【第3回】ツイッター部、ジャズを聴く【DEZOLVE】
皆さんごきげんよう。京大ジャズ研ツイッター部(@KU_jazz_tw)です。
前回のウェザー・リポートの記事からだいぶ経ってしまいましたが、ありがたいことにこのブログを楽しみにしてくれている人もごく一部にはいるみたいなので、第3回目もやっちゃおうと思います。それと昨晩、実はこの企画と連携した生配信を行いました。そこでリスナーの皆さんと一緒にアルバムを聴いたので、その際のレビューをここに書いていこうと思います。今後もこんな感じで生配信と連携した企画として進めていければと思います。
はてさて、今回のアルバムはコチラ。
つい先日発売されたDEZOLVEの新アルバム「AREA」を(おそらく世界最速)レビューします! ジャズと言っておきながらゴリゴリのジャパニーズ・フュージョン、しかも新譜です。なんなんだこの企画……。DEZOLVEは現在日本で精力的に活動を拡げている若手フュージョンバンドですが、今回のアルバムにはサックスの本田雅人が参加! テクニックにさらなる磨きをかけるDEZOLVEとのコラボによってどんな化学反応が生まれるのでしょうか。例によってアルバム情報は最後に載せてます。
さっそく聞いてみましょう。いぇい。
# 1 Birth of Earth
冒頭のスネアのフレーズは、ちょうど前回のウェザーリポートの1曲目、Unknown Soldierを思わせる. メインメロディーが醸し出す独特の気持ち悪さが「宇宙感」を演出。ん、待てよ、宇宙……? そうか、どこかで聞いたことあると思ったらCasiopeaのUniverseに似てるのか! これ絶対インスパイアされてるゾ。はっきりわかんだね。
途中に現れるキメやユニゾンが超絶で、しつこいほどに複雑。そこまでする必要があるか、と疑ってしまうが、こういう組曲的なサウンドにはいい演出になってるっぽい。
後半で出てくるギターソロが全てを救済してくれる。嗚呼、宇宙を感じる……ジャズは宇宙(パワーワード)。
そうはいっても構成は比較的はっきりしていてメンバーの見せ場もわかりやすい。今までのDEZOLVEらしいサウンド作りからも外れていないと思う。しかし、個人的にはやや後半がダレ気味かなと。ギターソロに入るまでの流れはとてもよかったからこそ、そこで終わっていても良かったのかも。ちょっとお腹いっぱいだ。
# 2 Vista
待ってました、本田雅人の登場です! 冒頭からのサウンドはDimensionのようなクールさとロックの溢れる雰囲気。そこにサックスが絡み合うんだが、しかしメロディがどうしてもT-SQUAREのExplorerやMegalithに聞こえてしまう。なんだこれ呪いか? 本田雅人が吹くとそう聞こえてしまうんか。
いや、バリサクなんか吹かれたら余計に本田感が増すやん。Tokyo Trainか?
ソロの回し方なんかは本田バンドの曲でもよくあるような感じで、メンバー全員の技量が強く要求されるサウンド作りだ。たぶん本田ソロ名義の曲でMandrakeという曲があったはず。これをさらにドラマチックにした感じの曲だ。フュージョン好きにはハマる曲。しかし個人的オススメは他の曲にしておこう。
そもそもVistaってなんだ。Windows10のこのご時世に。
# 3 Beat The Moments
いや、ロックやん。
どうみてもギターとドラムがかっこいいロックバンドですありがとうございました。
まああえて言うと、ストレートなロックの構造にどこまでDEZOLVEらしさが出せるかを実験したかのような曲。出てるんじゃない(適当)。ドラムソロ裏の合いの手は好き。
サビのメロディが素直に明るいのは良いかなと。これは他のDEZOLVEの曲にも言えるけど、聴いてて楽しくなれるようなキャッチーなメロディをしっかりサビで持ってくるところがある。よく言えば安心感があるし、悪く言えば「オトナになりきれない」かな?
元気になれる曲でいいですね(小並感)
# 4 Clover
スネアのリバーヴが深い、往年のフュージョンバラード感のある曲。
以前はバラード寄りの変拍子曲があったが, 素直に4拍子になった感じ。
うーん、特に言うこと無しw
# 5 Soaring
本田EWIだ…!
全体を通して元気でハッピー、ハイテンションなまま最後まで走り抜ける曲。本田雅人の曲は少年のような純粋さ(テクニックはひねくれているがw)が持ち味だと思うので、それがうまく表れてる曲かと。注目して聴いてほしいのはピアノソロ。友田さんのピアノはフレーズがすごくよくていつも心くすぐられる。まあでもあっという間に終わってしまうんやけども。
