ニューヨーク州司法試験 体験記(2019年7月)

2019年7月に実施されたニューヨーク州司法試験(NY Bar)に合格しました。試験準備の過程で、ウェブ上で多くの体験記(後述)を拝見し、とても参考になったため、私も自身が行った対策などを記します。

1. はじめに ―― 著者バックグラウンド

NY Barの対策は短期集中的に行われることが通常であり、自身を振り返ってみても、受験者の①英語力、②日本法の知識・センス、③試験(およびその準備)への慣れ・耐性によって、試験対策の方針・強度および試験結果が左右されると感じます。
私のバックグラウンドは次の通りです。

・法学部卒。製造業の法務部門に所属。
・英語のアウトプットに苦手意識のあるいわゆる純ドメ。留学前のTOEFLの点数は90点台前半(Reading偏重型)。
・日本の司法試験/ロースクール入試の受験経験なし。
・”試験/試験対策”というもの自体は得意なほう(自己評価。LL.M.に来る方はたいてい得意だと思いますが)
・2019年5月にLL.M.卒業後、同7月にNY Barを受験。

本稿が、今後、NY Barを受験予定の方、とりわけ、私と似たバックグラウンドの方(日本の司法試験受験経験がない方、英語力に不安がある方等)の参考になれば幸いです。

2. 試験概要

ニューヨーク州は2016年7月試験から全州統一試験(Uniform Bar Exam)を採用しています。MBE (択一: 100問/3時間×2セット)、MEE (論文: 6問/3時間)、MPT (法文書作成:2問/3時間)の3セクションで構成され、各50%、30%、20%の比率で採点されます。ニューヨーク州は400点中、266点をとれば合格です。他の方の体験記(後述)ですでに詳しい説明があるため、試験構成や教科の詳細は割愛します。また、最新情報は必ずBoard of Law Examiners (BOLE)および National Conference of Bar Examiners (NCBE) の情報をご確認ください。

3. 私のとった基本戦略

(1) MBE対策を主軸におきつつ、Writing Component (特にMEE)も相応に学習・演習の時間を取る
典型的に、Readingに強い日本人は、MBEで高得点を取り、WritingでのDisadvantageをカバーするというのが定石とされています。実際に、合格者の方の体験記では、MBEに重点を置き、MEE/MPTの演習は答案構成程度に留めたという方が多い印象でした。
しかし、私は、試験のタイムプレッシャーの中、どれだけ英語でアウトプットできるか不安だったため、MEE/MPTについても過去問を時間を測って解く演習を積極的に行いました

(2) 予備校はbarbriを選択。ただし、MBEインプットは日本人ノートを活用
Bar Examの準備に際しては、対策パッケージを提供する大手予備校(barbri、Themis、Kaplan)が存在し、米国現地学生(JD生)も含め多くの学生が利用しています。合格者の体験記を見る限り、いずれの予備校も必ずしも高い評価を得ておらず、(かつ、今思えばSmartBarPrep, Adaptibarなどの他の廉価なサービスで代替できる部分も多くありますが、)次の理由から私はbarbriのパッケージを購入することにしました。

① NY Bar対策は短期集中的であり、自身にフィットする勉強方法や教材をじっくり模索するのが難しいところ、予備校はワンストップで網羅的に情報提供してくれる点で、楽であること。
② 予備校は必要な教材改訂を随時行っている(と期待される)ため、リソースとしてReliableであること。
③ 自分にとって土地勘のない科目(Secure Transaction, Family Law, Will, Trustなど)は講義を視聴して概要を掴むのが理解の近道に思えたこと。
④ 日本人ノートはbarbriの資料をベースにしており、併用しやすいこと。
⑤ 概ね日本人受験者の多くはbarbriを使っており、仮に予備校を使わずに試験に落ちた場合に、精神的ダメージが大きいと思われたこと。

