
SFプロトタイピングにまつわる用語をまとめてみた
⚠️ 本記事は、自己理解のために下記参考書籍やネット情報を改めてまとめたものであり、何かしらの新規性・考察を含むものではありません。また、記載内容の厳密性も保証できかねますので、ご了承ください。
『SFプロトタイピング: SFからイノベーションを生み出す新戦略』https://amzn.asia/d/ggTjEgq
SFプロトタイピングが世界を導く?
「世界、つまらなくない?」
そんな思いを抱えながら日々コンサルタントとして働く中で、たまたまSFプロトタイピングという概念に出会い、強く惹かれるものを感じた。
もともとSFアニメ作品を大いに好んで育った自分であるが、ビジネス✖️空想力で世界を変える手段として、SFプロトタイピングには大きな可能性が秘められているように見えた。
SFプロトタイピングについて聞き齧ったばかりの自分が語るのも烏滸がましいが、簡単に言えば ”SFの力を借りて未来を思い描き、あるべき姿や解決すべき課題、向き合うべき問いを見つけ、そこからバックキャスティング的にいま取り組むべきことを見つける行い” と理解している。
現在の各企業や団体における取り組みは、現状の地続きでしかないフォアキャスティング的なものが大半に思われる。(ただしこれは、各企業が利益を上げるためにしょうがない面もあるし、そのような地に足のついた取り組みこそが社会を回すのに必要であるとも考える)
そんな中、やれ生成AIだシンギュラリティだと技術進歩は目覚ましく、「できないこと・問題になっていることをどう解決しよう」という課題解決型の思考から、「やりたいことを実現する手段はある(or いずれ現れる)中で、何を実現しよう」というビジョン型の思考へと重要性が移ってきていることも感じている。
そのとき、SFプロトタイピングが有力なツールになるのではないだろうか?特に、ドラえもんにはじまり、エヴァ、攻殻機動隊など多くのSFに自然に触れながら育ってきた日本人にとっての親和性の高さも期待される。
そのような思いからSFプロトタイピングについて学ぶ中、似たような概念や、界隈の中では当たり前の共通知識として使われているような言葉が示すものがわからなかったので、それらをまとめ頭を整理すべくこのnoteを執筆した。
類似概念の一覧
SFプロトタイピングについて情報を得る中で、何度か出てきたような言葉を以下に簡単にまとめた。概念だったり、手法だったり、作品ジャンルであったりと粒度が揃っていない点はご容赦いただきたい。
また、用語を俯瞰的にまとめることを目的としているため、詳細な理解についてはぜひ各用語ごとに調べていただきたい。
SFプロトタイピング
フィクションの力を借りて起こりうるかもしれない未来を描き、そこからバックキャスティング(未来を起点に現在のアプローチを探る手法)でこれからやるべきことを考える
よくあるやり方としては、ワークショップ形式で複数の専門家が集まり、お互いにアイデアを出し合い、未来に対するビジョンをSF作品として導くものが一般的
作品例については別noteにて ← 後日公開予定
ビジョン・ドリブン、イシュー・ドリブン、シーズ・ドリブンのうちのビジョン・ドリブンがSFプロトタイピングの思想の前提
『SFプロトタイピング: SFからイノベーションを生み出す新戦略』https://amzn.asia/d/d8RkESy
スペキュラティブ・デザイン
SFプロトタイピングの前身とも言える、社会課題をあぶり出し解決を提案するアート
未来のシナリオや可能性を想像することに焦点を当てたデザインへのアプローチ
社会的、政治的、技術的、倫理的な問題を探求し、新しいアイデアや解決策を生み出すために用いる
スペキュラティブデザインは未来に向けられるアプローチではあるが、未来を予測するものではなく、未来のさまざまなあり方を探求することで現在をより良く理解し、未来へのより良い決断を下すもの
デザイン思考は現在・過去のユーザに焦点を当てるため未来に向けた解決策を生み出すには不十分であり、その点でスペキュラティブ・デザインと異なると考えられる
議論を提起するためのデザインであるクリティカル・デザインから発展し、さらにテクノロジーに言及することでSF度が高くなったもの
『20XX年の革命家になるには──スペキュラティヴ・デザインの授業』https://amzn.asia/d/0nS4VQq
シナリオ・プランニング