# 6 Saga of lazuline ←オススメ!
DEZOLVEのアルバムは半分が明るくキャッチーな曲、もう半分は色モノというイメージだが、このアルバムではその色モノが後半にどっと詰まっている。ここから最後にかけてだいぶクセの強い曲が続くようだ。
まず先に言っておくと、この曲は展開が急&多い。それはもうめちゃくちゃ変わる。
冒頭の不穏な雰囲気を抜けるとすっと隙間に入るピアノ、静かなところにふっと浮き上がるギター。ムードを作り出したかと思えば急にファストスウィングで急き立てる(ここ鳥肌)。そして怒涛のユニゾン。正直ちょっと笑ってしまった。おいおい曲がり角で女の子とぶつかったと思ったらテロリストと一緒に異世界転生したぞ、とかそんな感じ。
そして急にピアノとチェロ? のバラードが始まる。なんだか感動というよりむし、ここはどこだ?という不思議な気持ち。異世界転生だわこれ。
そしてバラードのリズムが不意に3拍子に切り替わり(ここも鳥肌)、ピアノソロを構築していくところはこのアルバムで一番好きかも。てかおしゃれすぎるんだよな友田さん。
とか! 思ってたら! 3拍子のラテンっぽいフレーズが繰り出され、シンセリードによるソウルフルなソロが始まる。言っちゃうとめっちゃShaun Martinっぽい。Snarky Puppyっぽい。なんだろう、全体を通して何をしたかったのかわからないのに、「ここ好き」ポイントが多すぎて結局オススメ曲になってしまった。アイデアの宝石箱みたいな曲。
# 7 Fairy Garden
いきなり変拍子かと思いきや、リフの刻み方とコードチェンジが独特なだけのようだ。この曲も結構好きなんだが、何と言っても気になるのはしっかりと主張してくるコーラス(ボイス系のシンセ? でもそんな感じには聞こえない)。いやどう聴いてもメセニー。絶対こんなメセニーの曲あるって。そういうエスニックなフレーバーも感じる曲です。後半の本田フルートソロも良いです。まあ全体的に良いです。でもメセニーです。
# 8 Trapezist
Trapezistというのはブランコ曲芸師の意味らしい。ブランコ? サーカス団か何かなのかな。4曲目のCloverが優しいバラードだとすると、こちらは泣きのバラードだ。切ない。途中に表れる不気味なピアノアルペジオはサーカス団の裏の影を表現しているのかも? ギターのメロディのこぶしが効いた、曲芸師の哀歌である。ちなみに僕はお手玉三つも投げれないので曲芸は無理そう。誰かやり方教えて。
# 9 The Pandemic Plant
こちらも色モノ枠。普通に変拍子とか取りにくいリズムを多用してくるし、メロディも落ち着かない感じ。てか拍子を取らせまいとしてくる感じが腹立つ。途中のキメとかなんやねん。6発ぐらいのやつ。これ要る? イメージだけで言うとハロウィンみたいな、スリラーみたいな世界に近いんだけど、聴いててそこまでハッピーにはならないしおどろおどろしい感もないし、なんか、うーん、脳みそをねじ曲げられたような感じになる。だからその、脳みそをねじ曲げられたい人はきっと気にいると思いますよ、ええ。そんな人がいるのかどうかは知らん。メンバーもこれ頑張ってソロとってるけどなんで取れるんですかね……(困惑) その割には報われない曲だ。
えっと、最後は真央樹の遊び場ですか?
# 10 Last Colony ←オススメ!
安心感のある世界に帰ってきました。ちょっとノスタルジックにも聞こえる。曲順の妙かコード進行の妙か。さらに途中のスウィングが不思議な感じを演出している。他の曲にもスウィングに切り替わる展開使われてたし、最近のDEZOLVEのお気に入りなんだろうか。サビのメロディは相変わらずポップでキャッチー。少し新SQUAREを思わせる。
間奏中にラジオ音声みたいな声が! T-SQUAREのMan on the Moonっぽい。宇宙の孤独な旅を思わせる。こういう仕掛けは個人的にすごい好きで、Last Colonyというタイトルともよく合致している。ようやくたどりついた、安住の土地なのかも。サビのメロディの温かみにも頷ける。
最後の展開はDEZOLVEらしく締めくくりました。ナイス!
# 11 Our New World
こっちが本当に最後の明るい曲。どちらかといえばストーリー性があって展開重視だ。それはちょうど1曲目のBirth of Earthに対応させているのかもしれない。展開重視といっても、ソロパートはのびのびと演奏できるように配置されている。比較的転調が多く、新世界の幕開け感溢れる曲でした(小並感(2回目))
というわけで、全体を振り返ってみるとやっぱり明るい曲が多かったですね。そしてそれとは対照的に中盤に押し込められた「変な曲」ゾーン。僕はこっちの方が好きでした。やっぱ曲の個性が出てて楽しいし。前作のPortrayでもAfter the Rainy Seasonにハマりましたから。こういうクリエイティヴィティはDEZOLVEのこのメンバーでないと育て続けられないとこだと思うので、個人的には応援しています。といっても、やっぱ明るく激しいポップでキャッチーな曲が人気なのは依然としてあるでしょう。それと本田雅人との親和性も高かったですね。彼のEWIが合うような曲もちゃんと用意されていて、無理やり感のないコラボになっていたんじゃないかなと思います。このアルバムでいくつか多用されたテクニック(スウィングに切り替わる展開やロック調の激しいソロ、執拗なユニゾンのキメなど)は今後のアルバムにも引き継がれるんでしょうか? 何より、どんだけ上手くなるんだこのバンドは……?
というわけで、今回はここまで。あとは皆さん思い思いにシェアしつつ、皆さんの感想も聞かせてくださいね。
では、皆さん良きジャズライフを。
AREA / DEZOLVE (2019年)
友田ジュン - Keyboard
小栢伸五 - Bass
北川翔也 - Guitar
山本真央樹 - Drums
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