電子殻と原子軌道の関係を明らかに。「基礎化学から無機化学」(動画で理解Vol. 3) 新学習指導要領から大学院試験対策まで
さて,第3回目の「動画でわかるシリーズ」は,基礎化学からの大学無機化学です。今回は,その序盤を解説付きでご紹介したいと思います。
動画作成のキッカケとしては,配属学生が外の大学院を受験するとのこと。
いろいろと習熟度を確認すると,無機化学辺りが「完全な暗記」となっていたので,暗記に頼らない無機化学を公開するに至りました。
また,2022年4月より高校1年生を対象に開始される「新学習指導要領」では,以下の内容が含まれる可能性が高いです。
・エンタルピー(とエントロピー)
・Feコロイドの化合物名の変更
・核酸の化学から生物への移動
・マグネシウムがアルカリ土類へ
・12族の亜鉛が遷移金属へ
・原子軌道(s軌道,p軌道,d軌道)
・混成軌道(sp, sp2, sp3混成軌道)
エンタルピーについては,別記事「高校化学から熱化学方程式が廃止!めでたい! 何が問題で、どう教えるか。きちんと、エンタルピーで教えるようになります。」で書いてあります。
また,指導案についても「新学習指導要領で 「化学を教える先生へ ・学ぶ生徒へ」 ”勝手に”エンタルピーとエントロピーの指導方法を考えてみました~(セリフ付き)」で考察してみました。
ご笑覧いれば,幸いです。
本記事は,巻末の「原子軌道」や「混成軌道」へとつながる基礎化学をご紹介します。
無機化学動画のコンセプト
無機化学動画のコンセプトは「2点」です。
1.10分以内で納得する動画 (10分越えたらご愛敬)
2.高校化学でもわかるように基礎化学から無機化学へ発展 (高大接続)
前述のとおり,当ラボには教員志望の学生さんもいます。
一石四鳥とは言いませんが,大学院試験に加えて,高大接続も考慮して高校化学にも対応するつもりで作成しています。
では,早速行ってみましょう。
#1 【8分】原子と電子
化学の基本ですね。ボーアの原子模型等を参考に,原子核と電子の関係をおさらいします。一方で,質量数が順番に並んでいない箇所が存在します。
例えば,
18番のアルゴン(Ar):39.95
19番のカリウム(K):39.10
です。質量数が減少していますよね。
この理由は中性子が関係してきますし,あの計算を行う理由がつながってくるかと思います。
#2【15分】電子軌道とエネルギー準位
早速,10分オーバーの動画ですが,ご愛敬ということで。
新学習指導要領で追加されるであろう原子軌道(s軌道,p軌道,d軌道)を学べます。
高校では,K殻等の電子殻を学んでいます。
この電子殻と原子軌道の関係性を理解できる動画です。
この記事を高校生が読んでいる場合は,覚える範囲が増えたと残念がる必要はありません。
原子軌道を学ぶことで,これまで「暗記」するしかなかったことが理路整然と理解できます。
「なぜ?」に対して,
「こういうものだ!」という高校の先生の返事が減ることはお祝いすべき事かと思います。
ですよね?先生?
#3【12分】電子の入れ方と電子配置
#2の「電子軌道とエネルギー準位 #15分で納得」で,電子殻と原子軌道の関係がわかれば,次はそれぞれの軌道への「電子の入れ方」を学びます。
電子の入れ方にはルールがあります。
1.構成原理:エネルギーが低い軌道から電子を入れる
2.フントの規則:電子が軌道に入る際には,1個ずつ別々に入る。
3.パウリの排他原理:ひとつの軌道には、2個の電子しか入りません。また,入る時には,互いにスピンが逆方向になるように入る。
このルールにより,それぞれの原子の【電子配置】がわかるようになります。この電子配置は,VESPR則や分子軌道を理解する上で必要な知識です。
なお,19番目のカリウムの電子殻配置は以下の通りです。
19K:K2L8M8N1
M殻に,電子は18個入る事ができます。しかし,8個まで入ってからN殻に電子が入ります。オクテット則で説明してきましたよね。8個が安定だって。
20Ca:K2L8M8N2
21Sc:K2L8M9N2
21番目のスカンジウムは,N殻が2個で止まって,M殻が増え始めます。
もはや,ナニコレ?オクテット則でもない!
この理由を説明できるのが,新学習指導要領で追加される「原子軌道(s,p,d軌道)」です。
#4【14分】周期表の成立ちと特殊な電子配置
原子軌道と電子殻の関係がわかり,構成原理・フントの規則・パウリの排他原理により,電子の入り方を学んだあとは,周期表の成立ちです。
周期表の成立ちを理解することで,
周期表を見るだけで「電子配置」がわかるようになります。
そして,特殊な電子配置としてd4とd9について電子移動による【半閉殻】と【閉殻】構造になりたい理由を理解すればよいかと思います。
本記事は以上です。「おひねり」ありがとうございます。
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