「言語化」を言語化する
こんにちは!のだかつきです。
僕は現在デザイン会社にて、UXデザイナーのマネジメントをしているのですが、デザイン界隈にいるいないに関わらず昨今急激に重要性を増しているスキルがあると感じています。それは「言語化力」です。
対面のコミュニケーションであれば文脈を補足出来たり、雑談を通して足りない情報を埋めることが出来る場面も多くあるのですが、文字ベースのコミュニケーションではそうはいきません。そんな背景もあり、「考えを言葉に落とし込み、人に適切に伝える」力の重要性が増してきています。
ただ、どこかでモヤモヤしている自分を感じていました。それは、自分は「言語化」というものを解像度高く言語化出来ているのだろうか?という懸念です。「言語化しよう」と言うのは簡単なものの、そもそも言語化とは何か?必要な要点やステップはなにか?を知らずに正しい言語化は出来ません。
ですので、この記事では、「言語化」という言葉自体を具体的に解説していきます。多くの人が誰かに何かを伝える助けになればとっても嬉しいです!
では本題に行きましょう!!
1章:言語化とは、頭や心にある意見を言語という形で、他者に伝えることだ
結論から言ってしまうと、各種書籍や記事をインプットした結論としての私の中での言語化の定義は
だと定義しています。また、「言葉」と「言語」の違いですが、その目的に違いがあります。
極端な例で言えば、1歳児の「ママ!!」は言葉ではあるが、言語では無いです。一方、夏目漱石の「月が綺麗ですね」は言葉でもあり言語でもあるわけです。「I love you」という意志を伝達することを目的にしているし、その結果の相手の行動を期待しているからです。
つまり、言語化するにあたって最重要な点が「他者への伝達」、つまり「相手に伝わったかどうか」にあります。
前半で、コロナ禍なこともありテキストでのコミュニケーション含め曖昧でない言語が担う役割がこれまで以上に増してきていると述べました。その例を出してみます。
コロナ以前の状態で、会議室で会議をしていることを想像してください。その際に相槌を多くしているが特に意見を発することのなかったAさんがいるとして、周囲がAさんに抱く印象が「おそらく相槌をしてくれたから理解してくれているんだろう」という印象になると思います。
一方、Zoom等での会議になると相槌や頷きのような文字や音声情報以外のコンテキスト情報が抜け落ちやすく、同様に特に意見を発することがなかったBさんがいた際、周囲はBさんに対して「そういえば意見発していなかったな。わかってくれているかな。大丈夫かな」という不安の方が徐々に大きくなってきます。これが続くと言語化をしないことのリスク、ワーストケースのシナリオとしては「この人は何も考えていないのではないか??」という不安にまで発展する可能性があるということです。
つまり昨今では、言語化は、人間性や能力の受け取り方に影響するとても重要なファクターになってきている。ということなんです。
言語化の定義と重要性を(大げさなまでに)ご説明したところで、ここからは具体的に言語化の全体像や具体的なやり方を綴っていきます!
2章:言語化をするには、まず自分の思考に向き合う
先程言語化を、「頭や心にあるものを言語に化けさせ、他者に伝えること」と定義しました。この定義は、各種言語化に関する書籍や記事(※参考文献として後述)を読んだ上での定義です。
文献を読んでいる際に思ったこととして、言語化に関する文献には「言葉を外に出す際のテクニックや方法」はある一方で、内なる声やそもそもの意見の醸成の仕方に関する記載が少ないように思いました。
おそらくそれは、言語化という言葉自体が外に出すものを想起しやすいことに起因していると予想していますが、個人的には最も重要なことは「外への出し方」ではなく頭や心の中で意見を醸成する、「内在的言語化」がとても重要なのでは?と思っています。つまり、頭や心にあるものを適切に認知するメタ認知が重要なのです。
そのタイミングで、僕の大好きな書籍「思考・論理・分析」の一節にある言葉を思い出しました。
という一節です。まさにこの思考の定義こそが、「内在的言語化」の定義そのものだ。と思いました。
つまり、言語化(「頭や心にあるものを言語に化けさせ、他者に伝えること」)をするためには、まず「思考」する必要があり、「思考」とは、頭の中で情報と知識を加工する。ことだということです。
ですので、「言語化」が苦手という方の原因の一つが、情報や知識を整理し、自分の中でメッセージに落とし込むことが苦手。という点に繋がります。では、どうすれば自分の心の中にある情報や知識をメッセージに落とし込むのか?が次の問です。
3章:自分の中の辞書を分厚くすることが良い言語化への道
結論の1つ目として、優れた言語化だ出来るようになるために必要なのは「語彙」です。知っている言葉の「深さ」とも言うかもしれません。一種当然の結論ではあるのですが、ボキャブラリーの量が内在的言語化の質を高めます。「言葉の深さ」とは、別の言い方をすると「具体度」とも言います。
考えや感情を描写する言葉の具体度が高ければ高いほど、人に伝わる確実性も比例して上がります。
