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学部生が研究室配属後に悩む論文の読み方ガイド【5のポイント】

大学や文系・理系にもよりますが,研究室(ゼミ)に配属すると「学術論文を読みます(読まされます)」。学術論文には和文もありますが,「英文」で書かれた論文のほうが「絶対量」が多いため【質の高い】論文に出会うのも「英文」で書かれていることが多いです

Google翻訳ソフトも「英文」を翻訳する上で欠かせないツールです。「英文」に苦手意識があり,結果として「英文で書かれた学術論文」を敬遠するぐらいであれば,google翻訳を大いに活用しましょう。

でもね。研究室に配属後に,
「学術論文って、どうやって読んでいいか、わからない??」

と,学部生は結構悩みます。先輩がたくさんいる研究室ならまだしも,先輩が少ない場合,論文の読み方は教えてくれません。

そこで!
「論文の読み方ガイド」を作成しました。

研究室での過ごし方については,下記の書籍がおすすめです。至極まっとうな内容がマンガ形式で書いてあって,パラパラと読み進めることができます。【直接言う】より,ラボにそーっと置いておいて【学生に読んでもらう】方が良いかもしれません。(なんでも,すぐにパワハラにされちゃうので・・・)

論文の読み方って,実験やパワポの使い方と違って,教えてくれません。学生実験でさえレポート作成方法を教えてくれないのだから,そりゃ「論文の読み方」もわかりませんよ。あなたは悪くない!

手探りで論文を読み始めると,必ず突き当たるのが

辛い・・・この読み方であってる???

と,誰しもが思うはずです。私も学部生の頃は,学術論文を読み始めて「???このままで大丈夫??なんだ。どうすればいいの??」とかなり悩みました。今では,大量に論文を読み漁り・学術論文を投稿・掲載されたので,論文の読み方・書き方を教えられるまで成長しました。

学部生の頃の自分へ。そのままがんばれ!
でもね,もっと効率的にやる方法があるぞ(苦笑)

以前の「研究ノートの書き方」と同様に,私の学部生の頃の苦労を【読者にはすっ飛ばして】ノウハウを記載させていただきます。


英語論文を読むための準備

学術論文の英文をgoogle翻訳ソフトを使って和訳しても,思うことがあります。

意味が分からん・・・

実は,論文をスラスラ読むためには,「語彙(英語力)」「科学的な基礎知識」が必要になります。いざ,論文を読み始めていくと,「この英単語を和訳しても意味を知らない(わからない)。」となります。読み進めれば読み進めるほど,たくさんの知らない英単語(語彙)が出てきて,和訳しても意味が分からない?!となり,モチベーションがドンドン下がり,読み進めることに不安を覚えます。


この場合,どうするか?

母国語に頼ります。
研究室に配属され,「学術論文を読む課題」が出された場合,【必ず】所属している研究室の研究課題に関連のある論文を読まされます。(※はじめて読む論文は,指導教官や先輩に提供してもらいましょう。学術論文を探すのもコツがあります。また,これは別の機会に。)

つまり,母国語である日本語で書かれた卒業論文が研究室にたくさんあるはずです。先輩たちの卒業論文が日本語で書かれているのであれば,それを読むことによって,【所属研究室において必要な】「語彙」と「科学的な基礎知識」を手に入れることができます。
英語の学位論文ばかりの研究室に所属している読者は,google先生に聞いてみましょう。関連する日本語総説など,たくさん出てきます。

母国語で,語彙力と(研究室において必要な)科学的な基礎知識を手に入れることで,恐ろしいほど早く学術論文を読めるようになります。

つまり,いきなり英語で理解しようとするから時間がかかり不安になるのです。まず新しいことを始める際には,日本語で情報を集めてから,英文に戻ると驚くほど理解のスピードが速くなります。

学術論文を読むための研究ノートの活用

学術論文はゼミ発表のために読む「宿題」ではありません。学術論文を読むことで,研究を進めるうえで必要な「語彙」と「基礎知識」を身につけつつ,自分の研究を進めるために必要な「スキル」を学ぶ,あるいは大きな助けになることもあります。

ということは,,,一過性の「宿題」として終わらせるのではなく,自分の研究に活かすために「ある意味で,熟読する」必要があります。そのためにも,先輩や指導教官から提供された学術論文は,印刷して「紙」媒体として実験ノートに貼ってしまいましょう。

論文を読む際に便利なツールがあります。ノートと4色ペンです。

・実験ノート
※実験ノートについては以前のNoteをご覧ください。

・クリップオンマルチペン (4色+シャーペン)
また,この4色(黒,赤,緑,青)ペンを有効活用しましょう。例えば,印刷した論文にメモしていくとは思いますが,例えば
  黒ペン:和訳等の語彙・メモ
  赤ペン:わからないところ・先輩や指導教官に尋ねるところ
  緑ペン:著者の考え・囲む感じで使います
  青ペン:自分なりの解釈

