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BCI GPG を読み解く 〜 #2 GPG の構成

本稿では、まず GPG の全体構成がどのようになっているかを押さえておきたいと思います。

GPG は 6 つのセクションから構成されています。それぞれのセクションは「Professional Practice」つまりプロフェッショナルとしての実践領域と名付けられており、略して PP と呼ばれます。Edition 7.0 における各 PP のタイトルは次のようになっており、それぞれが独立した章のようになっています。

  • PP1: Establishing a BCMS

  • PP2: Embracing Business Continuity

  • PP3: Analysis

  • PP4: Solutions Design

  • PP5: Enabling Solutions

  • PP6: Validation

PP1 のタイトルは、事業継続マネジメントシステム(BCMS)を構築する、もしくは立ち上げる、というような意味になります。ここで「BCMS」とは、事業継続マネジメント(BCM)に関する様々な活動を、経営層の期待する方向性に沿って効果的に実施していくための仕組み全体を指しています。なお、2018 年版では「BCM Lifecycle」や「Business Continuity Programme」などといった用語が用いられていましたが、ISO 規格に合わせて「BCMS」に一本化されました。

PP2 のタイトルに含まれている「embracing」には、主義や考え方を受け入れる、採用する、などといった意味があります。2018 年版では事業継続のための取り組みを組織に根付かせていくという趣旨で、「embedding」という言葉が使われていましたが、Edition 7.0 では単に仕組みを組織に組み込むだけでなく、経営層や従業員の感情や姿勢、態度をも含むアプローチとなったことから、より主体的な姿勢を表す「embracing」が使われるようになりました。具体的な内容としては、組織の文化を理解しつつ、その組織文化に対していかにポジティブな影響を与えていくか、といったような内容が含まれます。。 

PP3 は「分析」ですが、具体的には組織の弱点や、事業活動を継続・再開させるための要件、災害などの非常事態において優先されるべき事業活動などを分析するための方法論がまとめられています。

PP4 は PP3 での分析結果を踏まえて、その組織にとってふさわしい事業の継続・再開のさせかたを「デザイン」する段階です。そしてそのデザインを具体的な計画書など、使用可能な形にする(enabling)段階が PP5 です。なお事業継続計画(BCP)の文書化はこの PP5 に含まれています。

そして PP6 は「妥当性の確認」という段階になります。具体的には、演習を行うことによって BCP の内容の内容が妥当かどうか、また BCP を実行するための準備が適切に行われているか、などを確認します。また BCP の内容のメンテナンスや見直しなどの作業も PP6 の中に位置付けられています。

これらの 6 つの PP は、GPG においては下図のようなサイクルで継続的に実施されるよう表現されています。

(Source: BCI Good Practice Guidelines Lite Edition 7.0)

なお、それぞれの PP の内容は、おおむね次のような項目に分けて記述されています。あらかじめ、このような項目構成になっていることを頭に入れておくと、GPG を読み進めたり、後から必要な情報を探すのが楽になるかと思います。

  • General Principles (一般原則)

  • Concepts and Considerations (概念や考慮すべき事項)

  • Process (プロセス)

  • Methods and Techniques (手法や技術)

  • Outcomes and Review (成果およびレビュー)

ここで、GPG の構成と ISO 規格との関係について整理しておきたいと思います。事業継続に関する国際規格としては ISO 22301 および 22313 がありますが、GPG の各セクションと ISO 22301/22313 の箇条の関係は概ね次のようになります。

  • PP1: 箇条 4、5、6、7.1、7.5、8.1

  • PP2: 箇条 7.2〜7.4

  • PP3: 箇条 8.2

  • PP4: 箇条 8.3

  • PP5: 箇条 8.4

  • PP6: 箇条 8.5、8.6、9

必ずしも各項目が一対一で対応している訳ではありませんし、特に PP2 に関しては、GPG の独自色がかなり強い内容となっていますので、記述内容には大きな乖離があります。しかしながら、概ね上のような関係にあることを知っておいていただければ、ISO 規格に馴染みのある方々にとっては読みやすいのではないかと思います。

また、ISO 規格が全体として P-D-C-A のサイクルを構成しているのに対して、GPG の構成はそのような構成になっていません。その代わりに GPG では、各セクションの最後に「Outcomes and Review」という項目を設け、継続的な見直しや改善を促しています。

[本稿に関するお問い合わせ]
本稿や GPG の内容、もしくは BCI の活動に関するお問い合わせにつきましては、下記 URL の問い合わせフォーム(合同会社 Office SRC の Web サイト)からご連絡いただければ幸いです。
http://office-src.com/contact

GPG は BCI の Web サイトから購入できます。次のリンク先をご参照下さい。
https://www.thebci.org/certification-training/good-practice-guidelines.html

【2025/01/05 修正】GPG の改訂(Edition 7.0)に合わせて修正しました。


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田代邦幸 - 合同会社 Office SRC 代表
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