日々生き抜く力を与えてくれる存在、椎名林檎 〜『(生)林檎博'24 -景気の回復-』11/24さいたまスーパーアリーナ公演レポート〜
このライブレポートは公演内容のネタバレを大量に含んでいます!ご注意を!
椎名林檎。
彼女が繰り広げるステージは唯一無二である。
私は中学生の時に椎名林檎と出会い、当時リリースされたアルバム『日出処』の完成度に衝撃を受けた。(ちなみに自分がまともに音楽を好きになり始めた頃に東京事変がちょうど解散した)そこから時が経ち、大学生の時に『(生)林檎博'18 不惑の余裕』で初めてライブに参加。宮本浩次が登場した『獣行く細道』のパフォーマンスで記憶が飛んだことは今でも覚えている。(記憶が飛んだのに?)
2020年には歓喜の東京事変ライブ当選からのコロナ禍でツアー中止という絶望も経験。そして昨年、久々の全国ツアー『彼奴等と知る諸行無常』に参加し、これまたストイックかつゴージャスなステージに圧倒された。
そんな経緯で椎名林檎に触れてきた私。今回参加してきた『(生)林檎博'24 景気の回復』11月24日さいたまスーパーアリーナ公演。そのライブレポートをお届けする。
何はともあれ、椎名林檎のライブに2年連続で参加できるこの喜び。ありがたや。ありがたや。
会場に到着したのは13時ごろ。集まっている人はまばらで、フォトスポットやグッズ売り場もスイスイ。狙っていたTシャツ、旗、ポスターを購入し、記念撮影も済ませて早々に暇。笑
さいたま新都心駅に隣接する商業施設「コクーン」でウインドウショッピングしたり昼ごはんを食べたりなんだりしてなんとか暇つぶし。17時に。
ライブ直前の会場周辺は流石の混雑ぶり。駅の改札に置いてあるストリートピアノでは『青春の瞬き』が演奏されていたりと、雰囲気もバツグン。そして毎度椎名林檎のライブに足を運ぶと驚かされるのが客層の豊かさとおしゃれさである。とにかくみんなオシャレ。着物を着こなすマダムも多く、椎名林檎というアーティストの需要のされ方が如何に豊かなのか感じる瞬間である。ちなみにNewjeansやPerfumeのTシャツを着ている人も見かけ、なんか凄い嬉しかった。笑
入場すると、自分の席が思ったよりもステージに近く、かなりテンション爆上げ。スタンド左側だったがかなりアリーナ、アリーナ席で言えばBブロック前方あたりの距離感。スタンドなのでむしろ見渡せて見やすいと言う感じでかなりおいしい位置。
まだライブの話をせず申し訳ないが、ここで一点さいたまスーパーアリーナの素晴らしかったポイントを。男子トイレの床に小便器と大便器の動線が分けられた表示がしてあるじゃないですか!これは素晴らしい。男性はわかると思いますが、デカい会場の男子トイレって列が混ざっちゃって小便器が空いてるのに列が進まないみたいなことあるんですよねー。それが解消される素晴らしい作り。
はい。流石にライブの話をします。
18時を少し過ぎ、斎藤ネコオーケストラとバンドメンバーが入場。温かい拍手で包まれ、斎藤ネコ本人の登場時には一際大きな歓声が。本人もオーディエンスに向かって大きく両手を振るなど、歓声に応えていた。
今回のバンドメンバーは今年リリースのアルバム『放生会』のレコーディングメンバーでもあるギター名越さん・ベース鳥越さん・ドラム石若さんに加え、なんといってもキーボード伊澤一葉!椎名林檎のステージでプレーする伊澤一葉の姿を目にできるだけでも眼福である。そんな伊澤一葉が鳴らす音に合わせオーケストラのチューニングが始まり、終了ののち暗転。数十秒緊張感のある静寂が続きついにライブが始まった。
以下、セットリストである。
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1.鶏と蛇と豚
2.宇宙の記憶
3.永遠の不在証明
4.静かなる逆襲