初めは慣れないでしょうが,色の使い分けを実践していくことで,読み返すときに威力を示します。
赤ペンを読み返すことで,理解は深まります。また「緑ペン:筆者の考え」は,質疑応答の際にも非常に参考になりますし,「私は××だと思います。▼▼も学術論文で〇〇と述べています。」と引用することができます。


学術論文の種類

学術論文を読み始めると,いろいろな種類があることに気が付きます。
長い論文(Reviews)を読んで,なんかざっくりしてるな~と感じたり,
短い論文(Letter, Communication)を読んで,いつも読んでる論文とは形式が違うな~と感じたり。気がするけど,これなら私も書けるんじゃないかと勘違いしたり。

論文は大きく分けて,3種類の論文に分けられます。
・原著論文 (Journal article)
・総説・調査記事 (Review article ・Survey article)
・その他論文 (;学位論文(thesis))

【原著論文】
皆さんが読む論文の大半が原著論文です。著者らがオリジナルで進めた研究の学術論文です。ひとつの論文には,だいたいひとつのテーマがあり,そのテーマに関して結果をもとに論じています。

【総説】
総説はすでに発表された複数の論文をまとめることで作成された論文です。あるテーマ(大きなテーマから細かいものまで)に沿って,そのテーマに精通している専門家が,これまでの論文を紹介しながら,過去から現状そして展望について述べます。ミニレビューなどもありますが,大体はページ数が多いです。自分の実施している研究分野を理解するうえで大変便利なうえ参考論文がまとめられているので,論文を読むのが慣れてきたら読んでみるとよいでしょう。

【その他論文(学位論文)】
研究室の宝です。学位ですので,学士論文・修士論文・博士論文があります。後輩のためにも,きちんとまとめましょう。なお,インターネット上に公開している学位論文もたくさんあるので参考になると思います。


また,論文の書き方として,普通?の論文(フルペーパー),短いけど速報性の高い論文(レター,コミュニケーション),プロシーディング,パテントなどがあります。

フルペーパー:一般的な論文をさします。以後,この論文の読み方を説明します。

レター・コミュニケーション:フルペーパーに比べて短い論文で,形式もフルペーパーと異なっていることも多いです。字数制限(ページ制限)があったりなど,査読工程もフルペーパーと異なることがあります。速報性がありますので,完全な研究内容として発表するには時間がもう少し必要だけど,この素晴らしい研究成果をいち早く世界に公開したい場合などに投稿したりします。

プロシーディング:学会等に参加する際に講演要旨集に掲載される形で発表される形式の論文です。査読がない場合も多いですが,学術分野(数学・土木・社会学など)によれば査読されることもあり,一般論文と同等に扱われます。

パテント:特許のことです。論文とは少し違います。ただし,とても重要です。
蛇足となりますが,2019年ノーベル化学賞は「Liイオン電池の研究」に対して贈られました。受賞者は,ジョングッドイナフ先生,スタンレー・ウィティンハム先生,吉野彰先生です。グッドイナフ先生とウィティンハム先生は学術論文によってLiイオン電池への貢献度が証明されますが,旭化成で働いていた吉野彰先生は会社の利益のために学術論文を書くことができず,Liイオン電池に対する貢献を証明できるのは特許と考えられます。なお,ノーベル賞は3人までしか受賞できません。
この証明に寄与したのが,欧州発明家賞といわれています。吉野先生は2019年に欧州発明家賞を受賞し,Liイオン電池に貢献したことを欧州が証明してくれたことになります。(2019年欧州発明家賞_非ヨーロッパ諸国部門を受賞)


学術論文内の構成を知ろう

学術論文を読むためには,学術論文がどのような構成であり,それぞれがどのような意味を持っているかを知る必要があります。
日本化学会のOpen AccessのURLはコチラです。無料で学術論文を見ることができます。アクセスしていただくとわかりますが,原著論文のフルペーパーは以下の構成です。
Title (題目)
Authors  (著者)
Abstract  (要旨)
Introduction (背景)
Experiment (実験方法)
Result and discussion (結果と考察)
Conclusions (まとめ)
References (参考文献)
※Figure (図)
※Table (表)

それぞれの特徴を簡単ではありますがまとめます。

TiTle(題目)
自分で論文を探し始める際には,このタイトルを手掛かりにします。その論文で「1番重要なこと」をタイトルとします。論文を書くと,レフリーから「タイトルを修正してください。」といわれることもあります。

Author(著者)
自分の研究分野に関係がある人なので,チェックしておく。名前で検索することで,関連論文を探すこともできます。

Abstract(要旨)
論文の中身をギュッとまとめたもの。この要旨には,タイトル同様に「重要なこと」を書く必要があります。理想としては本文を読まなくてもその論文の重要なことを【すべて】知れるように書く必要があります。

Introduction (背景)
読んでいる論文を理解するために必要な「背景(の知識・情報)」が書かれています。また,その研究分野の歴史(過去どのようなことが行われてきたのか?)や現時点の課題(何がわかっていて?何がわかっていないのか?)が書かれています。また,最後の段落には,本論文の課題に対するアプローチ方法が書いてあることが多いです。

