BUMP OF CHICKENに文句が言いたい 〜『Iris』リリースに寄せて〜
こんにちは。
今回はBUMP OF CHICKENに文句を言います。
(ヤバすぎる幕開け)(波乱の予感)
(どの口が言ってんだ)
まあ、というのは冗談でして、新アルバムリリースのタイミングで最近のBUMP OF CHICKENのディスコグラフィーをちゃんと批評したいのです。批判をしたいわけではなく、批評。
はじめに
最初に言っておきたい。「僕はBUMP OF CHICKENがとてつもなく大好きだ」ということ。13年前、
当時最新曲だった『ゼロ』を聴いたことから音楽に目覚め、バンド音楽が大好きになり、ギターを始め、今の僕がいる。BUMP OF CHICKENがいなければ今の自分はないのである。ツアーで仙台に来ることがあれば基本必ず行っているし、CDやBlu-rayがリリースされれば必ず購入している。ちゃんとファンだ。なんならマニアだ。
だからこそ。だからこそ。僕は文句が言いたい。
いや、文句ではなく批評をしたい。
彼らの直近の歴史から、活動スタンスについて考えて行こうと思います。
どうか。許してください。
寄せ集めアルバムが悲しい
表題の通りである。
結論、これです。
先日、BUMP OF CHICKEN5年ぶりのアルバム『Iris』の詳細が発表されました。
内容は以下の通りです。
全13曲。アルバムとしては全く申し分のない分量ですが、この中で『青の朔日』『木漏れ日と一緒に』を除く11曲が「既にリリースされている既発曲」です。しかも『木漏れ日と一緒に』は、2023年にリリースされたライブDVD /Blu-ray『BUMP OF CHICKEN LIVE 2022 Silver Jubilee at Makuhari Messe』に当時未発表曲として初披露された模様が収録されているため、実質的な完全新曲は『青の朔日』の1曲のみ。
これは、いかがなものか。
思えば、5年前にリリースされたアルバム
『aurora arc』でも、同じような感覚がありました。
以下がトラックリストです。
全14曲中、既にシングルリリースされていた曲が9曲。アルバムリリースにあたって収録された新曲に関しても『月虹』『新世界』はタイアップなどにより既に世に出ていたものです。1曲目『aurora arc』はインストゥルメンタルのオープニング曲なので、それを除けば実質的な完全新曲は『ジャングルジム』『流れ星の正体』のみとなっています。
この時も「おいおいシングル寄せ集めアルバムかよ」とガッカリした記憶がありますが、聴いてみると割とアルバムとして空気感が纏まっていて、オープニング曲の存在や完全新曲2つのアコースティックな雰囲気も良く作用して、比較的悪くないアルバムだったと思います。
ただ、過去のBUMP OF CHICKENのアルバムを遡ってみれば、既発のシングル曲がここまでの割合をアルバムの中で占めるようになったのはやはり『aurora arc』からで、今回の『Iris』で極地に。
確かに、都度タイアップがあればシングルがリリースされるのはおかしくないことです。アルバムを作るとなれば、そこまでリリースしてきた大切な楽曲たちをちゃんとまとめることも、普通のことです。
ただ、ただですよ。2016年リリースのアルバム『Butterflies』以降「タイアップがあればシングルを出し、数年経ったらそれを集めたアルバムを作る」という流れが続いていることが寂しいのです。BUMP OF CHICKENの素晴らしさは山ほどありますが、やはりそのひとつとして「アルバムの完成度」は外せないと思います。特に、2000年代邦楽ロック史に燦然と輝く大大大名盤『ユグドラシル』(2004)を皮切りに『orbital period』(2008)『COSMONAUT』(2010)と続く3枚の流れは、恐ろしいレベルです。シングルリリースやタイアップは当時から多いですが、アルバムにあたっての新曲も多く、作品全体としてのストーリーやコンセプトがかなり明確にしっかりしていました。『RAY』(2014)も大変コンセプチュアルかつボリュームのあるアルバムでしたし、『Butterflies』(2016)もボリュームこそ少しダウンしましたが、ベストアルバムリリース以降のBUMP OF CHICKEN楽曲の方向性をより強化していくような作品群だったと思います。かなりアルバムそのものに意味合いがあった。と言えます。