5.秘密
6.浴室
7.命の帳
8.TOKYO
9.さらば純情
10.おとなの掟
11.MOON (REBECCAカバー)
12.ありきたりな女
13.生者の行進 feat.AI
14.ジプシー (あっぱCover)
15.人間として
16.望遠鏡の外の景色
17.茫然も自失
18.ちりぬるを feat.中嶋イッキュウ
19.ドラ1独走
20.タッチ (岩崎良美カバー) feat.DAOKO
21.青春の瞬き
22.自由へ道連れ feat.中嶋イッキュウ
23.余裕の凱旋 feat.DAOKO
24.ほぼ水の泡 feat.もも
25.私は猫の目 feat.もも&DAOKO&中嶋イッキュウ
アンコール
26.初KO勝ち
27.ちちんぷいぷい
28.2○45
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アルバム『三毒史』のオープニングナンバーでもある『鶏と蛇と豚』からライブがスタート。読経と鐘の音からスタートし、荘厳なオーケストラサウンドとオートチューンのかかったボーカルが特徴的な大変おどろおどろしい楽曲。昨年のツアー『諸行無常』ではライブ中盤の着替え曲として披露されていたが、なんといっても今回は生演奏でのオーケストラ付き。迫力が何倍も違った。映像演出はというとお坊さんが何人も出てきて三角形を形作りそこにレーザーが照射されて・・・みたいな宗教×SF的とんでも演出。そして抽象的な映像が流れつつ曲が進んでいく。曲終盤、ステージ頭上に設置されていた円盤が開き、そこから下降式のゴンドラ(?)に乗って椎名林檎が満を持して登場!まさに降臨、といった趣である。
空中に浮いたまま始まったのは『宇宙の記憶』坂本真綾に提供した楽曲だが、正直知らんかった。(笑)椎名林檎のツアーではセルフカバーはこうやって必ずと言っていいほど披露されており、改めて活動の幅も感じる。イントロでは「地球の皆さん、ごきげんよう」と声を発し挨拶。映像やステージ演出からもSFがテーマなのだろうかと思わせる言葉であった。
ゴンドラがステージまで下降しついに下界へ到着した椎名林檎。意外だったのはここからのセクション。まずは東京事変の楽曲から『永遠の不在証明』!かなり驚いたが、せっかくバンドメンバーに伊澤一葉がいるならば、と考えると納得である。バンドメンバー4人のソロ回しと共に紹介映像が挿入され、それぞれに歓声が上がる。その中でも最後に紹介された伊澤一葉の時の歓声がとんでもなくて笑ってしまった。もう、「キャーーー!!!!!!」って感じ。(笑)人気凄すぎ。まあ自分も大歓声ですけど。(笑)ちなみにこの曲では後方のスクリーンに赤いリップを大々的に写した映像が流れていたのだが、思い切り「SHISEIDO」の文字が。スポンサーに入っているのだろうか。なかなか見ない演出であった。曲が終わり、纏っていた赤いマントを脱ぎ棄て始まったのは豪華絢爛なステージの幕開けを感じさせる『静かなる逆襲』!アルバム『日出処』のオープニング曲でもあり、最初に述べたように自分と椎名林檎の出会いでもある思い出のアルバムからの選曲に思わず歓声を上げてしまった。ここでダンサーとしてSISの2人も登場。迫力あるホーンセクションの音圧と、がなるように歌いあげる椎名林檎のパワーに圧倒されるパフォーマンスであった。
次に披露された『秘密』は東京事変のディスコグラフィーの中でも比較的古めの曲であり、かなり意外!おもわず声を上げた。ジャジーな曲の雰囲気に石若駿のプレーがバッチリハマっていた。『浴室』も意外な選曲!最近のツアーでは初期の楽曲をあまり披露しないため『無罪モラトリアム』『勝訴ストリップ』からの披露は問答無用で驚いてしまう節がある。デジタルビートに載せ、かなりサイケかつ神秘的な歌と動きで魅せてくれたパフォーマンスであった。
