限界オタクは作曲依頼をして無限大ゴリラになった
またの名を、妄想力豊かなミュージカル好きの歴史創作限界オタクが推しのミュージカル化妄想を作曲依頼をして現実に近付けた記録とその感想
事の発端と長い長い前置き
私はとあるパイロットに入れ込んでいて、彼に関する書籍を読み漁ったり、細々と彼をモデルにした小説を書いたりしている。
私の推しは、パイロットの中ではおそらく有名な部類に入る。日本では、彼がモデルのキャラクターがマンガなどにも度々登場している。(時々、推しが女の子になっている事にもすっかり慣れてしまった)
が、彼の戦後のはアレな行いのせいもあり、そのドラマティックな人生に関わらず、当然のごとく海外で映画になったりすることもなく、私は推しの映画見たいなぁ……そりゃ無理だよなぁという思いを募らせていたのだった。
そんな日々の中、事件は起こった。
フォロワーの推しが宝塚のミュージカルに登場した。
あの天下の宝塚である。
顔が良いの概念を擬人化のようなタカラジェンヌがフォロワーの推しを演じ、歌い、踊るのだ。
私だってミュージカル好きの端くれだ。
正直無茶苦茶羨ましい!!!
が、羨ましがっても私の推しがミュージカルに出るわけでもない……。
でも、推しのミュージカルめっっっっちゃ羨ましい。
…。
……。
………。
ないならば……作ってしまえばいいじゃない!!!!
こうして強欲なワクワクさんのような発想で私はミュージカル化妄想を始めた。
もともとミュージカルが好きなこともあり、推しの人生をミュージカルとして思い描くのはなんの苦でもなかった。
ここからここまでが1幕……フィナーレはこんな感じで……キャストはダブルキャストで……カーテンコールの並び順……
細かすぎて伝わらないミュージカルあるあるを詰め込んだ。
ちょうどタイミング良く、道路の通行止めでバスの中で3時間ほど缶詰になってしまったので、ここぞとばかりにアイデアを出しまくった。
iPadの充電はガンガン減り、尿意はガンガン増していった。
人間はピンチに陥ると幻覚を見はじめるの?
多分そうなんじゃないかな。
だんだんとこの架空のミュージカルが存在しているような気がしてきた。
からの
この間わずか1日である。
結局その後、同様の観劇レポをキャストの組み合わせを変えつつ4つほど書いていたりする。
(ちなみにうち一つは海外公演を観に行ったという妄想だ)
架空のミュージカルはめちゃくちゃ楽しい。キャストも演出も思うままだ。
脳内でいつでもどこでもエンドレスにロングラン公演していてくれる。
存在しない架空のミュージカルにはチケット戦争は存在しない。
どんな座席だろうと、マチネだろうとソワレだろうとご用意される。
しかし、ひとつだけ欠点が存在した。それはもう致命的な欠点が。
誰とも感想を共有できない。
そんな欠点から目を逸らしつつ、架空のミュージカルの観劇(もとい現実逃避)を繰り返していた。
それから1年ほど架空のミュージカルについての進展は驚くほど無かった。
私の実生活が、パワハラ教授のブラック研究室からのリアル脱出ゲームやら、ハワイで飛行機を操縦するのやら、海外から買った書籍を積ん読にしていくのやらで、それなりに慌ただしかったためである。
あと、絶版になっていた推しの自叙伝が新訳で復刊した。
そして、ようやく実生活が落ち着いてきた矢先にこのコロナである。
手持ちの舞台やライブのチケットは全て返金になった。
幸いにも私の生活はそれほど大きく変わることはなかったが、チケットは諭吉に戻ってしまわれた。
この諭吉たちを供養するにはミュージカルしかない。しかし、このご時世だ。日本のどこを探したってミュージカルなんて上演していない。当然だ。
……おや、ひとつだけあるじゃないか。
私の脳内で無期限ロングラン上演をしているミュージカルが!!!
閃いてからははやかった。
四畳半は拡がってないし、手作りプラネタリウムも作ってないけど。
よーし、架空のミュージカルの曲を作ってもらおう!
そうすれば、僕しか知らない、僕しか見えないミュージカルが他人にも知覚できる状態で存在することになるよね!!!!
SKIMAでの依頼
というわけでSKIMAで依頼することにした。
SKIMAでは、イラストだけでなく、デザインや文章、プログラミングなど多くのクリエイターが様々なスキルを取り扱っている。
その中にはもちろん音楽も含まれている。
早速、サンプルを聞いたりしながら、クリエイターさんを探す。
その時ひとりのクリエイターさんが目に留まった。
それが今回、作曲の依頼をお願いしたF.Koshiba様だった。
私にとっては、わんだらP様という名前の方が馴染みがある。
学生時代めちゃくちゃ何度も曲を聞いていた大好きなボカロPだ。
ニコ動で初めてKAITOが歌ったオリジナル曲を投稿した方であり、初めてのKAITOオリジナル曲を投稿したお方でもある。
絶対この方にお願いしたい!