それが、今回のリリースに至っては「既発曲をどう配置しているか」に意味合いを見出すしかなくなっています。アルバムの解釈、と言う意味では新曲がない分、そうならざるを得ません。
確かに、今はサブスク全盛の時代。シングルリリースの減少やアルバムそのもののあり方は変化しています。それでも、様々なアーティストがアルバムを通し面白い表現を行っています。現在のBUMPがこのスタンスなんだ、と言って仕舞えばそれまでです。スタッフ側、マネジメント側の意向がこうなのだ、と言う問題でもあると思いますが、ではなぜこのスタンスになっていったのか?と言う部分を考えていきたいんです。
僕は、先ほど書いた「ベストアルバムリリース以降」の時期、これが結構ターニングポイントになるのではと思います。
BUMP OF CHICKENが大きく変わった2013年〜2014年のこと
・初のライブBlu-ray/DVDのリリース
・キャリア初のベストアルバム
『BUMP OF CHICKEN Ⅰ』
『BUMP OF CHICKEN Ⅱ』のリリース
・初音ミクとのコラボ楽曲リリース
・初の東京ドーム公演
・初のミュージックステーション出演
・初の紅白歌合戦出演
この全てが起きた2013年から2014年あたり(紅白歌合戦は2015年ですが)は、BUMP OF CHICKENファンにとって大きな驚きの連続だったと思います。僕も当時、毎度発表ごとに驚いたことを記憶していますし、当時のSNS上でもかなり意外性を持って受け入れられていたと思います。
この頃の楽曲群を振り返ると、やはり大きなターニングポイントとなったのは2013年に配信リリースされた『虹を待つ人』でしょう。そもそも初の配信シングル、という点でも驚きがありましたが、なんと言ってもシンセサウンドが前面に出た新しいBUMP OF CHICKENサウンドに面食らいました。もちろんめちゃくちゃいい曲なんですけども。
この後リリースされたアルバム『RAY』の表題曲『ray』は、この新しいBUMPサウンドを体現した曲で、今や彼らの代表曲のひとつとしても数えられるようになっています。シンセ・打ち込みサウンドを主体に、全体的にキラキラとした空気感を纏った楽曲。この時期以降のBUMPサウンドの軸となっています。また、ネット文化の中だけではなく、広くボーカロイドが受け入れられるようになったタイミングでの初音ミクとのコラボバージョンもかなり意外でした。(東京ドームで披露されたコラボステージは印象的。)
とにかく、この時期にBUMP OF CHICKENは楽曲性やメディア露出の面でも「外に開いた」活動を展開していったと言えます。滅多にテレビに出ない彼らのイメージがずっとあった中で、ミュージックステーションや紅白歌合戦への出演というのは正直予想外すぎるというか、拒否反応を示す人だっていたのではないか、と思うくらいです。
そこにマネジメント面でのどんな思惑があったのか。あくまで想像でしかありませんが、やはり新しいリスナーを獲得しにいった結果だったのかな、とは思います。僕自身は2011年からBUMP OF CHICKENを追いかけているリスナーなので、正直これ以前の空気感を知っているわけではありません。しかし、このBUMPが外に開いていった時期を経て、リスナー層が広がっていったことは想像がつきます。
ライブの面でも、2013年のベストアルバムツアー『WILLPOLIS』2014年の『ray』リリースツアー『WILLPOLIS2014』と、一貫したテーマ性でツアーを開催していましたし、会場BGMの『ボレロ』〜会場暗転でオープニングムービーの上映〜幕が開くという始まり方、冒頭披露する3曲も一緒、という共通点がありました。(ボレロからのムービー、幕が開いて登場、という流れは2012年の全国ツアー『GOLD GLIDER TOUR』から共通)セットリストを振り返っても、2014年では『RAY』の曲を多くセレクトしながらも割とベストヒット的な組み合わせに徹していた印象があります。参考までに、僕が見にいった宮城公演のセットリストを比較してみます。
