話】ほんものの愛コンテスト #7

愛は祈り

 「エントリーNO.104! 宣教師!」
司会者に紹介されたのは、小柄な老人でしたので、人々はまたざわめきました。
老人はお姫さまの前に立つとお辞儀をして、微笑みました。
 「ほんものの愛をお探しだとうかがい、やってまいりました」
お姫さまは戸惑いを隠そうともせず、老人をみつめました。
 「愛とは、祈りです。愛するひとが幸せでいられるようにと祈ることです。それだけをお伝えしたくて」
 「祈ること?」
老人の言葉をさえぎるように、お姫さまは聞き返しました。
 「そうです」
 「そんなの、目に見えないし、感じることだって出来ないわ」
お姫さまは納得できないというように首を横に振りました。
 「もともと、そういうものなのです」
老人は穏やかに言いました。
お姫さまは、いまにも泣き出しそうな表情になって黙り込みました。
ほんものの愛が祈ること?
触ることも確かめることもできないもの?
 「ちがうわ」
震える声でお姫さまは否定しました。
 「ちがいます、絶対に」
老人を睨みつけるようにしてそう言い切ると、お姫さまは立ち上がりました。
 「わたしは諦めません。ほんものの愛を手に入れるまで探しつづけます!」
広間に響き渡る声でそう宣言して、お姫さまは席を離れて広間から出ていきました。
 「これ姫!!」
王さまとお妃さまも慌てて立ち上がって後をおいかけました。
 「し、失格!!」
司会者は動揺しながら声を張り上げました。

 宣教師は少しだけ悲しそうな顔をして立ち去ろうとしましたが、魔法使いがよろよろと立ち上がって話しかけました。
 「あの…」
 「いいんですよ」
老人は微笑んで、
 「わたしはこれが仕事でしてね。この国だけじゃなく世界中をまわっている宣教師なのですよ。国外追放されても、たいしたことではないのです」
そう言うと、今度は真顔になって魔法使いを見つめました。
 「あなたも祈りなさい。お姫さまが『ほんものの愛』に気づくように」
血のにじんでいる魔法使いの手をそっと包むように握って、やさしい声でそう言う宣教師を見つめ返して魔法使いは頷きました。
 「ええ、でも祈るだけでいいのでしょうか。それだけでいいのでしょうか」
 「愛は、とても無力なものかもしれない。それが一人のものである限りはね」
老人の瞳の横の笑い皺がより一層深く刻まれて、魔法使いは胸が熱くなり、彼の手をぎゅっと握り返しました。
老人も黙って何度も魔法使いに頷いてみせて、やがてそっと手を離して広間から出ていきました。

観客たちの戸惑い

 「本日のコンテストはこれで終わります」
司会者が疲れ切った声でそう告げると、観客たちは立ち上がりながら、口々にお姫さまたちの悪口をいいはじめました。
 「なんだかなあ…」
 「お姫さまのわがままを聞きにきているような気がしてきたよ」
 「まったくだ、あの冒険家は気の毒だったよ」
 「それを言うなら、あの騎士だって! とっても強い騎士だったのに何も国外追放しなくたっていいじゃないか」
広間の片隅で、魔法使いは人々の声をじっと聴いていました。
 「ほんものの愛、なんてあるのかな」
 「これだけ国を騒がせておいて、ありませんでしたーじゃすまないだろう」
 「王さまはどうするつもりかねえ」
 「聡明なお姫さまだと思っていたんだがなあ…」
 「しっ! 衛兵に聞かれるよ」
いたたまれなくなって、魔法使いはその場から消えました。
このままじゃいけません。
お姫さまが国民に嫌われてしまいます。
そんな悲しいことになってほしくない…。
魔法使いの胸の奥で、またなにかがはじけました。


<#8につづく>


くぅの本日のヒトリゴト 2024.9.17の分

 読みに来ていただきありがとうございます。
昨日はUPできなかったので、本日、二日分を投稿するつもりです。

 そうそう、週末に大きな本屋さんに行けたのでNoteの本を買ってきちゃいました。
いまだになぞが多すぎて、投稿することしかできないから。
どうしたらもっと活用できるんだろーか、と思いましてね。
でもまだ半分も読めてないんだけども。
これをUPしたら、読むつもりですーーー

ではでは、またのちほど…


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