2024年ベストアルバム

自分の一年を聴いた音楽と一緒に振り返っていく、年間ベストアルバム紹介です。

毎年やりながら「言うて来年聴いてます?」と思っていたんですが、好きな音楽も新しい音楽への興味も尽きないのに去年と全く同じアルバムを聴くのは土台無理でしょ、と思ったので、もうそのへんは気にしないことにしました。みなさんもう気づいてた?そうですか……。

そういうわけで今回は深く考えず好きなアルバムを並べて、好きなところを語ったり、こうだったらいいのに〜とか言ったり、自分語りをします。音楽的な発見とか文化的な文脈とかそういうのは他の人に任せた!

リストを先に載せるので、興味があるアルバムやアーティストがあったら聴いてみたり、この音楽聴いてる人はどんなこと語るんだろ〜と興味ある人はその下の文章も読んでみてね。レビューというよりエッセイです。

  • a flood of circle『WILD BUNNY BLUES / 野うさぎのブルース』

  • downt『Underlight & Aftertime』

  • envy『eunoia』

  • The Otals『Destroy My Memory』

  • MyGO!!!!!『跡暖空』

  • Transit My Youth『Repechage』

  • w.o.d.『あい』

  • ストレイテナー『The Ordinary Road』

  • トゲナシトゲアリ『棘アリ』

  • リーガルリリー『kirin』



a flood of circle『WILD BUNNY BLUES / 野うさぎのブルース』
早速自分の話なんですが、今年転職しました。その時背中を押してくれた……というか、「お前今本気でやってる?」と発破をかけてくれたのが、a flood of circleと後述の『ガールズバンドクライ』です。転職のタイミングではこのアルバム出てないんですけど、前作の流れで「ゴールド・ディガーズ」「キャンドルソング」とリリースされていって、とにかく剥き出しで転がり続けるモードのafocと佐々木亮介にとにかく喰らって、本当にやりたいことってなんだろうなんて月並みなことを考え、結果転職することにしたわけです。音楽に救われるとよく言うけど、「ロック」を真に受けすぎて人生を変えることは実際あるんだなと思った一年でした。
で、本作。曲間ほぼゼロ秒なんですが、それは気持ち良さより急き立てられるような性急さばかり感じさせるもので、そんなアルバムのリードトラックのタイトルが「ファスター」であること含め、自意識剥き出しモードのまま突っ走ってる感じが最高だなと思います。「キャンドルソング」の《わざとなぞる傷 痛みに安心するダセエ》って歌詞めっちゃ好きなんですけど、自意識過剰であることに対しても自意識向けちゃってる、そのわけの分からなさ、大人になっても変わんないのめっちゃ分かる、と思います。30になる年にこれを聴けたことは幸運であったと思う。あとこの歌詞はアイドルマスターシャイニーカラーズの七草にちかを思い出します(オタク)。「キャンドルソング」を題材に二次創作したい!!!


downt『Underlight & Aftertime』
今年は音楽の好みが結構広がったなと自分で思っていて、downtのような音楽をワクワクして聴けるようになったのはそんな変化の一つだと思っています。とはいえこれがどんなジャンルなんですかと言われてもあんまりうまく説明できず、「オルタナ……?」と言うことしかできないんですけど。
一曲目の「Underdrive」が、自分が普段よく聴く音楽と比べると曲の盛り上がりのピークに来るまでめっっっっっっちゃめちゃ時間がかかるというか、ほぼ一曲かけて山を登っていくような曲で。昔の自分ならたぶんこれ、絶対曲の途中で寝るんですけど、今年初めてこの曲を聴いた時、じわじわじわじわ熱が高まっていくこの構成が超クールだなと思って、それで聴くようになりました。ギターもカッコいいし、歌声も良い。
あと、ギターの音をあまり重ねてない分リズム隊が何やってるのかも分かりやすいんですけど、要所要所での音を止めたり延ばしたりの選択がきめ細やかだなと感じます。これが曲を聴いている時に、ふっと浮くような感覚を生んだり、あるいは疾走感を感じさせたりと効いていて、リズム隊の仕事ってこれなんだ!と結構感動しました。このリズム隊の働きで曲の印象をコントロールする感じ、後述するリーガルリリーなんかにも感じることがあって、元々スリーピースバンドをかなり好む傾向にあるんですけど、こういうところを無意識に楽しんでいたのかもしれないな、なんて思った次第です。


