未経験で人事になりたいあなたへ 014/100 中村 悟さん
未経験で人事になりたい方向けに、人事コンサルタントの多田が100人の人事にインタビューをする企画「未経験で人事になりたいあなたへ」
中村さんは、1社目のYahoo!JAPANの人事部で一緒に働かせていただいた先輩です!在職中から「マインドフルネス」の第一人者としてご活躍されており、現在は独立されて、メディア掲載・イベント登壇などもされています。
また、中村さんの詳細なキャリアは、中村さんのnoteにありますので、ご興味がございましたらぜひ読んでみてください!
経歴
ー 一番最初のキャリアからお伺いしてもいいですか?
大学卒業後、2002年にニフティ株式会社に新卒で入社しました。大学時代からインターネットが大好きだったのでインターネットのど真ん中のYahoo!に入りたいと思っていましたが、当時のYahoo!は新卒採用にあまり力を入れておらず、営業かエンジニアの2択しかありませんでした。一旦は別の会社を経由しようと考えてニフティを選びました。ニフティでは2年半程度サービス系の企画を担当しました。
ー その後Yahoo!に移られるんですね?
はい、2005年の2月にYahoo!に中途で入社しました。入社してすぐはサービス系の仕事をしていて、当時のYahoo!動画(現在のGYAO!)、Yahoo!ニュース、Yahoo!スポーツ(現在のsportsnavi)などYahoo!のメディア系の看板サービスの企画に携わっていました。2012年4月のYahoo!の経営体制が大きくかわり直属の上司の異動がきっかけで、その年の7月に人事へキャリアチェンジしました。当時、サービスサイドから人事に異動した事例としては新しかったので、外様が来たみたいな印象を持たれていたかも知れません。(笑)
ー 人事に異動してからはどんな仕事をしていたんですか?
実は採用や給与管理といった人事らしい仕事はあまり経験していなくて、人材・組織開発や企業内大学などの立ち上げなどをしていました。健康経営の推進にも携わりました。中でも2016年の夏に始めた社内にマインドフルネスを展開する取り組みは、社内外でも注目されました。現在のコロナ禍であったりリモートワークを推進するにあたって、社内だけでなく社外にもマインドフルネスを届けたいと思い、2020年の5月末にYahoo!を退社して現在は個人事業ではありながらいくつかの企業を掛け持ちするポートフォリオキャリアを形成して仕事をしています。
ー めずらしい働き方をされていると思いますが、何かきっかけはあったんですか?
Yahoo!に在籍していた最後の2年間程度は、複業的にマインドフルネスをキーワードにお声をかけて頂いた会社や組織とは仕事をしていて、イベントに出席したり企業の研修を担当したりしていました。ゴリゴリと営業をして売上を立てたいというよりかは、IT以外の業界や業種の企業や地域・行政にも幅広く展開していきたいと考えて、個人事業へシフトしていきました。
他にも、2019年の4月から6月の間にサバティカル休暇をとっていて、その期間に個人的にいろんな人と会いました。様々な方と話していく過程で、個人事業だけではなく業務委託などで仕事を組み合わせて働けることができたら理想だと考えるようになりました。
現在の仕事内容
月〜木曜日の午前中はRELATIONSという会社で業務委託で働いています。
月〜木曜日の午後はカルビーで契約社員として働いています。
マインドフルネスだけではなく、チームビルディングといった組織開発や自己研鑽を促進するための社内イベントの運営などをしています。
金曜日はフリーな時間にしています。
他にも、マインドフルリーダーシップを牽引するMiLIでプロジェクトベースで仕事をしたり、スポット案件でワークショップで講演したりと、ゆとりをもって仕事してます。
「マインドフルネス」が主軸として複数の業務を掛け持ちしていますが、企業の中からアプローチするのと外からアプローチするのとでは、やることや刺激が変わってきます。カルビーは内側から働きかけたいと思ったので、契約社員という形を取りました。それとは別に、組織開発・人材開発を研修としてやる場合には、業務委託や個人事業の形を取った方が振る舞いやすいこともあります。
ー 人事領域でのマインドフルネスの立ち位置について説明してもらってもいいですか?
