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OpenAIがGPT4.5ではなく、o3をリリースした真意とは?

2024年12月20日、OpenAIは「12 Days of OpenAI」の最終日に、新しい推論モデル"o3"と"o3-mini"を発表しました。アメリカ数学オリンピックの問題で96.7%という驚異的な正答率を記録し、前モデルのo1(83.3%)を大きく上回る性能を示したこのモデルは、2025年第1四半期にo3-miniが、その後にo3が一般公開される予定です。 しかし、多くのユーザーが期待していた「GPT4.5」や「GPT5」といった従来路線の進化版ではなく、新しい「推論」モデルを選択したOpenAIの決断に、多くのAIユーザーが戸惑いを感じているのではないでしょうか。

“お金儲け”だけを考えるならGPT4.5のほうが有利?

純粋なビジネス的観点から見れば、GPT4.5をリリースするほうが短期的な収益は見込めたはずです。その理由として:

  1. 既存の収益基盤の活用

    • OpenAIは2024年に10億ドルの収益を見込んでおり、その大部分がGPTシリーズからの収入

    • 企業向けビジネスに注力する「enterprise year 2024」という戦略の中で、GPT-4の進化版は自然な選択肢

  2. 企業顧客のニーズ

    • Fortune誌の報告によると、企業顧客の間でGPT-4は依然として最も人気の高いモデル

    • 多くの企業が既存のGPT-4ベースのシステムを構築済みで、互換性のある上位モデルへの需要が高い

  3. o3の用途がやや限定的

    • o3は主に数学的推論や論理的思考に特化したモデル

    • 一般的な会話や文章生成など、企業の一般的なユースケースには適していない可能性がある

それでもo3を選んだOpenAIの真意

自分も「なぜ」と戸惑っていたところ、Xで面白いポストを見たのですが、その観点を紹介します。

Xの投稿

中心的な論点として「OpenAIはAI開発の方向性を示したかった」とのことです。
振り返ってみれば、OpenAIは常にAI開発の最先端でした。まずはChatGPTの爆発的なリリース。続くSoraは、テキストから動画を生成する。Soraは長い間デモ動画しかなかったが、Soraのコンセプトを基にRunwayやKlingが次々と動画生成AIをリリース。
つまり、Soraの本当の意味は「こういうすごいことができる」という世界観を示したことにあると思います。
そして推論に特化したo1が登場してから数ヶ月で、GoogleやDeepSeekが随従モデルをリリース。
こうした実績から見えてくるのは、OpenAIが単なるAI企業としてではなく、業界の道標として機能してきた事実です。彼らの各発表は、AIが次に目指すべき方向性を示す羅針盤と言えるではないでしょうか。 そして今回のo3は、「人間を超えるAI」という新しい世界観を提示しています。
業界は今、重要な転換点を迎えています。従来のスケーリング的なアプローチだけでは、いわゆる「知能の壁(Wall)」に突き当たりつつあります。この壁を如何に突破するか、これこそOpenAIが真に提示したいものだと思います。

“AIバブル崩壊”への警戒と投資家・ユーザーへの信心維持

OpenAIが特に懸念されているのは、AIバブルの崩壊シナリオです。欧州中央銀行(ECB)は、AI関連株式の「バブル」について警告を発し、投資家の期待が裏切られた場合に急激な価格下落が起こる可能性を指摘しています。ウォール街のアナリストたちからは「AIはいつになれば実際に収益を生み出すのか」という疑問の声も上がっています。
このような状況下でのo3の発表は、OpenAIの巧妙な戦略と見ることができます。ChatGPTの成功後、OpenAIの企業価値は急上昇を続け、2023年1月の290億ドルから2024年2月には800億ドルへと跳ね上がりました。しかし、この急激な評価額の上昇は、同時にそれだけ大きな期待に応え続けなければならないというプレッシャーも意味しています。
o3の発表は、この期待に対する巧みな応答と言えます。単なる性能向上ではなく、数学オリンピックで96.7%という驚異的な正答率を記録することで、AIが壁を破ることができることを具体的に示したのです。これは「AIはまだ発展途上」という投資家の懸念に対する、説得力のある反証となるっでしょう。

終わりに

OpenAIは「業界の方向性を提示している」というのがあくまでもポジティブシナリオです。GPT4.5のトレーニングに失敗したという噂もちらほら聞きます。
それでも、o3の発表がもたらした業界の加速と安定があれば、GPT4.5やClaudeの次期モデルのリリースはそんな遠くないでしょう。

#OpenAI
#ChatGPT
#o3

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