envy『eunoia』
これについてはまず出会い方から何度でも記しておきたくて。というのも、自分はこのバンドのリリース日も何も一切知らないまま、たまたま行ったタワレコの試聴コーナーでCDを目にして、(そういえば昔フジロックの配信でステージちょっと見たなあ)と思い出して試聴して、(雰囲気いいかもしれんなあ)と思ってそのまま購入するという、この大サブスク時代には考えられないような購入の仕方をしてるんですね。自分自身にとってはタワレコで初めて出会うのは昔からあることなんですが、改めて考えると思い切ったことをしてるなあと。今も大好きなナードマグネットというバンドも、前情報一ミリもなしにたまたまタワレコの試聴コーナーで知って聴いて即購入したのが出会いでした。
CDという物体であること、数あるCDの中から発売日に合わせてこのアルバムを試聴コーナーを店員が置いてくれていたこと、様々な有限性の先に今回のような出会いがあると自分は思っていて、そこでCDを購入するなり、あるいはデータをDLするなり、自分でアクションを起こすことで自分のモノにしていくのだ、という感覚が強くあります。なので基本的にこういうベストを選ぶ時だったり、そもそもちゃんと感想を書こうとする時にサブスクで聴いただけで買ってない作品は選んでない、というのが裏話としてあります。そんな風に、にちかがバイトで作ったPOPも誰かがCDを買うきっかけに絶対なってるんだとも思っています。
さて、本作の話をまだ一切してないんですが、これは前にnoteで書いたことがほぼ全てなのでそのURLを貼りつつ簡単に。これです。
雰囲気良さげで買ったはいいけど楽しみ方が掴みきれずしばらく離れてたんですけど、MyGO!!!!!の曲のような楽しみ方ができそうと知ってからあっという間で、激情と静謐を兼ね備えた音楽性も命を振り絞るようなシャウトとスポークンワードも胸を打つようでグッと来るし、この音楽の体験のフィードバックがMyGO!!!!!を聴くこともより楽しくしてくれて、downtとはまた別の方向から、自分の聴く音楽の幅や楽しみ方を広げてくれたアルバムでした。
昔のアルバムも聴きたいんですけどなかなか売ってなさそうなのがネック……。


The Otals『Destroy My Meomry』
フォロワーや、1〜2クリック圏内の音楽好きの方がちょくちょく言及してるのを見て聴いてみたらめちゃめちゃ好みだったアーティストです。これと、ひとひらというバンドも同じようなルートで今年ハマりました。
まだこの『Destroy My Meomry』や今年の配信シングルを繰り返し聴くのに留まってるんですけど、メロディも歌詞も好みに刺さって最高。今のところ一番好きなのは「天使にマーチンを」です。《世界平和をガチで夢想する》←良い歌詞。女の子が口にしたらなんか可愛いなと思えるちょっとした言葉を使った歌詞がかなり好きなんです。自分の好きなバンドであるSubway Daydreamの「Timeless Melody」という曲にも《なるはやで迎えに来て》という歌詞があり、これもめっちゃ好きなんですよね。「ガチで」「なるはやで」。こういうの、女性ボーカルだからこそキュンと来ちゃうところ。
さて、The Otalsに話を戻しますと、調べたら“世界一とっつきやすいシューゲイザー”を掲げているそうで、なるほどなと思います。個人的には、あえてラベルを貼るならアニソンのラベルかなと思いながら聴いていて、正直シューゲイザーだと思っていないんですが、ポップソングとしての強度がそうさせてるのかもしれないです。ていうかどこからどこまでをシューゲイザーとするのかあんまり分かってないので、それに照らし合わせて「これはシューゲイザーだ」と言えない、という部分もあります。


