春雨の夕
夕方からの雨に酷く心が落ち込むのは私だけなのだろうか。
まだ外は仄かに明るさを宿しているのに、
もう家に帰れと言わんばかりの豪雨。
同じ雨でも梅雨の雨はいい。
あいつらはときどき見せる晴れ間をもっとも美しく見せてくれるし、夏を運んできてくれる。
昼過ぎに起きたわたしが1時間前にやっと身支度を整え、お気に入りのカフェで本を読み始めてからまだ30分しかたっていない。
雨が好きだという人の気がしれない。
太陽の下できらきら光る青葉や、
青空に白の絵の具を垂らしたような濁りのない大きな雲、
渇いた風がはこんでくるどこかの家の金木犀の香り。
晴れた日のことを考えるとますます目の前の雨粒に腹が立ってくる。
今日は特に気持ちが上を向かない日だったというのに。
せっかく出かけたのに。
帰って何をしようか。
夏が待ち遠しい。