このように、2014年のツアーでは一部をアルバム曲に入れ替える仕組みを取っていますが、セットリストの骨格は変わっていません。
以上のことから、2013年から2014年のBUMP OF CHICKENは活動スタイルも音楽性も「外交的でポップなもの」を展開していくことで、リスナー層を広げ、ライブの動員に繋げていった。ライブでは「現時点でのBUMP OF CHICKENベスト」のようなコンセプトを見せることで、その層をしっかり取り込んでいった。と言えるのではないでしょうか。
では、この時期を経た2015年以降のBUMP OF CHICKENはどのような活動をしているのか、見ていきましょう。
2015年以降の活動スタイルを振り返る
論点にしたいのはシングルリリースの形態です。
まず、CDでのフィジカルリリースが激減しました。2015年以降、現在までにCDでリリースされたシングルは以下の5作品のみです。
もちろん、これらの楽曲全てがタイアップ曲です。
そして、2015年から現在までに配信リリースされたシングルは以下の通り。なんと17曲もあります。
このうち『Flare』を除くすべての楽曲がタイアップシングルであり、CDリリースしたシングルをよく見てみれば『シリウス』以降、配信で既にリリースした曲をわざわざCDリリースしています。つまり、2019年以降CDシングルの形でリリースされた完全な新曲はありません。そして『aurora arc』『Iris』における新曲以外のほぼ全てがタイアップ楽曲となっているということです。
このように、2015年以降のBUMP OF CHICKENのリリースに「目新しさ」を感じ辛い状況にあることは明確です。ただ、歴史を辿ればBUMP OF CHICKEN自体タイアップが多いバンドであるということはちゃんと言っておきたいと思います。実際、全くタイアップのないシングルのリリースは2010年の『宇宙飛行士への手紙/モーターサイクル』にまで遡ります。
それでも、アルバム『COSMONAUT』『RAY』と、完全新曲やアルバムとしてのコンセプチュアルな纏め方のおかげで、それぞれの作品としての完成度はしっかり担保されていたと思います。2016年にリリースされた『Butterflies』 の評価は個人的に大変難しいのですが、2013年以降サウンド面で外向的になっていったBUMP OF CHICKENがひとつ成熟し切ったアルバムという印象を私は持っています。EDM的サウンドをBUMPらしくまとめ上げたリード曲『Butterfly』やキラキラとした空気を纏った爽快なギターチューン『宝石になった日』などが良い例だと思います。この作品を持って初のスタジアムツアーを開催した、という点からしても「外向的なBUMP」の完成形と言えるのではないでしょうか。
このように、外向的なBUMP OF CHICKENが成熟した2016年以降、楽曲リリースはタイアップごとの配信リリースへさらに特化し、CDでのシングルリリースもほとんど無くなりました。そして冒頭に紹介した『aurora arc』『Iris』における既発曲の多さに繋がっていくのです。
最初に言ったように、サブスク全盛の今、そもそもシングルをリリースしないことは当たり前のことと言っても良い時代です。そういう意味では時代の流れとしてしょうがないと思います。
と、ここまで直近10年間のBUMP OF CHICKENを振り返ってみました。リリース面での変化があったのは明確なことです。
なぜこのようなスタイルに変化していったのか、理由は我々に分かるはずもありません。運営側がどう考えているのか、BUMP OF CHICKENがどう考えているのか。答えは本人たちにしか分かりません。現実的なことを言えば、先ほどあげた「サブスク時代」という答えに尽きるのかもしれません。でも、僕なりの答えを見出すならば、それは彼らの「リスナーに対する想い」もあるのかな、と思います。
ファン一人一人のために生まれる「歌」という想い
ライブ時の藤くんのMCは毎回心打たれるものがありますが、特に近年、藤くんから発せられる言葉にはかなり共通点があります。それは「ファン一人一人のために歌が生まれ、届けているんだ」という想いです。毎回、彼は「君に会いに来たんだ」「君のために生まれた曲だ」「君のために歌っているんだ」と、そう言ってくれます。すみません、具体的な引用元を集めようとするとなかなか大変なのでその手間は省かせていただきますが、少なくとも僕が最近参加しているライブではそのように感じます。もちろん、その様子はライブ映像にもしっかり収められていると思います。