続く『命の帳』『TOKYO』はじっくりと聴かせるセクションながら、『命の帳』後半の盛り上がる場面ではこの日初めて椎名林檎がギターを弾いたり、昨年のツアーでも披露されていた『TOKYO』では新しく全体的にストリングスアレンジが施されているなど、随所に聴きごたえの多いライブアレンジが目立った。
『TOKYO』終了後、椎名林檎が一旦退場。ボーカル音源に合わせて演奏される形で『さらば純情』がスタート。ラスサビあたりで生歌へと変わっていったなか、ステージ上を見ると巨大な貝殻とそこに寝そべる椎名林檎の姿が。
そうして歌い始まった「真っ黒な中に」という言葉から始まる、そう何を隠そう『おとなの掟』だ!正直個人的一番のサプライズと言ってもいい。アレンジも、ドラマ『カルテット』の主題歌として作られたDoughnuts Hole版になっていた。(アルバムに収録されたセルフカバーは英訳版の歌詞となっている)もう「真っ黒な」の「ま」で頭を抱えた。めっちゃ嬉しかった。。。ちなみに椎名林檎自体は貝殻に座りながらさながら人魚姫の様相で歌っていた。後ろのスクリーンにも海中世界に浮かぶ彼女の姿が。ことごとく面白い演出である。
次に林檎博恒例、黒猫道の若旦那による挨拶。小学校2年生になった次男による可愛らしくも大変大人びた挨拶に会場は温かい雰囲気に包まれていた。ここで「母が深く感銘を受けた曲と、それに影響されて書いた二次創作的楽曲を2曲続けて」と紹介され披露されたのは、レベッカ『MOON』のカバー、そして名曲『ありきたりな女』であった。
『MOON』の特徴的なイントロフレーズがストリングスアレンジされ聞き応えのあるサウンドになっていながら、椎名林檎のボーカルそのものは原曲をリスペクトし綺麗に歌い上げる見事なカバー。この曲の二次創作的楽曲として生まれたのが『ありきたりな女』というのもかなり意外だった。(ちなみに過去Mステで椎名林檎出演回でこのトピックが紹介されたことがあるみたいです。)
『ありきたりな女』、私がこの歌詞を見るに、子供を産んだことでこれまでの世界が一変してしまった女性のことを描いているのだろうと思う。子供が可愛いとか、今が幸せだとか、そういうわかりやすいメッセージではなく「あなたの生命を聞き取るため代わりに失ったあの素晴らしき世界 GOODBYE」「さよならあなた不在のかつての素晴らしき世界 GOODBYE」と歌い上げる椎名林檎。なんて全ての女性に味方をしてくれる存在なのだろうと改めて感じる。さてここで『MOON』の歌詞を見てみると、悪い道に進んでしまい、思い出も持たずに家も出てしまった娘とその母の話を描いているように思える。ある意味、この曲の母も「素晴らしき世界」を失った一人なのかもしれない。そんな彼女の存在を届け歌ってくれるのが椎名林檎『ありきたりな女』ではないだろうか。いずれにしてもこのバックグラウンドを語った上でライブにて披露してくれたこの貴重さである。
衣装替えののち披露された『野生の同盟』、最新アルバム『放生会』収録のコラボ楽曲がここで初めて登場した。AIの力強い歌声が暗闇の中スクリーン中の映像と共に鳴り響く。「まあAIは流石に大物だしな・・・本物出るわけないよな・・・ん?でもなんか歌声が生っぽいぞ・・・?」と思いながらバンドイン。明るくなったステージには椎名林檎とAIが並んでいるではないか!!!!!ここで会場のボルテージが一気に最高潮へ達した。この日一番の大歓声。Aメロに入り始めるまでとんでもない歓声が鳴り止んでいなかった。自分もずっと叫んでいた。AIのソウルフルな歌声は実際にライブで聴くことでより実感することができた。めっちゃかっこよかったなあ。。。あと2人ともスタイル良すぎ。AIのサングラス姿めちゃくちゃイカしていたし、椎名林檎はなんかすごい際どい格好していた気がする。早く映像見たい!