ただし、MBEのインプットは、日本人ノート(NY Bar受験者の間で引き継がれる英語/日本語併記のアウトライン)を利用しました。好みの問題ではありますが、私の場合、日本語併記のほうが素早く内容を理解・再確認できると感じたため、細かく正確な知識が幅広く問われ、かつ英語表現によるアウトプットが伴わないMBEの対策においては、barbri資料をイチから読むより効率的かつ効果的でした。

(3) 問題演習は過去問中心。MBE演習量は3,000問を目指す。
予備校のオリジナル問題は本番と傾向が違うと指摘する方が多く、MBE、 Writing Componentともに問題演習は過去問を中心に据えました。やはり、過去問に勝る良問はないと思います。
また、司法試験の受験経験がなく、知識・経験の不足は否めないため、MBEの演習量は3,000問を一つの目標として進めました。

(4) 早めにNY Bar対策に着手
2月から日本人ノートの通読&MBEの問題演習を開始しました。日本人同級生と相談し、ペースメーカーとして、2月頭から定期的な勉強会を持つこととしました。(スケジュールは後述)
なお、試験科目のうち、LL.M.課程で秋学期にContractと Corporationを、春学期にPropertyとConstitutionを履修しています。これらはいずれも試験対策の助けになりました。

4. 結果

本番のスコアは合計点で286点、MBEが145.6点でした。(すなわち、Writing Componentは140.4点
Writing Componentは、どれだけ書ければどの程度の点になるかが不明瞭のまま進むため、準備中は不安だったのですが、結果的に目標としていた水準点(133点)には届きました。

5. MBE対策

私のMBE対策を端的にいえば、「一通りインプットしたら、あとはひたすら過去問をゴリゴリ解く」という感じです。

MBEは、2,000問くらい解くと合格レベルに乗る、とまことしやかに言われています(余談ですが、中国人のLL.M.同級生からも同趣旨の発言を聞きました)。これが解き直しを含む数字かは不明ですが、私は累計でユニーク2,000問程度、解き直し含めて3,000問程度を解きました(過去問+barbri練習問題)。

前述のとおり、インプット用の教材は主に日本人ノートを使いました。2-4月で一通り目を通しましたが、記憶の喚起も兼ねて、5月下旬からbarbriの講義も一応すべて視聴しました。
とはいえ、テキストだけを読んでもあまり記憶に残らない性分のため、基本的には、問題を解きがてら、疑問や確認したい点があった場合に該当の日本人ノートに都度あたる、というスタイルをとりました。
なお、日本人ノートに不明点があった場合(不正確と思われる記述や、Emanuelの解説とそぐわない場合等)には、適宜、barbriのアウトライン、アメリカ法ベーシックスシリーズ、その他ウェブ上の解説記事なども参照しました。

(1) 過去問
前述のとおり、問題演習は過去問を中心に行いました。
私の受験時点では、手に入る過去問は次のようなリソースがありました。

Emanuel (6th Edition)および Emanuel 2 (2nd Edition)
② NCBE提供のサンプル問題 (7科目 / Civil Pro)
NCBE(またはJDAdvising)が提供する(最新の)過去問セット
④ Adaptibar

①Emanuel (6th Edition)は、各教科50-70問およびPractice Exam 200問(いずれもCivil Procedure以外の6教科は過去問)+公式過去問100問(OPE 4)の解説で構成されます。Emanuelは解説が群を抜いて丁寧であり、受験生必携の一冊でしょう。(また、冒頭にMBEの解き方指南のパートがあり、有益です。barbriのMBE対策講義と重複するところがありますが。)なお、Emanuelは2019年12月に7th Editionが発刊されているようで、前書きを試し読みする限り、Civil Proの過去問が30問追加されたようです。
Emanuel 2も基本的に過去問で構成されていますが、一部の設問で筆者による修正がなされています。また、問題文が若干長いこと、各設問の直後に解答・解説があること、問題の並び順が論点ごとにまとまっていることから、時間を測っての演習には利用しづらい側面があります。しかし、依然として取り組む価値はあると思います。
ちなみに、私は、Emanuelは各教科(Civil Proを除く)を2周+2周目で間違った問題を更にもう1周し、Emanuel 2は1周+間違った問題のみもう1周、という形で回しました。(Emanuel巻末のPractice Exam 200問は1周のみ。OPE 4は着手せず。)
なお、派生版にFinzという問題集もありますが、こちらは過去問ではありません。Civil Procedureのみ解きましたが、問題文が極端に短く、事実関係がシンプルなので、本番を見据えた練習問題としてはあまりお勧めできません。