MyGO!!!!!『跡暖空』
envyの時にも名前が出たMyGO!!!!!です。
ぶっちゃけ最初に聴いた時は結構がっかりして、年間ベストにはいれないかなと思ったんですが(その時の感想がこれ)。
改めて聴いていて、まあとにかく曲としてちゃんと強いというか耳に残るというか……やはり自分はロックバンド要素の強いアニソンには敵いませんというのがまずあるのと、あとMyGO!!!!!の一番の強みは高松燈役である羊宮妃那さんの声だなと強く感じました。この歌声でMyGO!!!!!の編成のギターロックが聴けるなら1stからパンク要素が多少減っても、これはこれはで良いか〜と。それと「夜隠染」が本当に良い曲なので結局これで許してしまう。
喉を壊したりすることなく長く活動してほしいと切に願っています。関連あるようなないようなという感じですが一月からのAve Musicaのアニメも楽しみにしています。結局俺はバンドリのオタク……。


Transit My Youth『Repechage』
the pillowsが好きなんですが、このバンドからはそこはかとなくthe pillowsイズムを感じます。特に今年のアルバムは、the pillowsのアルバムの最後に収録されるような軽快なロックンロールが中心になっていて、何も考えなくても気持ち良く聴けちゃう。頭で考えるより先に体が踊り出す具合なもんで、こういうロックがやっぱり好きだなと思います。リリースされてすぐの頃はあんまりこういうパワーポップ系のロックのモードじゃなかったのでチェックしてなかったんですが、この前the pillowsのワンマンに行ったこともあって今はすっかり素直に楽しんでいます。
あと男女ツインボーカルなのも個人的にポイント高い。女性ボーカルの方の歌声が、まじ何その例えって感じなんですけど、飲み会でもよく通りそうな声というか、パーティーの中でも嫌味なく通りそうな声だなという印象があって、それがご機嫌なロックンロールの雰囲気ともマッチしているように思います。


w.o.d.『あい』
「Take It Easy」がとにかく好きです。こんな爽やかな曲も書けるんだ!と驚き。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「今を生きて」が歌詞含め年々好きになっていくんですが、好きの方向性がそれと同じような感じ。大人になって草臥れても、たまに集まって笑えたら最高っすね。
だいぶ話逸れるんですが今年シャニマスの同人即売会で個人誌を頒布して、それが数年ぶりくらいのサークル参加だったんですが、その時「即売会ってめっちゃいいな!」と思ったんですね。好きなものが同じ人と面と向かって話せるのって気分が良いなあと。「Take It Easy」を聴くとその時の空気感をちょっと思い出します。別のジャンルでの過去のサークル参加も、結構人と会いたくて参加してたなと今になって思って、なんか来年は機会を作ってまた即売会にサークル参加したいなと思っています。
話を戻してw.o.d.『あい』について、ゴリゴリにグランジやってるのが好きだって人にはイマイチな一枚なのかもな〜と勝手に想像してるんですが、個人的には音楽性の幅を広げながらもw.o.d.のサウンドで昇華している感じがとても好ましくて、すごく好きなアルバムです。「あばく」とかかっこいい。


ストレイテナー『The Ordinary Road』
「COME and GO」みたいな曲をサラッとやれちゃうことや、これをリードトラックにできることに、長いキャリアで培われた余裕を感じます。この曲のリフ、誤解を恐れずに言うとややダサい気もしてるんですが、そのダサさが良いというか……むしろオシャレなのでは……?というか……。そういう感じで、力の入りすぎていない曲が並んでいて、繰り返し聴いても疲れない心地よさを感じています。音もどこか柔らかくて、エモ・パンク路線の曲もザラっとしたギターのおいしいところは残しつつずいぶん聴きやすいミックスが施されているような。
「Zero Generation」がかなり好きなんですが、メインのギターのフレーズで音をピタッと切るところとダラッと延ばすところが交互に来るのがクセになっています。全部同じように切るか延ばすかでも曲としては成り立ちそうですが大きく印象は変わりそうですし、自分が気づいていないものも含め、こういう細かい部分へのこだわりが色んなところに詰め込まれているのだろうと想像できる職人芸は、25年以上続けているバンドならではなのだろうと思います。