マインドフルネスは、自分の状況を客観的・俯瞰的に観察し、メタ認知を獲得するためのメソッドです。一般的には、生産性をあげたりストレスを軽減するための瞑想をイメージする方が多いかもしれませんが、あくまでそれは表面的なものです。自己認知の解像度を高めるための手法だと思ってもらうとわかりやすいと思います。
マインドフルネスを通じて、自己認知の重要性と自己認知を高める方法を広めたいと思っています。
経験してきた人事の仕事
人材開発・組織開発・組織人事や企業内大学などに関わってきました。
人事の仕事のポジティブな面
・オーダーメイドで何かを作って動かすことができる
人が目の前にいる以上、型にはまったルーティンワークはスケールしません。ケースバイケースで一つ一つ作っていくことが好きな方には、ポジティブな仕事だと思います。一つ一つ丁寧にやっていくことで、目の前の人が喜んでくれて、その喜びを数字ではなくその人の表情に表れることにやりがいを感じます。
サービスを提供していた時は、数字で結果が表れるものの数字だけだと本当に嬉しいのかわからなくなるという側面がありました。人事の仕事では、目の前の人の表情の変化からダイレクトに自分が役に立っていることを実感することができます。
・自分の考えたことで大きなものを動かすことができる
会社として事業や経営を考えた際にレバレッジポイントは人だという考えのもと、自分が目の前の人に対して取り組んだことがきっかけとなって、さらに大きなものが動いていくことを目の当たりにすると、自分が貢献しているということを実感することができます。
Yahoo!では、とあるカンパニーにおけるキックオフのワークショップをデザインした際に、執行役員の方から「ワークショップがあったからこそ、カンパニーがいい感じに立ち上がった」というフィードバックをいただいた時には手応えを感じました。
何かを企画して運営したことに対して結果が出るという意味では、サービスを作っていた時の感覚と近いと思っています。
人事の仕事のネガティブな面
・自分の中だけに止める話が多い
周りに言えない話が自分の中に溜まっていきます。それを自分の中でうまく受け流していきながら、溜め込みすぎないようにしています。自分の中に蓄積してしまうと、自分自身がメンタルをやられる可能性が少なからずあります。普段触れないようなネガティブな情報にも触れなければならないということは知っておくといいと思います。自分の強みや弱みを自己認知しておくことで、ネガティブな感情に引っ張られることを軽減できると考えています。
・業務の幅が広く、自分を見失う可能性がある
スタートアップなど小さい会社だと、人事の仕事は何でも屋さんになりがちです。全ての仕事を引き受けていると、器用貧乏のような形で自分の専門性が埋没してしまう可能性があります。色々な仕事をこなせるオールラウンダーであること自体が強みになったり、色々な仕事をしていくなかで自分のやりたいことを見つけていくこともできるので、一概にネガティブな面とは言えないかもしれません。
ただ単に仕事の量に振り回されるのではなく、振り回されている状況を認知してそれを扱えるようになれるか、が重要になってくると思います。
人事プロフェッショナルに必要な要素
・人が好きであること
ただのアサインされた仕事として取り組んでいるとつまらなく感じてしまいます。目の前の人が喜んでくれたり、人と話すことに喜びややりがいを見出すことができないと辛いのではないでしょうか。私は人や組織が変わる瞬間が好きだということに気づくことができたからこそ、自分の持つ資源を投下しようと思うことができました。
・自分自身を認知していること
自分自身の強み・弱みや自分の持つスキルに対して、自分が持つ認知と他人の持つ認知との間にギャップがないことが大切だと思います。働きがいや生きがいが見直されている中で、自分自身の軸を持っていないと迷子になってしまいます。人事パーソン本人が、働きがいや生きがいの探し方を知っていないとアドバイスもできないし、影響を与えられません。人事の人が軸の探し方を知っていて、それを頼りに他の業種の人が人事に相談するという関係を構築していないとプロフェッショナルとは言えないのではないかと思っています。
・専門性
「〇〇といえば△△」といった純粋想起を獲得できているといいのかなと思います。純粋想起を獲得できるまでは、プロとしての仕事を磨く余地があると思いますね。例えば、私の一番の強みは、「マインドフルネス✖︎企業導入」です。自分のタグ付けであったり、誰にも負けない領域を持っているとプロフェッショナルとしての立ち位置を確率できるのではないでしょうか。もちろん、新しく人事を目指す人は人事に関する専門性を持っている必要はありませんが、自分なりのオリジナリティを持とうとする意思が必要です
人事キャリアを目指す方にアドバイス
人事の仕事は食いっぱぐれません。どの時代であったとしても人事の仕事がなくなることはなく、今一番注目されている花形キャリアだと思っています。どの職種であっても人事を知っておくことはプラスに働くので、「人事の領域に踏み込んでみませんか?」と言いたいです。やったことあるかないかは過去の経験にすぎないですし、これからは人事のことを知らないまま何かをやることの方がリスクだと思います。どのタイミングであったとしても一度は人事に触れるべきくらいに考えています。人事の仕事にハマって戻れなくなる人もいると思いますが、人事に触れた上でサービスに戻る人もいるでしょう。人事の仕事に触れることのないままキャリアを終えるのはもったいないので、とりあえず人事を経験してみてください。
最近、生き方・働き方が多様化しているなかで、自分が目指すロールモデルはいる様に思えていないと思います。生き方・働き方も全て自分自身でオーダーメイドで作り上げてもいいということを体験しないと、他の人にアドバイスすることはできません。不安定な社会ではありますが、自分で生き方・働き方を色々実験しながら1社だけに頼るのではなく複数の企業をよりどころにした方が、結果として安定するし仕事に幅や深さも出るので専門性の確立に繋がります。
複数の会社で働くことに憧れを持っていたとしても、表面的であったりうわべだけな人材は誰も雇用したいとは思わないはずです。そこで、自分の好きなこと・強みと自覚しないほど余裕でできること・誰かの役に立てることを掘り下げていくと自分の天職に辿り着けると思います。あとは、「こんな仕事の仕方でもいいのかな」と思うような仕事の仕方を想像してみて、今の働き方とのギャップがあるのであれば、少しだけ踏み外して組み替えてみるのもいいと思います。その実験を繰り返して、少しずつ理想に近づいていくことをおすすめします。
これはサービスのリニューアルにも近いと思っていて、アプリやwebの開発でも全面リニューアルするのはカッコ悪いというトレンドがあります。日々ちょっとずつ変更していって、1年前から見ると全面リニューアルくらい変わっているというのが、最近の考え方です。これをキャリアに置き換えると、一発大逆転の転職よりも、働き方や働き口をちょっとずつ変えて1年後には転職したくらいに働き方が変わっていたくらいの方が、いまどきかも知れませんね。
少しファシリテーションしてみたり、誰かにコーチングやメンタリングをしてみたりしてみるのもいいと思います。そのうち誰から「お金を払ってでもやって欲しい」と、声をかけてもらうことに繋がるかも知れません。
生き方・働き方は自分で作ればいいと言いましたが、そもそも選択肢を知っていないとオーダーメードのしようがないと思うので、自分の理想に近い人を見つけてそこから工夫してみるところから初めてみてはどうでしょうか?