日記『遊びのおとも』
「何の漫画が好き?」
と、小学生の頃によく友だちに聞かれることがあった。だが、私はあまり漫画を読まなかった。
なぜなら漫画に代わる、よい遊びのお供を母親から贈ってもらったからだ。
これらは母がフランスに行った時に買ってきてくれたお土産だ。 出張とか長期休暇をとって、なんていうカッコいいものではなく、当時流行っていた懸賞にハガキで応募し、偶然にもヨーロッパ旅行が当たったのだ!笑
母は私に革で作られた首から下げられる小銭入れと、フランス硬貨、そして美術館などのパンフレットをくれた。
小学生の私には革の小銭入れや外国の硬貨など、見たこともないものがオシャレで素敵なものすぎて、感動で肌身離さず身につけるほどだっだ。
毎晩お風呂に入ったあと、その小銭入れを首から下げながら、ルーヴルの絵画や宮殿の彫刻たちを眺める。
宗教的なものや神話にもとづいて作られたもの。いろいろあって、小学生の自分にはなんだか全く分からなかった。
でも、その理解できない部分が想像を掻き立てる。
『なんでこんな表情なんだろう?』
『どうしてこの大きさなんだろう?』
『天使と悪魔…どういうことなんだろう?』
と、食い入るように絵画や彫刻を見つめ、不思議だなと感じ、想像をし、ひとしきり気が済んだらページをめくるという毎日だった。
きっと絵本とかわらない感覚で見ていたのだと思う。どんどん湧いてくる疑問に答えは出ない。でもそうやって答えが出ないことに、ルーヴルやフランスへの憧れが膨れていった。
母が何気なく買ってきてくれたこのお土産のおかげで、私はよく美術館に行く。でも今だって芸術的なことなんてわからない。知ったかぶりをするつもりもない。
そんなことよりも、あの頃と同じように作品に不思議を感じ、想像し、ひとしきり自分でうんうんと頷きながら楽しむ気持ちを、ずっと失わずにいられたらいいなと思っている。
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