③は私の受験時点ではCivil Proの過去問が手に入る唯一のリソースだったと思います。

④ Adaptibarは利用しておらず詳細は存じませんが、問題数が約2,000問と多く、アプリ等でも利用できる手軽さがAdvantageであるかと思います。なお、Emanuel等との問題の重複度合いは不明です。

(2) barbri練習問題
過去問と並行して、barbriの練習問題にもそれなりに取り組みました。具体的には、紙で提供されているものについてはDiagnostic Exam (100問)、Workshop (各教科25問)、Refresher (100問) 、Half-day Practice Exam (100問)を各1周。また、オンラインのみで提供されるPractice Question Setは概ね一教科につき5~10セット程度解きました。また、7月初頭に行われる模試(Simulated MBE)も受けています。

なお、「barbriの練習問題は本番と傾向が違う」とよく言われており、私も少なくない頻度で同様の感触を持ちました。特に、オンラインで提供されるPractice Question Setは、妙に設問が長かったり、不正解の選択肢を作るためと思われるやや不自然な問題設定がみられました。
しかし、私は問題演習を通じて知識を確認・定着させる勉強スタイルであり、Emanuelを始めたとした過去問だけでは絶対量が不足していると感じたため、barbriの練習問題もそれなりにこなしました。総じて受験生の評価が高いEmanuelであっても、なかには現行の形式とやや傾向が違うと思われる問題(たとえば、極端に問題文が短いもの等)も含まれていますし、また、身も蓋もないですが、「本番の問題傾向」自体がかなり主観的かつ曖昧なものです。そのため、問題形式が大枠のところで本番の形式を踏襲しており、また、それを解くことが知識の定着に資すると感じられるのであれば、学習素材として取り組んで差支えないと思います。

(3) 問題演習におけるスコア
MBEのスコアは、採点対象の175問(各教科25問)の得点に対して調整がなされるため、実際のスコア(Scaled Score)は正答数とは異なります。SmartBarPrepによると、概ね200問中の正答数+10~15がScaled Scoreになるとされています。勉強の過程では、折に触れて自分の正答率を把握して進めることが重要です。

私の場合、まず、7月2日に受けたbarbri MBE模試の点数は119/200でした。(余談ですが、barbri 講師も、本番のScaled Scoreは模試の点数から10~25点程度伸びる、と講義中で述べており、その通りになりました。)
また、7月中旬以降にも、Emanuel巻末のPractice ExamやbarbriのRefresher、Practice Examを使って、100問/3時間を何度か解きました。概ね60-70%くらいの正答率でした。これは、barbriの問題に関していえば、平均を少し上回るくらいの出来です。

6. MEE対策

MEE対策は、「barbri問題集(過去問)の演習+Flashcardソフトウェア(Anki)を使ったキーワード暗記を通じて、少ないword数でもサバイヴできる可能性を高める」という感じでした。

MEEの演習は6月の中旬から開始しました。タイミングとしては、barbriのMBE科目講義の視聴が終わり、MEE専用科目の講義を半分ほど進めた頃です。振り返ってみて、MEEの演習や論証の暗記はMBE科目の理解にも相乗効果があったと思いますので、比較的早めに着手したのは正解でした。