曲終わりに一言「AI〜!」と紹介し、歓声。次に始まったのは全く知らない曲だったが、調べてみると伊澤一葉のバンド「あっぱ」の楽曲『ジプシー』のカバーとのこと。いやいやどんだけマニアックなセレクトしてくるんだ・・・笑
肝心の演出はというとSISの二人とともにスーツケースを片手に歌い踊るミュージカル的演出。ライブの中でも一番「ショー」っぽかった演出の一つだった。伊澤一葉がメンバーにいるからなのか分からなないが、マニアであればあるほどサプライズ披露だったのではなかろうか。
次に続く『人間として』ではアウトロで衣装替えのため退場。インスト楽曲である『望遠鏡の外の景色』ではバンドメンバーだけでなく斎藤ネコオーケストラのメンバー紹介も。まずは今回の演奏舞台は「銀河帝国楽団」という名前らしい。メンバーの紹介の仕方も、サングラス等を身につけた各メンバーが会場入りしてくる様子を映画のオープニングさながらクレジットと共に紹介するというなんともイカした作り。こうやって、目立つバンドメンバーだけでなくオーケストラのメンバーそれぞれにも焦点を当ててソロパートを用意するこの心意気が本当に素晴らしい。今回のライブではインストパートやオケパートも目立ったが、じっくりと楽団の演奏を楽しむことも今回の林檎博のコンセプトであったように感じる。
曲のラストで一節歌い上げた後始まったのは、インストの雰囲気を引き継ぐようなセレクト『茫然も自失』石若駿がキャスティングされていることが最高に作用するジャジーな楽曲だった。
ここで暗転。しばしの間を挟んで『ちりぬるを』がスタート。ステージが暗かったので本当に中嶋イッキュウが出てくるのか分からなかったが、歌い始めで明るくなりスクリーンにも中嶋イッキュウの姿が!大きな歓声に包まれた。ステージ演出も終始暗い中赤い光が明滅していくストイックな空気。2人の衣装は黒い和服となっており、雰囲気抜群の演出であった。
次に披露された新しい学校のリーダーズとのコラボ曲『ドラ1独走』は、野球のバックスクリーン的演出が施される中、SUZUKAの音源と一緒に椎名林檎がギターを掻き鳴らして歌うパフォーマンス。野球のユニフォーム風衣装も大変ナイスだった。歌い始めで自分の2人横のお姉さんが「は!ヒャ!」とテンション上がっていたの、少し切なかったな。本人出ないよなー流石に。ちなみにこのバックスクリーンには先ほどの演出でも写っていたSHISEIDO、そしてSUNTORYが提供としてロゴが映し出されていた。この使い方面白かったなあ。
曲終了後、ウグイス嬢のアナウンスが。「代わりまして、センター、DAOKO 背番号34」という声と共にせり上がりからDAOKOが登場!なんとここで始まったのは岩崎宏美『タッチ』のカバー!野球繋がりとは言え「こうきたか・・・!」と言わざるを得ない選曲。DAOKOのキュートで若干ハスキーがかった声で歌われるゴージャスなアレンジの『タッチ』はかなり面白かった。2番からは椎名林檎も加わりデュエット。合いの手的にみんなで旗を振る光景がとても印象的であった。
てっきりこのままDAOKOとのコラボ曲『余裕の凱旋』を披露するのかと思いきや・・・一旦DAOKOが退場。ステージ中央に野球コスチュームの椎名林檎が残り始まったのは『青春の瞬き』だった!正直今回のセットリストの中で一番嬉しかったのがこの曲。私が個人的に椎名林檎の楽曲の中でトップレベルに好きな楽曲で、とりあえずあまりのメロディの良さに毎回泣きそうになってしまうのだが、まさかここで聴けるとは。ライブでの披露も2015年の『百鬼夜行』ツアー以来の披露だったよう。嬉しかったなあ・・・本当に。ずっとうるうるしていました。でも衣装が野球コスのままだったのが少しだけシュールだった笑 一応背景が闇の中雷雨の降る野球場の映像になっており、この状態でこの曲をやるのは何か意図が・・・?と色々考えたりもした。(青春=野球的な?)