Experimental methods (実験方法)
研究を進めるための実験方法と実験条件が書かれています。使った試薬の購入先から使用した装置のメーカー名も書かれています。つまり,この論文を読んだ人が,再現できるように書く必要があります。

Results and discussion (結果と考察)
結果はFigure(図)やTable(表)と連動していることがほとんどです。「図や表からわかったこと」を記載するのが結果です。
※Figure(図)やTable(表)は、結果を視覚的に理解することができます。この視覚的に「わかったこと」を,【結果】の文章でさらに補完します。
【考察】には,論文において著者の考えが記載されている項目です。先ほどの4色ペンでいうと,【緑】ペンで囲むところです。

図や表から【わかった(つもりの)こと】を「結果」の文章で補完して,著者が記載した「考察」で自分の解釈と同じなのかをチェックする感じです。当然,自分の「考察」と同じかもしれませんし,全く違うかもしれませんし,そんなことまでわかっちゃうのか??と驚かれるかもしれません。
ここで大事なことは,

教科書と同様に,論文も間違えているかもしれない。

っと知っておくことです。

Conclusion (まとめ)
要旨には文字数制限があります。Conclusionには文字数制限がありません。Abstractと同じようなことを書いて冗長と思われてもいけませんが,アブストラクトに比べて,“どのような実験をして何がわかったか”,“どのような結果が得られたか”など,論文全体を網羅しておく必要があります。

References (参考文献)
論文中で参考した文献(教科書から学術論文から特許まで)をリストアップしてあります。読んでいる学術雑誌によって,記載する順番が変わりますが,著者名,学術雑誌名,発行年,巻,ページ数,等が記載されているため,読者も参考文献を探すことができるようになっています。
背景や結果考察で,「自分の知らない知識」の参考論文があれば,ぜひ読んでみましょう。そうやっていけば,毎週のように読む論文がみつかります。

※Figure (図)と※Table (表)
すでに,結果と考察と連動してますと説明しましたが,図にも表にもその図と表の説明文が必ずあります


【超大事】学術論文構成の読む順番

論文の読む順番についてです。学術論文を最初から読み始めると,

挫折します。(たぶん苦笑)

言い方を変えると,学術論文は最初から最後まで読む必要はありません。さらには,読む順番があります。

そもそもとして学術論文をなぜ読むのか??

ゼミの宿題のためではなく,自分の研究に活かすために学術論文を読むのです。そのため,必ずしも全部の内容に目を通す必要はありません。学術論文を読みなれてくると,大きく二つの目的で論文を読み始めます

1.自分の研究でわからないことを探すといった明確な目的のため,
先人の知恵を借りたいため読む
2.自分の研究に活かすといったなんとなくあいまいな目的のため,
先人の知恵を借りれる「期待」を込めて読む

そのため,最初から最後まで読んでいると,1も2の目的も達成することができません。人生はそんなにも長くありませんし,論文は無数にあります。

では,どの順番で読むのか??

1番目
タイトルは当たり前として,Abstract(要旨)を1番初めに熟読します。

2番目
Conclusionを眺めます。この時に,Abstractとの【違い】についてを
意識して読む必要があります。

3番め
Figure(図)とTable(表)の説明文を読みます。

FigureやTableを見て,何を目的に実験しているかは,科学的な基礎知識が必要ですが,この1-3番目で大体の内容はわかってしまいます


4番目
FigureやTableに連動しているResults and discussionを読みます。

この際にも,上述しましたが,FigureやTableだけを見て,どのような解釈をしているかを「予想」することが大事ですし,慣れてくるとできるようになります。「フンフン。そうだよね」みたいな。

残りは,あまり順番は関係ないのですが,
例えば
,,自分の求めていた内容に関する実験をしている学術論文であれば,5番目はExperiment Methods(実験方法)で同じ実験をするための方法を読む必要がでてくると思いますし,Reference(参考文献)をさかのぼってその考えを理解する必要が出てくるかもしれません。

6番め?7番目?
Intoroductionの【最後の段落】を読みます。「In this work」や「In the present paper」や「Herein」で始まる段落です。
この段落に本論文の(課題とアプローチ方法が書かれているからです。

最後番目
intoroductionを読みます。前述のとおり,ここには背景の知識や情報が書かれています。しかし,自分の研究に関連した論文を読んでいますよね?
そのため,このIntorductionは慣れてくると,どの論文も似たようなことが
書いてあるんだな!?
っと気が付いてしまいます。


Intoroductionは最後に読んでも論文を理解するのに困りません。一方,学部生は,最初から読もうと思うので,Abstractの次にあるIntoroductionで大いに挫折します。論文を読む目的を思い出しましょう。

自分の専門分野に限れば,AbstractとFigureとTableだけで
大体の論文の内容は理解できてしまいます。


本文は以上です。

本Noteが少しでも,研究者の卵の役に立てばと思います。当研究室の研究者の卵に「おひねり」をお待ちしております。

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学生から大好評だった授業ノートを公開します。役立てていただければ幸いです。また,家でできる実験も書いていきますね。