爪も生きてるらしい
爪は伸びるんだって、当たり前の事をいつの間にか忘れていた。
小さい頃から、私はいろんなチックがあった。目を頻繁にぎゅっとしたり、爪を噛んだり。他にも気付かなかっただけで、チックはあったかも。
目をぎゅっとするたび、両親に気をつけなさいと言われたから、目は意識的に治った。でも、爪だけは治せなかった。
今でも爪を噛む。イライラすると噛む。両親が見てないところで噛んで、でも爪は切ったんだと言えばばれないから。きっと気づいていても、もう十何年も噛んでいる私に、諦めているのかもしれない。
伸びた爪の、指からはみ出た部分が好きだ。爪が、伸びている感覚が好きだ。でも同時に、それをなくしてしまう感覚も、好きなのだ。
「爪だって呼吸してるのよ」
お母さんに、ずっとそう言われてきた。だからマニキュアはやめなさい、とも。洗脳のようにずっと、ずっとそう言われてきた。
つい先日、成人式でジェルネイルをしてみたくて、爪を1ヶ月近く伸ばした。噛んでしまうのを我慢して、爪を伸ばし続けた。十何年も噛んでしまっている爪は、いじけてしまっているのか、やっぱり伸びるのが少し遅かったみたいだけど。
いつもより伸びた爪が、誇らしく見えた。
いつもより伸びた爪が色に染まっていくのは、キラキラと輝いていた。
爪は伸びる。どんなに私が噛んでしまっても、マニキュアをしてしまっても。生きてるから。爪も、生きてるから。
今までよくヘソを曲げずに、伸び続けてきてくれたね。ありがとう。私やっぱり、短い爪より長い爪のほうが好きだった。生きてるって感じがするんだもん。うちら、生きてるんだもんね。これからはもうちょっとあんたを大切にするからさ、伸び続けてよね。
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