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高齢者相手に「自分は介護してやっている」と勘違いしている介護従事者の心理

介護従事者の中には、サービス対象である高齢者に対して「上から目線」な言葉や態度をとっている者がいる。

それは「自分は介護してやっている」という勘違いがあるからだと思う。

何が勘違いなのかと言えば、高齢者に対して介護していることは事実であるが、それは「お仕事でやっていること」という前提がある。言い換えると、介護従事者は「お金を貰って高齢者に介護している」ということだ。

そう考えると、高齢者に介護することでお金を貰っている介護従事者が「介護してやっている」というのは変な話だと分かる。

お医者さんは患者を治療することでお金をもらう。お金を払うのは患者だ。
もしもお医者さんが「自分は患者を治療してやっている」なんて発言をしたら、きっと患者から「何て傲慢な態度の医者なんだ」と言われるだろう。

市役所の職員は税金という形で徴収されたお金から収入を得る。税金を払うのは市民である。もしも市役所の職員が「自分たちは来所者の困りごとを聞いてやっている」なんて発言をしたら、きっと炎上間違いなしだろう。

何を言いたいのかと言えば、お金を貰って仕事としてやっている以上、お客さんや社会に対して「〇〇してやっている」という考え自体がありえないという話だ。




介護従事者に話を戻そう。

どの介護現場にも高齢者に対して「上から目線」な人はいる。高齢者に対して「ほら、早く食べなさい」「黙ってそこに座ってて」「こっちの手間を増やすなよ」といった言葉を投げつけたり、乱暴な接し方のまま身体介助をしたり、「年寄りだからいいだろう」と掃除や洗濯を手を抜いたりする。

この手の介護従事者を相手に幾度も指導してきたから分かるのだが、高齢者に対して高圧的な言動をとる人は改善しない。それは、当人が高齢者に対して「上から目線」で高圧的な態度をとっている自覚がないからだ。

そして当人は高齢者に対して「自分は介護してやっている」という誤解および傲慢さを抱いていると気づいていない。

もちろん、当人に悪意はない。 

一方、この手の「自分は介護してやっている」という介護従事者の傾向として「自分は高齢者から好かれている」という誤解や「高齢者から好かれたい」という欲求を抱いている様子も伺える。
それが拍車をかけて、介護現場という職場においてどんどん浮いた存在になっていく。 


 
これは憶測であるが、「自分は介護してやっている」と勘違いしているタイプの介護従事者は、基本的に自信がないのだと思う。今風(?)に言えば自己肯定感が低いのだろう。

そもそも、この手のタイプの介護従事者は基本的に人の話を聞かないし自ら勉強するといった姿勢もない。新しいことに挑戦するつもりもない。
自分を客観的に容認する術がないので、誰かを貶めることによってしか自分という存在を確認できない。しかし、周囲には貶める人はそんなにいない。誰もが踏ん張って頑張っているからだ。

そこに社会的弱者であるところの高齢者がいて、その人たちを介護する。それによって自分という存在を確立できる。介護を通じて「自分のほうが高齢者より優位な立場にある」と勘違いしていく。それが潜在的に「自分は介護してやっている」という誤解となる。

その結果は冒頭のとおり。介護を要する高齢者に対して高圧的な態度や言葉を投げつける。それは介護従事者として決して許されることではないのに、
自分は高齢者よりも優位な立場にあると思っているので、どんな態度をとっても大丈夫という傲慢さが生じる。
 


 
改めてお伝えするが、「自分は介護してやっている」という態度の介護従事者を表面的な指導で改善することはできない。もっと言えば「自分は高齢者から好かれている」「高齢者から好かれたい」と思っている介護従事者ともなると、改善どころか末期だと思ったほうが良い。

誤解しないでいただきたいのは、改善できないからと言って放置するわけではない。指導しないわけでもない。しかし、末期の病気が手の施しようながいのと同じように、無自覚に「介護してやっている」と思って人につける薬(教育法)は今のところない。

その介護現場で講じられる対策としては、その人を改善することに時間と労力を割くよりも「自分たちがちゃんとした接遇をしよう」と周囲が態度で示すのが適切だ。

あるいは、あまりにも目に余るようであれば解雇するしか術はない。人手不足で大変だという時世であるが、その大きなデメリットよりも介護対象である高齢者を精神的に守るためには力業しかない。

他人を変えることはできない。変えることができるのは自分だけ――― この考えは人事や教育をしているとよく分かる。

介護を仕事とされてる方々においては、「介護してやっている」という誤解をしないよう意識して業務に励んでいただければ幸いである。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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