例えば、「〇〇を具体的にしてください!」と上司に言われたとしましょう。これをそのまま「はい!」と受け取るのか、具体的という言葉を「具体+的」と分解し、「的」は形容詞化する言葉であるな。次に「具体」という言葉の定義を調べてみよう。ふむふむ、具体は「物事が、直接に知覚され認識されうる形や内容を備えていること。」という意味か、ということは先程の上司の言っていた「具体的にしてほしい!」とは、「まだ直接イメージできる形になっていないということだな。チームの認識が揃うレベルで内容を詳細にする必要があるのか!そのために、〇〇を分解して考えてみようと思っていますが、それで合っていますか?」と上司に確認をしてからタスクに取り掛かるのかで、成果物の認識の揃い方が全く違って来ます。(個人的にこの事例は「具体的という言葉が具体的じゃない問題」としてよく後輩にも伝えたりします笑)
また、語彙を増やすちょっとしたTipsとして「語源マニア」「熟語分解マニア」になることをおすすめします。これはかつての上司から学んだ点ですが、さらっと出てきた言葉の様々な語源を知ることで本来の意味を知り、自分が使う言葉を正しく表現することが出来るようになります。
例えば自分はデザインを仕事にしているんですが、「デザイン」という言葉、まさに抽象度が高く解釈の余地を生む言葉ですよね?ということで、語源を調べてみます。
これがデザインの語源らしいです。つまりデザインには設計するという語源があるようです。
では「設計」を「設」と「計」で分解してみます。
とあります。つまり、デザインとは「設計」そのものであり、「設計」とは、「意図した計画に対して組織などを作ること」がデザインであるとも捉える事ができます。(デザインに対しては多様な解釈があるのでこればかりではもちろんないです)
このように、抽象的で解釈の分かれる言葉だな、と感じたときには「語源マニア」「熟語分解マニア」になってひらすら具体的な意味を捉えるよう務めるのがおすすめです。このように、自分が使う言葉に対して、それが何を指しているのか?をできるだけ突き詰めて考えることがより高度な言語化への道なのです。
これらを総称して僕は「解像度を上げる」と読んでいます。もし上司や先輩、仲間から「解像度を高めなさい!」と言われた経験があるとしたら、もしかしたらこういうことを意味しているのかもしれないですね!
以前の記事で言語化出来ると世界の見え方が変わるという記事も書いているので、ぜひご覧ください↓
4章:相手が主人公の物語を語ることが良い言語化につながる
ここまでは、「内在的言語化」つまり、自分の中でどう言葉の解像度を高め、より人に伝わる言葉を選ぶか?という話をしてきました。
ここからは、どう相手に伝える言葉に変換するか?「伝達的言語化」編です。伝達的言語化が出来ない、別の言い方をすると言葉にできないことで「考えられてないのかなこの人は」と捉えられてしまうリスクもあるのが昨今のZoom文化、だからこそ外に言葉を出して伝えることがとても大事になってきます。
僕が常に意識している伝え方は、「相手が主人公の物語を語るつもりになる」です。大げさな表現ですが、要は、相手の目線に立って最適な言葉選びと順序立てをすることを指しています。
このツイートで例をあげたように、相手との前提を捉えることで伝え方の質も速度も上げる事ができます。何かを伝える前に、「この人はこれくらいの経験があって、自分からも事前にこれを伝えてあるから前提知識としてはこれくらいあるだろう。だから〜」と言った想像をまず働かせましょう。
初対面の人に「付き合ってください!」というのが気持ち悪いのは共有されたコンテキストがないからで、デートを重ねた相手には伝わる。それは前提となる情報の共有が暗黙的になされているからだ。
言葉は誰かに届けた際、伝える前に自分が内側で思考していたように、相手の内側で一度思考(咀嚼)されるんです。だから、共通となる知識の土台を作ってあげないと同じように解釈がされないんです。
また、リモートワークのテキストコミュニケーションにおいて相手の前提を捉える際のコツは、相手は「ほとんど何も知らない」くらいの前提に立って伝える方が伝わります。名付けると、「伝えすぎ は 伝えなすぎ の10倍マシ」理論ですw
先程の告白の例では、あえて文脈をハショッて「好き」という情報だけを伝えるオシャレさは活きてきますが、ビジネスにおいては「認識の齟齬」を生まないほうがよっぽど重要だし、一つのテキストを不特定多数の人が読む可能性を考えると余計に「伝えすぎ は 伝えなすぎ の10倍マシ」なのです。
(少し逸れますが)でもでも、もちろんそんなに質の高い言語化が出来ずに、考える時間が必要な時だってありますよね…?そういう時は、「今考えてます。」ということも立派な言語化なんだと思います。言ってしまえば時間稼ぎですが、無言で「この人は何も考えていないのかもしれない」という印象をもたれるよりは、「考えてくれている」という印象を与えつつ、考える時間をもらうことの方がよっぽど生産的です。必殺技の「今考えています」はピンチのときに使ってみてください!