歌い終わった後に衣装替えの暗転。そして急に「1!2!3!4!」という高速カウントが入り始まったのが『自由へ道連れ』だった!冒頭『静かなる逆襲』の感想でも述べたがアルバム『日出処』からの選曲は問答無用で嬉しい。そして椎名林檎楽曲の中でもかなり攻撃的かつスピーディなこの曲はとにかく大好きだったので嬉しかった。この曲では中嶋イッキュウが再登場。椎名林檎と共に恒例の拡声器パフォーマンスで見事に歌い上げていた。これはお恥ずかしい話であるが最初中嶋イッキュウなことに気づかず普通に椎名林檎かと思っていた。(2番に入るところで着替えた本人が出てきて「!?あ、こっちがイッキュウか・・・」となった)この曲では伊澤一葉がレスポールギターを演奏。ギターソロの後半部分を演奏し、とんでもない大歓声に包まれていた。とにかく伊澤人気ってすげえ。
『自由へ道連れ』終盤で着替えたDAOKOもステージに上がり一緒に盛り上げる。そして流れるように始まったのは今度こそ『余裕の凱旋』とにかく可愛らしいこの曲。ライブで聴くことでよりそのキュートさが伝わった。「ほよ」の所とか「Wi-Fiのパスワードyy_world」の所とか良かったな。
この勢いのままチャラン・ポ・ランタンももが登場!『ほぼ水の泡』がスタート。スクリーンには大々的にSUNTORYのロゴの入った「サントリー生」が映し出され、ビールの売り子コスをしたSISも登場。ソウルフルな歌声を響かせながらさながら正にキャバレーのような豪華絢爛な雰囲気。曲終盤には会場にお札が降り注ぐ演出も!正に「景気の回復」と言わんばかりのとにかくリッチな演出であった。ももの「最後の曲です」という言葉に続き披露された本編最後の楽曲は『私は猫の目』昨年のツアーでは新曲として披露されていたが、アルバムバージョンで大胆にストリングスアレンジが施され、それをしっかり再現する形で今回も披露。中嶋イッキュウとDAOKOも登場し、SISも含めた総勢6人でのパフォーマンスが繰り広げられた。もも・椎名林檎のデュエットで歌い進めながら全員で花道で踊り、豪華な演奏と煌びやかな映像演出。このラスト2曲が最も「景気の回復」的であり椎名林檎的「キャバレー」感の極致だった。
アンコールはPerfumeのっちとのコラボ曲『初KO勝ち』で幕開け。のっちの歌声が唐突に流れ始め始まったこの曲。椎名林檎はMVさながらボクサースタイルで終始パフォーマンス。MVでもブレイクが入るラスサビ前では椎名林檎が花道中央で倒れ込み、それをSISが観客を煽ることで「さあ!立ち上がれ!」的演出も。大変かっこよかった。Perfumeマニアである私は、椎名林檎のライブでデカデカとスクリーンに映るのっちの姿を見るだけでなんかすごい嬉しくなったわけだが。それにしてものっちとのライブでの共演、どこかでは叶うといいなあ。
間髪入れずに最後の曲として披露されたのは『ちちんぷいぷい』林檎博では恒例の楽曲。曲が一番盛り上がる「RINGO!」の掛け声パートではさすがの会場の一体感。こうやって聴くと近年の楽曲はストリングスアレンジが施されている曲も多く、林檎博の規模だからこそ完成するパフォーマンスが本当に多かったなと思う。
全ての演奏が終了し、暗転ののち始まったのは『2◯45』をバックにした荒廃した2045年を描くエンドロール。アンドロイドと化した椎名林檎が荒廃した世界で歌い続けるという、オープニングで示したSF的世界観の締めとしてふさわしい映像だった。
ここまで28曲ぴったり2時間。MCなしで駆け抜けたステージ。
改めて椎名林檎というアーティストの凄さ、もはや恐ろしさをまざまざと見せつけられたような、そんなライブであった。
銀河帝国楽団を携えた圧倒的な演奏、その演奏に負けることのない彼女の歌声、壮大かつ目まぐるしく世界観が展開していく舞台演出とその豪華さ。林檎博ならではのゲストボーカル。全てがあまりにも唯一無二。今回のツアーは「景気の回復」と名付けられたわけだが、現実を見れば真逆の様相で、毎日将来のことすら不安になる情勢が続いているのは明白である。そんな中でもこのタイトルを名付け、過剰なまでに派手で煌びやかなステージを展開し札束も降らせる。椎名林檎はこうやってライブの時だけでも景気を回復させてくれたのである。とにかくこの日のステージを見て私はとにかく楽しかったし、元気が出たし、生きるパワーをもらえた。彼女はいつもオーディエンスに寄り添ってくれる存在だが、こんな暗い世の中だからこそ、そのスタンスがより一層ありがたく、そして「椎名林檎を愛していて良かった」という気持ちにさせてくれるのである。
昨年の『諸行無常』に続きコンスタントにツアーを行ってくれたわけだが、果たしてこの先にはどんな活動が待っているのだろうか。(個人的にはそろそろ・・・そろそろ東京事変を・・・という気持ちもあるけど・・・)いずれにせよ、彼女が唯一無二のパワーをこれからも与え続けてくれるのだろう。
椎名林檎よ、ありがとう!
本当にこのツアーに参加できて良かったです。