仕事帰りに「人生の終着点」について考えた話。
自分の人生がすごろくゲームのようになっているとして、ゴールはどこにあるのだろう。
ゴールに向かうために、何をしなくてはいけないのだろう。
私がそんなことを考えていたのは、仕事帰りの電車の中だった。
重い空気の電車に若い声
残業をして帰る電車の中。
まだ週の半ば、明日も仕事が待っている大人たちを乗せた電車は、心なしか元気がないように感じる。
駅に到着してアナウンスとともに開く扉の音も、誰かのため息のように聞こえ、それがさらに車内の空気を重くする。
ため息の奥から、ひときわ若い声が2つ聞こえる。
下を向いていた私が顔を上げると、物を詰め込みたるんだ通学カバンを持った男子高校生が話していた。
ワイヤレスイヤフォンの充電が無くなり、何も聴かずに帰路についていた私の耳には、高校生の会話が自然と入ってくる。
「人生の終着点って、なんだと思う。」
会話をBGMにして、眠りにつこうと思っていた私は、つい聴き入ってしまった。
若い高校生から、「終着点」という正反対のような言葉が飛び出したから。
周りにいた大人たちも、高校生の話を聞いて少し反応したのが、私にはわかった。
高校生の考える人生の話
反応した大人たちには気付かず、高校生2人は話を続ける。
「最後ってこと?」
「そう。自分の人生のゴール。」
私は膝の上の鞄を抱えながら、眠ることも忘れて話に集中していた。
未来の長い高校生と、終着点という言葉。そして人生。
その不釣り合いさが愛おしくも思えた。
「俺はさ、終着点は結婚だと思うんだよ。そしたら、勉強なんて関係ないんじゃないかな。」
「関係ないかな。でも結婚したら稼がなきゃいけないだろ。仕事するためにも、勉強は大事なんじゃないの。」
「確かにそうだな。仕事をするから勉強はしなくちゃいけないのか。」
つり革につかまりながら話す高校生は、やがてどちらも黙り、いつの間にか話の話題は変わっていた。
しかし、私はずっと先ほどの話について考えていた。
自分のゴールはどこなのか
高校生は、終着点は結婚だと話した。
私はてっきり死ぬときのことだと考えていたため、結婚をゴールとする高校生が一層可愛らしく感じる。
勉強することを、成績や学歴のためではなく、結婚のためと考えられるところにも感激していた。
ものは言いようではあるが、将来好きな人と幸せに暮らす「彼の人生の終着点」のために、勉強は欠かせない要素になるのだろう。
高校生が好きなサッカー選手の話題に移った今でも、私はまだ終着点について考えていた。
自分の終着点はどこになるのだろう。
私は何のために今日を過ごしたのだろうか。
少し考えて、何も気にせず過ごしていたのだと気付く。
毎日を過ごすこと、起きて仕事をして帰ることで精一杯で、意味や目的など考えることを忘れていた。
毎日眠い目を擦って起きて、仕事に行くのは辛い。
明日も仕事なのかと、帰りの電車でもうなだれるほどだ。
しかし、これが自分の目標につながるとしたら、少しは頑張れるかもしれない。
もしくは、もっと良い方法、他にやるべきことが見つかるかもしれない。
私は私のゴールについてじっくり考えてみようと思った。
人生の終着点に向けて
自分の人生がすごろくゲームのようになっているとしたら、ゴールには何があるのだろう。
ゴールにたどり着くために、今何ができるのだろう。
今日は早くお風呂に入って、温かいお茶を飲みながら、自分の終着点について考えることに決めた。
私は軽快なドアの音を聴きながら、電車を降りた。