(1) 問題演習
MEEは出題範囲が広いものの、本番では6~8科目しか出題されません。JDAdvisingが出す過去の出題傾向および予想をもとに、Trust/ Criminal Law/  Agency&Partnership/ Tortはほぼ切り捨て、残りの科目もある程度の濃淡をつけて対策しました。(万一に備え、捨て科目についてもbarbri講義はすべて視聴し、barbri問題集の論証はサラッと目を通しました。)

barbriのMEE問題集は①各教科8問ずつ(Conflict of Lawsのみ2問)の過去問のセット、②追加問題(過去問)、③演習問題(オリジナル問題)で構成されています。各問に対し、(a)答案構成のサンプル、(b)模範答案、(c)自己採点用のチェックシート(加点対象となる(とbarbriが考える)センテンスが羅列されたリスト)がついています。このbarbriのMEE問題集は非常に高い品質だと思います。各教科の8問をこなしてみると、頻出論点をバランスよく抑えていると感じます。(なお、Criminal Law & Procedureは併せて8問であり、July 2019のパッケージではCriminal Procedureの問題数は少なかったため、追加問題にも着手する必要がありました。)

私は、出題の可能性があると踏んだ約10科目分に加えて、巻末の追加問題・演習問題を数問解きました。最終的に累計で80〜90問程度につき、30分の制限時間を測りながら演習したことになります。

(2) インプット・論証の暗唱
MEE専門科目のインプットは、barbriの講義を一通り見て、講義ハンドアウトを使いました。
また、Ankiという単語帳ソフトウェアを使い、論証集の頻出論点(上述の “捨て科目”を除く)を穴埋め問題形式で単語帳にし、キーワードを暗記しました。

(3) 論文のWord数と答案戦略
演習を4-5問を終えてみたところで、問題の科目・構成にかかわらず、私の能力では1問につき400-450 wordsほど書くのが上限と感じました。(良く知った論点で筆が乗ったとしても、500 wordsほど書くと、30分を少しはみ出ていました。)
Word数を伸ばす方法を考えるに、①問題文を読む速度を上げる、②論証を思い出す速度を上げる、③一般的な英文作成能力の強化、④Typing速度の向上、⑤Typoや文法ミスを無視する、といったアプローチがありうるところです。しかし、①③④は短い試験対策期間で劇的に改善するのは困難であり、⑤も意識的にtypoやミスを放置することは性格上ためらわれました。そのため、自分の書ける上限はそれとして受け入れ、その範囲内で無駄をそぎ落とし、加点要素の密度を上げる方針で勉強することにしました。
具体的には、いちど、barbriの模範答案を450 words程に圧縮してみて、IRAC (Issue, Rule, Application, Conclusion) の各パートにどれだけの分量を割けるか(割くべきか)を検討し、次のような方向性を決めました。

・ Issue Statement (IRACのI )は、極力、Headingのみで済ませ、本文の一文目からすぐRuleを書き始める。(参考: JDAdvisingによるMEE TIPsのNo. 6)
・ Conclusion (IRACのC)も、問題文で直接問われている質問の答えのみを短く書く。
文章表現はすべて短文かつ簡潔なものを目指す。具体的には、barbri各設問のSelf-scoring Checklistの文章を倣う。(模範答案に比べてシンプルで端的な記述になっており有用。なお、暗記用の規範としても役立つ。)
・ 規範を素早く吐き出せるようにするため、論証集の文章をまるごと覚えるのではなく、キーワードを中心に暗記する(先述のとおり、Ankiの穴埋め形式を使用)。
・ とはいえ、一部の頻出論点については、自分の書きやすい型やパターンを考えておく。例えば、Contractsの出題において主論点ではない契約成立要件に少しだけ触れる書き方、Civil ProcedureにおけるPersonal Jurisdiction/ Subject Matter Jurisdiction検討の枠組み、EvidenceのHearsay Exceptions/ExclusionsにおいてHearsayの定義から触れる流れなど。
あてはめにこだわりすぎない。事実に対する評価を入れられればベターだが、定立した規範の要件や要素が多い場合には、同じ順番で事実を列挙するだけで済ませる