この想いを極大解釈すれば、今のBUMP OF CHICKENは一つ一つの楽曲を都度真摯に届けてくれている、ともいえます。彼らにタイアップがたくさん来ることは理解できますし、そうやって作った楽曲をもったいぶることなく我々に届けてくれる姿勢は、何らおかしいことではありません、むしろありがたいぐらいの事かもしれないです。今のBUMP OF CHICKENは「君のために生まれてきた楽曲」を「君のため」にとにかく届けてくれるスタンスなのだろうと、考えています。
アルバムという「音楽作品」を作り上げるスタイルは、確かに『COSMONAUT』あたりで一旦完成していたのかもしれません。(もちろん、想像でしかありません)その後、外向的なBUMP OF CHICKENが成熟したように。そういう意味で2016年以降のBUMP OF CHICKENは、タイアップという「商業的な」活動が増える中で最大限私たちに寄り添ってくれた結果のリリーススタイルになっている、そういう風に捉えていきたいと僕は考えています。
もちろん、近年の活動の中にもファン目線で嬉しい部分はあります。特に、2017年から2018年にかけて行われたツアー『PATHFINDER』・2022年のコロナ禍以降初のツアー『Silver Jubilee』・2023年のツアー『be there』は、リリースに一切関係なく行われ、新旧織り交ぜたファン感動のセットリストでした。また、今年行われた全国ツアー『ホームシック衛星2024』では2008年に行った『orbital period』 のリリースツアー『ホームシック衛星』のリバイバルを行う、というとんでもないサプライズもありました。今回のアルバムツアーの前に、懐かしいツアーをたくさん挟んでくれた流れ、とても良いと思いました。
このように、今も昔もBUMP OF CHICKENは彼らなりに、彼ららしく、ずっと僕たちリスナーに寄り添い、楽しませてくれています。今のBUMP OF CHICKENのモードも、あくまで「今の」モードなのです。これまで述べてきたように、いろいろな変遷を辿ってきたのですから。
とはいえやっぱり寂しい
やっぱりアルバムって、いろんな新しい曲が聴けるワクワクや、まとまって聴いた時のコンセプト・世界観の楽しさがあるから良いんです。そう思ってしまうのです。それがBUMP OF CHICKENの手にかかるからこそ、これまでの様々な名盤が生まれてきたのですから。
知っている曲を集めることは、ベストアルバムで可能です。やはり今のBUMP OF CHICKENのリリーススタイル、特に今回の『Iris』については『BUMP OF CHICKEN 2020-2024』と揶揄されても、正直仕方ないと思います。彼らの想いが色々とあったとしても。
寄せ集めかもしれないけど良いんだよ!今のベストを改めて感じれる機会なんだよ!と言う意見、確かに分かります。その通りです。理解できます。でも、やはり寂しい。僕たちは、BUMP OF CHICKENのアルバムの凄さを知っているから。アルバムという音楽の表現方法の面白さを、知っているから。実際、僕が大好きな様々なアーティストで面白いアルバムを作っている人はいっぱいいます。このサブスクの時代でも。
これまでまとめてきたように、彼らは音楽性の面でも10年前辺りを皮切りに大きく変化してきました。そんな変化も受け止め、大好きで居る僕達だからこそ批評し、寂しがるべきなのではないでしょうか。何かを好きだから、愛しているからと言って、盲目に接していいわけではありません。もちろん!疑問に思わず、楽しくいるならそれで良いでしょう。
でも、色々な観点で物事を論じること。批判ではなく批評することは大切です。
僕はBUMP OF CHICKENに言いたい。
知ってる曲ばかりじゃないアルバムも、久々に聴きたいな!
でも、ずっと大好きだよ!と。
最後に
今回のジャケ写どうにかならなかったのかVERDY!?!?!?いくらなんでも!?!?!?
おい!!!!!!!!
fin.