トゲナシトゲアリ『棘アリ』
アニメをやっていた上半期は『ガールズバンドクライ』にかなり影響を受けて、各話タイトルになった曲が収録されているオリジナルアルバムを全部集めたりしました。半分くらいしか聴いてないんですが。サンボマスター『サンボマスターは君に語りかける』(「歌声よおこれ」収録)、フラワーカンパニーズ『脳内百景』(「はぐれ者讃歌」収録)、THE GROOVERS『ELECTRIC WHISPER』(「欠けた月が出ていた」収録)が特に好みでした。
流石にもう「なんでもいいから新しい音楽を!」と思って好きな音楽を探すほどのバイタリティはなくなってきたんですが、その分こういうきっかけができた時に聴いてみることはよくあります。きっかけがある方が、初めて聴く上でも何かの文脈に沿って聴ける(誰かのおすすめならその人の他に好きな音楽を思い浮かべたりしながら聴いたり、二次創作含めて何かしらのコンテンツ絡みなら関連性や差異を意識したり)ので聴きやすい、というのもある。転職に思い切らせたという点で自分の人生を変えた作品であると同時に、新しい音楽を聴くきっかけを作ってくれた作品としても『ガールズバンドクライ』は大きかったです。
で、そんな『ガールズバンドクライ』の曲はどうなのかと言うと、ほぼ全てが3分ちょっとの短い曲の中、パンパンに詰め込まれた情報で洪水が起きているといった様相。ずっとピークみたいな曲ばかりで、俺はバンドよりwowakaさんのボカロ曲などを思い出してました。音圧も相まってとにかくパツパツで息も詰まりそうな30分、アニメにハマってる間はめちゃめちゃ聴いてましたが、その後リアルライブにコンテンツの展開が傾倒していく様が好きじゃなくて熱が冷めるとこの情報量の多さが災いして「なんかうるさい曲ばっかだな」に反転してしまったという……。音楽の好みの変わり方にも色々あるねという話でした。時々聴くとやっぱりかっこいいので元来好きな音楽ではあるのです。


リーガルリリー『kirin』
良いアルバムすぎる!!!!
軽やかで、爽やかで、生真面目で、疑り深くて、夢見がちで、傷付きやすくて、傷付けるのが怖くて、おどけてみせたり、人に合わせてみたり、譲れないものがあったり、独りでいることが楽だったり寂しかったり。一言で言い表すことのできない人の複雑なマーブル模様を音と言葉でなんとか描こうとする、俺の好きなオルタナティブロックってまさにこれなんだよなと思えるような一枚です。
a flood of circleの話の時、大人になっても自意識過剰、ということをちょっと書いたんですが、リーガルリリーのこのアルバムはもうちょっと俯瞰していられる。学生時代の空気感を思い出させてくれるような雰囲気があり、それはそれで痛々しい思い出も蘇るので良いことばかりではないんですが、あの頃から連なる自分の人間性や音楽好きという趣味をいつもより愛おしくも思えるようで、時々ふらつく自分を癒してくれるような気もするんですね。
ミニアルバムの時は本当にピンと来てなかった「ハイキ」がアルバムの流れだとすごくしっくり来て、これがあるからアルバムで聴くのやめられないんだよなと思いました。あととにかく「キラキラの灰」が良い曲すぎる。


今年の10枚はそんな感じでした。新譜以外だと、凛として時雨/TKのソロにハマったり、アナログフィッシュのアルバムを見つけたものから買って聴き始めたり、この12月にはNUMBER GIRLともようやく和解し始めたりと、新譜と関係ないところでも色々楽しくやっていました。来年もたくさん音楽を聴けたら嬉しいです。

それとUNISON SQUARE GARDENのライブもたくさん行きました。来年もたくさん行く予定です。

あとシャニマスも追っかけたい。

いいなと思ったら応援しよう!