本番で実際に書いた分量は、MEE 6問合計で15,000 characters程度、平均して一問あたりで400-450 wordsくらいだったと思います(本番の試験ソフトExamplifyは、各問のcharacters with spaces のみが表示され、正確なword数はわかりません)。
BOLEが公表しているMEEの優秀答案やBarbriの模範答案は、1問につき概ね1,000 wordsほどあり、受験生の心を折ってきますが、現実には遥かに少ない分量でも合格点に届くことは可能です

7. MPT対策

MPT対策は、「完全にbarbri頼み」でした。

事前知識を必要としないという課題の性質ゆえに、対策のしようがないというのが正直なところです。barbriの対策講義を視聴し、試験の形式、答案の典型的なパターン、アプローチの手法(時間配分/資料を読む順番等)を理解する以外に、これといって出来ることがありません。

私は、問題形式のバリエーションを理解し、また、時間配分の感覚を持つために、barbri問題集(=過去問)から4-5問程度、90分の時間を測って演習しました。この際、資料読みと答案作成の時間配分を変えてみたり(45:45や35:55など)、資料読みの際に答案のアウトライン作成を同時並行で行ってみたりしました。しかし、結局、どのようなアプローチを採っても、私の能力で90分間に書ききれる分量は6-700 words程度であったため、試験本番では、結局、barbriの推奨アプローチを墨守しました。本番で書けた量もおそらく各問 6-700 words程度です。

なお、題材は架空の法令ではあるものの、実存の法令をベースにしている(またはそのままである)ため、知っている法分野がイシューになると取り組みやすかったです。私の場合、TortsやProduct Liabilityが題材の問題では事実関係・法令とも理解しやすかったのですが、Criminal Law & Procedureが題材の問題は、資料のSkimmingがかなり辛く感じました。(とはいえ、本番ではたった2問しか出ませんので、これは運の要素になってきます。)

8. 勉強のスケジュール

LL.M.同級生の日本人受験者とともに、定例で勉強会(一回あたり3時間目安)を持ち、ペースメーカーにしました。下記が実際に取り組んだ内容と、同時期の自学習の内容(概要のみ)です。6-7月は各自の進捗や手応えをベースに、勉強会の進め方・毎回のコンテンツを適宜修正しながら進めた結果です。なお、2019年7月の試験日は7月30~31日であり、例年より遅めです。

■2月-5月上旬 
勉強会:週1回開催。2回(=2週間)につき1科目のペースで日本人ノート通読&Emanuel (Civil ProのみbarbriのPractice Questions 25問) を解く。 ノートの通読&問題演習は各自で事前に実施し、勉強会の場では、疑問点や気づきを共有&教えあう形式。(この形式は基本的には以後も同様。)
自学習(勉強会以外。以下同じ): 勉強会の事前準備以外には行わず。

■5月下旬
勉強会:勉強会メンバの卒業旅行のため実施せず。(6月以降の進め方を相談したのみ)
自学習:barbri MBE科目講座を視聴。

■6月上旬
勉強会:週2回開催。各回につきMBE 2教科(各教科30-40問程度)。
自学習:barbri MBE科目講座の視聴完了。MEE科目講座を半分ほど視聴。 MBE演習。

■6月下旬
勉強会:週2回開催。各回につきMBE 30-40問+MEE 2問。
自学習:barbri MEE科目講座を視聴完了。MEEおよびMPTの対策講座を視聴。MEE演習(barbri)を開始。MBE演習。