5章:言語化力を鍛える5ステップ
言語化力はある日突然ものすごい力が湧いてくるわけではなく、日々の鍛錬の先にあるものだと思っています。最後の章では、日々言語化力を高めるための必要なトレーニングをまとめてみました。
Step1 まずアウトプットしてみる。
ツイートするでも良いし、書き出すでも良い。頭の中でぐるぐる考えるだけではなく、まず外に出すことが重要です。自分の脳の中はもちろん目では見えません。しかし、書き出せばそれが目に見えるようになります。それだけでStep2である自分の思考の客観視(メタ認知)が捗るようになります。
※素早いアウトプットの力に関しては、0秒思考で知りました。おすすめです
Step2 メタ認知タイム
書き出したら、自分への問いかけを通して、思考の解像度を上げる時間です。先程取り上げた、「語源マニア」「熟語分解マニア」のような考え方を使いながら、自分の考えを詳細まで突き詰めていきます。これは一人でいさえすればいつでも出来るのが良いところで、他者と話してきない時間は、自分の中にある言葉を磨く時間とも言えます。一人でいるときにどれだけ内在的言語化を磨けるかが、いざとなったときの引き出しを増やせるかのキモになるのです。
Step3 構造化したストーリーにする
Step2までは自分の中で完結するものメインでしたが、これから先は伝達的言語化の鍛え方です。Step3は、Step1の応用版で、実際に起承転結踏まえたストーリーをアウトプットしてみることが大事です。これもnoteや会社での日報、プレゼン、Tweet等多岐にわたりますが、重要なことは「誰かに理解してもらう」ためにアウトプットをする癖をつけることです。この数が多ければ多いほど、学びも深まります。
(おまけ)Step0 Feedbackをもらう
また、適宜親しい仲の友人等に読んでもらって、Feedbackをもらうこともとっても重要です。(それも率直な意見をくれる人だとなおよし)どこどこが伝わらなかった、わかりづらかったというFeedbackを貰えばもらうほど自分の言語化の癖に気づいてきます。先日投稿した以下の記事も、プレビューの段階で合計10人の方に事前に読んでいただいて、フィードバックをもらってから出したことで多くの方に届く記事になりました。Feedbackは最高です。(Feedbackくれた方々ありがとうございました!)
最後に
この記事を書くまで、伝え方の話になるとどうしても表層的な言語化が目立ち、ほんとは自分の中でどう言葉を作っていくか(内在的言語化)が難しいんだよなーとモヤモヤしていました。これはつまり言葉の中身なのか、伝え方の枠を作ることが大事なのか。でモヤモヤしていたんだと思います。言い換えると、ネットフリックスはアプリの表層的なデザイン(コンテンツの枠)と中身(コンテンツそもそも)掛け合わせで初めて面白いわけです。言葉も同じで、どんな言葉を紡ぐか?そしてそれをどう伝えてあげるか?の両輪を使いこなすことで初めて人に伝わる言葉になるんだと思います。
これからも良い言葉を紡いでいけるよう頑張っていきます!!Twitterでも日々の言語化は行っていますので是非みてみてくださいね!
(超余談w)言語化における、伝達する/される側での前提知識の差を上手く使ったのが、アンジャッシュのコントですよねw
あのコントを見れば前提情報の共有がいかに重要かわかります笑
やっぱり芸人さん賢い!!!