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日記の練習を立ち読みして。

日記の練習を飲んだ。
いや違う、読んだ。
いや、飲んだのかもしれない。

今日は月イチの定期検診の日。
毎度のように、お変わりないですか、と簡単な質問に答えてあっさり終了した。
薬の調剤はいつも混んでいて、30分は待たないといけない。
136番の整理券をもらい、鞄にしまう。

何もせずベンチに腰掛けていてもいいのだが、電車に乗ってきているので、何かしら見つけて、来た甲斐があったと思いたい。
そこで今日も隣接する商業施設にある本屋さんに立ち寄って、ふらふらと周遊することにした。

ふとエッセイのコーナーに呼ばれた気がしたので、立ち止まる。
何冊か開いたところで、ナスの絵が視界に入ってきた。
最近ペン画を描き始めたので、線の強弱に意識が向く。なかなかいい線に思える。きれいな曲線だ。
タイトルには「日記の練習」と書かれている。友人が最近日記にハマっているらしいので、面白かったら共有しようと思って開いてみた。

読む、というより、覗いているような感覚になった。

ゆるい短編の、本当に短編のメモ書きのような日記が、つらつらと載っていた。
ある日の断片、ある時間に存在していた景色の一瞬が切り取られた言葉が並んでいて、写真を見ているような気持ちだった。

友人のロルバーンの手帳にも、同じようなことが書いてあるかもしれないと思ったりした。

帯にはこう書いてあった。

「おもしろいから書くのではない、
書いているから
どんどんおもしろいことが増える」

「日記の練習」くどうれいん著

もう一度適当なページの日記を覗く。
そうか、こんなことでいいのか。これが「日記」なのか。と思う。

こうしたことでいいのなら、私にも書けるかもしれない、何となくそう思えた。


つい長居をしてしまった。
薬を受け取りに薬局へ戻る。受付番号は167番になっていた。
聞き慣れた丁寧な説明を受けて、整理券と薬を交換する。

帰りの電車、座席上の荷物置きにカバンを忘れた人が飛び込んで来た。軽やかな身のこなしで荷物を回収して改札へ続く人の波にのまれていった。
あれがスリなら捕まえるのは難しいだろうなと思った。

いつもより世界がちょっとおもしろく見えた。そんな帰り道だった。


ああ、餃子のいい匂いがする。お腹が空いてきた。


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ことよみ|sonohi_no_kibun|
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