■7月上旬
勉強会:週2回開催。
第一週はbarbri模試の見直しに1回を当て、もう1回はMBE 40問+MEE 2問。
第二週の2回は各回につきMEE 2問+MPT 1問。
また、プラスして7月14日にEmanulのPractice Qestions 200問を、時間計測の上で実施(午前・午後で3時間ずつ)。
自学習:MEE論証用のAnki作成&暗記。MEE演習。MBE演習。

■7月下旬
勉強会:次の内容で3回実施(最終回は7月24日)。
(1) MEE 2問+MPT 1問。
(2) Barbri MBE Half Day Examを、勉強会の場で3時間計測して実施。
(3) Barbri MEE テキスト巻末の練習セットから6問を選び、勉強会の場で3時間計測して実施(問題セットはそのまま使わず、出題されると予想した科目から6問をピックアップ)
自学習:MEE論証用のAnki作成&暗記。MEE演習。MBE演習。

勉強会は、個人の嗜好や勉強スタイルの相性によって賛否が分かれると思います。時間は多少かかりますが、解答・解説を確認しあう中で自分の見落としや解説の読み飛ばしに気づいたり、人に説明することで知識が定着する効果があったので、私にとってはとても有益でした。それ以上に、一人で部屋に籠って勉強していたら、早期に息切れしていたと思います。快く付き合ってくれた友人たちには感謝しかありません。

9. 試験会場関連・当日の感触(雑記)

(1) 試験会場・ホテルの選択と現地での過ごし方

試験会場:日本人受験生が多く情報が豊富なため、Buffaloを選択しました。会場選択の連絡が来たのは6月5日(水)の朝でした。会場選択のメールを受信した直後(数秒~十数秒以内)にメール中のリンクにアクセスしたところ、まだNYCにも残席がありました(即時に埋まったようですが)。LL.M.生はNYCを取るのは不可能と聞いていましたが、現在、優先権がNY州ロースクールを卒業したJD生の1st test takerのみに限定されており(参考)、その影響かもしれません。

ホテル:
Hilton Garden Inn Buffalo Downtownに滞在しました。もともと、手違いがあって徒歩10分程の別なホテルを押さえていたのですが、会場至近のホテルを取り直したいと思い、上述の会場選択後、他受験者のキャンセル待ちを狙ってしつこく空室状況をチェックし、確保しました。

前日の過ごし方:
試験前日(7/29)の昼頃に到着する便で現地入りしました。ホテルに直行したのですが、同じ境遇の受験生も多く、客室の準備ができた順に案内され、チェックインできたのは夕方でした。この日は日本人ノートのナナメ読みとAnki の確認をサラッと行う程度にとどめ、友人と夕飯をとって、早めに寝ました。そもそも、気持ちが落ち着かず、あまり勉強に身が入らなかったです。

初日の朝:両日とも9時着席、9時30分試験開始ですが、初日はセキュリティチェックがあるため、8時に会場に到着するよう試験票には記載があります。8時すぎに訪れたところ、会場の建物を取り囲むように長蛇の列となっており、結局、2-30分程度待つことになりました。なお、待ち時間は暇だったので、PCでAnkiを見ていました。会場エントランスで捨てる前提で、資料のコピーを持っていっても良いと思います。

昼休み:昼食に関しては、ランチの受け取りに伴う混雑状況が予測できなかったため事前予約のランチオプションは購入せず、妻が作ってくれた食事を自宅からホテルまで持参して賄いました。(なお、結果的に、事前購入ランチの受け取りデスクが過度に混雑・混乱している様子は見られなかったように思います。)
初日の昼食はホテルに戻りました。昼休みはスケジュール上、1時間半ありますが、午前の部の答案回収に時間がかかり、かつ午後の部は30分前集合なので、実際には1時間弱になります。そのため、あまり落ち着いて過ごすことはできませんでした。
二日目については、朝にホテルをチェックアウトし、昼休みに部屋に戻ることはできなかったため、昼食用のサンドイッチをあらかじめ用意し、試験会場に持ち込みました。(試験会場にはスナック・軽食を持ち込めます。チョコレートなどのおやつの他、バナナ、パウンドケーキ、サンドイッチなどを持ち込んでいる受験生を見ました。)