すぐさま、SKIMAのメッセージで連絡をとる。
楽曲制作の購入を検討していること、それに関するいくつかの質問、そしてドサクサに紛れてF.Koshiba様の曲が大好きであることなどを伝え、メッセージの返信を待った。
メッセージにて、快く引き受けてくださると連絡を頂いた時には、もう天にも昇るような心地だった。
嬉しすぎて友人に「限界オタクだからついに作曲依頼することにした」と連絡を入れた。「己の可能性は無限大だ」って言われた。
どうも無限大オタクです(クソでかボイス)
さて、作って欲しい曲の歌詞や詳細なイメージを伝え、個人用ミッションを立ち上げていただき、それを私が購入し、曲を制作していただくというのが今回のおおまかな流れだ。
今回お願いした曲は架空のミュージカルの序盤の一曲である。
少年期の主人公が空への憧れを歌い上げ、そして成長した主人公がついにパイロットになる夢を叶える重要な部分である。(イメージはグレショのA Million Dreamsみたいな感じだ)
空を飛びたいと思って2階から雨傘で飛び降りて大失敗するエピソードは推しのエピソードの中でも特に好きなものの一つなんですね。
希望する部隊に入れず、変わり者として爪弾きにされるもそこで愛機となる爆撃機に出会う……これを運命の出会いと言わずしてなんと言いますか?
とまあそんなこんなについて、曲のイメージや求めている雰囲気、意味のわからないこだわりまで詰め込んだ怪文書を作り、メッセージで送った。
こういった希望を他人に説明するのは、実際なかなかに気恥ずかしい。
ただ、今までキャラカクやオーダーメイドの推し香水を作ってもらった経験から、なんとなくここで恥ずかしがって妥協してはダメな気がした。
冷静になってはいけない。(いや、もしかしたら冷静になった方がいいのかもしれない)
サビのメロディ→全体のメロディ→伴奏のコード進行→伴奏の編成→全体の伴奏
こんなかんじでステップごとに送って頂いた音源を確認をして、修正して欲しい点や希望を伝える。音楽の素養がない私の拙い説明を的確に汲み取っていただいて、本当に助かりました。
後になって大幅な変更は出来ないので、段階ごとに気になった点は伝えた方がいいと思う。
「これは存在しないミュージカルだけど、海外ミュージカルの日本公演なので、日本語訳された歌詞を原曲のメロディにのせてる感じにして欲しい(グルグル目)」(要約)といった意味のわからない私の要望も丁寧に汲み取り、完璧に仕上げてくださった。
その節は本当にすみませんでした。本当にありがとうございます。
こうして、だんだんと曲が形になっていくのはそれはもう楽しい。
自分の中のふわふわした妄想の輪郭が、カチッとした旋律を持つ一曲の音楽になっていく様子は、月並みな言葉かもしれないが魔法みたいだった。
作曲出来る人って本当にすごいと思う。
音楽の成績が3だった私にはとても無理だ。
ついに完成
From Umbrella to Stuka (雨傘からシュトゥーカへ)
↓こちらから聴けます
納品された曲を聞いた。
ヤバイ
忘れてたのだが、私はミュージカル見たあと語彙力が溶けてヤバイしか言えなくなるオタクだった。
深呼吸したり、ちょっと時間を置いて聞いてみたり、やっぱり我慢できずにエンドレスでリピートしたりしつつ、語彙力を取り戻そうと試みる。
ヤバイ(二度目)
オケピが見える。舞台装置が見える。演技してる役者さんが見えるし、照明も見える。
前奏からして可愛い!!
可愛い!!前奏の瞬間から可愛いを感じる。
お姉ちゃんたちがハンスを揶揄ったあとクスクスと笑いながら舞台袖にコロコロと走って行くのが見える。
前奏の終わりで絞られていたピンスポがふわーっと広がって、子役ちゃんが演じるハンスが歌い始めると、照明が明るくなって舞台が色付くんでしょ?
Bメロのドラムの音とか、少年の心臓が期待でトコトコ言ってるみたいで、胸が熱くなる。
サビ!天使!!!
2階から傘でダイブして、着地失敗してるのがめっちゃわかる。
着地失敗したっぽい音入れてくださいってお願いしたの私だけど、めっちゃちゃんと着地失敗してる。
こんなん天使が空から落ちてきたって思うでしょ。(ここまでワンブレス)
そして、青年パート!はいイケメン登場したーーーーー!このメロディを歌うのは間違いなくイケメン。声も良いイケメンが歌うやつ。
子役から青年役の俳優さんに交代するのめっちゃ好きなんですよ。
最高。
曲中でトントン拍子に入隊する様子が目に浮かぶ。多分、早着替えとかそんな感じの。
Cメロからの最後のサビの流れ、神じゃない????
劇場で聞いてたら絶対泣いてしまうやつ。
夢を思い描く主人公の曲って大体尊いんですよ。
サビの最後歌いきった後、拍手でショーストップする、これ。
スタンディングオベーション。カテコでこの曲のアレンジ流れたら、カーテンコールずっと終わらないと思う。
これを書けるだけの語彙力を取り戻すのに3日くらい必要だった。
語彙力取り戻せてないとか言わないで。
完成を喜んでいたら、友人に「妄想を現実まで引き寄せる腕力がもうゴリラ」と言われた。うん、語彙力戻ってねーな。ウホ。
どうも、無限大ゴリラです!!!(クソでかボイス)
そんな訳で、こうしてめでたく限界オタクは無限大ゴリラになりました。
妄想を知覚出来る形にすることにはひとまず成功した。が、ここでまだ終わりではない。
なぜなら私は無限大ゴリラだから
今後はより妄想の実体を高めていきたいので、とりあえず当面の目標を、サークル参加してミュージカルの公演プログラム風の同人誌を頒布することに定めようと思います。
一人でも多くの人間にこの幻覚を見せて、ゴリラを増やしていきたい。
最後になりますが、この度素晴らしい曲を作ってくださったF.Koshiba様、ヘッダー画像を作ってくださった黒木洋様、本当にありがとうございました!
(20210727 歌詞を追記しました)
(20220729 多少表現を修正しました)