計画策定手法のひとつで、今後起こりうる環境変化の可能性を複数の未来シナリオとして描き出すもの
起こりうる未来の状況をシナリオに沿って考え、複数の異なる分野の人々の知見を持ち寄って未来像を検証するアプローチが一般的
ビジネスアイデアを産むための手法としてよく使われるもので、SFプロトタイピングとは類似している
SFプロトタイピングとシナリオ・プランニングの手法から導かれる結果を比較する実験を実施
前者は後者に比べ、より挑発的で楽しいアウトプットが生まれる一方、リアリティに欠ける(=一般的なSFへの評価に近しい)という結果
ただし、進めたいと思える事業アイデアは、挑発性・新規性・楽しさのスコアの高さに相関しており、新しいビジネスを産む上ではSFプロトタイピングは有用と考えられた
また、SFプロトタイピングでは参加者同士のやりとりが多く、アイデアの広がりが見られた(「これはSFだから」という免罪符のもとに、突拍子もないアイデアも含めていろいろと意見しやすくなる傾向)
シナリオ・プランニングでは、設定から直接未来像を議論することが多く、当事者がどのような立場になるか、という議論が少なかった
デザインシンキング / デザイン思考
デザインの手法をビジネス上の問題解決に活用する考え方で、ユーザー視点や試作品づくりが特徴とされる
プロセス:共感→定義→概念化→試作→テスト
以下の3つの特徴で語られることも
人間中心設計:商品やサービスを使用する当事者の気持ちに寄り添いながら、課題や悩みを理解しようとする。単に表面化した問題を解くのではなく、ユーザーの立場から本質的な課題を見出し、根本的な解決策を探っていくことを重要視
共創型:様々な立場の人や異なる経験を持つ人たちとの対話でインスピレーションを得て、新しいアイデアや価値を共に生み出すことを大切にする。そのため、一部の人だけでなく、商品やサービスに関わるチーム全員が話し合いに参加することが一般的
非線形プロセス:効果そのものよりも起点や過程を重視しており、プロセスをさかのぼって再思考することを良しとする。トライアンドエラーを繰り返すことで「問題点を早期に発見しリスクを回避できる」「アイデアの信頼性を高める」といった効果が期待できる
アート思考
「好き・嫌い」というシンプルな思考をベースに、自分目線で自由に発想
デザイン思考は「他者目線」、アート思考は「自分目線」
デザイン思考が抱えると言われる2つの問題解決を意図
チームで解決策を探ると多数派に流されて突飛なアイディアが潰れ、最終的なアウトプットが平均をとったものになりがち
現状起点で議論が始まるため、結局現状の延長で収まってしまう
ユーザーの課題起点の解決策は、同業他社が同じところにたどり着いている可能性が高い
iPhone、ウォークマン、バルミューダ社のトースターなどが例とされる(ただしこれらはデザインシンキングの例として挙げられるケースも多い)
メディアアート
コンピューターや電子機器といった新しいテクノロジーを利用するアートを総称する言葉
ただし、現在進行形の芸術動向であり、厳密な定義が設定されているわけではない
「陳腐化して、巨大で楽しければいいものになってしまったけど、本来はテクノロジーと人間の関係を考えられるもの、それによって新しい視点や価値観が現れて、私たちの善悪といったいろんな観念がひっくり返されるようなものだった」(長谷川愛氏)
ビジョン思考
佐宗邦威氏が提唱
個人の「やりたいこと」をもとに発想を広げる
個人がビジョンのアーティストとなり、「妄想」→「知覚」→「組み換え」→「表現」のプロセスで、自分の妄想やワクワクをかたちにしていく
デザインファームBIOTOPEにおいては、スタートアップのビジョンづくりや、大企業のミッション・ビジョンの再定義を中心とした経営戦略のデザインに活用
『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』https://amzn.asia/d/eQbc05u
SF思考
藤本敦也氏(三菱総合研究所)が命名
SFをプロトタイピングするだけでなく、そのあとも見据えてあえて別の名称としたもの
20~40年ほどの長いスパンで考え、作った未来図に対し、議論したり価値観を問うことを重視
今まではつくれなかった非連続で、かつ意思が込められた未来をつくれる
社会全体の世界観を考え、未来のユーザーや課題を想像する必要性がある
『SF思考 ビジネスと自分の未来を考えるスキル』https://amzn.asia/d/60l8bYM