(2) 試験会場のファシリティ等

・会場の時計は秒針のないデジタル方式でした。私は最後列の席をアサインされてしまい、非常に時計が遠く、また試験官に遮られて見づらい時がありました。そのため、試験対策のときから、本番では厳密な時間管理ができない可能性があると想定して演習するとよいと思います(特にMBE)。
極寒との悪評高い空調ですが、私の席はそれほど寒くありませんでした。会場中央に座った友人は寒さで青ざめていました。冷房との位置関係によるようです。
・トイレの数は限られており、それなりに行列になります。(試験直前は、男子トイレにも多くの女性が突入していました。)
・ひっそりとウォーターサーバーがありました。

(3) 試験自体の感触

MBE:午前・午後ともに、前半に良いテンポで解答を進められたので、中盤の問題を少しじっくり目に取り組み、結果として終盤にやや焦る羽目になりました。Emanuelやbarbriの練習問題と比べ、特段、設問が長い/短いという印象は受けませんでした。
MEE:無事に予測した科目の中から出題され、(できなかった部分も含めて)実力が出せた感触がありました。
MPT:二問とも典型的なMemo作成の課題でしたが、一問はあまり馴染みのない国際条約に関する出題であり、やや面食らいました。とにかくMemoを形だけでも完結させることを考えて、取り組みました。

10. 終わりに ―― 非法曹としてのNY Bar

最後に、日本の法曹資格を持たない立場から、自分の試験対策アプローチを振り返ってみたいと思います。

弁護士(法曹)の方は、言ってみれば超一流の資格試験受験者です。もとより、論理的思考力、記憶力、知識を体系化する力が総じて高い母集団だと思いますが、そのような個々の資質を抜きにしても、

① 日本の司法試験の受験時に、自分に合った勉強スタイル・ペース配分を築き、それを成功体験としている
② 日本法ベースの知識や発想が、NY Barの対策に直接的に有用なことがある(類似法制度の理解や記憶が早い、論文試験の論理展開がスムーズ等)
③ 司法試験に特有の試験テクニックが身についている(択一における肢の絞り方、論文で論証が思い出せないときの対処等)
④ 試験本番のストレス・タイムプレッシャーを経験している 

といった点で、一歩も二歩も先を行っているわけです。思えば、合格体験記の多くは弁護士の方が書いたものであるところ、同じ関門を潜り抜けていない私が、同じような勉強をしただけで、果たして合格できるのだろうか?と、試験対策を始めた当初は考えていました。

振り返って、やはりNY Bar対策はLL.M.を卒業する5月以降の約2ヶ月間が本丸であり、その期間の短さを考えると、とりわけ、①自分に合った勉強スタイルが確立でき(てい)るかは、かなり重要ではないかと思います。
この点、2月から4月までの間、継続的に試験対策に着手していたことは、勉強の取り組み方をAdjustするのに良い効果があったのではないかと感じます。(大学の授業も疎かにしないという前提に立つと、早い時期に対策を始めたとしても、必ずしも勉強時間の総量自体が劇的に伸びるわけではないと思います。)

また、②-④の知識・経験の不足は、勉強量と演習でカバーするしかありませんので、結果論ではありますが、時間を測った問題演習をそれなりに行い、また総量としてもMBE 3,000問、MEE 80-90問に取り組んだのは、相応の効果があったのだと思います。

自分の経験が広く一般化できるとは思いませんが、本稿が、少しでも、今後受験される方のヒントになれば幸いです。

Special Thanks: 試験対策において参考にした体験記

・弁護士 増田雅史さんのblog
・弁護士 酒井貴徳さんのnote
・弁護士 松田悠希さんのnote
・うどんさんのblog
masaブロさん
著者のみなさま、貴重な体験記を本当にありがとうございました。

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